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0832・素材と必要な時間




 解散した妾は家へと戻り、仲間達をマイルームへと戻す。

 その後に新しい素材に手を出そうとして止めた。

 前回もそうだったが、迂闊(うかつ)に手を出して失敗したからのう。

 何かしらのヒントを聞いてからの方がいいかもしれん。


 しかし同時に己の力で何事もやってみねば始まらぬとも思う。

 ソファーの部屋に戻ってファルを召喚しつつ、どうするかと悩んでおると童女が話しかけて来た。


 「なんか悩んでるみたいだけど、どうかした?」


 「妾の自力で素材をこねくり回すべきか、それとも素直に珠の師に聞くべきか。

 そこに悩んでおる。

 やはり経験の為には己の手で色々とした方が良いしのう。

 とはいえ前回のように瘴気に塗れた物と浄化した物。

 その両方が必要の場合もあるし……」


 「悩ましいところなのは間違いない。

 とはいえ、何でも自分でしようとしてたのに、悩むこと自体が珍しい。

 悩むぐらいなら行動すると思ってた」


 「いつもならそれでいいのだが、そこまで素材の数が多くないでな。

 せめて一つは何かしら、いや、ハッキリと言うと刀を作っておきたい。

 太刀でも打刀でもどちらでもよいのじゃがの。

 それこそ大脇差でも構わんのだが」


 「どう違うか分からないわね」


 「打刀と大脇差に関しては、ほぼ変わらんと覚えておけばよい。

 一応大脇差と打刀で違いはあるのかもしれぬが、微々たる物でしかないしの。

 車太刀でも構わんのだが、どうするか……」


 「また新しい刀の名前が出てきましたね。

 それはなんでしょう?」


 「車太刀とは義経が使っておった事で有名な太刀の形式じゃの。

 普通の太刀よりも更に反りが深く、少し短めなのが特徴じゃ。

 シミターなどに近い反りを持っておる」


 「太刀よりも随分と反ってる?

 そんな太刀があったとは知らなかったわ……」


 「あまり使われなんだし、早くに廃れたからの。

 反りが深い上に短いので使い辛いのだ。

 代わりに切れ味は鋭かったのだが、手入れも含めて面倒だからの。

 抜きにくいし」


 「廃れるには廃れるだけの理由があるのですね。

 とはいえ代わりに切れ味が鋭いと」


 「そうなのじゃよなぁ。

 とはいえ短いならば小太刀でもよいので、無理に車太刀を作る意味は無いのだ。

 それよりも、あの素材をどうすれば武器に出来るのか、そこを考えねばならん。

 いつも通りでいいなら楽なのだが……」


 「品質を10にしないで試作してみる?

 それなら素材は足りるんじゃない?

 それとも私達から買う?

 ナミの試作が成功しないと、私達が必要かどうか分からないしね。

 場合によっては深層三層目の素材の武器の方を買った方がいいかもしれないし」


 「あそこまでレベルが高く強い相手ですから、相当の物が出来ると思いますよ?

 なのでそこからでしょう。

 木も伐ってきましたが、そういえばしっかりとは調べていませんね?

 チラリとは見ましたが……」


 「瘴濁木という名前の木だったけど、あれも浄化しなきゃ使えないかも。

 もしくは何かの素材と組み合わせる? 

