0823・混雑する森と迷惑者
朝食が終わったので、いつものように素材を集めに回る。
しかし妾やユウヤは良いのだが、他の者達は素材集めに同行していて良いのか?
あまり高く売れる訳でもあるまい。
まあ、要らぬ物は妾かユウヤが買い取っておるのだがな。
「その言葉の通りよ。
ナミかユウヤが買い取ってくれるんだから、そもそも無駄にはならないわ。
ついでに私は細工師だからね。
鉄とかは必要な物でもあるし、その辺りは無駄になってないの」
「私は解体師だから、そもそもお金儲けができれば何でもいい。
ゲーム中で唯一戦闘で上がっていくサブ職業」
「私は薬師ですから、ウェズベア森で薬の元となる素材を採取していますし、全く無駄になっていませんね。
それにナミから火炎龍樹の樹液などを買い取ってますし、グレイフラワーの素材も買い取ってます」
「私は砥ぎ師ですから砥ぐ事ぐらいですね。
とはいえ皆でワイワイやるのも良いので、このままで問題ありませんよ。
ユウヤも居ますしね」
「まあ、お主の場合はユウヤがおる所なら、どこでもよいのであろうがな。
それはともかくとして、皆が問題ないのであれば構わん」
一応妾というかコトブキがお金を稼ぐ為に色々と回っておるのだからの。
レベルが上げたいならレベル上げに集中した方が良いと思うし、素材を収集する際の時間が無駄になってはおるまいかと思っておったのだ。
そうでないなら良かったわ。
魔隠穴を終わらせバイゼル山へ行き、その後にウェズベア森へと行く。
いつも通りに艶女組がおるのであろうと思ったら、やたらにプレイヤーの数が増えておった。
どういう事じゃ? っと、テツオがおるから聞いてみるか。
「妙にプレイヤーの数が多いけど何かあったのかい?
昨日までは少なかったよね?」
「ああ、お前さんらか。
オレがウェルズベアー・エリートの皮のドロップ方法を掲示板に流したんだが、そしたらこうなったってワケだ。
何というか、致命傷を与えられない奴らが躍起になってるって感じだな」
「出来ないから必死なのか、それとも自分は出来るはずと思い込んでるのか、どっちかというところね。
これでも出来ない者は減ったのよ、諦めてね。
でも諦められないのとかが必死に熊を探して徘徊してる感じ」
「ウチの連中は問題ねえんだ。
出来ないのは、出来るヤツのフォローに回ってる。
しかしなぁ……出来なくて癇癪起こしてる奴らが居るんだよ。迷惑極まりないぜ。
ああいうのは様々なゲームに居るが、碌なもんじゃねえ」
「本当にねえ。
暴れたら始末するんだけど、それまではどうしようもないのよ。
ウチのメンバーが一人でも攻撃されたら、レイド全体で反撃オッケーになるから始末するんだけどね。
それを分かってるからか、喚き散らすだけで攻撃はしてこないのよ」
「ついでに直接的な嫌がらせもしてこねえな。
それをしてきたら通報するだけなんだが、そっちも無し。
咎められないギリギリをやってるヤツだ。
ただしこのゲームでは、それを続けると悪行度が上がるはずなんだがな?
そこら辺りは気にしてねえのか……」
「迷惑プレイヤーってどこにでも居るけど、ここにも厄介なのが居たかぁ。
どうする? 大人しくスライム狩りと素材集めにしとく?」
「それでいいんじゃないか?
俺達の場合は無理しなくてもいいし、トレントでもナミに売っぱらったら品質10だ。
俺達だって数を多く流せば売れるしな。
それに品質10++の炭は今だに欲しいんだよ」
「だったらトレント狩りとしましょう。臭いは防げば済みますからね」
「迷惑かけてる奴らは、トレントに一撃入れて逃げるのを繰り返してたりするから気を付けろよ。
迷惑の為だけにワザとブレスを吐かせてやがるんだ。
臭いが残ってるとか、辺り一面に撒き散らしてくるとかあるからな」
「碌でもないな。
本当に迷惑プレイヤーというか、害悪プレイヤーじゃないか。
久しぶりだなぁ、そんな頭のおかしいヤツは」
「お前さんらは多くないか。
オレ達みたいなプロゲーマーだと毎回数人は見る感じだな。
プロはマイナーだけど楽しそうなゲームって出来ねえし、どうしても話題作じゃないと儲からねえんだ。
そこはビジネスなんでシビアなんだよ」
「まあ、お仕事でなされてるんですから、そこは仕方のないところなのでしょうね。
それでも自分のやってみたいゲームに当たる事もあるのでは?」
「そりゃあるさ。
このゲームもその一つだが、分かんねえってトコが気に入ってな。
それでレトロワールドをやる事を企画として出したんだよ。
注目度もそれなりにあったから、社長がゴーサイン出してくれたんだ」
「そういえば艶女組って、有名なプロゲーマー会社に所属してるんだっけ?
