最後のロック
「アタシが囮になるよ。」
そう聞こえた。いや言ったんだ。
「琴音さ――」
「いいんだ。人生最後のロックをアタシはやりたいんだ。前に言ってた事、悪いけどアタシは待てない。」
その目には決意と希望が満ちあふれていた。
「俺も残る。最後の演奏するなら誰かが守らなきゃだろ?最後の観客は俺だ。」
そう言ったのはヤンキーの友哉だった。
「で、でも…」
「いいんだよ。お前らはとっとと逃げときゃいいんだよ。康誠、バット借りるぞ。」
「……あぁ、絶対に返しに来いよ。」
こんな展開、『バックアップ』で見てない。なのに…なのにこの二人のことを、俺は信じられる。
琴音さん達が廊下側で囮になる間に、非常用階段で降りて、車に乗り込んで逃げる。車は前におじさんの人形が乗った車。
「やるのは夜だ。その時間はゾンビ共の行動範囲が広がる。だから集まりやすくなる。アタシの演奏の時間だ。」
俺たちは琴音さん達と別れた。
「…なぁ、アンタ。なんで残ったんだ?」
「あ?残ったのは、…かわいい女を一人にできないから…」
「あははアタシが好きでてこと?」
「なんかへんかよ。」
「いや面白いなって」
「じゃあやろう。」
楽器を持ち廊下で、演奏を始めた
琴音たちの歌声と音楽が聞こえてきた。ゾンビ共がその曲に引き寄せられている。
その演奏は見事なものだった。友哉はゾンビ共を蹴散らしている。
だからこそ、俺たちは車に急いだ。
康誠たちの車にエンジンがかかった。
「なぁ…友哉。アタシの最後のロックどうだった?」
「最高だったぜ。…」
アタシらはボロボロだった。ゾンビ共に噛まれちまってる。
「なぁ…これ使うか?」
ライター、そしてここは家庭科室の前。ガスはつけっぱにしといた。
「ロックの最後は爆発か。」
私は友哉と手をつなぎ、ライターに火をつけた。
爆発音が周りに鳴り響いた。
「え…」
琴音さん達のいた階が、爆発で燃えている。
「琴音さん…友哉。」
「―タシの最後のロックは――」
ボロボロのギターを持ちながら最後まで弾き続けた。




