0778・武術大会の結果説明と雑談
その後もダラダラと話をしておったが解散。
妾はマイルームに戻って太刀を作る。
一撃で壊れてしもうたから作らねばならんのだが、それにしてもこれが一撃で壊れるか。
まあ、連発するような攻撃でもないので、壊れること自体は問題ない。
とはいえ色々と考えさせられる出来事ではあったの。
アーククラスを一撃で倒せるというのは、相当に優秀な威力の一撃という事じゃ。
ただし、あの者は正直に言って、レベルだけの小物ではあった。
正しく技術を持つ強者であれば、ああ簡単には倒せんじゃろうの。
そもそもそれを期待しておったのだが、結果はアレであり、何ともな終わり方になってしもうた訳じゃがな。
もっと血沸き肉踊るような戦いになるか、一瞬でも間違えば死に直結するようなヒリつく戦いになると思うたのだが……。
蓋を開ければアレじゃからのう、拍子抜けではあった。
とはいえヴァンパイアなんぞ寿命はないのだからして、長い時を掛ければ大した事のない者でもレベルは上がるのかもしれん。
それが余計にレベル偏重主義になってしまっておる気はするの。
聖人や魔女に、天使や悪魔。
これが身近におりすぎて、かえってこのゲームの平均的な考えというのが分からん。
よく考えれば最高峰の連中ばっかりじゃからのう……偏っても仕方あるまいか。
とはいえ、市井の者の考え方を学ぶ必要があるのかと言えば、まったく無い。
なので今回の武術大会で多少は分かったが、それだけじゃ。
特に学ぼうという気も無いし、妾達プレイヤーには関係ないのだ。
おっと、そろそろ夕食の用意に行かせねばならん。
妾は訓練場に行ってファルに話し、それが終わったらソファーの部屋へと行く。
そしてファルを呼び出したら夕食の準備を頼んだ。
そしてマイルームに戻り、そろそろ大丈夫であろうと2人の部屋へと向かう。
ボードを見ると○の札が出ておるのでノックし、返事があったので扉を開けて説明。
その後に再びソファーの部屋へと戻って呼び出した。
「今日一日ゆっくりと出来たわ。久しぶりだったけど、本当に良い一日だったわね。おかげで本当に休めたし、色々と疲れも取れたわ」
「そうですね。こういう日がたまにあると助かります。とはいえ、こういう日ばかりだと、それはそれでありがたみが無くなりますけどね。とはいえ色々と出来た一日でした。そちらはどうでしたか?」
ちょっとボロが出そうになったので、こちらに振ってきおったのう。
別に構わんが、随分と溜めこんでおったのが減ったようじゃの。
こやつらは長年の鬱屈したものがある故、仕方ないか。
「こちらは普通の武術大会であったな。特にどうこうと言う事は無かったが、全体的に技術レベルが低かったわ。妾がではなく、普通の者と比べても低かった。それだけは間違い無い。それなりの技術を持っておったのは一人だけじゃ」
「褒めるぐらいだから、それなりに優秀だったんでしょうけど、そんなのが居たの?」
「うむ。普通よりは優秀であったし、中ではかなりマシな方じゃ。とはいえ、あくまでも普通の中ではだがの。どうやら武術大会に出ていて優秀な者は軍にスカウトされるらしく、余りものが毎年出場するらしい。なので元々からして技術レベルが低い」
「あらら、それじゃ余計に相手にもならないでしょうよ。特にナミなら、どう考えても負けは無いでしょうに」
「ですね。負ける事を想像する事も出来ませんし、もし負けたのなら間違いなくワザとです。それ以外にあり得ません」
「まあ、負けておらんし優勝したがの。その相手も戦ったのは決勝じゃ。妾を舐め腐っておった貴族のボンボンは、準決勝で潰してやったわ。明らかに試合の相手が恣意的であったが、それでも妾の相手になどならぬ」
「それって、相手が自動的に選ばれるという事ですか? 普通は抽選などして公平に選ぶのでは?」
