0776・チーム戦終了
妾の使える技に驚いておるようじゃが、こんなものは大した技でもない。
暇潰しに練習しておれば誰でも出来るようになる事よ。なので大した事でもないのだ。
大事なのは基礎をひたすらに修練するのみ。
「だからこそ、そこまで大した事じゃないんだ。あの技も曲芸に近い事だからね。そもそも全ての武術は、結局のところ争いで勝つ為にある。そして争いを想定する限りにおいて、1対1はあり得ない。戦争を想定するのが正しい武術だ」
「それは、まあそうだね。そもそも魔物との戦いにおいてさえ1対1は無いんだ。で、ある以上は複数との戦いを想定しなきゃいけない」
「その考えでいくと、あの曲芸と愚か者は変わらないんだよね。あいつはレイピアを使っていたけど、あれは護身や決闘用の武器でしかない。きちんと防具を着けている相手だと碌に効かない武器じゃあ駄目だ」
「効いてもチェインメイルぐらいだろうねー。でも、今時チェインメイルを着けるヤツって居るー?」
「居ないだろうねえ。昔は持て囃されていた時期があるけど、割とすぐに廃れたよ。理由は防御が弱いからだ。結果として全身鎧の関節部分を防ぐ為ぐらいにしか残ってないね。魔物の攻撃は隙間を突くのもあるから」
「相手の鎧を制限する戦争なんてある訳が無い。で、ある以上は、あんな物を持ち出した時点で論外なんだ。というか、あの男がいつまで経っても軍に引き抜かれない理由は、貴族の子という事じゃなくレイピアを使っているからだろう」
「それもあるだろうな。しかし、そもそも軍に必要なものは協力だ。ああいう独断で勝手な事をしそうな者は、軍に入れたりしないさ。それに軍の基本は両手剣か槍だよ。軽い武器が得意な者は選ばれにくい傾向にある」
「片手剣では魔物に対して有効ではないし、鎧を着ている敵国の兵にも有効じゃない。そんなのが得意なヤツは使えないから仕方ないと思う」
「そういえば盾と刺突剣を持ったヤツが多かったけど、それも同じ理由で残っているわけか。むしろ毎年出てくるヤツは、軍に選ばれない負け犬と言うべきなんだろうね」
「容赦がないが、ま、その通りだ。あんな物ではとても敵を倒せないし、あれを使っている者達には大した技量は無い。ルドゥーなどは盾が上手いから、むしろ盾士として優秀なぐらいだな。ただし小型の盾なのがマイナスなんだよ」
「おっと、彼女達が出てきたね」
「真面目に戦ったら勝てそうな感じー? ありがと」
妾はアルゼルに適当な食べ物を渡す。
この者は食べておらんと機嫌が良うないからのう。
ま、それぐらいなら大した金銭も掛からんのでよいのだが。
それよりも出てきた童女達の戦いが始まったが、予選までと変わり映えせんのう。
結局は連携の深度の問題じゃが、浅い奴等が多いわ。
どうしてこうも技術が拙いのか。
もう少しマシにならんものか。
「上手いね、連携が。あの稀人のチームは君の知り合いかい?」
「まあ、そうだね。それで間違いないけど、それがどうかした?」
「いや、特にどうこうはないんだけど、他とは明らかに違うからね。それで、もしかしたらと思っただけさ。あそこまでしっかり連携をするのなら、決勝まで行くんじゃないかな? 他に目ぼしいのもいないみたいだし」
「見ていると酷いのだらけだったし、流石にこの程度に負けるという事はない。おそらく誰も落ちないで、そのまま上がるだろうさ。そもそも負ける要素が無いし」
「うまく前衛が止めてるから、危ない場面はないねー。それはそれで優秀だけど、他が酷すぎて大した事がない風に思われてそうー」
「それはあるかもしれないね。相手の連携が酷すぎて、彼女達の連携もそこまで見られないかもしれない。観客の目が貧しいとそういう事もありそうだ」
「仕方がない事とはいえ、そろそろ目が豊かになる方策も整えないといけないのかもしれないけど、そこまで武術大会に出ようと励む者が多くない。残念な事なのだが……」
「賞金だけでは目指さないというわけか。それに目ぼしい者は軍に取られているみたいだし、そうなると余計に難しいだろうねえ。素人にとっては賭けに勝つ事の方が重要のようだし」
「それはな。だからこそ、賭け事だけは盛り上がるんだよ。おっと、勝ったようだね」
童女達が勝ったようじゃが、あまりにも敵の連携も質も悪い。
勝って当たり前の相手に勝っただけじゃ。正直に言ってつまらん。
もうちょっと先にならんと、面白い試合は見れそうもないの。
試合が進んでも見れるかどうかは分からんが、多少はマシになるじゃろうて。
…
……
………
で、決勝戦がそろそろ始まる。決勝の相手は多少マシな連携をしてくるというところか。
それでも基本が出来てそれなりという程度でしかないが、まだ他の有象無象よりはマシといったところじゃ。
そして決勝のそれぞれが出てきたが、これは予想外に負けるかの?
