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0849・小太刀と十字架棒




 深層四層目の事が多少分かったという、いい昼食の時間を終えて、妾はソファーの部屋からマイルームへと戻る。

 その後は3人を呼び出したら、個室に入ってログアウト。

 現実へと戻る。


 すぐにキッチンへ行き昼食の準備をしていると童女が合流。

 手早く昼食を作ったら、さっさと食べて雑事を熟す。

 今日は特に大したニュースは無かったのう。

 ここ最近と同じく大陸が話題になっておる程度であったが、目新しい情報は無かった。


 雑事が終わったら部屋に戻ってログイン。

 今度は深層三層目へと向かう。

 少しでも多くの狂死塊を手に入れねばならんので、一体でも多くの敵を倒すしかない。

 ついでに木を伐って採取もしておくかな。


 深層三層目へと出発し、いつも通りに道中を浄化しつつ到着。

 ここからは聖浄塊の小太刀を使っていかねばならん。

 これもどこまで有用なのかは調べておく必要があるでな。

 耐久力が低いという事をしっかりと考えて使わねば。


 仲間達と別れた妾は、早速現れた憤死鬼に対して聖浄塊の小太刀で戦いを挑む。

 その結果、恐ろしく斬れるという事が分かった。

 あの硬い憤死鬼が、まるで豆腐の如しと言わんばかりであったわ。

 何の防御も感じぬとは……。


 「これはアレじゃな。

 今までのアンデッドも瘴気によって防御をしておったのであろう。

 ところがその瘴気での防御が無くなったら、そこにあるのは腐った肉という事か。

 通りであっさりと斬れるわけよ。

 言い換えれば腐った肉が不自然な強さを持っておったというだけ」


 そう考えるとドラゴンゾンビやスケルトンドラゴンも、決して想像のような強さは持っておらんのかもしれん。

 まあ、相手が大きすぎて結局は強いのじゃろうがのう。

 その大きさによる強さを排除すると………いや、安易な予想は止めた方がよいな。


 ドラゴンともなれば絶対にブレスを吐いてくるし、となると一筋縄ではいかぬであろう。

 昨今のゲームのドラゴンが弱すぎるだけで、ここは<レトロワールド>じゃ。

 ドラゴンの強さは<ドラ〇ンズレアー>とか<ドラゴ〇バスター>のレベルかもしれん。


 表面は勝てるんじゃが、クリア後の裏面がのう。

 アレの攻略大変なんじゃよなぁ。


 <ドラ〇ンズレアー>に至っては、ドラゴンが強いというより操作性が悪すぎるんじゃよ。

 アレで戦えと言うのは厳し過ぎるわ。

 あとナイフか短剣か知らぬが、投げ方も悪いしの。


 手でヒョイっと投げる感じじゃし、お前は本当に戦う気があるのか? としか思えん。

 <マザ〇>のドラゴンも強いが、アレは倒せる範疇じゃし倒さんと先に進めんからのう。


 おっと、狂死鬼が出て来たので真面目に戦うかの。


 「で、真面目に戦ったらコレか。

 瘴気での邪魔がほぼ無いとはな。

 御蔭で簡単にぶった切れたわ」


 小太刀を使う事に対して妾は特に何も無い。

 短いというリーチの不利はあるが、それは踏み込めばよいだけ。

 小太刀とは元々そういう物であるし、踏み込んだ先に活路がある物よ。

 もちろんリーチが長い方が有利なのは間違いない。

 そんな事は当たり前の話よ。


 とはいえ小太刀を使っておると懐に踏み込む工夫など、色々と考えながら戦うものじゃ。

 妾の領域になると惰性での戦いにしかならんのだが、現代の巫女辺りなら良い経験になるであろう。

 妾は素材の量の都合で小太刀にしただけじゃからな。


 狂死鬼を倒した妾は移動し、次のアンデッドを探して歩く。

 今はもうそこまでの強さを感じぬ相手になってしもうたので、フラフラと敵を探し歩いては斬り倒していく。

 …………それはそれで辻斬りみたいで、何かイヤじゃな。


 とはいえ敵を倒して素材を得ねばならぬし、この聖浄塊の小太刀であれば簡単に首を刎ねられる。

 そうなると、いつも通りの戦いにしかならんのじゃ。


 こうなったら武器を変えるか、未だ十字架棒は使っておらなんだでな。


 妾は武器を十字架棒に切り替えてから、敵を探して歩きだす。

 途中で木を伐ったり採取をしておると即殺鬼を発見した。

 向こうもこちらを発見したのか襲ってきたが、妾は十字架棒で鎌を弾く。


 ガキン!


