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0736・現実での昼食と陥落寸前




 ふぅ……なかなかに良かったわ。

 たとえ電脳空間といえども食事が出来るのはありがたいの。

 できれば幾らでも食せるようにしてほしいが、飢餓度や渇水度とやらの所為で無限に食す事は出来ぬ。

 残念な事じゃ。


 とはいえ空想の食べ物を味わうというのも良き経験である。

 これはこの時代だからこそ出来る経験であり、妾も初めての事よ。

 何であってもそうじゃが、初めては心躍るもの。


 さて、余韻に浸ってもおれぬ故、今度はマイルームに戻りてログアウトをせねばな。

 ソファーの部屋に戻って、マイルームへと移動し、天使と悪魔とファルを召喚したらログアウトじゃ!


 現実へと戻ってきたら早速………ふむ、ちょいと不便じゃの。

 今までは一時的だったから良かったものの、此度は妾が長くこの体を使う事となろう。

 仕方ない、少々神力を使って弄るか。

 これも我が子孫ゆえに出来る事よな。


 ………よし。妾の本来の姿に近付いたか。

 しかし人間の体ゆえに今の美しさで限界じゃな。

 妾の本体はこんなものではないのだが、致し方あるまい。

 おっと、そんな事より食事じゃ。

 現実でも食べねば!


 まずは雑事をささっと終わらせて、そして昼食作りを始める。

 ……この肉体に知識がある故、簡単に今日の昼食が分かるのう。

 特に今日は余っている野菜を使った野菜炒めじゃからな、簡単で助かる。


 ぬ? 上からドタドタと音がしてきたわ。

 という事はあの容れ物か。

 いちいちドタドタと音を立てるとは愚か者め、淑女の作法も知らんとみえる。

 あれは容れ物ではないな、童女と呼ぶべきじゃ。



 「うわ!? 遅かった!!」


 「何が遅かったじゃ、この田分け者! 貴様はもはや容れ物ですらないわ。この童女めが!」


 「………」


 「なんじゃ? 何を固まっておるのだ。…………童女? 如何いかがした?」



 仕方なく料理を途中で止め、妾は童女に近寄って確認する。

 こやつまで崩れると珠の心が更に傷付くやもしれぬ。

 隔離したとはいえ体は珠のもの故にな、何かあっても困る。

 なので仕方なく額を触って熱がないかを確認した。



 「ふむ。特に熱があるわけではないのう……」


 「………///。な、なにすんのよ!? 私は大丈夫に決まってるでしょ!!」



 ほう………こやつ、成る程の。

 一応は美貌の才と能の一部もこやつに行っておるのだが、浮いた話が知識と記憶に無かったのでおかしいと思っておったのだ。

 妾や沈女しずめと同じくこちら側か。

 それもまた、良きかな



 「どうやら人間程度の美貌の才と能しかない童女は、妾の美貌に耐えられなんだようじゃの?」


 「なっ!?///」


 「ほーれ、その反応が答えじゃ。妾は朴念仁ぼくねんじんでは無いぞ? むしろそういう部分にはさといのだ。そなたや珠の知り合いの女子おなごにも似たような能を持つ者が居ろう。オウカとか呼ばれておった女子おなごがな」