「残念ながら、そういうのは無かったの。むしろ妾の相手は二つ名がついとるのばっかりだったぞ。しかしながら有象無象でしかなかったがな。決勝の剣術道場を開いとる者だけがマシであった。まあ、その者はずーっと優勝しとったそうだが」
「それじゃ、今までは2位決定戦みたいなものじゃない。それもどうかと思うけど、ナミがそう言うぐらいだから技術はあったんでしょうね。多少の技術は」
「そうじゃの。本戦一回戦は短い刺突剣を持った、小盾の相手であった。盾の上手い選手らしいが<無拍子>で倒して終わりよ」
「えっ!? あれ<無拍子>って技だったの!? なんか漫画とかアニメで見た事があるけど、現実ではあんななんだ……」
「うん? お主らは予選があったのだから見ていないと思っておったが、見ておったのか? それは知らなんだ」
「私達の方のチーム戦は待ち時間が多くてね、試合までに戻ってくればオッケーだったんだよ。だから皆で見てたし、トモエは呆れてたね。勝って当たり前だったけど、一人だけレベルが違いすぎるって」
「そんな事を言われても、というところじゃの。そもそも他の連中が下手すぎるのだ。なんで、あんな連中に合わせねばならんのかとしか思わんわ」
「それはいいけど、二回戦のアレはどうだった?」
「二回戦? ……ああ、あの骸骨か。あんなものが相手になる筈がなかろう。一回戦の盾が上手いヤツよりザコじゃったわ。最期に使ったのは、いわゆるところの<燕返し>となる」
「「「「………」」」」
「何故か4人が固まってるんだけど<燕返し>ってなに?」
「簡単に言えば、斬り下ろした後に、同じ速度で斬り上げる事じゃ。こう、「V」の字になるように斬る」
「いえ、仮にその形であったとしても、切り下ろしと切り上げが同じ速度は無理でしょう」
「それが可能なんじゃよ。だから<燕返し>という技の名前がついとるんじゃしの。相手は袈裟切りを避けたが、そこからの切り上げは避けられなんだ。そういう技でもあるのだからして当たり前ではあるがな」
「そんな尋常ではない、奥義クラスの技を出してくる相手なんて、そもそも想定していないでしょう。唯でさえ技術レベルの低い大会なのですから」
「まあのう。<無拍子>も<燕返し>も全く理解されんかったわ。とはいえ理解される気も無かったので、どうでもよいがな。そして準決勝が妾を舐め腐っとったヤツじゃ。コイツは普通にぶった切って終わった」
「なにそれ? 一回戦と二回戦は奥義クラスの技を使っておいて、準決勝は適当? ………ああ、あえてそうしたのね」
「そうじゃ。舐め腐っとるヤツなど、それで十分よ。相手が突いてきたので跳ね上げ、その後に袈裟切り。それで終わりじゃ」
「カンカン」
ファルが来たので食堂に行き、椅子に座って食事をしながらも話を続ける。
と言っても、その後の事だけじゃがな。
「決勝は剣術道場の者だったので、殺気と殺意を撒き散らし、視野狭窄に陥らせた。そして走って行って攻撃前に突然止める。相手の抗ずる力が滑ったら、そこに莫大な気を当てる。そうすれば硬直するので、そこを切ったというわけよ」
「それはまた、相手が可哀想になるような事をやっておるのう。相手は何がなにやら分からぬままに切られたであろうよ」
「そもそもそういう技なのだからして、当たり前の事ではあるがな。その後は蛇足じゃ」
「だそく?」
「その後は文句をつけてきた準決勝の相手を装置なしで殺したのと、その親である貴族をぶった切って終わってた」
「つまり舐めてきた相手は叩き殺したわけね。っていうか、勝てなかった事を理解しなかったのかしら?」
「それが理解できたならば、そもそも妾に喧嘩を売ってこんよ」
「それは確かにそうでしょうね」
死ぬまで理解ししておらなんだからの。
<バカは死ぬまで治らない>というのは実に正しい。
それは現実におる邪悪な思想の者どもも変わらん。
アレも死ぬまで治る事は無い。




