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0737・運営ダンジョン48階




 珠の部屋に戻ってきた妾はVR機器を着けてログインをしようとして失敗した。

 肉体を変えていたのを忘れておったので、元の肉体、つまり珠の姿へと戻す。

 そして再びログインしようとすると、すんなり通った。


 やはり妾の元の肉体に寄せると女性扱いになってしまい、本人とは認められぬようじゃ。

 面倒というか、安全設計というかは微妙じゃのう。

 ま、戻せばいいだけなので大した事ではないがな。


 ログインした妾はマイルームで声をかけ、天使と悪魔の二人にも連れて行く事を言うておく。

 確か珠はフィーゴとやらを置いて行くつもりだった筈じゃ。

 ファルのレベル上げをせねばならんと思っておった……んじゃが、経験値が入らぬようになったんだったの。


 となると………いや、盾を使える者は多くて悪い事はあるまい。

 フィーゴとやらは置いて行くか。

 アレはレベル上げがしやすいからの、憑依させれば済むのだし。

 最悪は妾に憑依させて、単身で戦えば早かろう。


 装備を確認して問題が無い事を調べたら、妾は運営ダンジョンの46階に行く。

 ここからは一気に走って行き、大きな亀がおる48階へとやってきた。


 すると珠が見た景色とは違い、なにやら赤い木が生えておった。

 しかもニョロニョロした形をしておる木じゃし、先っぽが龍の顔をしておるの。

 アレが<火炎龍樹>というものか。

 成る程、成る程。



 「そなたらに聞きたいのじゃが、<火炎龍樹>という名のモンスターを知っておるか?」


 「………やっぱりあれは<火炎龍樹>だったのね。前になかったのに変だなと思ってたのよ」


 「<火炎龍樹>とはまた厄介なものを。アレは特殊なモンスターで、古に龍の血を浴びた結果、変質してしまったものだと言われています。木のモンスターの癖に炎のブレスを吐いてきますし、あのモンスター動くんですよ」


 「モンスターなのじゃから動くぐらいするであろう。当たり前の事ではないのか?」


 「そうじゃなくて、木の癖に歩き回って動き回って飛ぶのよ。それが<火炎龍樹>」


 「…………歩き回って動き回って飛び回る木ってなんじゃ? 聞いた事も無いが、ここではそんなものも居るという事か。けったいな事じゃが、まあ良い。敵となれば滅するまで」