 「お、オウカさんがどうしたっていうのよ///」


 「アレの持つ能は、妾の持つ力の劣化版に過ぎぬ。これで分かるな?」


 「あっ………。そ、それって、つまり!!///」


 「くふふふふふ、童女は愛い奴よのう」


 「な、何を言っ、うむっ!?//////」



 ふむふむ。

 こやつそれなりの美貌を持つからか、女として愛された事が無いの。

 母親もそれなりの美貌を持つからか、美しくて当たり前だと思われておったか。

 本来ならそちらの才と能は評価される筈じゃが、母親の所為で評価されんとは……。



 「あむ、ん……チュッ。あっ………」


 「うん? 妾との口付けが足りぬか?」


 「ーーーーッ!!/// バッカじゃないの! そんな事ある訳ないでしょ!///」


 「ほうほう、これが「つんでれ」とかいうヤツか。よきよき」


 「違うわよ! そんなわけないでしょ!//////」


 「ふふふふふふ、愛い奴じゃの。夜を待っておれ、愛されなんだそなたを十二分に満足させてやろうぞ。未通女おぼこなど妾の手に掛かれば容易いわ」


 「するわけないでしょ、そんな事!!!///」


 「口では何とでも言えるが、妾の、つまり神の力を欺くなど人の子に出来るわけがなかろう。ま、とりあえず椅子に座って待っておれ。料理の途中じゃ」


 「…………分かった」



 ささっと昼食を作りて食す。

 少し揶揄からかい過ぎたのか童女は食事中も黙っておった。

 とはいえ負の感情を持っておらんのは分かっておる。

 ならば放っておくのが一番良いの。

 己の内面と向き合う時は必要じゃ、誰であろうとな。



 「ごちそうさま」


 「うむ。妾もごちそうさまじゃ」



 食事の終わった食器を持っていき、洗い物を始めるものの童女はまだ座ったままか。

 まあ、幾らでも悩むが良かろう。

 それが無ければ善き者への道は進めぬのだ、悩むが人というものよ。

 悩まぬような愚か者は悪徳しか持たぬ。

 かつて沈女しずめが生きていた頃のようにな。



 「ねえ。私そんなに愛されてないってアピールしてる? それほどに情けない?」


 「それは勘違いじゃの。若かろうが老いておろうが、愛されぬ事に慟哭を持つは当然の事。それは恥ずべき事ではない。もし恥ずべき事だというのであれば、そのような者は今すぐ腹を切れ。神でさえ、愛されぬ故の慟哭を持つのだからな」


 「………そう、なんだ」


 「妾はあの方の愛を永劫に失うた。それ故に妾の、<黄泉津大神よもつおおかみ>のかおの幾つかは怒りと怨みと憎しみなのだ。それ故の破壊衝動と殺意である。つまり、それは愛を欲するが故のモノ」


 「………」


 「<黄泉津大神よもつおおかみ>たる妾でさえそうなのだ。人間如きが奇麗事をぬかすな、と妾は神の立場でのたまうわ」


 「えっ? のたまうの?」


 「童女よ。お主、少しは言葉を学べ。のたまうとは上位が下位に掛ける言葉の事を指すのだ。<黄泉津大神よもつおおかみ>たる妾が言うのだから、のたまうで正しかろうが」


 「そ、そうだったんだ……。知らなかった」


 「まったく……! 珠もそうじゃが昨今の言葉は乱れておるのう。全てに意味があるのじゃから、せめて正しく意味を知って使え。と言いたいのだが、思金おもいかねめが言葉が増える事を喜んでおるので無理か」


 「おもいかね?」


 「はぁ……。<思金神おもいかねのかみ>とは<高御産巣日神たかみむすびのかみ>の子で、天孫降臨の際に<邇邇芸命ににぎのみこと>に付き添うた神の事よ。アレは知恵と学問の神じゃからの、新しい知識が生まれる度に喜びよる」


 「あー…………つまり、新しい言葉が生まれる為には乱れていた方が都合が良い?」


 「まったくもって、その通りよ。アレじゃ、西の方の言葉でいうところのケイオスというヤツじゃな」


 「ケイオス? ……ああ、カオス。つまり混沌か」


 「そもそも、その概念は向こうで生まれたものじゃからの。日の本で生まれたわけでは無い」


 「なぜ?」


 「そもそも混沌としておったのだ。秩序が少ない状態では、混沌を混沌と把握するのは難しいという事じゃの。というか妾はやる事が終わったから、珠の部屋に戻るぞ? 童女よ、そなたも戻れ」


 「私って容れ物の次は童女なのね」


 「家の中をドタドタ走る女子おなごなぞ居らぬ。それは童女というのじゃ」


 「………まったくもって反論できないわ」


 「当たり前じゃ、唯の事実なのだからのう。……椅子から立ち上がれぬならば、妾が口付けで正気に戻してやろうか?」


 「結構よ!///」


 「そう恥ずかしがらずでもよいがな? 妾は沈女しずめともまぐわうからの、今さらというヤツじゃ」


 「だから結構だって言ってるでしょ!!///」



 椅子から立ち上がってドタドタと二階に上がって行ったが、だから童女だと言うておるのだ。まったく。


 それにしても童女は既に陥落しそうじゃったの。

 今夜は片手間の楽しみとして愛してやるか。






 ………愛されぬもの同士の慰め合いでしかないがな。


別作、「時空の旅人 ~イシスとヌン~」が200話を超えました。宜しければ、御一読ください。


https://ncode.syosetu.com/n1425lv/

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