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アグロンド王国物語-妖精が王国を築いたり魔法研究の旅をしたり大戦争までしちゃったりする話-  作者: ガーレ
アリス編・第2章-アグル=ダネア戦争-

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第41話-妹分-

「お初にお目にかかりますわ、アリス様。私はゲント国当主の娘――アゼルバーフでございますわ!」


 いや、なんであんたたちは国が大変な時に一緒に来てるのよ!


「は、初めまして。私はアリスよ。ウェスーク国当主の――」

「存じ上げておりますわ! なぜなら、アリス様のウェスーク国『復国記念演説』、私この目で見ていましたもの!」


 話を遮るんじゃないわよ。礼儀がなってないわね。

 それにしても、あの場に居ただなんて知らなかったわ。この子の立場上、お忍びで――といったところかしら。


「あはは、ありがとう……」

「とても感動いたしましたわ。私、それからアリス様の大ファンなんですの!」

「そ、そう」

「つきましては、これからアリス様のことは『当主様』と呼ばせていただいても?」

「あんた豪族でしょ! 何言ってんの!? 何が『つきましては』、よ!!」

「駄目……ですの……?」

「駄目に決まってんでしょ!」


 それ、あんたの父親の面子を潰す発言だからね? いや、あの爺笑ってるわ。そういえば、そんな提案をさっきされたんだったわね……。


「私、アリス様の下で働きたければ自分自身で口説き落とすようにって、父に言われているんですわ」

「口説き落とそうとする相手にそれを言っちゃう馬鹿がどこにいるのよ……」


 呆れた。予想以上に馬鹿だわこの子。

 あんた、その父を見てみなさいよ。さっきまでとは一転、頭抱えちゃってるわよ。


「もういいわ、不採用」

「でも私、アリス様にお仕えしたくて勉強も家政も頑張ったんですのよ?」


 にしてもこの子、凄く距離が近いわね。身長が高いから圧を感じるわ。

 グイグイ近づいてくるこの子を、私は睨みつけながら両手で押し返す。


「それくらい間に合ってるわよ。勉強ってったって学院卒くらいじゃなきゃ――」

「私、去年に学院を卒業しておりますわ!」

「え?」


 学院卒なの? この子が? いやでも、私が学院にいた頃、豪族が入ってきたなんて情報は聞いたことがない。あの頃の私の耳に入らないなんてことがあるかしら。


「嘘ついてないでしょうね、あんた……」

「嘘じゃありませんわ! 私は対岸に新しくできたウトレキト校の第1期卒業生ですの!」


……なるほど、対岸ねえ。ゲント国豪族の娘が、わざわざ遠いムー島にまで出向く必要もないか。


「新しく学院ができたってことは、新たな大司教座が対岸に?」

「そうですわ。ウトレキト大司教は確か……着座なされてから11年目だったと思いますわ」


 この子……もしかしたら大陸情勢を掴むのに利用できるかもしれないわね。

 私のこの子に対する印象がちょっとだけ変わった。


「学院では何を専攻していたのかしら?」

「法学ですわ!」


 私のこの子に対する印象が大きく変わった。


「あなた採用!!」


 採用! 採用ッ! 即採用よ!! アグロ語を自由自在に扱える法官が欲しかったのよ!!


 私はこの子の手をギュッと掴んだ。すると、さっきまで押せ押せだったこの子の頬が、リンゴのように真っ赤になってしまう。

 可愛いとこあるじゃないの!


「あなた、うちに来なさい! すぐに役職を用意して――」

「お゛ッほん!!」

「何よ、アゼルバート」

「そやつは、『ゲント領域の領主』として、受け入れてもらえるんだな?」

「……」


 忘れてた……。

 本当なら法院のアグロ語指南役として採用したい。けど、そのためにはこの爺を何とか説得する必要があるわね。


「……2年頂戴。この国の文化、方言、法習慣なんかに慣れてもらうには、準備期間が必要だと思うの」

「2年だと? 使うだけ使って国へ帰す、などと言わんだろうな。そやつには婚期だってあるんだぞ」

「あら、そんなこと気にしてるの? まだ若いから平気よ」

「今年でそやつは25だ。それを分かってて言っているのか?」

「25ですって!?」


 馬鹿な。私(23)より年上だったなんて……こんな子供をそのまま大きくしたような子が?


