0706・とある女性の本音と本質
無事に皆の装備も作り終わり、身に着けさせたので僕は訓練場で遊ぶ。
イルはメイやギンと遊んでいるので放置し、他の支配モンスターや召喚モンスターとの訓練を始める。
僕が持っているのはいつも通りの木刀であり、そこら辺の適当な木で作った物だ。
なるべく悪い物で戦うのも僕自身の修練の為でもある。
なかなかの大人数が敵だけど、これぐらい居ても良いだろう。
戦いが始まるとすぐに前衛陣が攻めて来るけど、甘い甘い。
ウチの召喚モンスター達は、そんなに隙だらけで攻めて来ないよ。
すっかり僕を警戒して簡単に攻めて来なくなった仲間達を尻目に、僕は攻めて来る支配モンスター達とアマロさんの召喚モンスター達と戦う。
もちろん殺気と殺意はいつも通り全開にしている。
若干とはいえ戦いにくそうにしているので、スキルでない殺気と殺意にも意味があるのだろう。
若干でしかないが。
それでも僅かに動きが鈍るという事は、戦いにおいては致命的なわけで……。
彼らはボコボコにされながらも、僕には攻撃をまったく当てられない。
魔法を使われれば、戦っている相手を誘導して盾にし。
スキルで攻撃してくれば、その出始めを叩いてキャンセルさせる。
そしてそこで崩れたら更に追い打ちを掛けて潰す。
そういった戦いを繰り返し、相手の多数という優位を使えないように仕向け続ける。
ウチの召喚モンスター達はそれを知ってるから迂闊には攻めて来ないんだけど、知らない相手にはついつい教えたくなるんだよね。
もちろんワザとだけど。
数の優位を持っている側は有利なんだから、僕に数の優位を利用されても仕方がないよね。
戦いとは非情なものだし、殺すか殺されるかしか無いんだからさ。
「モシカシテ、ウカツニセメテハダメナノデハ?」
「ソウ。ウカツニセメルト、マエノヤツラヲリヨウサレル。ダカラワタシタチハ、カンタンニセメタリシナイ」
「ヤハリ……。コノママデハカテマセンガ、シカタアリマセンネ。カズガオオスギテ、サクセンヲクムノハムリデス」
「ソモソモ、クンダトコロデイミガナイ。ドウセコロガサレルダケ。ジブンノチカラヲミガクイガイニハ、オソラクカテナイ」
「ソウデスカ……」
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「普通に作戦を組もうとしてる事にも驚きだけど、それ以上に諦めてるのにも驚き。やっぱり思っているより頭が良い」
「それもあるけどー、それ以上にアレと戦い過ぎなだけだと思うよー? っていうか【純潔】が負けたっていうのも納得なぐらいに頭がおかしいねー………。うん、アレは無い」
「無い事は無いし、目の前に在る。アレがコトブキだからどうにもならない。アレはそもそもそういうモノ」
「………アレを好きになるって、君も大概におかしいよねえ。どう考えてもアレは好意を寄せる対象にはならないよ?」
「??? ………何を言っているのか、ちょっと分からない。アレだから良いのであって、普通なら意味が無いし魅力も無い。私はコトブキの顔を好きになった訳じゃない、あの本質を好きになった。それだけ」
「………(何を言ってるのか分からないのは、むしろこっちだよ)」
「何故そこで黙る? 特に変な事を言ったつもりは無いし、唯の個人の好みでしかない。それは変な事?」
「いや、別に変じゃないけどねぇ。ただ……」
「私はアレが好きで、アレに殺されても構わない。それも含めて私はアレを好きなのであり愛している。それは子供の頃からも、そしてこれからも変わらない」
「そうなんだ……(両方おかしかったかー……。まあ、それならそれで見てて楽しいからいいけどねー)」
「できればアレの破壊衝動や殺意は、私に性欲としてぶつけてくれると嬉しい。でもそこまでには、もう少し時間が掛かりそう」
「………(こっちも大概におかしい。これって性欲じゃなくて愛欲だね?)」
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僕と戦った経験の無い者達は大体沈んだし、後はいつものメンバーと慎重に様子見をしていた者達だけだ。
それにしてもアルゼルが来てるみたいだけど、食事もせずにイルと話してる。
何を話しているのか知らないけど、食べてないって珍しいね。
おっと早速セナが攻めて来たけど、相変わらず一歩を詰めて来ないね?
