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アグロンド王国物語-妖精が王国を築いたり魔法研究の旅をしたり大戦争までしちゃったりする話-  作者: ガーレ
建国王アリス編・第2章-アグル=ダネア戦争-

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第60話-動向-

 更新、遅くなりました。

「よし、次が最後だ。俺たちが掴んでいる確かな情報から、奴らの今現在の『動向』について話すぞ」


 ドレイツたちが敵になった理由、そして、戦争の裏で行われていた策謀。それは分かったわ。じゃあ、そんな彼らは今この時、一体何をしているのか。聞かせて貰おうじゃない。


「ジョン、これは僕から報告させてくれないか」

「ジェファー、お前――」

「調査を担当したのはこの僕だよ。いいよね、当主様」

「構わないわ」

「ありがとう!」


 ジェファーは笑みを浮かべると、いつも通りの飄々とした口調で話し始めた。


「――レンデラム解囲戦より2週間くらい前だったかな。調査を行うにあたって、僕はまず部下にバズムからタモース(ミシア国首都)へと移動するよう指示したんだ」

「どうして?」


 ジェファーがミシア国に差し向けていた外務官は元々、かの国の最南部に位置する都市――バズムを拠点に動いていたわ。なぜなら、そこは私の国から程近く、国境警備隊の通信魔法網が問題なく使えるからよ。


「今やバズムでは国境を越えた交流が盛んに行われていて、意外かもしれないけど僕たちに好意的な人が多数派を占めている。ウェスーク国の領域を取り戻した後、その地に住み着いていた赤髪系住民との融和に取り組んだのが功を奏したね」

「良いことじゃない」

「確かに良いことではあるんだけどさ……それは僕たちを敵視するドレイツ教勢力にとって動きにくい環境なんだよ」

「ふーん、なるほど。つまり、外務官の耳に入るような表立った動きが起きないから情報収集には不向きなのね」

「そういうこと。コネクションを作るには向いていたから、これまではそのように動いていたんだけど……状況が変わった」


 ジェファーはそう言って机の上で手を組む。


「――さて、部下がタモースでの情報収集を終えてバズムに戻り、僕に報告をくれたのは、大体ひと月後のことだった。具体的には一昨日だ」


 外務官はバズムで築いた人脈をフル活用して情報収集を行ったそうよ。タモースへ向かう際に有力者やその家族なんかを数人連れて行って、その人たちに色々とやらせたみたい。


「タモース市内での僕たちの評判は……思ったほど悪くない。なぜなら、都市住民の情報源は主に商人だから。商人は僕たちの国との交易で利益を得ているからね、あまり悪く言わないんだ」

「でもそれって市内だけなんでしょ?」

「よく分かったね、当主様。そう、農村部では一転、サイラスの言っていた通り僕たちの印象は最悪だった。領土を奪い合ったライバル国ってのもあるけど、それ以前に『魔法を扱う邪悪な集団』というイメージ、悪いレッテルが完全に浸透してしまっている。彼らにとって唯一の情報源であるドレイツたちが意図的にそう喧伝していたんだ」


 その過激な思想は次第に農民の上に立つ村長、町長、部族長、領主といった支配者層へも伝播していき、やがて一部の豪族までをも呑み込んだ。こうしてドレイツたちの思惑通り、私たちに敵対する好戦派閥ができあがった、と。


「それで、そんな状況を作り出したドレイツたちは、今度は何を仕出かそうというの」

「えーとね、彼らが僕たちに対して切れる有効な手段は何もない――というのが今回行った調査の結論だよ。むしろ、今の彼らは好戦派の抑制に奔走しているところさ」

「……はぁ?」


 ジェファーがさらりと言って退けた結論は、私の想像とは全く異なるものだったわ。だから私はつい変な声を出してしまった。

 ここまで大事にしたんだから、次ももっとこう……その、大胆に動くもんだと思うじゃない。


「当主様の言いたいことは分かるよ。僕たちだって次の一手を警戒していたからこその今回の調査だ。拍子抜けもいいところだよね」

「……彼らは一体、何を考えてるのよ」

「もう同じ失敗を繰り返すわけにはいかない――って感じかな。彼らが求めるのはあくまでも失った威信の回復であって、むやみやたらと情勢を引っ掻き回す道化になることじゃない。何せ前回の企みはダネア族の暴発で頓挫しているんだから、慎重にもなるさ」

「それにしたって煽ったり抑えたり……陰謀を働くのも大変なのね」

「陰謀ってのは力が拮抗している場合か、弱者の側が用いる手段なんだよ。そして、弱者たる彼らがたった1回打つ手を間違えるだけで、強者たる僕たちに天秤はより大きく傾くことになる。そうだよね、ジョン」

「ああ。もしも好戦派が『魔竜様に仕えるドレイツ長老会議』の旗の下で俺たちの国に攻め入るのであれば、俺たちは国内のドレイツどもを反体制の容疑で一斉摘発できるし、『ミシア国』であればそれを理由にバズムなんかの都市を占領し、相手に屈服を強いることだって俺たちには容易い」

「本当にそうかしら。どっちの行動も民衆(=ドレイツ教徒)の反発を招きかねないわよ」

「いや、ドレイツ教の精霊信仰それ自体を否定しなければ、『魔竜様に仕えるドレイツ長老会議』という『集団』に対して俺たちが切り込んだところでさしたる問題は起こらないだろう」

「先の戦争を勝利に導いた当主様の名声というのは今やドレイツたちの権威を凌駕する程に強力で、民衆の支持はそう簡単に揺らがないよ。当主様は自分がどれだけ人気なのか、それを自覚した方がいい」


 確かに。一連のダネア族の猛攻を退けたことで私の評判が過去最高なのは間違いないわ。それは私たちの国だけに限った話じゃなくて、同盟を結んだゲント国やエス・リーア国でも同様だと聞いてる。おそらくはミシア国のバズム周辺までも。

 そんな現状で私たちとの対決姿勢を露わにしてしまえば、バルバリア島全体で見た時により多く民心が離れるのはむしろドレイツ教勢力の方……なのかも。


「じゃあ結局、彼らは何もできないのね」

「いやあ?」

「何よ、さっき『手段は何もない』って――」

「それは、『僕たちに対して』だけの話だよ」


 ジェファーはこの後、実に長々と語ってくれたわ。ドレイツ教勢力とミシア国の関係を裏付ける証拠、そして、そこから導き出される彼らの次なる陰謀を。


「機先を制するのは俺たちだ」


 そして、それを踏まえてジョンは、私たちが決行すべき次なる計画――「ファルフレド・パウト(完璧な計画)」、その全てを話してくれた。


「――俺は、君を妖精種の『王』にしてみせる。君が掲げる目標、そのために」


 それは、妖精種諸国やドレイツ教勢力、ダネア族、アトゥス教会、果ては対岸や北の長耳種までも巻き込んだ壮大な計画だったわ。

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