0780・暗闇ダンジョン60階到達
妾達は家の外に出ると、ユウヤとオウカを待って暗闇ダンジョンに移動した。
今回はメンバーが多いので楽に進めるじゃろう。
というより人員が多すぎて邪魔かのう。
それでも前衛を交代させながら進むので有利ではある。
30階から始め、妾達は急ぎ気味に攻略していく。
流石に30階層分を一気に上がらねばならぬからの、大変ではある。
とはいえやってやれぬ事は無い。
武器が強くなっておるので、それだけ早う敵を倒せるでな。
特にセナが前に出て戦っておる。
今までと違って杖を使っておるので距離を空けても戦えるのが良いのであろう、今まで以上に突っ込んでおるようじゃ。
突きも叩きも薙ぎも、ようやくそれなりに形にはなったかの? あくまでも形だけじゃが。
「ヤァッ!!!」
「……杖を持ってから、より前に出るようになったわね? 別に悪いとは言わないけど、今まで以上に前に出るのはどうなの?」
「特に問題ないのう。今まで以上に突っ込めるのは、今までよりも安全な距離で戦えるからじゃろうよ。距離を空けても戦えるでな。今までは最接近距離でないと戦えなんだから突っ込んでおっただけよ」
「今は杖の長さだけ安全な距離が増えてるから、今までよりも戦いやすい。その結果、より前へと出るようになった。そこまでは分かるけど、その前への出方がちょっとおかしい」
「杖を持ってるのに殴る蹴るもしてますからね。確か【格闘術】も持っているはずですから、ダメージはしっかりと出ているとは思います。とはいえ、益々ダメージというより普通に戦うようになってますね」
「分かる。ダメージを与えて敵を倒すって感じじゃないもんね。蹴ってるのも相手の姿勢を崩す為だったりっていう、明らかに戦闘を意識した戦い方に変わってる。前はもうちょっとダメージ寄りだったと思うんだけど……」
「ダメージなど考える必要もあるまい。敵なんぞ倒せるまで戦っておれば倒せる。ダメージなどと考えておるから囚われるのだ、敵を殺すと考えればよい。ならば崩しを使うなど当たり前の事ぞ」
「スキルに喧嘩を売るような戦い方よねー。結果としてはそっちの方が正しいんだけどさ、それでも完全無欠に喧嘩を売ってると思う。それが出来る以上は、やった方がいいんだけども」
「妾とてスキルを使った事が無いわけではないからな? 一度使ってコレは要らぬと思うただけよ。無理矢理に体を動かされる事に意味などあるまい。攻撃途中に敵から攻撃を受けたらどうするんじゃ」
「そういうのは、よくある事でしかないわよ。もちろんそのタイミングを狙って攻撃するんだけどさ。それに相手が強制的に動いている間に攻撃するのは、普通にテクニックとして使われてること。他の人もやってるわ」
「特に闘技場などのPvPだと、基本的にスキルは使われない。あんな隙だらけだと殺して下さいと言ってるようなもの。だからスキルを使うのは主に魔物との戦いぐらい」
「ですね。スキルの挙動を把握して、安全な状態を確保してから使います。今はまだスキルレベルが低いのでアレですけど、この後だとクールタイムだけでなく硬直も出てきますからね」
「スキル後に少し動けなくなる時間があるのよ。それが硬直時間なんだけど、強力なスキルほど長く設定されてるから困りものなの。まあ、だからこそ使うか使わないかは好きにしていいんじゃない?」
「元から好きにさせてもらうがの。そもそも動けぬなど致命的な隙にしかならん。そんな事になるようなものを何故使うのだ、意味が分からんわ」
「だいたいは威力が高いから使う。当然それだけの魅力があるから使うんだけど、考えずに使って硬直、そして死ぬというのがよくあるパターン。そうやって使い方を覚えるとはいえ、稀にランダム硬直というスキルがあったりもする」
「あれって困るのよねえ。硬直時間が1秒から6秒と決まってたりすると、3秒ぐらいの感覚で使って酷い目に遭うのよ。上手く使う事が難しいから結局使われなくなるタイプね」
