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アグロンド王国物語-妖精が王国を築いたり魔法研究の旅をしたり大戦争までしちゃったりする話-  作者: ガーレ
アリス編・第2章-アグル=ダネア戦争-

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第42話-大陸-

 会議室に入ると、集まれる全ての国務卿が既に集まっていた。


「アリス、そのドレス似合っているな」

「ありがとジョン」


 普段の軽い服装に着替えるのも面倒くさくて、そのまま来てしまった。まあ、ジョンに褒めてもらえたから良かったわ。


「それで、ゲント国当主との会談はどうだった」

「また難しい提案を吹っ掛けられたわ」


 私とイーヴは、アゼルバート(ゲント国当主)に持ち掛けられた売国提案を皆に説明する。


「――というわけなんだけど。私はこの話には何か裏があると思ってる。ジェファーは何か知らない?」


 私は説明の後、この提案についての意見をジェファーに聞いてみた。


「そうだね。僕が知っているのは、かの国が3つの勢力の板挟みに合っている――ということだ」

「3つの勢力?」

「そう。その説明のために、まずは近年の大陸情勢からおさらいさせてもらうよ」


 ジェファーの話はとても長かったわ……。




――――――――――


 大西進によってロマーラ帝国が崩壊した後の大陸は、バルバリア島の「混沌の時代」同様に群雄割拠の大混乱だったらしい。

 まず、私たちが「東の野蛮な原種の民族」と呼んでいた人々は、今では「ガルマン系民族」と呼ばれている。

 大西進で居場所を奪われた大陸のロマーラ人たちは、ガルマン系民族から逃れるべく南西や南東の山岳地帯に移動していった。

 それとほぼ同時期に、アトゥス教会も南北に分裂した。ロマーラ人は従来の「ロマーラ正統教会」を信仰し続け、ガルマン系民族は「聖女」を宗教組織の頂点とする新しい宗派――「ロマーラ普遍教会」に改宗した。


「話が逸れてない?」

「おっとっと、失礼」


 ガルマン系民族は1つに纏まっていたわけではなく、むしろそれぞれが奪った土地に都市を建設して小国が無数に乱立した。それらの君主はロマーラ普遍教会に権威を求め、教会はそれに応えて国の規模に応じた「公」「侯」「伯」3種類の「爵位」という称号を君主に与えた。

 君主たちは戦争や合同などで国が大きくなるにつれ、有力な地主を複数従えるようになっていった。それらには教会の認可を得て「子」「男」の爵位が与えられた。


「私の『スーク伯(爵)』や、ジョンの『クルノール男爵』のことよね」

「その通り!」


 14年前、ガルマン系国家の中で1番の勢力を誇ったバルガンド公国に対抗するため、東に隣接するリャヒンロンド公国と西に隣接するチャンパウヌ伯国が合同、爵位が統合された。こうして誕生したのがセーネキア公国で、その公爵として君臨したのが元リャヒンロンド公の息子――チャールという男だった。

 チャールは宿敵バルガンド公国との決戦に勝利を収めた後、その軍事力でもって次々と周辺の小国を征服していった。

 母体であるセーネキア公国を中心として、広大な範囲(具体的に言うとガウラ地方全域、大森林西部、イタロ地方北部)を勢力下に置いたチャールは、今から6年前、教会から「(アトゥス教徒の)原種を統べる者」という意味の「王」という特別な称号を与えられた。それからチャール王は自らの国を「統一王国」と称するようになった。


「チャール大王、凄い男だったらしいわよね。バルバリア島に野心が向かなくて良かったわ」

「そう、彼は凄い男『だった』。だけど2年前、パルサリョール半島のロマーラ人を征服しようとしていた彼は、志半ばで戦死したんだ」


 国を纏め上げていたチャール王という傑物が居なくなったことで、統一王国は今、崩壊寸前の状態にある。それには、セーネキア公国が元々、バルガンド公国に対抗するため戦略的に生まれた国家であり、東西で民族が異なることが災いした。

 東のリャヒンロンドはドミニ族の土地で、チャール王の父である元リャヒンロンド公ピッフィンが実権を握っている。一方、西のチャンパウヌはセーネス族の土地で、チャール王の妻であったイルドアルドの勢力が支配している。その両者が王権を巡って激しく対立した。

 ベイヤーン公(ドミニ族)、ファルス公(セーネス族)といった大貴族を始めとする両民族の貴族が王権闘争に次々と介入し、元々宿敵だったバルガンド公(バルガンド族)は共倒れを狙った分断工作をしている。


「統一王国って今そんなことになっていたの……」

「それに巻き込まれているのが、今のゲント国だ。いや、ゲント伯国と呼んだ方がいいかな」


 元々ゲント伯国はバルガンド公国から魔法使い傭兵団を雇っていたが、大陸でかの国が敗北したのを期に、セーネキア公国に鞍替えしていた。その際、ドミニ族とセーネス族の両方から傭兵団を雇い入れていたのだ。


「でも、以前は安定していたセーネキア公国も、今は王権争いの真っ只中だ。つい先日のダネア族(半魚種)襲撃時、両者の連携は絶望的だったらしい。わざと同士討ちまで起こしたという噂もある」

「アゼルバートは大陸の傭兵団が信頼できないのね」

「彼の憂いはそれだけじゃない」


 統一王国の中で最もゲント伯国と距離が近いのは、地理的にも経済的にも、バルバリア海峡を挟んだ対岸に位置するバルガンド公領だ。バルガンド公がこのタイミングでゲント伯に圧力を掛けない方が不自然まである。


「つまり、3つの勢力ってのは……」

「そう、セーネキア公国のドミニ族とセーネス族勢力、それと、バルガンド公勢力だ」




――――――――――


 あーあ、説明が長かった。聞いてるだけで疲れるわね。でも、なるほど、大方分かったわ。


「このままだと、ゲント伯国は統一王国の政争に巻き込まれて、最悪、大陸勢力から侵略を受ける可能性があるってことね……とんでもなく面倒な問題を持ち込んでくれたわねあの爺」

「ただ、この提案は僕たちにとって渡りに船だ」

「そうね」


 アゼルバートの提案を受け入れれば、私たちはゲント人商人を取り込むことができ、なおかつバルバリア島南部における勢力を盤石にすることができるわ。それに、大陸勢力によるゲント伯国への介入を阻止できる。

 万が一ゲント伯国が統一王国に取り込まれれば、そこを足掛かりにしてバルバリア島全域に侵略の手が伸びることは想像に難くない。その提案は、それを阻止する1手になり得るってことで、私の国の未来にだって確実に関わってくる。


「だが、俺たちがゲント伯国を併合すれば、反発したバルガンド公が強硬手段に出る可能性もある」


 この提案に対して、懸念点を提示したのはジョン。


「統一王国は政争の真っ最中だぞ。わざわざ半魚種海賊の危険もある海を渡って軍を送り込むかな」

「実際に争っているのはドミニ族とセーネス族なんだろ? ならば、バルガンド公には多少の余裕はあるはずだ」


 宿敵である両者が争っているうちにバルバリア島侵略……無いとは言い切れないわね。


「――それに、俺たちには後顧の憂いだってある」


 全員の視線が再び私に向く。


「――アリス、エス・リーア国で何があった。君の口から説明してくれ」


 ゲント国について結論を出す前に、話の主軸は南から北へと移り変わったわ。

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