0727・溶岩の川
溶岩の川をギリジャンさせようという運営の悪辣さ加減に閉口してくるけど、これは間違いなく越えて行かないといけない場所だろう。
実際に溶岩が近すぎるし、今はまだ平気だけど、たぶん近付いたら【耐暑(大)】でも足りないと思う。
それはともかくとして、ここ48階も突破して先に進むしかない以上は避けて通れないね。
まずは溶岩の川に近付こう。
「恐いけども、そこまで川幅は広くないようだし、【身体強化】をすれば跳び越えられると思う。問題はラスティアも言った勇気が出せるかどうかだね。全力で走って行って跳び越えれば、そこまで暑さは感じないでしょ」
「まあ、そうだと思うけど、アレを跳び越えるって事じたいがイヤよねえ。何がイヤって言えば、【身体強化】をしなくてもギリギリ届きそうなのがイヤ」
「言いたい事は分かります。ギリギリ届きそうにワザとしてあるのでしょう。当然ですが、そんなギリギリに挑戦する愚か者など居ませんよ。誰であろうと【身体強化】を使うでしょう。ですが……」
「神がそんな事を思いつかないほど、頭が悪い事は無いってところなのよねえ。何だか他に一つ二つありそうな気がする。例えば【身体強化】したら落ちるとか」
「流石にそれは無いのでは? そこまですると、何回死ぬか分かりません。もはや稀人を殺したいようにしか思えませんよ。それに……何かのスイッチ的な物は無さそうですし」
「流石にまたそれを使うって事は無いでしょ。仮に用意していたとしても先の方になるんじゃない? ここはアレを跳べという事だと思うわよ」
「とりあえず近付いて、石でも投げて調べてみよう」
僕達は暑いと思える場所まで近付いたが、5メートルくらいの所から暑さを感じるようになってきた。
なのでそこで止まり、適当に色々な方向へと石を投げてみる。
すると……。
「また、こういうトラップが仕掛けてあるかぁ……。溶岩の川の中ほどで、空中に見えない壁があるなんてね。【身体強化】で思いっきりジャンプしたら見えない壁に体をぶつけて落ちるじゃん。本当にやってくれるよ」
「ある程度の高さにあるのがポイントよね。あれより低く飛べば【身体強化】を使っても良いんでしょうけど……そもそも、あの壁どこまで繋がってるのかしら? ちょっと調べてみない?」
「もしかしたら壁が無い場所もあるかもしれませんしね、探してみましょうか。ここの魔物は<赤美味豚>ですから、戦闘をして悪い事はありませんし」
という事で僕達は<赤美味豚>を狩りながら、溶岩の川の上に石を投げて壁の有無を調べていく。
そして下流にある程度進んだ所で壁の無い場所を発見した。
「どうやらここなら高く跳び上がっても問題ないみたい。だけど……」
「ピュー……!」
「あの鳥ね。ここに来たら出てきたみたいだけど、私達が跳ぼうとしたら絶対に邪魔してくるでしょ。というか、その為のモンスターにしか見えないんだけど」
「ですね。間違いなくその為のモンスターでしょう。本当にイヤらしい配置です。間違いなく嫌がらせの為に出てきてますよ」
<リ○クの冒険>でも上を旋回しながら邪魔してくるモンスターって居たなぁ。
名前は知らないけど、一つ目で炎を落としてくるヤツ。
間違いなくあれをモチーフにしてるよね?