 妾は珠が持っておった武器の中でも太刀を取り出して構え、まずは一番近いクリムゾントータスとやらに突撃する。

 皆も妾の標的が分かったのであろう、一斉に突撃を開始した。


 妾が持っておるのは重結晶とやらで出来た太刀じゃが、なかなかの業物に見える。

 まあ、このゲームとやらの中では滅茶苦茶な製法じゃが、誰も気になどするまい。


 現実とて切れ味や頑丈さがあれば何でも良いのじゃし、刀に魂など宿っておらん。

 妾がそれを言うてよいのか、八百万の神々ではないのかと言うてくる者もおるかもしれぬが、作っただけの刀に魂など篭もっておらぬ。

 篭もるのは刀匠の拘りよ。


 そして刀匠の拘りなど、使う側にとっては如何様いかようでもよいものでしかない。

 大事なのは、その刀が殺す為に使える道具か否かじゃ。

 それ以外に必要なものなど武器には無い。


 ちなみに刀に魂は宿らぬが付喪神つくもがみは宿る。

 なので大切にする必要があるのだが、妖刀などもある故に何とも言えん。

 祟りが宿る刀や、神の依代になっておるものもあるしの。


 また神そのものである場合もある。

 あの方の持たれていた十束剣とつかのつるぎ天之尾羽張あめのおはばりもそうじゃ。

 正しくは<天之尾羽張神あめのおはばりのかみ>、もしくは<伊都之尾羽張いつのおはばり>という名じゃからの。


 さて、そんな事は頭の片隅に追いやり、派手に狼煙を上げるとするかの。



 「イィィィィィィヤァァァァァァァァァ!!!!!」



 ふむ。

 男子おのこの体じゃから、ちと上手くいかんかったか。

 とはいえ十分じゃろうよ、一撃で首の半分以上は斬れたのだからな。

 珠はここまで出来なんだようじゃが、まだまだ足りておらんの。


 あの子は模倣するのは得意じゃが、己の業というのが無い。

 それが中途半端になっておる理由だ。

 己の破壊衝動と殺意のままに振ればよいというのに、どこか心の片隅で綺麗に振ろうとする。


 己が<山雷やまつち>の正統な子孫であると理解しておらぬのだ。

 既に業を修めたのであらば、後は己の狂気を持って振り下ろすだけよ。

 そこにそれ以外は要らぬ。故に未だ届いておらぬというわけだ。



 「ケェェェェェェェェェェェェェ!!!!」



 ふん。

 妾に掛かれば返しを必殺とするも容易いわ。

 ゲームの中じゃから一撃で終わらんかったが、妾の本気であれば一刀で終わっておる。

 そういったところは現実とは違うか。

 これはこれで面白いから構わぬがな。



 「………何と言いましょうか、流石は神と言うしかありませんね」


 「このレベルでクリムゾントータスを倒せるんだもの。しかもたった二撃で」


 「この程度の事など容易いわ。それより一刀で終わらんかった事が腹立たしい。これは太刀ではいかんのう。十握剣とつかのつるぎを作るべきか? いや、それだと剣に分類されてしまい、スキルとやらが効かんようになる。面倒じゃな……」


 「長柄の武器でも作ったら? コトブキの能力があるなら錬金術師なんだし、作れるでしょ」


 「まあ、作れるのう。作れても矛だけは絶対に作らんがな。誰かの為なら作ってもよいが、妾は絶対に使わん。二度とじゃ」


 「それは好きにしたらいいと思いますが、何かあったようですね。深堀はしませんけど」


 「うむ、それが良かろう。妾が再び矛を使えば、次は何が起こるかわからん。もちろん妾だけでは<国産み>は出来んが、それでもある程度の事は出来るでな。色々と問題が出てくる」


 「何か今、聞いてはいけない事を聞いた気がします」


 「<国産み>とかいうヤバい言葉でしょ? 神なんだから国ぐらい産めて当たり前なんじゃないの?」


 「別に妾が国を産んだ訳ではないぞ? 海を掻き回して大地を作り上げただけじゃ」


 「凄い事をサラッと言われましたよ?」


 「神だから仕方ないわよ。出来るから出来るって言ってるんでしょ。私もう考えないようにしてるから」


 「それが一番良さそうですね。考えても無駄ですし……」


 「作るなら薙刀か長巻かじゃのう。この太刀では短すぎるし、そもそも太刀や刀はあくまでも持ち運びの良い物じゃ。決して戦いを第一に考えた物ではない。かといって金砕棒はのう、業の入るところがあまりなくてつまらん」


 「では槍はどうなのでしょう? コトブキは持っている筈ですから、すぐ使えるのでは?」


 「槍ものう……良し悪しがあるから、何とも言えんところだ。妾としては斬りたいのだ、出来れば滅多斬りにしたい。コトブキはどちらかというと殴るか突き刺すかが好みのようじゃがの。それはコトブキの好みであって、妾の好みではない」


 「ああ、はい。好みで武器を決めるのですね」


 「何でも使い熟せるのじゃから、好みで決めるしかあるまい? そも、あらゆる状況を考えれば、全ての武器を持つのが一番強いとなる。しかしそれは現実的では無いじゃろう? ならば好みで良かろうよ。後で合口は作っておくでな」


 「「あいくち?」」


 「短刀。つまり短い刀の事じゃの。鍔は無いが、それ故に使い勝手が良い。そして接近されても使える。ならば後は適当で構わんという事よ」


 「まあ、私も短剣を使うから分かるけどね。持ってれば安心だし、後は長柄を使ってれば済むから」


 「そういえば、そなたは薙刀であったな。ならば妾は長巻にするか。あの木もぶった切らねばならんからのう」


 「<火炎龍樹>は高位のモンスターなのですが、先ほどクリムゾントータスがああなりましたからね。何か可哀想な終わり方をする気がしてきました」


 「それはないじゃろうよ。亀はしょせん肉なのだ、しかしアレは木ぞ。斧であってさえ一撃では切れまい。だからこそ面白そうではあるのだがな」


 「「………」」



 なんじゃ、言葉は無しか。

 妾なら……と思うておるのかもしれぬが、流石の妾でも、あの太さの木は難しいのう。

 そのうえ表面が龍の鱗のようになっておるのが見えておる。

 一筋縄ではいくまい。


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