0714・運営ダンジョン48階にて
2001年 1月26日 金曜日 AM8:23
昨日は魔鋼が優秀なのが分かったけど、使うアイテムに質の良い炭が必要なので、品質の高い木材をユウヤに売る必要がある。
なので今日からせっせと作らないといけない。
まずはログインして売り上げを回収し、倉庫に詰めて売り物をプレイヤーマーケットに出す。
後は皆に挨拶して三人に呼び出す事を伝えたら、ソファーの部屋へと移動。三人を召喚した。
ファルの朝食の手伝いを頼んだら、ソファーに座る。
すると、いつも通りイルが腕を絡めながら話し掛けてきた。
「昨日のメイスをアルゼルに見せたけど、予備としては今のところ十分だって言ってた。ね?」
「まあ、あれで十分かなー? あくまでも予備だけど、癖が無いから使い勝手はいいねー。とにかく硬いのでブン殴れば済むのは楽だよ」
「【暴食】は技よりもパワーだからそれでいいのだろうけど、技術で勝負する者はそうは行かないよ? そもそも力で振り回せばいいのは鈍器だけなのだしね」
「魔鋼が素材の物は割と振り回していいと思うけどー? それなりに耐久力はあるしー」
「ああ、魔鋼製のメイスだったのか。なら尚の事、好きに振り回していいだろう。アレは思っているよりも耐久力があるからね。使い勝手は良いんじゃないかな? 素材もそこまで厄介な物は使わないし」
「炭の品質が高くないと駄目みたいだけど、それぐらい?」
「それぐらいかな? 残りは魔鉄と大差無いからアレだけど、それぞれの品質が良くないと、高品質の魔鋼は作れないと思う」
「そうだね。魔鋼は品質次第で大きく化ける素材だよ。最低でも品質7以上ないと、魔鉄の方が良いくらいだ。代わりに品質7から上は性能が跳ね上がる。君の作った物がどうかは知らないけど、良かったのなら7以上ある筈だよ」
「昨日受け取ったメイスは、品質10のヤツだったよー。だから十分な性能だったねー」
「成る程。品質10だったのなら十分だろうさ。というより、なかなか出回らない魔鋼の品質だね」
「そうなの?」
「魔鋼の品質10は、どれかの素材の品質が10以上でないと作れないと聞く。だから市場ではなかなか見ない物なんだよ。私も天使になる前は駆けずり回って調べた事があるからね」
「確かに天使になる前であれば様々に探しましたね。少しでも良い物が持ちたいですし、それで生きるか死ぬかが変わってきますし」
「特に魔鋼は質の良い<鍛冶師>でないと作れないのよねえ。コトブキみたいに<錬金術師>でも作れるんだけど、あんまり作ってくれない素材でもあるし」
「それって何で?」
「魔鋼は先程エウリティアが言ったように、品質10以上の素材を混ぜなければ品質10にはならないのです。そしてそれは作る側にとって、とても面倒な事なのですよ。だからです」
「コストも無駄に掛かるしー、作るのにいちいち手間も掛かるからー、金額としては上がっちゃうしねー」
「単純にそこまでの物を求める人は多くないって事ね。もしかして品質9ぐらいが狙い目?」
「そうだね。品質9なら品質10以上の素材を使わなくても作れた筈。でも、それが売り出されたら取り合いかな? 特に剣だと取り合いになるんだよ。何たって耐久力の高い剣を求める者は多いから」
「メイスや棍棒は元々から耐久力が高いものねえ。斧も高いし、槍は耐久力が減り難い。突きのみで使ってると特にそうらしいしね。となると耐久が減りやすいのは……」
「剣なんですよ。どれだけの達人が使っても、根本的な構造の部分と使い方によって耐久が落ちるんです。そこは如何ともしがたい部分でしてね」
「カンカン」
武器談義の途中でファルが来たので食堂へと移動。
朝食を食べたら師匠の家の前で待ち、二人が来たら魔隠穴へ。
素材を稼いだら脱出し、次はバイゼル山へ。ここでも素材を掘って鉄を確保。
その後はウェズベア森へと行って、熊とスライムの素材をゲット。
その合間にトレントを倒して木材を手に入れて行く。
ユウヤに後で品質10++を売る事を伝え、炭にしておいてほしい事を伝える。
ユウヤから幾つか売ってくれと言われたのでOKを出し、時間になったので師匠の家へと戻った。