「そもそもスキルを使わずともよいと思うのじゃがの、使えなければ戦えぬ者は練習せい。他のゲームをする時にも役に立つじゃろうが。なんでそう考えんのだ」
「そんなの簡単な方がいい奴らだからに決まってるじゃない。自分達は何の努力もしたくない、でも強くなって偉そうにしたいっていう奴らが居るのよ。そういう奴らの為にあるんじゃないんだけどね。でもそういう奴らが頼りにするのがスキルなわけ」
「スキルがある意義は分かったが、碌な使い方をされておらんのう。使って楽しむのは子供のはずが、大人まで使っておる感じか」
「そうね、そんな感じ。それはともかくとして40階を越えたけど、まだまだねえ。あと20階、先は長そう」
童女はやる気があまり無いようじゃが、それでも己のやるべき事は熟しておるの。
それでよいのだが、他のメンバーもイマイチ気合いが足りんようじゃ。
恐らく敵が弱いからと、支配モンスターや召喚モンスターに任せておけば終わるからじゃろう。
特に妾のとこの召喚モンスターは武器が良いからの、圧倒的な速さで叩き潰しておる。
それと運で次の階へ進むのが決まる故、予想がつかんのがダレておる理由じゃろうの。
こればっかりは仕方ない。
元々からしてそういうダンジョンなんじゃから、文句も言えんしな。
唯ひたすらに急いで移動し続けるのみよ。
それでも今日の内に済ませてしまわねば面倒にしかならぬ。
だから急ぐしかない。
それが分かっておるからか、途中からは会話もなく黙々と進む。
特に50階以降はそれなりのモンスターじゃからな。
剣の一撃死があるだけに慎重さも求められるし、兜の冷気ブレスも厄介じゃ。
それでも武器が良くなっておるので突破し、久方ぶりに60階に戻ってきた。
少々早い時間なのでゆっくりと帰還の魔法陣と登録の魔法陣を探す。
少しぐらいなら採掘や伐採などをしていっても良いであろう。
「ヤァァァァァッ!!!」
「暗闇の造魔が相手でも何の問題も無いみたいだな。クリムゾントータスの甲羅の杖、凄い威力をしてるぜ。……っと、俺も真面目に戦わないとな」
「そうそう。セナだけに任せるのは良くないよ。ただ、あそこまでだと放っておいた方が良い気はするけどさ」
「暴れてますからね。最近はあまり戦えてなかったんでしょうか?」
「私がー、訓練場で相手をしてたからかなー? 結構ボコってたし」
「それでか。相当に鬱憤が溜まってたんだろう。【暴食】が相手なら勝てないだろうし、結構酷いやられ方をしたんじゃないかな」
「それでも勝ちは勝ちで、負けは負けー」
「いや、大人気ないとは思うけどね? 君は悪魔だよ? 手加減してやらないと駄目だろうに」
「手加減するのも良くないし、していると地味に急所ばかり狙ってくるんだよー。だから割と容赦なくやるー」
「何をやらせてるんだい? 急所攻撃って……」
「敵と戦うのだから狙うは急所に決まっておろう。敵を殺すとは左様な事なのだ、修練の時から狙う事を学ばねば意味などあるまい。そもそも相手も防御を固めておるから、そう簡単には攻撃できん。そこをどうするかも必要なのだ」
「まあ、それは確かにそうだし正しいけどね。益々、君のところの召喚モンスターがおかしくなっていく気がするよ」
「別におかしくはなっておらんじゃろ。戦うという事の意味をしっかり理解しておるだけでしかない」
妾がそう言うと呆れた声を出しおったわ、失礼な奴らめ。
そもそも戦いとは殺し合いであり、そこに手加減など不要じゃ。
もちろん教えている時には必要であろうが、普段の練習でも攻めねばいかんに決まっておろうが。
そうでなければ攻めの技術も守りの技術も身につかんのだ。
「そこまでしなくてもって事を言ってるんだと思うよ?」
「本人が望んどるのにか?」
「「「「「「「………」」」」」」」
本人が望んどるならば、やらせればいいのだ。
教える意味はそこにある。




