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0738・火炎龍樹との戦い




 とりあえずクリムゾントータスとやらを倒して<深紅亀の甲羅>と<深紅亀の肉>を手に入れた。

 ………うん? 珠の知識には<深紅亀の肉>というのは無かったぞ。

 つまり初めての素材とやらであり、しかも肉とは! これは幸先が良いのう。


 亀の肉は食えぬほど不味いか、スッポンのように美味かどちらかじゃ。

 この溶岩地帯には美味な肉のモンスターが多い、これは期待出来るのう。



 「どうしたのよ、ニヤニヤして?」


 「先ほどのクリムゾントータスから<深紅亀の肉>が手に入ったのだ。これはどんな味なのかと期待をしておってな」


 「あー……期待しているところ申し訳ありませんが、普通ぐらいの食べ物ですよ。ただし男性には異様に効くらしいと聞きます。女性にも効くそうですが、男性ほどは効かないようですね」


 「ふむ。肉の旨さよりも、精力増強効果の方が強いか。残念ではあるが、仕方がないの。これはお蔵入りにしておくか、それとも適当に売り払うべきじゃな」


 「それは勿体ないですよ。肉そのものには精力増強効果しかありませんが、薬にする事でスタミナ回復薬になります。飲むと回復力が上がり、スタミナの消費も抑えられるという物で、かなり有用な薬ですので適当に売るのはちょっと……」


 「ぬぬ? それならコトブキの師に売り払えばよいか。あれなら利用する術も熟知しておるであろうし、損は無い筈じゃ。とりあえず皮を手に入れねばならんから、あの近い奴は全員で倒すかの。お主らも暇じゃろうし」



 そう言うと皆が頷いたので、妾達は再びクリムゾントータスと戦う。

 今回は妾が全面に出る戦いではないので棒を使い、ブレスとやらを吐きそうになったらブッ叩いて止めてやった。


 ドースの三重突撃でも止まるが、アレはそれなりの助走距離を必要とする。

 故に連続で吐かれそうになると止められんのだ。

 だから妾も止める方に参加しておる。


 今回はそれなりに時間が掛かったものの、最後はセナが【闘刃】とやらで首を切り裂いて勝ったようじゃ。

 切り裂くのに随分と時間が掛かっておったが、魔力や闘気というものに耐性を持っておるようで、その所為で難しかったみたいであるな。


 こやつは刃物を使うのを嫌うので、コトブキも無理に持たせようとしておらなんだ。

 なので妾も無理に持たせる気は無い。

 己の好むものの方が、結果として上手くなるからの。

 <好きこそものの上手なれ>と言うし、無理に変えさせても誰も得をせん。


 それよりも、そろそろ<火炎龍樹>とやらと戦わねばなるまい。

 相当に厄介な相手じゃと思うが、覚悟をして挑もうか。



 「そろそろ<火炎龍樹>とやらに挑もうと思うが、再度聞いておく。アレは噛みつきとブレスぐらいなんじゃな?」


 「いいえ。クリムゾントータスと違って【火魔法】を使ってきたりしないけれど、代わりに【木魔法】を使ってくるわ。それも結構多彩にやってくるわよ」


 「そういう意味ではクリムゾントータスよりも厄介で面倒な存在なんです。レベルはクリムゾントータスよりも下ですけど、厄介度や脅威度は<火炎龍樹>の方が上です」



 思わず顔が渋くなってしまうわ。

 よりにもよって最も厄介な【木魔法】を使ってくるとは……。

 しかしそれを怖れていてはどうにもならん。

 相手が魔法を使おうとしたら、妾が本気で斬るしかあるまいな。


 とりあえず近付いて【鑑定】とやらで確認するのが先じゃ。

 それをせねば始まらん。



 ―――――――――――――――


 <火炎龍樹> 魔物 Lv159


 古の時代に生えていた木に龍の血が掛かり変質した、いわゆるトレント系の一種。ただし根すら自らで抜き、自在に動き回るという非常に厄介な性質を持つ。特に炎弾のブレスよりも【木魔法】の方が厄介だが、肉体となる幹の洞からもブレスを吐いてくるので注意しよう


 ―――――――――――――――



 「意味が分からん。洞からブレスを吐いてくるとは……もうちょっとマシなのは居らなんだのか。あまりに意味が分からんではないか」


 「言いたい事は分かるけど、そういうモンスターとして諦めるしかないわね。それとも止めておく?」


 「あり得んの。妾が目の前の敵から逃げるというのは、余程の相手でなければ無い。目の前に敵がある限り討滅するのみよ」



 太刀を構え深呼吸。

 そして妾は走る。

 まずは全力の一撃を見舞ってやるか。

 先ほどのクリムゾントータスとやらの戦いで、十分すぎるほど男子おのこの体には慣れた。

 久しぶりなのと珠の体なので感覚がズレたが、今は問題ない。



 「チェェェェェェェェェェェェェェェェィ!!!」


 バキィッ!!!!


