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0752・暗闇ダンジョンへと金を採りに行く




 「そなたら随分と寝ておったが、大丈夫なのかの? サブ職業のレベルが二つも上がっとるし、かなりの無理をしたのではないのか?」


 「別にそんな無理はしてないっていうか……いや、無理はしてるのかしら? それはともかく、久しぶりの踊りも使えるようになったからね。それの試運転って感じかしら?」


 「そうですね。まさかこんな踊りがあったとは思いませんでしたよ。基本的に【演奏】ならともかく【踊り】は敵に効果をもたらすものです。味方に作用するものがあったとは」


 「そう思われるのも仕方がないけど、本来だと上級になって教えられる踊りなのよね、コレ。私は結構無理に使ってるけどさ」


 「どんな効果の戻りなんじゃ?」


 「これは味方の生命力や魔力の回復を早める踊りね。結構体の制御が難しいのと、踊っている最中の魔力の使い方にコツが必要なものなの。だから上級に分類されるんだけど」


 「ラスティアは中級でも使えるという事ですね。とはいえ結構厳しそうですが」


 「まあねえ。かなり無理をしているのは事実だもの。代わりにサブ職業のレベルは上がりやすいし、それを受けてキャスティも魔力を使ってるから早いのよ」


 「成る程のう、そういう相乗効果で一気に上がっておったのか」


 「その所為で肥料の消費が早いのです、できれば多めの補充をお願いしますね。毎日は流石に出来ませんが、これからもちょくちょく行うと思いますので」


 「了解じゃ。今の内に補充しておこう。それはともかくとして、そろそろ暗闇ダンジョンへと行かねばならん。なので用意をしてくれ。今回は金を採りにいく」


 「オウカって子の装備品の為ね。まあ、ついでに脱出して60階かしら? あそこの物も手に入るなら集めておいて損は無いし。もしくは、もち米?」


 「たまにファルがもち米で何か作ってくれますからね。おこわとかでしたっけ? 割とお腹に溜まるので悪くはないですよ」


 「ちょっと待て、妾はおこわを食べてはおらんぞ。今日は金を採ってきた後は、ひたすらにもち米探しじゃ。餅は運営マーケットに売っておるが、おこわは自作するしかないではないか。何という卑劣なトラップじゃ!」


 「いや、卑劣って……。まあ、とにかく暗闇ダンジョンに行く為に用意をするわ。少し待ってて頂戴」


 「うむ、もち米を採りに行かねばならんからのう。あまり遅くならんようにな」


 「金でしょうに……何だか目的が変わってしまいましたね」



 あーあー、妾には聞こえんなぁ。

 食う物以上に大事な物がある筈が無かろうが。


 豚肉と牛肉は十分にあるんじゃ。

 後は鶏肉と卵に甘い物か?

 じゃがその前にもち米であろう。

 あれは手に入れておかねばならん。


 いつでも食せるなら如何様いかようでもよいが、採ってきた物でなくば作れんのであれば別じゃ。

 おこわだけではないぞ、運営マーケットに売っておるのは餅だけなのだ。

 話にならんわ。


 うるち米から餅はでっちあげる事が可能じゃが、もち米を使った料理となれば別となる。

 当然もち米が無ければ作れんのだからして、もち米を手に入れるしかない。


 目指すは山菜おこ、わ……。

 このゲーム世界には現実の山菜が無いではないか!

 くそぅ、何か入れて山菜っぽくなる野菜はないものか……。

 ぬ! 何を考えておる。仲間に農家が居るであろうに。

 すっかり忘れておったわ。



 「あら? まだここに居たんですか? そろそろ暗闇ダンジョンに出発しましょう」


 「うむ! 山菜じゃな!!」


 「山菜? 急に何を言ってるのよ。頭がおかしくなったの?」


 「なっとらんわ! 山菜おこわの為には、山菜が必要じゃ。されどここには無い故、代替となる野菜が無いかと思ったのだ。まあ山菜に拘りは無いので、栗おこわでも鶏おこわでも鮭おこわでもいいのじゃがな。もちろん赤飯でも構わんぞ」


