0822・特攻効果と素材
ソファーの部屋に座りてゆるりとしておるが、童女らは妾が【アンデッド特攻】の実験をする事すら忘れておった。
そのような事で大丈夫かと思うものの、こやつらの事だから興味の無いこと故に忘れておったのであろう。
妾もどうでもいい事など忘れる故にな。
「それで、実験の結果はどうだったの?
【アンデッド特攻】の効果は大した事がなかった?
こういうのはあんまりだったりするからさ、期待しない方がいいと思うのよね」
「一応【刀術】の無いファルに持たせて実験したが、火炎龍樹とクリムゾントータスの方で40回、そして清浄塊の方で4回であった。
だから効果があるのは間違いないのだが、相手のHPが低いから結果がこうなったのかもしれんとは思う」
「つまり強い相手だと、そこまで差は大きくない?
でも与えるダメージは違うんだよね?」
「そうじゃなくて、ナミが言っているのは【アンデッド特攻】の効果がそうかもって事。
つまり追加ダメージ+5とかだと、強い相手では誤差みたいなものにしかならないでしょ?
数字的に言えばそんな感じよ」
「あー……なるほど、そういう事ね。
確かにそれだと【アンデッド特攻】の価値が無いかな。
でも、ナミはなんだか斬りやすいって言ってなかった?」
「うむ。
火炎龍樹とクリムゾントータス製の太刀とは違い、刃の入りが滑らかな気がするのじゃよ。抵抗が少ないというかな。
それに【アンデッド特攻】と【常時浄化】がついておる。
案外と追加ダメージは【常時浄化】の方かもしれん」
「そうなると……【アンデッド特攻】ってなに?」
「ナミが言う事が正しいというか核心を突いているとすると、もしかしたら【アンデッド特攻】は防御割合の無視かも。
防御無視効果だとしたら、思っている以上に大きい効果だと言える」
「あー、一定割合の防御無視かぁ。だから刃の入りが滑らかなのね。
それなら分かるけど、そうなると強力なアンデッドじゃなきゃ効果を実感しにくい?
それこそドラゴンゾンビぐらいじゃないと分かりにくいような……」
「硬いアンデッドが居れば分かるだろうけど、今のところ硬いアンデッドは居ない。
そこまでの硬さがあるのは普通に生きているモンスターばかり。
それこそ【亀特攻】とかあれば分かるかも」
「ピンポイント過ぎるでしょ。
まあ、クリムゾントータスは分かりやすい実験相手だと思うけどさ。
もしくは【木特攻】とか?
火炎龍樹だけじゃなくトレントでも調べられるじゃない?」
「特攻効果が無くても一刀両断にしてるのが居るんだけどね?
確かに特攻効果なら出来ても不思議ではないけど……」
「ナミは特攻効果も無しに両断していますしねえ。
あれを見ると、特攻効果が優秀なのか疑問に思ってしまいます。
正しく効果はあるはずなんですけど」
「まあ、今後も思いついたら色々とやってみればいいんじゃないかい?
そうすれば自ずと分かると思うよ」
「それよりー、他の特攻効果を探した方が早いと思うー。
<破滅>に聞いてみたらー?」
「そうね。エンリエッタさんに聞くのが一番早いかも」
「カンカン」
ちょうどファルが来たので妾達は食事に行き、食堂で朝食を食べつつ話を聞く。
すると、意外な事を言い出しおった。
「特攻効果のう……。
強引につけたいのであれば、品質をEまで上げればよい。
全てとは言わぬが、品質Eだと特攻効果が付く物もあるからの。
案外と火炎龍樹やクリムゾントータスでも付くと思うぞ。
稀人に知られていないのであれば、おそらく品質Eまで上げた者がおらぬのであろうの」
「その言い方だと、品質Eまで上げても特攻効果が付かない物もあるのよね?」
「当然あるぞ。とはいえ一定以上の強さのモンスターであれば付く物も多いがの。
ただ、付いても大した事が無い場合もある。そこは気を付ける事じゃ。
各種トレント素材も付くが、わざわざ使っても微々たる物しか付かんな。
そしてスライムも付くが、スライムは使い道が色々とあるでなあ……」
「スライム素材を使うのは勿体ないって事ね。
となるとトレント?
