0842・国というものの話
妾達は魔隠穴を終わらせバイゼル山へ行き、そしてウェズベア森へと移動。
素材を集めて回り、それが終わったら家へと戻った。
艶女組は未だにウェルズベアー・エリートの皮で儲けておるようであったが、幾人かプロゲーマーも来たらしい。
その辺りは好きにせよとしか思わなんだので適当に話しておいた。
どうもプロゲーマーの比率的には天使の星の方が多いそうなので、ウェズベア森に来るのはあまり多くないらしい。
悪魔の星にいるプロゲーマーも、他のプロゲーマーと同じ事をするわけにはいかぬ者も多いのだそうだ。
二番煎じだなんだと言われるらしく、来たのも金儲け以外に理由は無いらしい。
未だに需要があるというのも大きいのじゃろうがな。
妾達は他に売れる物が沢山あるので、わざわざウェズベア森で熊狩りをする意味も無い。
使う皮も今はクリムゾントータスの皮じゃからな。
必要になったら獲りに行かねばならんが、ウェルズベアー・エリートの皮は既に必要の無い物になっておる。
家へと戻りマイルームへと移動した妾は、仲間達をマイルームに戻して精錬を始める。
それが終わったらソファーの部屋に残していたラスティアやキャスティと合流。
ファルを呼び出して昼食の手伝いに送り、適当な雑談で時間を潰す。
ファルが呼びに来たので昼食を食べ、それが終わったらソファーの部屋からマイルームへ。
個室に入ったらログアウトして現実へと戻る。
現実に戻った妾はすぐに昼食作りを始め、下りて来た童女と共にささっと作る。
最近は童女も慣れて来たのか、手つきが良うなってきたの。
この調子で励めば簡単な料理ぐらいは当たり前に出来るようになろう。
昼食を作った妾と童女は食事にするのだが、テレビのニュースで速報が流れた。
「えー、番組をご覧の皆様。速報が入ってまいりました。
中国の複数の都市にて暴動が発生、現在軍が出動して鎮圧に乗り出しているとの事です。
繰り返します。現在……」
「あの国で暴動かー………
ここ最近は景気が悪くて失業者が溢れてるってネットのニュースに出てたけど、それが限界に達したって事かな?」
「すぐに鎮圧されて終わりじゃろうよ。
家畜のエリートが徹底抗戦など出来る訳も無いのだし、その中に上に立つ者が出て来るかもしれぬが……
それも家畜のエリートであるしな」
「それ前にも言ってたけど、どういう事? 上に立つなら家畜じゃないでしょ」
「違うのう。
上に立つ家畜のエリートは、下々が家畜だと知っておる。かつて己もそうであったのだからの。
だから家畜扱いするのじゃよ。
要するに、あの土地の上位者が人民を家畜扱いするのは、己も家畜であったからに過ぎん」
「つまり家畜だった者が上に立っても、下の者を家畜扱いしかしないってこと?」
「その通りじゃ。
妾としては他の神の土地なのでなんとも言えんが、あそこは始皇帝か漢帝国が潰えた時点で終わったのであろうの。
その後は劣化版みたいな国しか作れておらん。
そもそも漢帝国ですら劣化版みたいな部分があるからのう」
「つまり始皇帝が駄目だったから、後は上手くいかなかった?」
「というより、初めての皇帝が上手くいかなさ過ぎたと言うべきかの。
もちろん始皇帝が悪いというわけではなく、その後に何代もに渡って続かなかったのが原因であろうな。
初めての皇帝の血筋は三代で途絶えてしもうた。
これではな」
「源頼朝の血筋だって三代で途絶えたんじゃなかった?」
「頼朝は征夷大将軍じゃろうが、天皇ではないぞ?