 「色々とあるんですねー……。ファルが作ってくれたのは、確か色々な野菜と肉を混ぜた物だったと思います」


 「ならば五目おこわに近いのじゃな。それもまたよし!」


 「そこまでなのねえ……」


 「うむ。そこま、てよ? 運営マーケットに餡子は売っておる筈じゃ、ならば牡丹餅ぼたもちも作れるのう。という事は御萩おはぎもではないか! うほほほほほ、これは楽しみじゃわ!!」


 「もういいですから、早く行きますよ」


 「うむうむ。秒で金を得て、すぐにもち米を得るのだ!」


 「何だか前に言っていた、<物欲センサー>が発動しそうねえ……」



 ほほほほほほほ……何とでも言うがよかろう。

 しかぁし! 妾は神ぞ!

 止められるものならば、止めてみるがいい!!


 …

 ……

 ………


 「現在44階だけど一個も出ないわねえ。派手に<物欲センサー>とやらに引っ掛かってると思うわ。まあ、スキルは伸びるから別にいいし、ここの敵は既に相手にならないから問題にもならないけど」


 「しかし予想以上に出ませんね? 珍しいくらいですよ」


 「うぬぬぬぬぬぬ……どうなっとるんじゃ、これは? 本当に<物欲センサー>なるものが存在するとでも言うのか? あんなものは迷信や都市伝説の類じゃろうに! それとも貧乏神めが妾の邪魔をしておるのか!!」


 「なんだろう? 貧乏神という神が居るのかもしれないけど、派手なとばっちりを受けている気がするのは気のせいかしら?」


 「ほぼ間違いなく、とばっちりでしょうね。仮に貧乏を司る神様が居るとして、きっとその方は清貧なんだと思いますよ? むしろ、あれほどに欲に塗れた神も居ないと思いますし……」


 「むむむむむむむ………これは黄泉におる保食神うけもちのかみに、もち米を出させるべきかもしれん」


 「あのー……神様を呼ぶのではなく、頑張って手に入れましょう? というか、食べ物一つを手に入れるのに神様を呼ぶのは止めて下さい」


 「メチャクチャな事を平然と言われても困るのよ。少しは自重してくれないかしら」


 「むう……ならば仕方あるまいな。なんとしても、妾のこの手で掴み取ってくれようぞ!」



 それから進んで49階、やっと一つ出たわ。

 まったくもってふざけおって!

 ……そう思ったら、その後は金鉱石だけが出てきおる。

 あまりにもふざけ過ぎで、妾をおちょくっておるであろう!!


 金鉱石も十分過ぎるほど手に入れた妾は、さっさと先へと進み50階。

 ようやくここからが、もち米じゃ。

 まったく、無駄に時間を掛けさせおってからに!



 「おおー! もち米は最初から出るではないか。何で金程度の分際であんなに出なんだのか……」


 「それが<物欲センサー>とかいうヤツなんでしょ。その割には一番求めていたもち米は普通に出てるみたいだけど」


 「金はそもそも価値が高いですからね。それに比べて、これは植物ですから」


 「価値の無いって言ったら違うわね、レア度の高い物ほど出にくいって事でしょうけど……。そういえば前に来た時は、もち米って出にくかったんだっけ?」


 「確かそうだったと思いますけど、コトブキは割と手に入れていたような……」


 「妾も結構な頻度で出ておるから、やはり何かしらの偏りがあるのじゃろうの。そなたらも出ておるようじゃし、これは楽しみじゃ」



 おこわも餅も赤飯も良い物じゃ。

 かつてはハレの日にしか食えなんだものよ。

 それがゲームの中でまで食べられるとは、ありがたい事じゃのう。


 このまま帰る時間まで取り尽くしてくれようぞ。

 妾の邪魔をするヤツは一撃でダウンじゃ!

 容赦はせんぞ!!



 「気合いが入っていますが、入り過ぎてますね。絶対に空回りしますよ、アレ」


 「どう考えても気合いが入りすぎだものねえ。この後まったく出なくなったりして」



 五月蝿いぞ! そんな事を言うから出ぬようになるのだ。

 ノっている時に余計な事を考える必要は無い。

 ひたすらに突き進むのみよ!


別作、「時空の旅人 ~イシスとヌン~」が260話を超えました。宜しければ、御一読ください。


https://ncode.syosetu.com/n1425lv/

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