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アグロンド王国物語-妖精が王国を築いたり魔法研究の旅をしたり大戦争までしちゃったりする話-  作者: ガーレ
アリス編・第2章-アグル=ダネア戦争-

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第54話-激動・7日目前段-

「『アグル大同盟』というのを各国に持ち掛けています」

「『アグル大同盟』……と、言って、ました……」

「『アグル大同盟』を提案させていただきます」


 激動の1週間における最後の日――7日目。奇しくも、全く別々の場所に居るはずの3人の言葉は、全く同じタイミングで発せられることになったわ。

 1人はジョン。現在ウェスーク国軍が占領している元エス・リーア国首都――レンデラムにて。

 1人はルーナ。彼女たち遣ゲント傭兵団が駐留するゲント国首都――キャンタブリーにて。

 1人はジェファー。危機を乗り越えたウェスーク国首都――ウィンタカスターにて。

 彼らはとある大きな野望を実現するべく、それぞれの交渉相手に同じ提案を持ち掛けていたの。




――――――――――


「配給計画は順調に進んでいますか」


 ジョンの問いかけに双子が静かに頷く。


「それは良かったです」


 彼はそう言って下手な微笑みを浮かべると、こちらに目線を向けてきた。君が本題を話せ、と言わんばかりに。

……分かってるわよ。


「おほんッ。さて、今日は3日前に私が提示した提案の回答期日なのだけれど。返事は用意できたかしら」


 昨日の1件があったせいでちょっと気まずいわね……。

 何も思ってなさそうなのがルフィエで、下を向いているのがラフィエかしら。ちょっと分かるようになってきたわ。


「もちろんです」

「流石じゃない、ルフィエ!」

「ラフィエです」


 嘘でしょ!?


「――冗談です」

「……そう。いいわ、続けて」


 なんか、もう、怒る気力も起きないわ。


「私たちは提案を受け入れることにしました」

「そうしなければ、私たちは再びダネア族の支配下に置かれるだろうと判断しました」


 2人の言葉を聞いて、私はチラリと窓の外を見た。屋敷から見える都市の城壁の更に外側は、おそらく今もダネア族に取り囲まれている。

 きっと、奴らの存在もこの判断に大きく影響したでしょうね。敵の敵は味方とは言うけれど、敵のお陰で要求が通るというのもおかしな話よね。


「あんたたちの決断に感謝するわ。約束通りウェスーク国は、エス・リーア国の領土奪還に支援を惜しまない」

「「ありがとうございます。アリス様」」


 私の言葉に2人は立ち上がり、揃って頭を下げた。2人が着けているお揃いのサークレットが同時に揺れ、光を反射して輝く。


「それで、結局、あんたたちはどっちが当主になるつもり? さっさと決めてくれないと条約も結べないのだけど」


 2人は頭を上げると、困ったように顔を見合わせた。

 まさか、考えてなかった、なんて言わないわよね……。


「「2人でなる、ではいけませんか?」」

「2人で!?」


 2人同時に当主になろうだなんて聞いたことがないわよ! ……でも、そうね。聞いたことがないだけで、もしかして……やろうと思えば可能?


「あなたたち……ドレイツ教の道から外れる覚悟はあるかしら」


 ドレイツの奴らは絶対、2人が同時に部族長(=国の当主)の座に就くことを認めない。なぜなら、前例がないから。もしくは、分割相続の慣習に則って国を2つに割ることを要求してくるはず。

 ならいっそ、私みたいにドレイツどもから認められるのを端から諦めればいいのよ。外交的には私が承認すれば問題無いし、権威付けは大陸式の貴族制度をアレンジして――


「教会にエス・リーア伯の称号を請求しなさい。そして、それはどちらかが叙爵するんじゃなくて、伯爵委員会を設置してあんたたち2人で管理するの。どうかしら」


 上手くいくかは分からないけど、アトゥス教会の天使種は少なくともドレイツどもよりは柔軟なはず。


「どうかしらと言われましても」「よく分かりません」


 あんまり私の考えは伝わっていない様子。まあいいわ。


「いずれちゃんと説明してあげる。とにかく、2人で伯爵……当主みたいなのになれる可能性があるってことよ。覚えておきなさい」


 私の話はこれで終わり。ここからはジョンにバトンタッチよ。

 私が目配せすると、彼は頷いて前に進み出た。


「お2方、俺の方からもお話がございます。どうかお掛けになってください」


 彼の言葉で2人は再び椅子に座る。


「――実は、もう1つ有益な提案があるのです」

「「また提案ですか」」


 2人は露骨に警戒し、私たちに冷めた目を向けてきたわ。そりゃそうよね。

 まあ、彼はそんな反応を一切無視して話を続けるのだけど。


「俺たちは今、『アグル大同盟』というのを各国に持ち掛けています――」


 彼は「それ」についての資料と調印書を2人に差し出した。そして、時間をかけて丁寧にその詳細を説明していく。

 最初こそ怪訝な表情を隠さなかった2人だけれど、次第に興味を惹かれたようで、最後には真剣な眼差しで話を聞いていた。


「どうでしょう。折角ならこの枠組みに参加されてはいかがですか」


 ジョンの問いかけに2人は顔を見合わせる。


「先の提案を発展させたもののようですね」

「私たちには利点しかないように感じました」

「「どのみち、拒否権はないのでしょう」」


 2人がそう言ってこっちを見てきたので、私はしっかり頷いてやった。


「「――参加させていただきます」」


 その答えを聞いたジョンがニヤリと笑ったのを私は見逃さなかったわ。




――――――――――


「ルーナ、よく来たな。ウェスーク国の戦況はどうだ」

「軍が上手くやっているよう、です」


 ゲント国ではルーナが4日ぶりにアゼルバートの屋敷を訪ねていたわ。


「それで、提案というのはなんだね」

「昨今の情勢を鑑みて、『クリャウリー条約』に追加したい項目があると」

「さては今更、他所の国を守っている余裕はないなどと言い出さないであろうな」


 1度、ルーナはこの国を離れようとしたのだから、アゼルバートの懸念はもっともね。

 彼女は慌ててそれを否定する。


「い、いえ、違います。ジョンとジェファーは、この提案の内容を『アグル大同盟』……と、言って、ました……」


 そう言って彼女は、その件についての資料と調印書をアゼルバートの元に差し出したの。これを読めばアゼルバートは快く調印するだろう――というジェファーのお墨付きよ。

 そんなシロモノをどんどんと読み進めていくアゼルバートは、途中からククク……という声を漏らすようになり、最後の方には大笑いへと変わっていた。


「よもや、あ奴らがここまで壮大な戯言を考えておったとはッ!」


 彼は上機嫌のまま使用人を呼びつけ、ゲント国の国璽と蜜蝋を彼の元へと持ってこさせたわ。

 調印書に蜜蝋を垂らすと、彼は手に持ったそれを振り下ろした。


「え、えええ……そんな即決していいの、です!?」

「よいよい。既に乗りかかった船が船団になっただけのこと。これならどう転んでも愚息愚娘は安泰よ! ほっほっほ」

「えーっと……ありがとう、ございます?」


 結局、何が起こったのか全く分からないまま、ルーナはアゼルバートの屋敷を後にしたの。

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