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0843・八握剣と十束剣




 昼食を終えた妾は後片付けと雑事を終わらせ、珠の部屋に戻ってログインする。

 その後は準備をしてソファーの部屋へと移動し、そのまま家の外へ。

 皆を召喚したら待つのだが、早速キャスティが盾を構えて剣を振っておる。


 準備をする時に盾と剣を渡しておいたので、まだ慣らしておる最中なのだ。

 新しい盾と剣に感覚を慣らさねばならんのでな。


 「剣を作ったって言ってたけど、ちゃんと八握(やつか)剣として登録されてる。

 形は普通の剣だけど、ちゃんと計測して作ったから?」


 「一応は八握(やつか)剣の定義には入るからじゃない。

 とはいえ正しく意識して作らないと、おそらく八握(やつか)剣にはならないのでしょうけどね」


 「【浄化力強化】が付いていますから、何らかの“いわく”があるのでしょうか?」


 そうアマロが妾に向かって聞いてくるので、妾は素直に答える。


 「知らん。

 そもそも妾ですら八握(やつか)剣に浄化に関する逸話があるとは聞いた事が無い。

 実際に八握(やつか)剣とは、ただの剣ぞ。

 握り拳八個分の剣身を持つから八握(やつか)剣というのだ。

 それ以外に意味は無い」


 「なら十束(とつか)剣は?」


 「妾に、我が夫が我が子を殺した剣を作れと言う気か?」


 「「「「「………」」」」」


 流石に妾に関する神話を思い出して黙ったか。

 我が子が殺された剣を流石に作る気は無い。


 とはいえ、それは天之尾羽張(あめのおはばり)であって、全ての十束(とつか)剣というわけではない。

 あれは十束(とつか)剣の一つに過ぎんからの。


 「あくまでも我が子を八つ裂きにした天之尾羽張(あめのおはばり)は、十束(とつか)剣の一つに過ぎん。

 とはいえ、のう……」


 「まあ、無理に作れなんて誰も言わないし、流石にねえ……」


 「流石に色々と問題があるし、それを作ったところであまり意味は無い。

 別の誰かが見よう見まねで作るかもしれないけど、今の私達には正確な物は不明。

 なので実際の意味での再現は不可能」


 「あくまでも握り拳八個分、握り拳十個分としか分かりませんからね。

 それ以上の情報を知る事は出来ません。

 流石に古すぎるので、細かな規定はそんなに無いと思いますけど……」


 「後世の者には想像するしか無理だものねえ。

 そもそも神話の時代って事は2800年くらい? それとも3000年くらい前かしら?

 何せあまりに古すぎて不明なのよねえ。

 というか戦国辺りの刀鍛冶だって、伝わっているのは感覚的な事らしいし」


 そんな話をしておるとユウヤとオウカが来たので出発する。

 今日も深層三層目であるから、ささっと移動して素材集めを開始せねばな。


 「そういえばアマロは浄化を始められてるのか?

 ナミから狂死塊が売られたっていうのは聞いたけどさ」


 「かなりの値段で困ってしまいましたけどね。

 それでも買い戻して貰えるのが分かってますから、頑張って買いましたよ。

 それはともかく、【浸透】のスキルでの消費が驚くほど多いんです。

 その所為でなかなか完成しません」


 「なるほど。MP消費が多い所為で完成を早めるのが難しいと。

 ナミみたいに【昏睡眠】を持っていれば早いのでしょうが、流石に持たないと簡単には回復しませんね。

 そういう薬は無いのですか?」


 「ありますけど、そもそも<渇水度>の所為で沢山飲めません。

 昨日は飲みましたけど、そこまで回復する物でも無いんですよ。

 どちらかと言うと、回復を早める薬ですから」


 「なるほど、どのみち時間が掛かるというわけですね。

 まあ、飲めば瞬時に回復するという物があるのであれば、多くの人が殺到するでしょう」


 「無い訳じゃないけど、あれらは希少な素材から作られる薬だからね。

 滅多に出回らないし、効能は一月ぐらいで無くなるんだ。

 なのでどこの国でも、戦争前に作らせるくらいかな?