 ただただ破壊衝動と殺意をを篭めて振るうのみ。

 されど太刀では木を相手に限界がある。

 当たり前の事ではあるがの。


 しかしまさか一撃で太刀が駄目になるとは思わんかったわ。

 これは予想外であった。



 「グルァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」


 「ぬう。まさか咆哮だけで後ろに下がらされるとは、やってくれるのう。まるで壁が迫ってきたかと思うような衝撃であったわ。しかしそうでなければ楽しくはない、全力で掛かってくるのだぞ?」


 「スゥ…………「ズドォン!!」ッグボォッ!?!!?!」



 ブレスを吐く為に吸い込んだのであろうが、ドースの突撃の御蔭で口の中で暴発したようじゃの。

 なかなかに素晴らしいタイミングであったわ。

 このまま一気に押し潰してくれる!!


 妾は仕方なく重結晶の棒を持ち、それを使っての立木打ちを始める。

 相手は元々くねくねした木であり、葉は無く先端が龍の顔をしておった。

 それが今は根を抜き、自ら浮遊しつつこちらに攻撃を放とうとしておる。


 やはり龍として空を自在に駆けるようじゃのう。

 妾も本体ならば容易いが、人の身に降りておる時には簡単とまではいかぬ。

 もちろん出来るのだが、当たり前のように出来る訳では無い。

 そのうえ神力を使わねばならん。


 つまりこのゲームの中では全く使えぬという事よ。

 とはいえコトブキは良いスキルを持っておるでなぁ!!


 タッタッタッタッタッ!



 「カァァァァァァァァァァァ!!!」


 ドゴンッ!!


 「ギュアッ!!?!?!!!」



 コトブキはこのゲームの中では仙人じゃ。

 そして【空仙歩】というスキルを持っておった。

 飛べずとも駆ければ空を飛ぶ敵と戦う事は十分に可能じゃ。

 出来ねば引き摺り下ろす必要があるが、その必要が無くて助かるわ。



 「そぉーれ、落ちろぉ!!!」


 ズドォンッ!!!


 「ガアッ!??!!?」



 空で跳び、落下の力も加えて全力で殴ってやったわ。

 そこまで高くは飛んでおらなんだが、空は貴様だけの場所ではないぞ。

 舐めてもらっては困るわ。


 落ちてきたからか皆が一斉に集ってタコ殴りじゃのう。

 酷いぐらいにボッコボコじゃ。


 まあ、こういう輩は二度と飛ばさんに限る。

 いちいち空に逃げられたら面倒極まりないからのう。

 さて、妾もボコボコにしてやるか。


 その後は苦労も無くあっさり勝利したわ。

 拍子抜けしたものの、飛べなくなればこんなものなのであろう。

 まあ、敵一体を寄って集ってボコボコにしたのじゃから、褒められた事ではないが。



 「ふむ。手に入ったのは<火炎龍樹の幹>と<火炎龍樹の樹液>か。幹はともかく樹液がよう分からんの」


 「<火炎龍樹>の樹液って、確か<温熱薬>に必要な素材じゃなかったっけ?」


 「ええ、<温熱薬>に必要な中心となる素材です。飲んでよし、塗ってよしの便利薬」


 「なんじゃそれは? 飲む薬を塗るのか?」


 「飲むと数時間ほど寒さを感じなくなるくらいに体が温まるの。で、塗るとそこが温かくなるから、肩こりとかに効くのよ」


 「樹液そのままだと火傷をする程に熱くなってしまうので、薄めるのが薬にする理由だと聞きました。それに樹液のままだと粘度が非常に高いらしいので、飲み込む事も出来ないそうですよ」


 「ほうほう。まあ、役に立つなら何でもよいか。それより幹の方を集めねばならん。これは優秀な木材みたいじゃからの」


 「そうですね。レベルを考えても現状を考えても優秀な素材で間違いありません。ここで頑張って手に入れましょうか」


 「そうね。素材を手に入れれば手に入れるほどに戦闘が楽になっていく筈よ。コトブキ……じゃなかった、ナミが作ってくれるからね」


 「そうじゃの。それでも素材を稼ぐまでは今のままじゃが、太刀がああもあっさり壊れるとは思わなんだわ。もう少し良い物を作らねばな」


 「あれも重結晶製であり、結構良い物なんですけど……。やはり<火炎龍樹>相手では足りませんでしたか」


 「仕方がないけど、厳しいわね。私も注意して薙刀を使ったくらいだし」


 「私はウォーハンマーなので気にせず殴っていましたけど、剣などの刃物は折れる可能性が高そうですね」



 妾の一撃で折れるくらいじゃから、根本的に刃物では厳しい相手じゃの。

 仕方ないが、太刀は戻って作るまでお預けか。


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