妾が言っておるのは頂点にある者が三代で途絶えたという意味よ。
天皇家の血筋は連綿と続いておる。それは周囲の者が続けさせようとしたからだ。
しかし大陸にはそれが無い。
二代目など自害に追い込まれておろう」
「なるほど、王朝がころころ変わってて一貫性が無い。
それが家畜のエリートの正体か」
「そういう事じゃ。
だからこそ大陸の連中は国家に対する忠誠が無いのじゃよ。
あの家畜のエリートが、蝗に例えられるのもそれが理由。
あれらはとどのつまり忠義など持ち合わせておらず、己の欲しか持ち合わせておらん。
飼い慣らされた家畜のエリートであり、同時に己の欲しかない蝗でもある」
「確かにあんな国だけど、人民が立ち上がって国を変えようとはしないのよね。
まあ、命を懸けろと言われても困るでしょうけど」
「そうではあるが、あの国の者どもは自分達の事を棚に上げて物を言うからのう。
日本に対して一党独裁とか言っておるのを読んだが、思わず鼻で笑うてしもうたわ」
「そりゃね。
日本の場合は一党独裁じゃなくて、一党以外まともな党が無いもの。
他の連中は与党になれるような能力ないし、離れた所から野次と揚げ足取りしか出来ない。
こんな奴らに国政を任せたら、日本が終わりかねないわ」
「まったくじゃの。だから妾が一つずつ潰しておるのだ」
「本当に神様がこの時期に降りてきてくれて良かったわよ。
なにか知らないけど、おかしな雰囲気になってた部分もあったし」
「どうやらマスコミ含め、相当に煽っておったようじゃの。
野党第一党を与党にしようと画策しておったみたいだが、その前に妾がその野党第一党のトップと幹事長を潰したからの。
あれで風向きが変わったみたいじゃ」
「ああ、それでか……。
悪夢は回避されたって感じね」
「そうじゃの」
そんな話をしながら食事をし、ちょうど昼食が終わりかけた頃、新たな情報が速報で流れた。
「皆様ご覧ください! 中国にて人民を押さえつける為に軍が戦車を出してきました!
これはもしかしたら第二の天安門になるのかもしれません!!
繰り返します、中国軍が人民に対し戦車を持ち出しています!! 持ち出して、あ!」
「………第二のタンクマンか。
アレを見ると、何十年経っても変わらないって分かるわね」
「変わる訳なかろう。
妾が言った通り、アレは家畜のエリートなのだ。
日の本の者が数千年経っても日の本の者であるように、大陸の者も何千年経っても大陸の者なのだ。
そこは一切変わらぬ。
致し方が無いところよ」
「そういえば日本だとひっくり返すのは武士なんだけど、大陸ってどうなのかしら?
あんまりひっくり返ってこなかった感じがするわね?」
「日の本が特別だとも言えるがの。
武士とは時に賊紛いの事もやっておった。
そんな者どもが跋扈しておったのだ、長きに渡ってな。
ある意味で蛮族そのものと言ってもよい」
「いや、蛮族って………。
と思ったけど、よくよく考えたら700年も国内で争ってたら、普通に蛮族なのかしら?」
「普通に蛮族じゃぞ。
ただし日の本が蛮族であらば、大陸は飼い慣らされた家畜となるだけじゃ。
で、あろ?」
「ああ、そういう意味でも家畜のエリートなのか。
確かに日本は蛮族かもしれないけど、それは争う気概を持っていたとも言えるものね。
対して大陸にはそれが無かったと」
「そういう事じゃ。
日の本は舐められたら負けの武士が治めておったからな。
何かあれば戦、何も無くても刈田などの略奪。まさに無法地帯よ。
実際には武家諸法度を始めとして、法はあったのだがな。
地方の小さい所など誰も見ておらぬ故、碌に守られてはおらんのう」
「蛮族なのが良かったというべきか、長く蛮族だったからこんな独特な歴史になってると言うべきか。
なんだか判断に迷う感じねえ」
「蛮族であった事が良かったというところじゃろうの。
そも歴史を考えれば、国民が蜂起しまくっとる日の本は異様な歴史をしておるとも言えるでな。
どれだけ一揆があった事か。
その多くは寺社が煽ったものとはいえ」
「………本当に碌な事をしない奴らばかりね」
「それが日の本であり、だから飼い慣らされておらなんだと言うべきであろうの。
現代は違うが」
現代の者とて、何ら変わらぬ気概は今も持ち合わせておる。
実際に立ち上がるか否かは別にして、その気概は忘れてはならんものじゃからの。
己らが死ぬくらいならば、敵を道連れにしてやる。
これこそが正しい大和魂よ。
一揆も大して変わらんからのう。