 作るのにも時間が掛かるらしいしね」


 どうやらゲーム的なMP回復薬は存在しておるらしいが、それらは秘薬とか霊薬のような扱いらしいの。

 まあ、飲んだだけで瞬時に回復とか、色々とおかし過ぎるしのう。

 それを考えれば、このゲームの回復は自然な方じゃ。


 魔法使いは最大MPが高いから、それだけ回復に時間が掛かるからのう。

 だからこそ、このゲームは誰もが近接で戦えるようにしてあるのじゃし、その辺りが普通のRPGとは違うのであろうの。


 深層三層目まで雑談しながら進み、ついたので早速分かれて戦いを始めた。

 まだまだここで十分にレベル上げは出来るが、そもそもの目的は素材集めじゃ。

 なので敵を早めに多く倒す必要がある。


 レイドを組んでおるので仲間達が倒した場合も入手判定は行われるが、そこまで確率が高い訳でもない。

 頑張らねばな。


 倒れて消えて、そのまま何も入手できずのパターンがあるからのう。

 あれは勘弁してほしいものよ。


 妾は直刀を右手で下げながら歩き回り、アンデッドを見つければ狩っていく。

 即殺鬼と狂死鬼のコンビであろうとも、妾の敵ではない。

 先に狂死鬼を倒せば怖くもないし、即殺鬼が襲ってきても鎌を切り落とせば済む。

 結局、大した相手にはならぬ。


 憤死鬼であっても直刀ならば斬れるので、そこまで苦戦する相手ではない。

 それでも【アンデッド特攻14】でこれじゃからな。

 特攻武器でないならば、どれほど苦労するのかは分からん。

 もしかしたらだが、特攻武器でなければ斬る事は出来ぬのかもしれんの。


 最初から数値は少なくとも特攻武器で戦っておったのだ。

 特攻効果の無い武器で戦った事は無い。

 なので分からぬが、もしかしたら斬る事そのものが叶わぬかもしれぬ。

 いや、突き刺す事も無理で、鈍器で殴りつけるくらいしかダメージが与えられん可能性もある。


 それほどに硬い可能性のあるのが憤死鬼じゃが………ま、いちいち調べずともよいか。

 面倒じゃし、調べたところで妾に意味は無いからのう。

 特攻武器を持っとるし、これで戦えておる以上は何ら問題ない。

 わざわざ余計な事をする意味も無いしな。


 「どうにも戦闘が楽だと、思考が横道に逸れるのう。

 仕方ないとはいえ、余計な事が気になってくるとは……」


 いかんのだが、何故か下らぬ事を考えて、しかも行動しそうになるわ。

 簡単に切り裂けるのが悪いのかもしれぬが、わざわざ苦労をして倒す意味も今は無い。

 なので下らぬ事を考えつつも、数多くのアンデッドを倒す必要がある。


 「これやっぱり楽だよ! 今度からコレにしてもらおうっと!」


 「神官が十字架で殴りつけるのも斬新」


 「ある意味で背信と言えるのかもしれないけど、ここの神って運営だしな。

 連中なら面白がってオールオッケーって言い出すと思うぜ?

 自分達に関係無いし」


 「そもそも神道と仏教の国に十字架の事をとやかく言う者も居ないと思います」


 「ですよね。私も気になりませんし、ああいう鈍器だとしか見えません」


 どうやらナツが十字架棒で敵を倒したらしいの。

 【浄化力強化】が付いている以上、良く効くのであろうな。

 【アンデッド特攻】や【常時浄化】の数値は同じじゃが、【浄化力強化】が付いているかどうかで相当変わるのかもしれん。


 刀に付けるのは無理そうじゃし、どうしたものかの?

 妾も試してみたいという気持ちはあるのだが………


 珠が持っておるスキルは棒じゃから、実際に十字架棒も使える。

 なのでアレを自分の分も作ってみて構わんのじゃよな。

 棒は杖より長いが、杖と同じように使える武器じゃ。

 形状的に当たり前じゃが、杖よりも遠心力を使いやすい。


 その代わりに懐に入られると、杖よりも対処し辛いという欠点もある。

 とはいえ長柄の武器の欠点と変わらんからのう。

 となると【浄化力強化】を試すのは棒でよいな。

 無理に【剣術】スキルを得る必要もあるまい。


 それに妾が八握(やつか)剣を使うのも、色々とアレじゃからのう。


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