昼食を終えたらソファーの部屋からマイルームへ。
そこからリアルへと戻って昼食の用意を始める。
シズと一緒に食事を終えたら、雑事を熟してログイン。
午後からは運営ダンジョンへと行く。
今日はラスティアとキャスティが居ないけど、僕達だけでの攻略は可能だろう。
二人が居ないからモンスターを避けて進んで行く気だし。
マイルームから運営ダンジョンへと行き、46階からスタート。
すぐに暑い中へと入っていく。
昨日である程度は分かっている為、急いで進んで行き階段を下りた。
道中のモンスターは全て無視だ。
階段を下って47階。
僕達はひたすらモンスターを避けつつ進み、昨日見た赤いバリアーの階段を無視して、もう一つの階段を下りる。
そして初めての48階。
そこは大きくて真っ赤な亀が居る場所だった。
何だか嫌な予感がするので、とりあえず鑑定をするんだけど、予想は外れてて欲しいな。
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<クリムゾントータス> 魔物 Lv168
真っ赤で非常に大きく、高温の体温を持つ亀のモンスター。もっとも厄介なのは魔法ではなくブレスなので注意しよう。水系や氷系の属性を使うと得られる素材は悪くなる。素材が目当てなら弱点を狙ってはいけない
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「レベル168……。数は少ないけど、手を出しちゃいけないモンスターじゃん。………とはいえ群れに襲われるほどの数は居ないんだよね。ここから見た限りでは一匹一匹と戦えそうだし、何とかなるかもしれない」
僕が仲間達の顔を見ると、仲間達はやる気満々の顔をしていた。
おそらくだけど、僕も似たような顔をしているだろう。
ラスティアとキャスティは面倒臭いと言っていただけで、決して勝てないとは言っていなかった。
ならば一体ぐらいどうにかなる筈だ。
ついでに素早く攻略する為にわざわざ持ってきた物もあるんだよ。
そのうちの一本を使えばどうにかなる筈だ。
僕は持っていた棒を仕舞い、太刀を取り出して抜く。
久々だし勿体ないから使おうとは思わなかったんだよね。
それじゃ………行こうか!!!
僕達は一気に走ってクリムゾントータスに接近。
そしてボーッとしている相手に対し、袈裟に空を斬って発動させる。
「【稲妻】!!」
振った刀から稲妻が迸り、クリムゾントータスの顔に直撃した。
流石にあの速さの攻撃は回避できないだろう。
そう思っていたら、運良く痺れたらしい。
そこに猛攻撃を掛ける皆。
ボコボコにしているとクリムゾントータスが動けるようになり、すぐに息を吸い込んだ。
しかしそれを吐き出す前にセスが【スタンボール】を間近で発射。
それを受けたクリムゾントータスは気絶して崩れ落ちる。
皆は一旦攻撃を止め、様子見と共に僕を見てきた。
言いたい事は分かるよ、だってこれ物凄いチャンスだもんね。
僕は皆に対して頷き、持っている<稲妻の太刀>を仕舞って、重結晶製の太刀を取り出して抜く。
そして<俊足>を使って離れると、蜻蛉の構えをして集中。
目を瞑りながら息を吸って吐き、再び息を吸って吐く。
集中が高まったところで目を開き、一気に走り出す。
タタタタタタタタタタタタ!
そして最高のタイミングと距離で足、腰、背、肩、腕、手へと、走り込みを含めた力を伝え、一撃必殺を狙って振り下ろした。
ダンッ!!
「キャァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」
その一撃は気絶して垂れていたクリムゾントータスの首を一撃で斬り飛ばす事に成功。
丸太のような太い首が転がり落ちる。
夥しい血が斬り落とされた首から噴出し、そのままクリムゾントータスは死亡。
素材を残して消えた。
「………ふぅ。流石にこんな事は相手が動かない時にしか出来ないからね。久しぶりに全力でやったけど、案外レベル168っていう格上相手でも上手くいくもんなんだなぁ」
もしかして気絶させる事さえ出来たら、このクリムゾントータスって確実に勝てる?