「……心配はよーく分かったわ。ちょっと、検討させてちょうだい」

「分かってくれたようで何よりだ。いい返事を期待している」

「あなたたち、いつまでこの街にいるつもりなの?」

「そなたが回答をくれるまでだ」


 うわあ、それまでずっと居座るつもり? 頭おかしいんじゃないのこいつら。


「……早めに結論を出すわ」

「焦らなくてもよいぞ。呼ばれればいつでもここに参ろう。ほっほっほ」


 絶対に受け入れると思っているわね、この爺。


「あの、アリス様」

「どうしたの」

「大変言い出しにくいのですけれど……」


 あら? 私に何か判断材料をくれるのかしら。言い出しにくいこと……弱みでも吐いてくれると嬉しいわね。


「大丈夫よ。聞くだけ聞いてあげるわ」


 私の返事に、この子は満面の笑みになった。


「『当主様』が駄目でしたら、代わりに『お姉様』と呼ばせていただきたく存じますわ!」

「……」


 何を言っているの? この子は。


「あんた私より年上――」

「アゼルバーフ、それは駄目です。私が許しません、です」

「え、ルーナ?」


 何でルーナが怒ってるの?


「アリス姉を『アリス姉』と呼んでいいのは私だけです」

「どうしてですの? ルーナ。あなただけズルいですわ!」

「ズルじゃないです。これは、私だけに許された『特権』です」

「なら、私もその『特権』をアリス様に頂きますわ。あなたなんかに拒否権はありませんわ」

「アリス姉は絶対、アゼルバーフなんかに許可しません。残念でしたね、です」


 ルーナ、怒りすぎて口調が少し戻っているわよ。というか、2人共――


「うるッさいわね! そういう『どうでもいい』喧嘩は後でやんなさいッ!」


 私はアゼルバートを睨みつける。


「私には後に重要会議が控えてるの。あなた、この子を連れてさっさと宿に戻んなさい!」

「そうかそうか。ウェスーク国当主の貴重な時間を使わせてしまったな。では、今日のところはこれで失礼する。行くぞ、アゼルバーフ」

「で、でも私の質問には答えてもらってな……お父様あぁぁぁ」


 アゼルバートに引きずられ、部屋を後にするアゼルバーフ。護衛のルーナも、膨れっ面のまま彼らに着いていった。

 侍従によって扉が閉められ、応接室は急に静寂を取り戻す。


「イーヴ。あの話、あなたはどう思う」

「ジョン閣下でなく、私ですか」

「一応、聞いておこうと思って」


 彼女は少し思案した後、こう答えた。


「ゲント人商人の情報網は、大変価値のあるものだと思います。アゼルバーフ嬢がさらりと言ってのけた11年前の情報すら、私たちは知らなかったのですから」

「それがほとんどタダ同然で転がり込んでくる。おいしすぎて裏を勘ぐっちゃうわ。あの爺が一体何を考えているのか」

「ジェファー様であれば、何か分かるかも知れませんね」

「そうね……このことも相談しなきゃなあ」


 私は椅子の背もたれに寄りかかる。そのまま寝てしまいたいけど……そうもいかないのよね。


「国務卿はもう揃っているの?」

「はい。私とルーナ様、それからカーコルカスターに残してきたカルロ将軍を除いて、会議室に皆様お揃いです」

「じゃあ、私たちも行かないとね」


 私は仕方なく、勢いをつけて椅子から立ち上がった。ああ、ドレスが重い……。

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