0745・再びの乱獲
作り終わった妾は二人の部屋の前まで行き、ボードを確認する。
○が出ていたのでノックをし、中の二人に呼び出す事を伝えてからソファーの部屋へ。
○の札が出ておったものの、くっついてイチャイチャは普通にしとったのう。
ソファーの部屋に移動した妾は二人を呼び出し、そしてソファーに座らずに確認させる。
「これがクリムゾントータスの皮と甲羅で作った防具じゃの。これで良いかは別にして、一応妾の分は完成したというところじゃ。後はそなたらが納得するか否かによる」
「………十分すぎると思いますよ? 防御力も50を超えている部位がチラホラありますし、高い防御効果も持っています。何より火属性耐性がありがたいですね。火属性は火傷が発生する可能性が高いですし」
「そうね。私の綺麗な肌に傷が残ったりはしないけど、いちいち受けたくないもの」
「………」
ラスティアが己の腕を擦りながら答えておるのだが……。
キャスティのヤツめ。
必死に耐えておるようじゃが、表情がだらしなさ過ぎるわ。
アレは本当に大丈夫なのかの? バレておるような気しかせんが……。
ま、妾がどうこう言う事でもないか。
「それにしても防御力が高いわねえ………ちょっとトンデモ防具になってる気がするわ、全身ガッチリ守られてるって感じだし。それに寒さは防寒具でどうにかなるけど、暑さはどうにもならないのよねー」
「全身に【耐暑(大)】が付いていて、更に【耐暑(大)】のアクセサリーまで持ってる。これなら相当の場所でも暑くない筈」
「そこまでを必要とする地形がどこにあるかは知らないけど、それでも準備としたら正しいのかな? 防具としては今までのを遥かに凌ぐほど優秀だけど」
「これはまだ早い気もしないでもないですね。とはいえ早くから揃えておくのも悪くはありませんし……悩むところです。私も<ネクロマンサー>なので」
「【火属性耐性(大)】は大きいよねー。仲間のアンデッドは【火属性】に弱いって言ってたし、そうなるとクリムゾントータスって優秀な素材だと思う。その分だけ高価だろうけど」
「そこなんですよ。果たして買えるのかどうかというところがですね、厳しいと言わざるを得ません」
「そなたは<薬師>なのだから、<火炎龍樹の樹液>は扱えんのか? なんでも<温熱薬>という薬になるそうじゃが」
「それは何でしょう? 聞いた事が無いのですが……」
「飲むと三時間ぐらい寒さを忘れる程に温まる飲み薬よ。火炎龍樹を倒せば樹液は手に入るから、儲けられるとは思うけど……市場に流した方がいいかも。おそらくだけど稀人は買わないんじゃない? 防寒具で何とかするでしょうし」
「<温熱薬>は北の方の者に売れますから、結構な買取額で買ってもらえると思いますよ。一つの樹液でそれなりの<温熱薬>が出来ると聞きますしね」
「カンカン」
おっと、ファルが来たので昼食じゃ。
話している場合では無いな。
食堂に着いてすぐに食べ始めると、アマロがコトブキの師に聞き始めた。
「<火炎龍樹の樹液>から薬が作れると聞きましたが、それは売れるのでしょうか?」
「<火炎龍樹の樹液>な。作れるのは<温熱薬>と<熱癒薬>と<火傷薬>じゃが、どれの事を言うておるのだ? どれも使う者がおるから売れる物ではあるぞ?」
「どんな薬なんでしょうか? <温熱薬>はラスティアさんから聞きましたけど、他のは知りません」
「<熱癒薬>は塗るとじんわりと温まり、血行をよくしてコリを解す薬じゃな。それと<火傷薬>は敵にブッ掛ける薬で、かなりの激痛にのた打ち回る事になる、特に全身鎧を着ておる阿呆に効く薬だ」
「あれ? コリを解すのって<温熱薬>を塗るんじゃなかったの?」
「いつの時代の話をしておるんじゃ。今は<熱癒薬>という専用の薬が出来ておるわ。お主は長く封印されておったので知らぬのだろうがの」
「私も知りませんでした……」
「私もだよ」
「ボクも知らないねー」
「お主らは必要ないから知らんのではないか? 【暴食】は封印されていたのもあろうが、使わぬ物の事など気にも留めんじゃろうよ」
「それは、そうかも……」
「なら<温熱薬>と<熱癒薬>は売れそうですね。もう一つはちょっと……売る気にはなりませんし」
「それがよい。<火傷薬>などという名前が付いておるが、実際は<火炎龍樹の樹液>に大量の唐辛子や蒸留水を混ぜただけじゃからな。<薬師>の技を磨く部分など一つも無い」
「うわぁ……嫌な予感満載の薬ねえ。薄めてスプレーボトルに入れたら悪用できそう」
「痴漢撃退スプレーか、それとも熊撃退スプレーか。どっちの威力なんだろう?」
「原液が火傷する時点で、薄めても熊撃退スプレーにしかならない気がする。目に入ったら失明は確実だろうし」
「目が焼かれるだろうし、そうかもしれない。それを考えると恐ろしくて売るのは駄目ね。作るのも止めておいた方が良いと思う。ただし悪用するプレイヤーが出そうだけど」
「それをすると悪行度が跳ね上がると思うから、おそらくだけど大丈夫じゃないかな? 根っからの悪人の人達には、何を言っても無駄だろうけど」
とりあえずアマロは火炎龍樹を頑張って倒す事になったが、あやつは倒せるのだろうかの?