童女達はもう勝ったような雰囲気じゃが、相手はここまで抑えて勝ってきた節があるぞ?
妙に落ち着いておるからな。ああいうのは怪しい。
決勝が始まったが、最初にまずはユウヤが前に出たの。
これはいつも通りであるし、特におかしな事ではない。
あれが前に出て止めてくれんと話にならん。
そしてナツがそのサポートに回るのじゃが……。
あらら、完全に狙われておるの。ユウヤは相手のエースのような者を止めておる。
槍なので迂闊に持ち場を離れる訳にもいかんのじゃろう。
そしてナツを狙っておるのは鞭の者じゃ。この決勝で武器を変えてきおった。
そして中距離から攻撃されておる所為で、ナツも封じ込められておる。
その状態で相手の後衛は上手くアマロとオウカを攻撃してきたのう。
童女は前に出て攻撃を始めたが、そこにも矢が飛んでくる形か。
これは膠着するし、膠着すれば数が多い方が有利となる。
突破口を開かねばならんが……さて、どうなるかのう?
己らだけで突破が出来るのか、やはり珠がおらねば無理か。
この辺りが童女達の地力が問われるところじゃ。
鞭での攻撃を嫌がったのかナツが後退したが、それは悪手じゃろう。
それをすれば、あーあー、敵の鞭がさらに詰めてきた。当たり前の事よ。
ナツのやるべき事は、相手にむしろ近付く事であろう。
押し込まれると厄介なので、それではユウヤも後退せざるを得ん。
突出しておると、さらに攻撃を受けかねんしな。
上手く凌いでおるがレベルは1。思っている以上にもたん可能性が高い。
たとえ巨人族でもな。
それにアマロとオウカも迂闊には出られん。
これも強引に前へ出れば逆に仕留められる恐れがある。
なので強引には出られんのだ。
相手の槍も牽制は上手いしのう。
そうやって戦線は膠着したが、意外なところで決着が着いた。
強引に前に出ようとしたナツがやられたのじゃ。
鞭を盾で防ぎながら前に出たまでは良かった。
しかし矢で狙われておらなかったのが仇となった。
狙われておらなんだので頭の中から抜け落ちておったのであろう。
いきなり撃ちこまれて死んでしまったのだ。
こうなると瓦解せざるを得ぬ。
ユウヤは牽制されて動けぬうちにアマロがやられ、強引に出ると矢で仕留められた。
後は雪崩を打つように負けていくのみよ。
ナツが悪いというよりは、6人の限界であったというところか。
元々、相手よりも2人少ないのだ。
むしろその人数で決勝まで来たのだから十分じゃろう。
「決まったぁぁぁぁ! これでチーム戦の優勝チームが決まりました。優勝は<ゾンビーズ>です!」
名前がのう……。もうちょっと、なんとかならんのかと思うわ。
童女達も<6人隊>とかいう酷いのじゃったし。
お主らワザとか?