最大手だけど、艶女組を抱えてるって守備範囲広いよなーって思った事がある」
「守備範囲って……まあ、間違ってないけどね。
ウチの社長って、面白ければなんでもいいじゃないっていうタイプの人だから、そういう意味では守備範囲が広いのよねえ」
「まあな。
そもそもオレ達をあっさりと受け入れたぐらいだし、更に自分でそっち系の企画作ってオレ達に熱く語る人だからな。
しかも内容が完全にオレ達寄りの内容だったし」
「リーダー、なんかまた揉めてるわよぉ?」
「またかよ。
すまねえが、オレは揉め事の仲裁に行ってくる。
おかしなのが居るから気を付けろよ」
「じゃあ、私も行くから気を付けてね」
そう言ってテツオ達は去っていった。
が、揉め事を起こす輩が居るとなると変わるのう。
面倒臭いから帰るか? とはいえ、ここまで来ておる以上は色々としていかねば勿体ない。
仕方ないの、迷惑者は避けて採取などをしていくか。
妾達はウェズベア森の中をウロウロとし、主に薬の原料となる素材の採取に勤しむ。
今までも採取はしてきたが、採取に集中してみると思ったよりも素材が多い事に気づく。
これを無駄にしておったのかと思うと、採取はしっかりしておこうと思えるの。
ゴン!
少し離れた所におったプレイヤーが、わざわざこちらの方向に来てからトレントを叩いた。
とてもではないが倒すような攻撃の音ではない。
妾達はすぐにブレスの射線から離れるが、そのプレイヤーは妾達が射線に入るように動く。
これが迷惑プレイヤーか……さっさとブラックリストに入れて終いじゃの。
妾は迷惑プレイヤーを【鑑定】し、そやつの情報からブラックリストに放り込んだ。
それだけで終わったので、後はブレスを吐いてくる瞬間に【クリーン】を使えば良いだけよ。
皆もブラックリストに入れたからか、もう見えぬようになったという。
そもそもブラックリストに入れられれば見えぬようになるし、相手が居るかどうかも分からぬようになる。
嫌がらせの意味が無いんじゃが、いったい何の為にあんな事をしておるのだ?
「プロゲーマーは余程に悪質でないと、ブラックリスト系は使えないんだ。
そういう迷惑者を晒したり潰したりするのも配信、つまり仕事の一つだし。
だから構ってちゃんからすると、構ってくれる相手なわけだ」
「そもそも相手に迷惑をかける事で構ってもらおうなど、頭がおかしいのではないか?
そんなもの童と同じであろうが。
このゲームは童のような年齢では出来ぬはずぞ」
「大人子供というか、年齢だけは成人の癖に中身は子供っていうのが居るからなぁ。
仕方ない」
「酷いと、そんな事をアカウントが凍結されるまでやってる。
そして凍結されたら別のゲームで同じ事をする。
最早嫌がらせが生き甲斐としか思えない異常者、そんなのも実際に居る」
「記憶を掘り起こして分かるが、ほんに狂った連中というのは救い様が一つしかないの。
そもそもゲームは匿名とはいえ、妾の前でそれが通用すると本気で思うておるのかのう。
電脳空間でも現実の者を特定するなど容易いんじゃがな?」
「えっ、そんな事できたのかよ……」
「妾を誰だと思うておるのだ。
神がそれしきの事さえ出来ぬと思うてか」
妾がそう言うと、揃いも揃って微妙な表情をしおった。
お主ら最近、妾が神である事を忘れておらぬか?




