0779・武術大会の翌日
2001年 2月4日 日曜日 AM7:37
今日は普通に暗闇ダンジョンを進む日じゃ。
昨日は夕食の後、いつも通りに過ごし、その後はセナに杖術を教えておったくらいか。
寝る前は邪悪な思想の連中を抹殺しておったがな。
日曜日ゆえ少々早くログインできるのがありがたい事じゃの。
いつもなら両親が出てからでないと洗濯はできんが、日曜は関係なく出来るでな。
それはともかくとして、さっさとログインするか。
妾は売り上げを回収し倉庫に入れたら、倉庫内の売り物をプレイヤーマーケットに出す。
それが終わったらファルの所に行き、呼び出す事を説明。
そして次はラスティアとキャスティの部屋じゃ。
ボードには○の札が掛かっていたので、ノックして開けて話す。
既に起きておってもイチャイチャしておる事に変わりなしか。
こやつら本当に飽きんのう……。
終わったらソファーの部屋に移動し、ファルと2人を呼び出し、ファルに朝食を頼んで送り出す。
最近は豚と牛が減ってきたので楽になってきたの。
美味い肉も毎食出てくると飽きる。
それがよく分かる出来事であった。
「今日は姉さんを連れて暗闇ダンジョンの60階?」
「そうじゃの。60階まで連れて行けば後は楽になるであろう。問題はそなたらの装備であるが……」
「まあ、なんとかなるんじゃない? 流石にそこまでのお金が無いから、どうにもならないわ。いつかは貯まると思うけど、こればっかりはねえ……ちょっと難しい」
「ですね。自分の分を買うので精一杯ではないでしょうか? 実際には自分の分も大変ですけどね。この金額を考えても、私達にはまだ早いと思います。もっと後でしょう、適正帯は」
「でしょうね。流石に早く手に入れ過ぎだけど、他の人も手に入れたら素材を売りに出しているだけよ。完成形の装備を売りに出している人は居ないわ。作ってないはずは無いんだけど」
「絶対に自分の分しか作っていない。それは断言出来る。売り出したら売れるだろうけど、自分だけが有利でいたいから出さない。でも元々の素材の品質が悪い事もあると思う」
「本当だ。売りに出されてる素材の品質が凄く悪い。品質3とか4ばっかり。もしかして品質の良い物って、自分で確保してる?」
「それもあるんじゃない? でも一番は………多分だけど倒し方だと思う。どう考えてもおかしな倒し方してるでしょ?」
童女が妾の方を見ながら、そう言ってくる。
しかしのう……そう言われても困るぞ。
何が普通なのか、何が普通ではないのか分からん。
そもそもじゃ、倒し方も確立されていない高レベルの敵など、普通の倒し方すらあるまい。
なればこそ妾の倒し方が普通ではないと言われても困るのじゃよ。
まず基準となる「普通」が無いわけだからして。
「言い訳はいいから、普通じゃない方法はどんなのだったの?」
「普通ではないも何も、妾は一撃で殺しとるだけじゃ。それ以外に方法も何も無いわ」
「となると、品質の低いヤツは何度も何度も攻撃しているはず。そうやって何度も攻撃するから傷付いた判定になる。そう考えるのが妥当」
「まあ、よくあるパターンね。それだけとは限ってないけど、その可能性が一番高そう。やっぱり一撃で倒すと違うのねー……どうやってるか想像がつくけど不明かな?」
「想像がつくけど不明とはなんじゃ。妾はぶった切っておるだけぞ。クリムゾントータスは首を切り落とし、火炎龍樹は幹を斬り倒しとるだけでしかない」
「それが出来ること自体がおかしいんだけどね。私達でさえ初めて見た時には唖然としたわよ」
「百歩譲ってクリムゾントータスは分からなくもありません、あれは生物ですからね。しかし火炎龍樹は違うでしょう。にも関わらず、袈裟にバッサリと斬りましたしね。あれは何度見てもおかしい」
「おかしくなどなかろう。出来たから出来ておるだけじゃ。実に簡単な事ではないか」