 そうしないと良い武具に変わらないかもしれない」


 「カンカン」


 話をしておったらファルが来る時間になっていたので妾達は食堂に行く。

 そして深層三層目の話を始めると、珠の師が話に入ってきた。


 「お主らのレベルで勝てたか。

 無茶をやるのは感心せんが、それでも勝っておるところを見るに大丈夫そうじゃの。

 経験としては良いが、あまり追い詰め過ぎても上手くはならんぞ。

 それと深層三層目の素材は使うのに時間が掛かるからな?」


 「ほ? それはどういう事じゃ。

 時間が掛かるとはどういう意味なのだ?」


 「深層二層目のグレイフラワーの素材と深層三層目に生えておる強瘴草を浄化しながら混ぜ合わせると、浄化浸透薬が作製できる。

 他にも素材が要るが、メインは瘴気の花びらと強瘴草だ。

 そして出来上がった浄化浸透薬に漬け込まねばならんのだ。

 狂死塊はな」


 「あの瘴気塗れを超えて、瘴気を撒き散らす危険物。

 あれ薬品に漬け込まなきゃいけないんだ。

 となると結構な量の薬品が必要になる?」


 「そうじゃの。

 深層三層目と二層目に通って素材を集めねばならん。

 他の素材は大した事が無いので問題はない。

 アマロが作れば練習になるだろうが、深層三層目で一番の素材は狂死塊だ。

 アレを使った武具は非常に優秀となる」


 「他のは使えない?」


 「そのような事はない。

 ただ狂死塊を芯まで浄化し切った、聖浄塊とはどうしても差があると言わざるを得んだけだ。

 他の素材は普通に浄化して使えばよい。

 ただし瘴気塗れの間に【融合】し【合成】してから浄化せよ。

 つまり品質を上げるのはその手前じゃの」


 「なるほど。

 他の素材と狂死塊は別々に使う、または狂死塊を浄化した聖浄塊は単独で使った方が良いのだな?」


 「その通りよ。

 聖浄塊は他の物を混ぜるとむしろ性能が落ちる。

 聖浄塊として単独で使った方が良い。

 ちなみに【浸透】のスキルをアマロは持っておるじゃろうから、それを使えば出来上がるまでの時間を縮められるぞ。

 あれは薬師の領分じゃからな」


 「【浸透】っていうスキルを使わないと、どれぐらい時間が掛かるの?」


 「妾が昔にやった実験では、漬け始めから10日ほど掛かったはずじゃ。

 素直に薬師に任せた方がよい」


 「うわぁ、それは駄目だわ。

 そんなに待つのは大変過ぎるもの。

 狂死塊は全部アマロに売り払った方がいいわね。

 そして聖浄塊をナミが買って加工。

 その形にするしかないわ」


 「それでも良い物の為なら仕方ない。

 それに物作りは大抵において分業。

 錬金術師は多くの事が出来るけど、それでも出来ない事はある」


 夕食の席で厄介な事を聞く羽目になるとは思わなかったが、聞いた以上は仕方ない。

 アマロに売り払いて後は任せる他ないの。

 とはいえ、それまでは他のアンデッドの素材で何とかするか。


 妾は夕食後にソファーの部屋からマイルームに戻り、そして仲間達をマイルームに戻したらログアウト。

 現実へと戻る。


 現実で雑事を熟し、夕食や風呂を済ませたら部屋へと戻り、後は寝るだけになったらログイン。

 今からは物作りじゃ。


 「まずは倉庫に突っ込んだ木を一応確認しておくか」


 ―――――――――――――――


 <木> 瘴濁木 品質:6 レア度:6


 屍人の森の深層三層目以降にしか生えていない木。

 非常に強い瘴気で汚染されているものの、それが反転すると強い木材へと変わる。

 瘴気もまた良い素材の為には大事な物と言えるのかもしれない


 ―――――――――――――――


 「ふむ、素材としてはそれなりに優秀そうじゃのう。

 問題は伐れるポイントが多くない事か。

 何度も通わんと必要な数は揃わんじゃろうな。

 そういうゲームだと言えばそれまでじゃが……」


 妾はまず先に品質を10にまで上げ、その後に浄化をしてみる。

 が、なかなか素材の名が変わらんので一気に大量の魔力で浄化していく。

 もしかしたら今使える【浄化魔法】では足りぬのかもしれんな。


 そう思っておったら、半分以上のMPを消費したものの、なんとか浄化し切る事に成功した。

 とはいえ一度で半分以上も使うとは、厄介なレベルの素材じゃのう………


 ―――――――――――――――


 <木> 強浄木 品質:10 レア度:6


 強い浄化の力を秘めた木材。

 強い瘴気の力が反転しただけではなく、内から浄化の力が溢れるようになった一品。

 神を祀る神殿の建築材などに使われたりする為、面倒ながらも<破滅のエンリエッタ>が各国の為に用意したりしている


 ―――――――――――――――


 「………あの者も色々大変じゃのう。

 神官どもは必要なら厚顔無恥かと言いたくなるくらいの要求をするからな。

 もちろん神の名を前面に押し立ててな」


 神の名を要求を通す為に使いよるんで、地上に降臨した際にブチ殺したりしておるのじゃよなぁ……

 それでも居なくならんところが、実に人間じゃがな。


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