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0739・乱獲




 経験値とやらが取得できぬらしいが特に気にする必要はあるまい。

 大した意味も無ければ、強さとは己の中にあるものじゃ。

 とは言うてもゲームとやらではレベルが上がらねば強くはならぬという。

 厄介な事よ。


 とはいえ今は無理してレベルとやらを上げる必要はあるまい。

 むしろ良き武具を持つ事の方が先よ。

 それと珠が使えぬであった仙人の力じゃな。

 この程度が出来ぬとは修行が足りんが、人の子にはちと難しいか?

 珠なら出来た筈じゃが……。


 もしかしたらワザと手を抜いていたのかもしれん。

 いや、手を抜くというよりは今の状態で無理をして使う必要までは無いという事か。

 気持ちは分からんではない。

 他の者と比べれば過剰じゃからの、いちいち騒がれても鬱陶しかろう。

 妾には関わりないがな。



 ―――――――――――――――


 <魔仙術> 魔仙練体 強化


 魔力と練気の密度を高めて混ぜ合わせ、高度な仙力として練り上げて肉体を強化する仙術。基本にして奥義とも言われ、強化中は呼吸の必要すらなくなる。身体強化よりも肉体は強化されるが、そこまで大きく強化される訳ではない

 最大の利点は、使用中に限り全力で動き続けられる事である。呼吸の必要なく疲れもせず、全力戦闘を継続し続けられるが、それも仙力があればこそ。ひたすらに己を磨くべし


 ―――――――――――――――



 【魔仙練体】というスキルはこれじゃが、これ自体は気を練り上げる【仙術】と何も変わらん。

 このゲームを作った人間が何処いずこまで理解しておるのかは知らぬがな。


 それはともかく、通常なら呼吸をするように使えるが、ゲームとなると話は別じゃ。

 訳の分からぬ仙力とやらを消費する為、それを使用せねば使えぬらしい。

 まあ、制限が掛かるだけなので腹も立たんが。


 次のクリムゾントータスとやらで、試してもよいのじゃが……皆も戦わせねばならぬからのう。

 妾だけが遊ぶのは止めるか。

 ついでに太刀が折れたので、いまいちやる気にならんしな。


 …

 ……

 ………


 「ぬ? 流石にこのような時間か。ならばそろそろ戻らねばなるまい。それにそなたらも満足するまで殺戮できたようじゃしの」


 「殺戮って言わないでほしいけど、結果だけみたら殺戮か虐殺よねえ?」


 「ですね。クリムゾントータスが27匹、火炎龍樹が31体も倒されてます。正直に言って神々も想定外では? いえ、そもそもコトブキの体に神が宿っている事自体が想定外でしょう」


 「それはね。そもそもコトブキが神を降ろせる肉体をしていた事も想定外でしょうよ。何度聞いてもあり得ないって思うし」


 「知らぬ者は知らぬ事じゃしの。ま、下らぬお喋りは止めて一気に走って帰るぞ。こんな所におっても仕方ないからのう」



 その言葉を言い終わると妾は走り始めた。

 それなりに走って2階に戻される階段を使い、そこから魔法陣まで移動して運営ダンジョンを出る。

 マイルームに着いたら倉庫に素材を仕舞い、さっさとソファーの部屋へ。


 ファルと天使と悪魔を呼び出したら、後は夕食が出来るまで待つだけよ。

 ソファーに座ってゆっくりしようと思ったら、何故か童女が話し掛けてきたの?