 「ぬ? 流石は棒じゃな。刃物のようにとはいかぬか。

 これはこれで面白いと言えるかのう。

 首を刎ねる事は出来ぬが、代わりに頭をカチ割ってくれるわ」


 妾は右の鎌攻撃に対し、十字架棒を突き出す事で止める。

 そして素早くバックステップで離れると、今度は前に出た即殺鬼に対して首に突きを放つ。

 即殺鬼は回避しようとしたものの、十字の部分が首に直撃。

 後ろに倒れた。

 そうなるとチャンスにしかならぬ。


 十字架棒を引き戻しながら右足を引いた妾は、振りかぶりながら左足の力を全開にして踏み出し、右足を地面に下ろす。


 ダン!


 「シャァァァァァァァァァッ!!!」


 十字架棒の十字の部分が即殺鬼の脳天に直撃。

 それは金槌の槌頭の如く敵の頭を叩き潰した。

 突き刺さるかと思ったのだが、それを超えて潰してしまったのう。

 とはいえ、これはこれで使えるというのと、何といっても【浄化力強化】が強い。


 「思っておる以上に【浄化力強化】が効いておるのう?

 即殺鬼の動きが最初に比べて鈍い気がする。

 となると……瘴気で動きも良くなっておるな?」


 ゾンビなど最初は「あー」とか「うー」とか言うだけの、遅い動きしか出来んアンデッドだったのだ。

 それが今や生者よりも機敏に動きよる。

 それが濃い瘴気の御蔭だとすると、やはりアンデッドの強さの根源は瘴気か。


 だがな、珠の師は<穢れのブレス>と<呪いのブレス>とも言うておった。

 それに今までのアンデッドに【浄化魔法】を使っても、完全な弱体化をするわけでもなかった。

 そこから考えるに、瘴気以外にも穢れや呪い、あるいは邪気なども加わっておるのかもしれん。


 それらが複合してのアンデッドであれば、【浄化魔法】だけでは浄化し切れぬのも分かるのだ。

 聖浄塊製の武器に付いておるのも【清浄】と【聖浄】。

 これら2つがわざわざ別々なのも、その辺りに理由があると予想する。

 それが当たっておるかは知らぬが、そこまで的外れな予想ではあるまい。


 ………いや、死王の事を忘れておった。

 となると死気とも言うべきものも加わっておるのかもしれん。

 生意気にも妾が使うモノに死気があるのだが、このゲームの死王とやらも使うのか?


 まあ、ここはゲームじゃからして、妾と同じ死気を使うとは思えぬがな。

 あれが本当にゲームの中で完全再現できて使えるなら、あっという間に阿鼻叫喚の地獄絵図じゃ。

 なので再現自体が不可能であろうよ。

 一瞬で発狂するであろうからな。


 妾はあの人造神話の神ではないのじゃが、そこは構うまい。

 あれらは近代に入ってから作られた人造神話じゃし、元々神話というのもそういう物じゃ。

 人々が信仰し祈りを捧げれば、それは神となる。

 古くから変わらぬものよ。


 「ひょいっとかわしてから、ふんっ!!」


 ゴシャッ!!


 久々に【魔仙練体】まで使ったが、これを使うと戦闘が簡単になりすぎてつまらんのう。

 やはり使っても【身体強化】までじゃな。

 それ以上は蛇足というか、野暮と言わねばならん。


 どれぐらい野暮かと言えば、ス〇イムをロ〇の剣で攻撃するくらいじゃの。

 もしくはゴブリンをマ〇ムネで斬るぐらいか。

 それぐらい野暮じゃから、使うのがむしろ恥ずかしいと思わねばいかんの。

 楽過ぎて余計にやる気が出てこんようになる。


 それにしても……【浄化力強化】は強いのう。

 こうなると聖浄塊の武器には【浄化力強化】を付けたくなる。

 というより、付けねば損であろう。


 せっかくの聖浄塊じゃ、無駄に使うわけにはいかぬ。

 しかし……そうなると十字架棒にするしかなくなるんじゃよなぁ。


 棍棒と棒のカテゴリーじゃし、棍棒使いは多いからのう。

 ユウヤを始め棍棒を使える者は割とおる。

 それを考えても棍棒に………そうじゃ、月槍を忘れておったな。

 十字架棒以上に使いたくないが、仕方あるまい。


 引っ掛けたり弾いたり、あるいは敵を押さえ付けたりと出来るんじゃが、代わりに威力の高い攻撃は出来んのじゃよ。

 もともと三日月型の刃は敵を押さえ込む為に使われていたものじゃ。

 分かりやすく言えば刺又(さすまた)と変わらん。


 この類の武器は仏僧が敵を殺さず押さえつける為の物であったからの。

 武器として強力な訳ではない。

 正直に言えば鈍器のように殴った方がよかろうが、そうすると三日月の刃が邪魔だという………なんとも言えん武器なのだ。


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