「その〝簡単な事〟が出来るのは貴女だけなんですよ。ちゃんと認識して下さい、貴女の普通は貴女だけの普通です。決して世間一般の普通ではありません」
「「「「「「「うんうん」」」」」」」
妾以外の全員が深く頷きながら納得しておるが、こやつら勘違いし過ぎじゃろうよ。
そもそもの考え方そのものが間違えておるわ。
だからこそ積み上げた考えも間違えるのだ。
「お主らは間違い過ぎじゃ。そもそも妾の普通は「神」の普通であろうが、そこを間違えて語られても困るわ。妾よりも剣神たる建御雷神の方が斬るのは上手いのだ。当然だがな」
「まあ、あの神様は剣神であり雷の神だからね。当然だとは思うけど……」
「布都御魂という神剣を持つ神様だったかな? そんなのが登場するゲームがあったよ。本物はどんなのか知らないけど」
「本物はそもそも神じゃからして、これといった姿は無いんじゃがな? 石剣であろうが木剣であろうが構わん。もちろん銅剣であろうが鉄剣であろうが構わぬのだ。神の姿とは一定ではない故にな」
「そうなんですか?」
「そうじゃ。神の姿とは元来定まらぬもの。定まるならば、それは下界の存在なのだ。いわゆるところの物質的存在じゃな。妾達はもっと高次の存在であるからして、定まった形などない。妾がとっておる姿も、妾がこうだと決めてとっておるだけよ」
「じゃあ、神話にあるという〝あの〟姿は?」
「あれは妾の肉体、つまり神の肉体の姿でしかない。しかし今の妾はそれに囚われておらぬ。逆を言うならば、天照などは未だに肉体に囚われておるという事よ。高次の存在になりきれてはおらぬ」
「そうなんだ」
「そうじゃ、だからこそ日の本を統べる神をしておるのだ。高次の存在になれば、そこから離れる必要があるからの。つまり妾のようになれば、下界に関わる神ではいられんという事よ」
「そういう風に決まってるってわけね。こんなところでそれを話していいか知らないけど」
「構うまい。しょせんは人の子が如何に解釈するかでしかないからの。信じるも信じぬも、それぞれの好きにすればよい」
妾がそう言うと、童女は上を見上げながら口走る。
「運営も大変ね。色々と不穏な言葉が聞こえてるでしょうけど、人間、諦めが肝心だと思うわよ?」
「カンカン」
おっとファルが来たから朝食に行くかのう。
下らぬ話というか、少々神としての話になってしもうたが、あれくらいならば話したところで何の問題も無い。
聞いたところで、どうにもならん事でしかないからな。
朝食を食べた妾達は素材集めに出発。
その後は順々に巡っていき集め、帰ってきたら倉庫に詰めて品質を上げておく。
それが終わったら昼食の準備と雑談。
昼食を食べたらマイルームに戻ってログアウト。
今度は現実での食事じゃが、相変わらず珠の両親は家におらんのう。
仲睦まじくヤっておるだけじゃから放っておくがな。
昼食が終わったら片付けと雑事を終わらせてログイン。
ようやく暗闇ダンジョンへと行く時間が来たわ。
終わらせる事が出来ずに武術大会だったからのう。
これでやっと終わらせられるわ。
なんだか小骨が喉に引っ掛かったような感じがしておったんじゃよ。
一日だけとはいえ行かなんだからの。
武術大会がなければ昨日の内に終わっとったんじゃが、昨日は喧嘩を売ってきた阿呆を始末せねばならなんだ。
流石に喧嘩を売ってきた阿呆を野放しになど出来ん。
舐めてきた者など全員始末せねば、舐められっぱなしになってしまうわ。
そうせん為には始末する他ない。
古の武士達もそうやって争っておったのじゃ。
しかし舐められたら負けなのは、昨今の時代においても変わらん。
相手は日の本を舐めておる、だから図に乗っておろうが。
ああいうのは叩き潰せば何も言わなくなるのだ、しょせんその程度じゃからの。
だから昔から言うであろう。舐めてきたヤツは殺せ、と。




