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0792・灰色の花とセナが突っ込む理由




 いきなりセナが灰色の突風のようなものを受けたので、それが瘴気ブレスだろうと当たりをつけた。

 ほぼ間違いないであろうが、敵を見つけて【鑑定】をしておかねばならん。

 どこにおるのか魔力を探ると、意外にもすぐに見つかった。



 ―――――――――――――――


 <グレイフラワー> アンデッド Lv138


 全てが灰色であり、かつ人間の子供程度の大きさをしている花。その場から動けないものの、薄暗い場所とマッチして視認しづらいのが特徴。最も厄介な攻撃は瘴気を直接ぶつけるブレスを吐いてくること。受けすぎるとアンデッドの仲間入りをしてしまう。そうならない為にも、瘴気ブレスを受けたら浄化しておこう


 ―――――――――――――――



 珠の師が言うておった通りじゃの。

 流石に視認性が悪いものの分からぬ訳ではない。

 つまり、完全にセナの油断としか言えん。

 そのセナは瘴気ブレスを喰らって慎重になるのかと思ったら、頭に来たらしく早速向かっていった。

 やっぱり変わらんのう。



 「ヤァァァァァァァァァッ!!!」


 ドォン!


 「!?」



 グレイフラワーは花じゃからして声など出せぬが、花の部分が攻撃を受けて吹っ飛んだのう。

 再び立ち上がるというか戻ってきたが、それにしてもなかなかの威力であった。

 ただし、この敵に効いておるのかどうかは分からん。

 なんというか、茎の部分が強そうじゃ。


 あの茎の部分が衝撃を柔軟に受け止めておるような気がする。

 何故なら吹っ飛んで戻ってきた後も普通に戦っておるからじゃ。

 もしかしたら、こやつには刺突か斬撃の方が良く効くのかもしれん。

 今もセナが何度も攻撃しておるが、跳ねて戻ってを繰り返しておる。



 「ハッ! ヤァ! エィ!! タァッ!」


 ドッ! ガッ! ドン! ドスッ!



 叩いて、掬い上げて、振り下ろし、突く。

 コンビネーションとしては悪くないが、最後の突きは効いたような感じじゃな?

 となると花の中心に攻撃するのが正しいという事か?

 しかし、あそこからブレスが噴射される気がするのじゃが……。むっ!



 「ヒュォォォォォォォォォォ!!」


 「グゥゥゥゥ…………!」


 「【セイントエリア】からの【セイントクリア】! セナよ、もうちょっと慎重というか、敵の動きを見極めよ。そやつブレスを吐く前に少し花の部分を後ろに逸らす。怪しい動きをしたら、とりあえず回避行動に移れ」


 「ワカッタ! カイヒシナガラ、ブットバス!!」



 懲りんと言うべきか、それとも闘志が衰えぬと言うべきかは困るのう。

 判断が難しいというか、上手く合致すれば強いと言うべきじゃな。

 悪い方に合致すれば困った事になるが、それも含めてフォローすれば良いだけか。

 長所でもある以上は殺すのも良くないしの。


 セナが戦っておったが、最後はフォグの【セイントジャベリン】が直撃して沈んだようじゃ。

 そこまで強くはないと思うが、ブレスを吐いてくるのが厄介か。

 当然ではあるのだが、弱点っぽい場所とブレスを吐いてくる場所が同じというのはのう……。


 もちろんそのようにデザインされとるわけじゃが、物理攻撃で倒す場合は覚悟して突っ込むしかないか。

 もしくは右へ左へと跳ねるのだから、突きで押さえ込む事も可能かもしれん。

 やってやれなくはないであろうし、試してみても良いかもな。



 「あれがグレイフラワーねえ。大きさとしては1メートルくらい? 花の部分が大きいから見えない訳じゃないけど、草むらとかに隠れられると難しいかな? それにあのブレス……」


 「ブレスというよりは、灰色の風みたいなものでしたね。想像するブレスとはちょっと違うというか、だからこそ厄介と言うべきでしょう。ブレスが見づらいです」


 「元々ここ<屍人の森>は薄暗い。しかも奥に進むごとに暗くなっている。深層の二層目で灰色のブレスは、思っている以上に見づらいから厄介。しかも突風みたいな風だから、尚のこと分かり難いものになってる」