本当に厄介な運営だよ、まったく。
「とりあえず近付いたら攻撃してきそうだから、ちょっと行ってみるよ。もしかしたらジャンプするまで様子見をするかもしれないけど、それじゃタイミング的に間に合わないと思うんだよね」
「確かにそうですね。ジャンプしてからでは、こちらへ邪魔する前に向こう岸に着地してしまいます。そこを攻撃して落とすという可能性も否定できませんが……」
「仮にそうするとしたら、間違いなく強風を吹かせるでしょうね。となると【風魔法】かしら? 言っててそんな感じがしてきたわ」
僕が溶岩の川に近付いても、上空の鳥は何もしてこない。
これは本当に跳んだ後に何かしてくるのかもしれないね。
となると、実際に跳んでみるしかないか。
僕は皆に説明し、助走をつけてから一気に跳ぶ。
当然ながら【身体強化】をしているので余裕で届くものの、空中の僕に対し鳥が突っ込んできた。
黄色い鳥なんだけど、まさかの【アースウォール】を使ってきて焦る。
僕が着地する筈の所から土の壁がせり上がってきたものの、上がってくる壁の上部を掴んだ事で事無きを得た。
反射的だったけど、反応できて本当に良かったよ。
「「コトブキ!?」」
「大丈夫!! 上を掴んでるから落ちないよ。それにしてもやってくれるよ、あのクソ鳥」
僕はそう言いつつ、土壁の上部に登って何とか態勢を整える。
上空では旋回した後に再び鳥が突っ込んできたので、【ダークジャベリン】を発射して叩き落とす。
正面から突っ込んできた鳥は見事に直撃し、その一撃で死亡。空中で消えていった。
遠すぎる所為で鑑定も出来ないし、一撃であっさり死ぬしで腹立たしい鳥だよ。
本当に嫌がらせの為だけに配置されてるね。
そして土壁が下りると、再び鳥がやってきた。
おそらくアイツは無限湧きだろう。
しかし邪魔なのでどうにかしたいところだ。
「あの鳥をどうにかしたいけど、何か良い方法はあるー?」
「エストが何とかするってさー!」
「了解!!」
飛べるエストが何とかしてくれるなら、それが一番いいね。
本当のソロは多分だけど、土壁の上部を持って登るのが正解だと思う。
最初から土壁が出てくると分かっていれば対処する方法はあるんだしね。
しかしそれを知らなかったり、慌てたら土壁にぶつかって落ちるんだろう。
となると空中の見えない壁、あれ元々跳んでいけるようにはなってないな。
何となくそんな気がする。
低空を真っ直ぐ飛べれば良いけど、それは無理ってものだしね。
あれより低く飛べば……って思う心理が罠かもしれない。
なので真面目に探して良かったと思う。
一度たりとも溶岩になんて落ちたく無いしね。
エストが空中で黄色い鳥と戦っている間に、皆はどんどんとジャンプして渡ってくる。
結局はエストに何とかしてもらえばよかっただけだった。
戦闘をしている間は黄色い鳥も土壁を出せなかったみたいだし。
それに皆が渡り終わったら何処かへ行ってしまったしね。
本当に嫌がらせだけの存在だったよ。
溶岩の川を渡り終わった僕達は進んで行き、途中で階段を発見したけどスルーする。
何故ならZ○Pの可能性が否定できないからだ。
あの溶岩の川を跳ばなくても戻れるようになってるんじゃないかと思ったわけ。
「というより、その可能性は高いと思うわ。前の戻される階段も、暑さに対する装備を身に着けていない稀人が、安全に帰れるように作られてたんじゃない?」
「そう考えれば、あの辺りに戻される階段があるのは不思議ではありませんね。あれは罠ではなく温情だったと」
「溶岩の川とかいう、温情の欠片も無いのがあったばかりだけどね。それはともかく、戻される階段は多分そうだと思う。という事で、僕達は使う必要の無いものだね。それは無視して別の階段を探そう」
「アレは流石に溶岩の川に近すぎますから怪しいですしね」
黄色い鳥以外は<赤美味豚>しか出てこないが、僕達は気にせず倒しながら先へと進む。
そこから溶岩の川を二つも跳び越える必要があったが、その苦労もあって階段を発見。
そこを下りると溶岩地帯だったので、49階で間違いないだろうと思う。
新たに気合いを入れて進もうとすると、初めての魔物が現れた。
っていうか、見た目は燃え盛る牛だ。
―――――――――――――――
<火炎牛> 魔物 Lv91
燃え盛るような模様の牛の魔物。本当に燃えている訳ではないが、強烈な体当たりと炎のブレスを放ってくる。危険な魔物ではあるものの、その肉は噛むほどに旨味が溢れる上質な肉
―――――――――――――――
この溶岩地帯では肉の美味い魔物が出てくるって決まってるのかな? 豚の次は牛だとはねえ。
とはいえ豚ほどじゃないみたいだけどさ。
今日は7話一気に投稿します




