0827・憤死鬼との戦い
<屍人の森>深層三層目に来た妾達は、現在戦闘を行っておる。
それも憤死鬼というレベル192のヤツじゃ。
なかなかに高レベルな相手じゃが、しかしレベルだけで強さは計れぬ。
とはいえ妾は奥からくるもう一体を相手にする事にした。
手前で皆が戦っておるヤツは任せるとして、一対一で戦ったらどうなるかは楽しみじゃ。
妾は奥から来る一体の前に出ると、清浄塊の刀を抜いて相対する。
腕が四本というおかしな姿ではあるものの、今までの四本腕とは明らかな違いがある。
こやつ、四本の腕を別々に使うとるんじゃよ。
まるでそれぞれが独立して思考しとるような感じ、と言えばよいかはわからぬがな。
今まではそこまでではなかったんじゃが、こやつは四本の腕をしっかりと使い熟してくる可能性が高い。
妾としては、ようやく強そうな相手と戦えて嬉しいやら何やらというところか。
清浄塊の刀を持ち、奥の憤死鬼の前に出た後、少しずつにじり寄って行く。
すると憤死鬼は一気に前に跳躍して殴りかかってきた。
先程の者と同じか。
妾は左に飛ぶ事で回避した後、右下から左斜め上へと斬り上げる。
それは当たったものの、相手もバックステップを行ったので浅く斬れただけであった。
………ほうほう、それなりにはやるようじゃ。
この辺りから技術的なものもしっかりしてくるのかもしれん。
妾は再び正眼に構えてにじり寄っていく。
憤死鬼の方も妾を警戒したのか右上腕と左上腕を斜め上に、そして右下腕と左下腕を斜め下にするという、四本腕特有なのだろう独特の構えをしてきおった。
ちなみに四本の腕全てが、こちらに手の平を向けておる。
……変わった構えじゃのう。
妙な構えを見て上段に変えてからにじり寄っていくと、一足の距離まで近づいた時、またもや前に飛んで殴りかかってきた。
今度は両上腕で殴りかかってくる形じゃ。
妾はバックステップで距離を取ると、目の前を右上腕が通過した後、さらに踏み込んで左上腕が飛んできた。
妾はその左上腕をかわす事は無く、それよりも速くに敵を斬る。
といっても、正しくは左上腕の付け根に振り下ろした。
そのためにも上段に構えておったわけじゃし、上段に構えた以上は最速でカウンターを放つに決まっておる。
シュッ!!
「ぬ? ……っと!
まさか妾をもってして、一撃で腕程度を斬り飛ばせぬとは思わなんだわ。
クリムゾントータスの首より細いくせにやってくれるのう……!」
大きく離れたものの、憤死鬼は特に痛痒を感じた風ではなく再び構えた。
アンデッドだから当然なんじゃが少々カチンときた妾は、再び上段に構えてにじり寄る。
本気の<火の構え>を見せてくれようぞ。
とはいえ左上腕の半分は斬れておるのじゃがな。
妾が少しずつにじり寄っておると、憤死鬼のブラブラしておった左上腕が突如普通に動き始めた。
どうやらくっついて回復したようじゃの。
厄介な事じゃが、これがアンデッドとやらなのだから仕方あるまい。
何より一撃で斬り飛ばせなかった妾が悪いのだ。
にじり寄り一定の距離まで近づくと、今度は踏み込んで右両腕で殴りかかってきた。
妾はそれを一歩下がる事でかわし、その後に踏み込んで全力で斬る。
どこを斬るかと言えば、当然右上腕じゃ。
「ツェァァァァァァァァァッ!!」
此度はハッキリと踏み込み、正しい力を乗せて斬ったからか、無事に右上腕を斬り飛ばせた。
しかし、こやつ思っておるよりも皮が硬い。
もしかしたら火炎龍樹並に硬いかもしれん。
そもそも一応はゾンビの見た目の癖しおって、ここまで硬いのはおかしいぞ。
ただのゾンビではないな?
