0753・雑談と穀物
「ほほほほほほほ……! 妾を舐めてもらっては困るわ。妾は<黄泉津大神>ぞ!! 止められる者など居らぬわ。うははははははははは……!」
「物凄い確率ねえ……。採取で出てきた物の八割がもち米だなんて、あまりに確率が偏り過ぎてない? 何だか次に来た時に全く出なさそう」
「それはあるかもしれませんね。実際に八割はちょっと高すぎる気がしますし、どこかで揺り戻しが来そうです。案外と早く訪れたりして」
「ははははははは! 明日は明日の風が吹くものじゃ、気にしたら負けよ。今は手に入っておるのだからして、構うまい。それに次に来た時は攻略か一階からのスタートであろう。そこで幾ら運が良くなかろうがの、問題にならぬわ」
「そう言われれば確かにそうね。次に来た時は一階からの可能性が高そうだし、そうなると手に入る物もどうでもいい物だものね。それが良かろうが悪かろうが」
「そもそも必要ありませんし、採取行動すらしないでしょう。攻略が先なんですから」
「じゃのう。もう十分過ぎる程にもち米は出ておるが、まだ時間には早いからな。採れるだけ採ってから出るぞ」
「「了解」」
その後も妾達は採り続け、大豊作と言わんばかりの量を手に入れた。
これで十分なもち米を手に入れられたし、夕食には無理じゃが、明日の朝食には食べられるじゃろう。
期待して待っておくかな。
暗闇ダンジョンを脱出し家へと戻った妾達は、ソファーの部屋からマイルームへ。
そしてファルにもち米を倉庫に入れた事と、明日の朝食までにおこわを頼むと言い、召喚する事を伝える。
その後はソファーの部屋に移動してファルを召喚。
夕食作りを頼んだらソファーへと座り掲示板を読む。
どうやら今だに運営ダンジョンの50階を突破した者は居らぬらしいのう。
そんなに苦労するのか?
スキルとやらを使うだけになって、まともに戦い方を学んでおらぬ感じじゃの。
もちろんこのゲームではないが、他のゲームでは<スキルぶっぱゲー>というのがあるらしいと珠の記憶で見たわ。
あれも情けない事よな。
スキルとやらを使うだけで爽快に敵を倒すなど、あり得ぬ妄想を具現化したようなものじゃ。
それが面白いと思う事に情けなさを感じぬものか。
せめて一周目は相応の難易度にし、二週目からは爽快にすればよかろうに。
VRMMOならば、メタを張れば無双という形じゃろう。それなら分からぬでもない。
しかし最初から無双であれば、唯の弱いものイジメであろうに。
何故その程度の事も分からぬのであろうか?
恥というものが無いのかの、そのゲームのプレイヤーとやらは。
時間が無いからという意見があるが、それとこれとは違うであろう。
子供化しておるだけじゃろうよ、それは。
昔のゲームに比べれば遥かに簡単であろうに、それさえ難しいと言う。
唯の子供の我儘と何が違うのであろうの? 妾には理解できん。
おっと、腕に何か当たったと思えば現代の巫女か。
「何で顔を顰めてる?」
「このゲームが簡単にならんかと言うておる阿呆がおるからよ。コトブキの記憶にもあるが、<スキルぶっぱゲー>など子供のやるものであろう。情けないとは思わんのか。そう思っただけじゃ」
「そういうヤツはどのゲームにでも居る。子供向けの簡単なゲームにさえ、そんな事を言う頭の悪いのは湧く。結局のところ、他人より強くなりたいけど努力はしない連中が言ってるだけ」
「子供にすらバカにされる連中だけど、必ず何処にでも湧いてくるのよね。そいつらの魂胆は、愚痴を言い続けて運営が動いてくれるのを待ってるだけ。大人の癖に、口を開けてエサを強請る雛鳥みたいな連中よ」
「話にならんの。まあ、ここの運営は歯牙にも掛けぬみたいじゃがな」
「それはそう。というより、今の時代そういう連中の要求を呑む事は殆ど無い。かつてはあったらしいけど、要求を聞いて難度を下げると、まともなプレイヤーが逃げる。結果、過疎っていくだけ」
「だからこそ、そういう奴らの要求は突っ撥ねて当然。……っていうマニュアルでもあるんだと思うわよ。そうやって騒いでるヤツって、受け入れられなきゃ離れるし」