 「あのブレスは盾で防ぐのが一番かな? セナが前に出るより、シグマが前に出た方がいいと思う。正しくはセナが前を譲らなかったのが原因だけどね。それに打撃は効きづらい感じだった気がするから、セナは後ろに居た方が良いと思う」


 「そうじゃの。すべての敵をセナが倒さねばならん訳でもなし、仲間と協力せよ。何故かここ最近、やたらに自分で倒そうとするが、何かあったのか?」


 「テキ、タオス! モットウマクナル。ソレニハ、オオクノテキトタタカウノガイチバン」


 「それ私が言った事だけどー、仲間の戦いも奪うっていう話じゃないからねー? そこのところを勘違いしてたかー」


 「なるほど、それが原因だったわけね。まあ、たくさんの敵と戦えば、その分は経験として身につくから強くなるわ。とはいえ自分だけが強くなるという考えもあんまり良くはないでしょ。そういう事よ」


 「ですね。それに適材適所という言葉もあります。自分よりも適した者がいるなら、自分はフォローに回る。それも戦い方の一つです。皆で強くなるという事ですよ」


 「ミンナデツヨクナル……」


 「まあ、理由が分かったのなら良かったわ。後は直せばよいだけじゃからの。とはいえ打撃系の武器であっても、花の中心への攻撃は効いておった感じじゃ。そういう意味では、あえて効きにくい武器で攻撃した意味はあったのう」


 「確かにそうだね。【暴食】が教えた事が原因っぽいけど、強くなりたいという気持ちは本物だし、そこは安易に止める場所じゃない。なかなかに難しい舵取りをしなければいけないかな?」



 エウリティアの言う通りじゃの。

 ここで止めてしまえば良さが死ぬ。好きにさせれば協調性が無くなる。

 程よい感じにするには……訓練場で多数との訓練を続けさせるしかないの。

 もちろん味方が多数という話であって、多数の敵と戦う訓練という事ではない。


 1対多の戦いを幾らさせても、協調性なんぞ身につかんからのう。

 戦いを繰り返せば普通は気づくものじゃ。

 勝つ事こそが一番大事であるとな。

 そしてそれには味方と協力する事が大事なのだという事を。


 拘るべきは勝つ事であり、己の好き勝手にする事ではない。

 目的をはき違えてはいかんという事じゃの。

 こういうのも体得するべき事で、頭で考えて理解する事ではない。

 というより頭で理解しても止まらん者は止まらんでな。

 それ故に“体得”する必要があるわけじゃ。


 己の体に覚えさせねば意味は無いという事じゃが……。

 往々にして戦う者というのは、そういう者だという事でもある。

 悲しい事と言うべきか、しょせんはそんなものと言うべきかは人によるじゃろうがな。



 「グレイフラワーの事も分かったのだし、ここからは魔力反応を確認しながら進むべきじゃの。慎重になる事は悪い事では無い。突っ込む事も引く事も、必要ならどちらもやらねばならん。勝者になる為には重要な事だからの」


 「そうね。勝つ事こそが何より大事なのであって、ただ強くなる事に意味は無いわ。勝つ為に強くなるのは正しいけど、強くなる為に勝つのは本末転倒という事よ」


 「?」


 「セナにはまだ分からないかもしれませんが、勝ちを目指す事こそが本物の強さという事です。強くなりたいという戦いは、そこに意味が無いのです。何故なら戦いには勝つか負けるかしかないからであり、強くなるなどという戦いは存在しないのですから」


 「………」



 どのような者であっても同じであり、戦いとは勝者か敗者しか生まん。

 つまり勝つ為に皆は戦うのだ。

 それこそが戦いのあるべき姿であり、戦えば強くなるなど幻想でしかない。


 ここはゲームじゃから、勝てば経験値が貰えて強くなるかもしれぬが、それでは頭打ちであろうの。

 何かを経験しておらぬではスキルが上がらんかったりするし。


 つまり正しく勝つ為に己を磨かねば強くはなれんという事よ。

 そういうところは現実と変わらん。

 全ての者は勝つ為に強くなるのであり、決して強くなる為に勝つのではない。


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