 「今日はクリムゾントータスと火炎龍樹の所に行ったんでしょ。どうだったの?」


 「どうもせんぞ? 強いて言えば太刀が折れたくらいじゃの。火炎龍樹とやらは表面が鱗状になっておるうえに相当に硬かったが、棒で叩き落してやったというところか」


 「叩き落す?」


 「コトブキって<魔闘仙>でしょ? だから【仙術】が使えるんだけど、その一つである【空仙歩】を使って空中を走ってたわ。そして火炎龍樹の上をとってブン殴ったのよ」


 「………つまり、やりたい放題をやったわけね」


 「失礼な。出来る事だからやっただけよ。それが駄目なら出来ぬようにしておけばよいのだ。出来る事とされている以上は、やるに決まっておる」


 「あー、うん。確かに【仙術】としてあるなら、使うのは当たり前だよねー。………使えるなら」


 「妾は使えるので何の問題も無いの。コトブキはちょっと足りんかったようじゃが、修行が足りんと言うぐらいか」


 「ちょっとだけなんですね………。やっぱりコトブキさんもそちら側なんだと、改めて分かります」


 「改めなくても元々そう」


 「まあ、それはねえ……って、何を見てるの?」


 「運営ダンジョンのスレッドじゃ。誰がクリムゾントタースを倒したか話しておるが、コトブキだとバレておるの。というより他の者の名前が出てこん。有名なヤツはちょこちょこ書き込んでおるが、こういうのは嘘でも自分がやったと書きこむヤツが出るのではないのか? だーれもおらんぞ」


 「それは当然。コトブキ以外がやったなんてあり得ないし、自分がやったって言い出したら即座に嘘吐き扱いされる。それでも反論したら、証拠を撮ってこいと言われるだけ」


 「ほうほう、成る程の。それで誰も嘘を吐いてまで言わぬ訳か」


 「他の誰もが可能性のある事なら言うヤツが出てくるけど、レベル168はねえ………流石に嘘だって簡単に分かるし、本当に倒せるなら証拠を持ってこいってなって当たり前よ」


 「実際に天使と悪魔が驚くぐらいだもんねー」


 「いや、【純潔】だけではなく私も驚いているのだが? 流石に彼のレベルでは戦ったりしない筈なんだがね?」


 「そんな事を言っても無駄じゃないー? だってそういうヤツだしー」


 「事実だけど、割と容赦なく言ったわね。今は精神の片隅に居るらしいから大丈夫でしょうけど」


 「問題ないの。聞いてもおらぬよ」


 「カンカン」



 おっと、ファルが来たようじゃ。

 食堂に移動して夕食をとらねばな。


 今日は………牛と豚のハンバーグか。これもまた良いの。

 毎回パンであるところがアレじゃが、米は現実で食せばよいか。

 そう考えればパンもまた良し。



 「む………箸で切ったら肉汁が溢れ出してきたか、勿体ないのう。ぬぬぬ………仕方あるまい。諦めるか」


 「パンだと掬って食べる人とか居るけど、どうなの? マナー的に」


 「問題ないんじゃない? 私はしないけど、する人とか居るよ。それに向こうもそうだけど、時代によってマナーとかは変わるからね。今はやると下品になるのかな? スープの残りをパンで掬う事とかもするから問題ないとは思うけども……」


 「そもそもスプーンだと全てを掬って飲めないから、パンで掬って終わらせるんだと思う。向こうのマナーは詳しくないけど、分からないならしないという形で済ませてる」


 「まあ、分からないなら迂闊な事はしないに限るわね。変に見られても困るしさ」


 「日本だと食べられないほどに出すのは駄目だけど、食べられないほどに大量に料理を出すのがマナーの国もあるしね。そして残すまでがマナー」


 「日本だと残すと口に合わないって意味になっちゃうからね。向こうは残すのが当たり前だから真逆だけど」


 「残り物は下の人が食べるんだっけ? そんなのを漫画で読んだ気がする」


 「確かそう。だからこそ沢山作っても無駄にならない。日本の場合はそれぞれが分かれてるから違うけど」


 「それでも残った物は台所方などが食しておった筈じゃぞ? 勿体ないからの」


 「そうなんだ。まあ、当然といえば当然だよね。そういう時代は」



 うむ、今日の食事も良かったの。

 それではさっさとソファーの部屋からマイルームに戻ってログアウトじゃ。

 現実での夕食が妾を待っておる。


 VR機器を外して、と。

 よし、とりあえず体を妾のものに変えて、後は雑事と夕食の準備じゃの。

 ついでに日の本を危ぶめるゴミの調査もしておくか。

 スマコンとかいう便利な道具があるでな。


 ほんに楽な世の中になったものじゃ。

 昔は夜な夜な降りて調べておったが、今はお手軽に調べられる。

 簡単になったものよ。


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