そっちの話は全く無かったが……まあ、妾には関わりの無い事か。
それよりも昼食が終わったので、戻って現実でも昼食じゃ。
そちらもせねばならんので、さっさと戻ろうかの。
マイルームに戻って三人を呼びだした妾は、個室でログアウトをして現実へと戻る。
そして肉体を変えたらキッチンへと移動して昼食の準備をするのだが、何故か童女が来て手伝い始めた。
その事は見て見ぬフリをしてやり、ささっと昼食を作りて食事を始める。
特にどうこうは無いが、やはり昨夜の事を意識しておるの。
落ち着くまでは放っておくか。
昼食が終わったら後片付けと雑事を熟し、それが終わったら部屋へと戻ってゲームにログインする。
今度は乱獲を始めねばな。
ゲームに戻った妾は渡してある装備を確認していき、問題ない事を確かめたら運営ダンジョンへ。
48階まで走っていき、昨日と同じく乱獲を始めた。
「ツェァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
「「………」」
「……ふう。やはりクリムゾントータスは、そこまで強くは無いの。長巻ならば一刀両断なのじゃからな。コヤツであれば妾一人で乱獲できるわ」
「普通は無理なんだけどねえ……。目の前でやられると何も言えなくなるわ。いや、本当」
「冗談でも何でもなく、本当に一撃で倒してますからね。それだけ大きいし長い武器なんですけど、それにしても……」
「そなたらも新しい武器に変わって楽になっておるではないか。何なら妾と同じように出来るかもしれんぞ?」
「「無理」」
「そうハッキリ無理と言わず、挑戦しみたらよいと思うがの? 案外と上手くいくかもしれんぞ?」
「「無理」」
「ああ、うむ。そうか……。それ「チョット、イイ?」なんじゃ?」
「ワタシモナガイブキガホシイ。デモ、ヤイバガツイテルノハイラナイ。ソレイガイナラ、ナニガアル?」
「………。お主が使うなら杖か棒になるの。お主の行く先はおそらく仙人じゃろう、それも<尸解仙>であろうと妾は睨んでおる。いわゆる死人の仙人よ。そこに至るのに刃物が嫌ならば、残るは杖じゃな。<尸解仙>は竹杖を残すとも言われるからのう」
「ツエ……」
「時代によって杖の長さもバラバラなのだ。3メートル以上を杖という流派もあれば、半棒を杖という流派もある。ちなみに半棒は90センチぐらいの物の事を指す。そなたならば乳切り木で十分であろう」
「チギリキ?」
「地面から乳首までの長さの杖を乳切り木という。そのくらいの長さが一番扱いやすいからの。神道夢想流にもある。<突けば槍、払えば薙刀、打てば太刀。杖はかくにも外れざりけり>とのう」
「???」
「要するに杖は如何様にでも扱えるという事よ。扱う者の使いよう一つで幾らでも変わるという事じゃの」
分かったような分からんような顔をしておるが、それでよかろう。
杖とて極れば武者をも殺すからの。
妾が教えてやるかな。