それでも右上腕を斬り飛ばしたので楽になった妾は、再び上段、つまり<火の構え>でにじり寄る。
攻撃の為の構えに防御や流しなど存在せぬ。
ひたすらに攻めるのみよ。
再びにじり寄っておると、今度は前方にジャンプしながら左両腕で攻撃してきた。
しかし右と左が違うだけでは妾に勝つ事など無理じゃ。
妾は再び一歩下がる事で回避し、踏み込んで左上腕を付け根から斬り飛ばす。
「カァァァァァァァァァァァァッ!!!」
無事に左上腕を斬り飛ばした妾じゃが、相手は流石アンデッド。
斬られる事を覚悟で更に突っ込んで右下腕で殴りかかってきた。
何と言えばいいのか分からぬが、左斜め下から右斜め上へ突き上げるようなアッパーじゃ。
妾はそれを更に前へ出る事で防ぐ。
正確には敵に体当たりをする形じゃの。
殴るには適切な距離があり、そこより近くても遠くても威力が下がる。
そしてどちらの方が厄介かと言えば、近づかれる方が厄介。
だから妾は前に出たわけじゃ。
ただし妾の体当たりではビクともせなんだが、それでも敵の攻撃の威力そのままを受けなんだし、右下腕の二の腕が当たった程度よ。
それでは大したダメージにもならぬ。
妾はすぐに敵から距離をとり、今度は袈裟に構える。
四本の腕を持つとは言っても、下の腕は脇より下から生えておる。
つまり中途半端な位置であり斬り難いのだ。
だからこそ、腕をさらに斬るよりも、倒した方が早い。
今度は袈裟に構えてにじり寄ると、敵は両下腕を横に伸ばしたまま待ち構えてきた。
カウンターを狙っておるのだと思うが………どういう形を狙っとるんじゃ?
不思議な構えをするヤツじゃのう。
妾はにじり寄っていき、もっとも適切な距離で踏み込む。
すると、敵は踏み込んで妾に抱き着くような攻撃を狙って来た。
なるほど、珠の記憶にあるベアハッグというヤツじゃな。
とはいえ無駄よ。
妙な構えに警戒せぬ妾ではないわ。
そもそ妾は踏み込んだだけで、攻撃の始動をしておらぬ。
踏み込んだ足を素早く戻し、妾は敵の抱き着きを回避。
バックステップで距離をとる。
すると、敵は再び腕を横にする形で待ち構えて来た。
なるほど、完全なカウンター狙いか。
ならばよかろう、勝負じゃ。
妾は脇構えへと構えを変えて、再びにじり寄っていく。
そして敵は同じ距離から始動してきた。
しかし今度は一足飛びで、飛んで抱き着きに来たのだ。
しかし、それは読まれておるに決まっておろう。
妾は脇構えのままバックステップ、そして敵の腕が通過後に踏み込みつつ水平にして足を斬る。
「シャッ!!」
相手は一足飛びに近づいてきていたとはいえ、左足が前に出ておる。
当然、妾はそこを狙って斬りつけたという訳よ。
上手く行くかは分からなんだが、無事に膝から下を斬り飛ばす事に成功。相手はバランスを崩して倒れた。
こうなれば妾の勝ちは揺るがぬ。
起き上がろうとする相手の首を斬り飛ばすと、倒れて消えていく憤死鬼。
思っているよりも硬く、なかなか強い相手であったな。
敗因は攻撃が中途半端な事か。
とはいえ妾相手に戦える者を用意すれば、他の者は倒せぬようになる。
仕方なき事か。
「憤死鬼ってメッチャ強かったんだけど、ナミは普通に一対一で勝つんだな。
正直こっちは仲間が居ないと駄目だわ。
とはいえ手に入った憤死石が気になるけど」
「そうだね。
というか、これ絶対に瘴気属性系の素材だと思うよ。
だって、そう書いてあるし」
「そうそう」
童女も同じ意見のようなので、妾は自分で手に入れた憤死石を【鑑定】する。
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<石> 憤死石 品質:7 レア度:6
憤死鬼のあらゆる負の感情が固まった物とされる謎の石状物体。
一応カテゴリーは石に分類されるが、実際に石という訳ではない。
あくまでも石という見た目からでしかなく、その正体は不明。
尚、適切に処理すれば瘴気に対する耐性装備に使える
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瘴気に対する耐性装備とハッキリ書いてあるのか。
それは間違いなく装備の材料じゃろうよ。
もしかしたら別の使い道もあるのかもしれぬが、まずは耐性装備……ではなく、特攻武器が先じゃな。
憤死鬼が思っておるよりも硬かったからな。
おそらくここからは、特攻武器がないと大変になってくるのであろう。
アンデッドだけかもしれぬが。
空想科学カテゴリの「悪魔が来たりて進歩する」が20話を超えました。宜しければご一読下さい。
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