そこで一歩前に来ないから、ちゃんとした威力の打撃にならないんだし、牽制にもならないんだよ。
軽すぎる攻撃では牽制にすらならないんだという事を、そろそろ覚えた方がいいんだけど……まだ難しいかなぁ。
こういう事は身に沁みて理解してこそ意味があるからねえ。
何故を突き詰めなきゃいけないんだけど、その何故を突き詰める為には基礎が必要だ。
いや、基礎だけじゃ無理で応用も知る必要がある。僕はそれを天兵さんから習った。
体を動かすスポーツなどでも勘違いしている指導者が居るけど「見て覚えろ」は話にならないんだよね。
アレを信奉している人は、他人に教える才能も能力も無いから辞めた方がいい。
天兵さんは勉強を考えれば分かると言っていた。
足し算と引き算と掛け算と割り算。いわゆる四則演算を教えたら分数の式が解けるのか? という話だ。
無理に決まってる。
にも関わらず「見て覚えろ」という人は自分がそれをやれと言っている事を理解していない。
分数の計算は分数の解法を教えなきゃいけないのに、教えずに「見て覚えろ」と言ってるわけだ。
駄目なのがよく分かる。
ちなみにだけど「ひらがな、カタカナ、漢字を教えれば古文が読めるのか?」とも天兵さんは言ってたね。それも無理だ。
「ゐやゐやし」が丁寧で礼儀正しいなんて、知らなきゃ分からないよ。
結局のところ「見て覚えろ」というのは「私は指導者としての能力がありません」と言うのと同じなんだよ。
天兵さんはそうハッキリと言っていた。
そもそも己の力で開拓するのは、全てが終わってからだ。
そこで弟子は初めて新たな技を模索するのであって、師の下に居る間は教えてもらうのが先なんだよね。
にも関わらず見て学べは明らかにおかしいし、そもそも見て学べるなら師の下に居る必要ないよねって話だ。
見て学べるんだから、師が必要かって話になる。
近くで見れるだろうって? 貴方がそれほど素晴らしい技を持つ人物ですか? で終わる話だと聞いた。
天兵さんいわく「大した技も持たない者ほど見て学べと言う」んだそうだ。
自分が教えられた技を、自らの血肉に出来ていない。
出来ていないからこそ、教え方が分からない。
教え方が分からないから「見て覚えろ」となってしまい、結局その弟子も大した実力にならない事が多いんだそうだ。
元々センスがある人や才能がある人は「見て覚えろ」という人が居なくても一角の人間になる。
つまり弟子が凄くても「見て覚えろ」という人が立派なわけじゃない。
おっと、思考が横道に逸れていたら、良い感じに連携するようになってきたね。
セナとリナは相性が良いのかな? 意外と綺麗に嵌まってるよ。
とはいえ、それだけじゃ上手いだけで追い詰められはしない。
まだまだ僕を追い込むには甘いね。
「ギャッ!!」
「シマッタ!?」
綺麗に連携できるのは良いけど、まだ深さが足りないから簡単に崩される。
そして崩されたら復帰に時間が掛かり、そこを起点にして更に崩される。
そうなるともう綺麗な連携は出来なくなるんだよ。
綺麗にするほど崩れた時に脆くなる。
だからこそ連携には遊びが要るんだ、崩されても大丈夫な遊びがね。
セナもいつものメンバーとなら遊びがあるんだけど、僕を倒す為に外部の何かを入れる事にした。
そしてそれがリナだったんだけど、連携が浅すぎて遊びが無い部分を僕に狙われた、と。
言葉にすればそれだけなんだけど、狙われたセナからすれば腹立たしいんだろうね。
狙われた後に気付いたみたいで、明らかに不機嫌になってるし苦々しい表情をしてる。
とはいえ僕の勝ちは僕の勝ちだ。
最後まで粘ってたけど、まだ足りなかったね。
「クヤシイシ、ナットクガイカナイ!」
「スミマセン、ワタシノセイデ……」
「リナの所為というよりは、いつも勝てないからって外部のイレギュラーに頼ったのが悪い。正攻法で勝てないと意味は無いよ? だからこれからも頑張ろうか?」
「ガンバッテ、タタキノメス!」
「ま、とりあえず終わりだけど、イルはどうする?」
「私はやらない。勝てないし、そこまで突き詰めたいとも思わない」
「そう。じゃあ、そろそろ今日は終わりかな?」
時間も時間だし、そろそろログアウトしよう。
別作、「時空の旅人 ~イシスとヌン~」が120話を超えました。宜しければ、御一読ください。