まあウェズベア森に行くから、確かにそこでトレント材は手に入るけど……」
「でも難しいよね。
どれだけあれば実験できるのかは分からないし、エンリエッタさんが微々たる量って言うくらいだもん。
ちゃんとした実験結果は出ないかも。
でもそうなると火炎龍樹とクリムゾントータス?」
「「「「「「「「………」」」」」」」」
童女、現代の巫女、ナツ、アマロ、ラスティア、キャスティ、エウリティア、アルゼル。
8人が一斉に妾を見てくるが、これは火炎龍樹とクリムゾントータスで実験をせよという事か?
流石にそれは勘弁してほしいんじゃがな。
「妾もレベル上げの事があるから、火炎龍樹とクリムゾントータスでの実験はせんぞ。
流石に勘弁してくれとしか思わぬわ。
あれらを倒すのも素材の品質をEにするの大変じゃぞ。
どれだけの数が必要だと思うておるのだ」
「棒とか杖、もしくは棍棒なら難しくはないと思うんだけど?
それなら火炎龍樹だけで済むし」
「しかしじゃな……」
「ならトレントで実験?
それなら何とかなるかも」
「お主ら盛り上がっとるところ悪いが、錬金術師の上級にならんと【品質昇華】のスキルは習得できんぞ。
そして【品質昇華】が無ければ品質Eは作れぬからな。
そもそも今のナミでは無理じゃ、諦めろ」
「あらら、今はまだ無理だったのね。それじゃ仕方ないわ。
それにしても品質を上げるには色々と大変みたいだし、それに特攻効果が出回ってないのにも納得した」
「上級の錬金術師など簡単には見つかりませんよ。
そこまでなら各国に雇われるくらいの腕前です。
通りでそういった情報が出回らないはずですよ。
各国の研究員などは知っているのでしょうが、ああいう者は基本的に情報を広めようとはしませんしね」
「国から止められるしー、自分が知ってたらそれでいいってヤツばっかー」
「そのうえ私達は下賜された装備を身につけていて、そもそもその辺りに興味は無かったと」
「死王との戦いでも、そこまで気にした事は無かったわね。
そもそも私達って戦闘要員だし、そんな細かい事に興味も無かったっていうのが正しいし。
コトブキっていうか、ナミが錬金術師じゃなかったら話題にすらならないわよね?」
「ですね。素材がどうとか品質がどうとか、そんな話なんて滅多にしませんよ」
「だからこそ、お主らは知らぬのであろうの。
踊り子やら農家やらに、大工と砥ぎ師ではなぁ。
流石に知るまいよ」
「大工と砥ぎ師って………どっちがどっち?」
「ボクが大工だねー」
「という事はエウリティアさんが砥ぎ師なんですね。
イメージ的には普通ですか?」
「普通っていうか、エウリティアって壊滅的に不器用らしいのよね。
通常生活とか戦闘とかは問題ないくせに、何かを作るって事は壊滅的に駄目ならしいのよ。
唯一出来たのが砥ぎらしいわ。
自分の剣を砥いだりとかの手入れは得意だったみたい」
「もう笑ってくれていいけど、かつては物凄いコンプレックスだったよ。
何をやっても壊滅的に駄目だったからね。
父にも実家に居ればいいと慰められたくらいだ。
流石に料理も刺繍も含めて、家事が壊滅的ではな……貰い手が無い」
「別にそんな事をしなくてもいい家に嫁げばよくなーい?」
「そのような家は本当の貴族、それも子爵から上の家が嫁ぐのだよ。
実家は男爵以下の騎士爵だ、そんなところに嫁げるような身分じゃない。
だからこそ騎士を目指したのだし、だからこそ【慈悲】の天使になったのだがね。
それでも昔はコンプレックスだったよ」
それぞれの者にそういう部分はあるから仕方なかろうよ。
誰しも何かしらのコンプレックスを抱いておるものじゃ。
無いという者は逆に自己評価が高過ぎて危険じゃの。