「そもそもですけど、ここの運営は見た目のアイテム以外に課金項目を作っていないぐらいに硬派なんですよね。今の業界でこれは珍しいと思います」
「どこも課金、課金、課金、課金だものね。とはいえサービスを続けていく為には資金が要るし、社員にお給料を払う為には儲ける必要がある。でも課金で無双はつまらないし、世界観を壊しまくりなのよねえ」
「跡形も無いほど粉砕している物も中にはありますからね。某シミュレーション戦争ゲームとか」
「ああ、アレね。あの中世ヨーロッパを舞台に各国で戦うヤツ。NPCの王に戦争を命じられて兵士として戦う形の筈なんだけど、何故か課金している奴らはレーザーライフルとか持ってて大騒動になったのよ」
「何じゃそれは? プレートアーマーの部隊にレーザーを撃ち込むのか? 無茶苦茶に過ぎようぞ、そんなもの」
「ちなみに課金の金額によってはミサイルランチャーとか対戦車ライフルとかもあったらしい。で、それに対して猛批判が起きたから止めるのかと思ったら……」
「運営が更なる悪ノリで、各国の神話武器とか伝説の武器とかを課金アイテムにしたんですよ。有名な<エクスカリバー>とか<ゲイ・ボルグ>に<グングニル>など」
「あれで完全に中世の世界観じゃなくなったのよねー。中世を舞台に近代兵器と未来兵器と神話兵器のぶつかりあうゲームに様変わりしたってわけ。もはや課金して楽しむゲームに変わって、まともなユーザーが居なくなったの」
「一部では好評だったらしいと聞きましたけど、課金ゲームの宿命か早期に消えましたね。ユーザーが減って過疎ったら終わり。それを知らない筈がないのに……」
「アホじゃの」
「カンカン」
世の中の阿呆の話を聞いておったらファルが来たので食事に行く。
っと、その前にあの二人を呼んで来ねばならんではないか。
危うく忘れるところであった。
妾はマイルームい飛んで二人に話しかけ、すぐにソファーの部屋へと戻って召喚。
夕食を食べる為に食堂へと向かった。
やれやれ、ギリギリじゃったわ。
椅子に座って食事を始めようかと思ったら、何故か妾のところにだけ雑穀が乗った皿があった。
見た感じ粟や稗に見えるが、いったいどういう事じゃ?
「カタカタ!」
ファルが妾のところに何かを持ってくる……うん? これは、牛のしぐれ煮か?
こちらは牛そぼろじゃな。
それに牛タンともつ煮があるの。
今日は牛尽くしじゃが、妾が米類を好むのでわざわざ用意してくれたか。
「そなたの心遣い感謝するぞ。それでは、いただきますじゃ」
箸も用意されとるところが良いの。
皿で出てくるのはアレじゃが、茶椀は無いであろうから仕方あるまい。
うむうむ、粟と稗に似ておるが、味もよう似ておるの。
問題なく食べられるわ。
「また一人だけ別の物を食べてる」
「そなたらは粟や稗に慣れておるまい。妾ならば何の問題も無いがな。これはよう似ておるので、おそらくそなたらは好かぬであろう」
「粟とか稗って聞いた事があるね。昔の人が食べてたんだっけ?」
「それ以前に<五穀>であるのだからして、昔から食うておるなど当たり前であろうが」
「ごこく?」
「昨今の若い者はこれだからいかん。<五穀>とは粟、稗、麦、豆、稲。これらを総称して<五穀>というのじゃ。神代の時代より<五穀>と定められておるわ」
「へー……そうだったんだ」
「まあ、米が一番なのだが、粟や稗も悪いものではない。ただし手間が米より掛かるのが難点じゃの。特に稗は脱穀はともかく、脱稃と精白に苦労をする故な。ただし米に比べれば健康に良い物であるし、米アレルギーの者も食せる」
「そうなんだね。今は機械があるんだし、何とかならないのかな?」
「なるわけがなかろう。稗を作っておる者などほぼ居らんのだ。機械を作ろうとする所すらあるまい。米よりも面倒なのだからして、機械も専用の物を作らねばならんしの」
「それじゃ駄目だね。需要が無いんじゃ機械は作られないよ」
その通りなのじゃが嘆かわしい事よ。
見た目は悪くなるが黒蒸し法ならば栄養価も高くなり、米よりよっぽど優秀なんじゃがのう……。
神代の穀物のうち2つが消えるとは。
世の移り変わりは妾でも如何ともしがたい。




