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アグロンド王国物語-妖精が王国を築いたり魔法研究の旅をしたり大戦争までしちゃったりする話-  作者: ガーレ
アリス編・第1章-ウェスーク復国戦争-

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第34話-拡大-

 季節が過ぎるのは早いもので、もうすっかり秋ね。私はとある事情のために、アスターの咲き誇る港町ワルハムに戻っていた。


「こ、この人たちは……?」


 私は圧倒され、眉が無意識にピクピクと動くのを感じる。


「ウェスーク国軍への入隊志願者だと。ムー島から遥々来たそうだ」


 目の前にいるのは50名を超える集団。全員が学院の卒業生、かつ魔法使いらしいわ。


「私、卒業のタイミングが同じ人間しか組織に勧誘しなかったわよね……」

「だが、留年した奴はいただろ。そいつらが、俺たちの活動を引き継いでいたらしい」

「つまり……?」


 私は集団の方を見た。彼らの中から1人、快活そうな男が前に進み出る。


「ボス、学院の『アリス様のバルバリア魔法戦線』には、魔法使いのほぼ全員が所属しております。どうか、僕たちのことを認めてはくださいませんか」

「ええ、そんなことある?」


 私は頭を抱えた。

 解散したと思っていた「私のバルバリア魔法戦線」が学院で規模を拡大して生きていたなんて。あと、こっちでシレッと改名したはずなのに何故か向こうでも反映されているなんて……いや、本当に何故?


「カリン様から伝言を預かっています。『私はムー島の教会で毎日健康に暮らしていますので、心配しないでください。それと、彼らにワルハムへ向かうよう勧めたのは私です、どうか受け入れてあげてください』と」


 カリンかあ……あなたが原因かあ……。

 まあでも、元気にしていることが知れて良かったわ。


「了解。伝えてくれてありがとね」

「それと、学長から去年盗んだ食料の請求書も預かっています」

「あ、ありがとう」


 これはまあ……後で燃やしておくとして。


「ジョン、どうしようかしら」

「受け入れるしかないだろう。それに、俺たちにとっても都合がいい」

「そうね」


 私たちはひとまず、彼らをウィンタカスターに連れ帰ることにしたわ。

 様々な組織で人手不足に直面している今、戦力が増えるのは素直にありがたいことだからよ。




――――――――――


「――そんな感じなのだけれど、50人超の新しい人材を私だけで捌くのは面倒……手に余るのよね」


 私はこの状況に、「国務卿緊急会議」を招集したわ。応じたのはジョン、イヴリン、アラーナ、オリヴァー、カルロ、ゾーイの6人よ。


「アリス、緊急会議というのは有事の際に――」

「というわけで! 今からここにいる7人で、それぞれの組織に新人たちを振り分けて行くわよ!」

「「……」」「が、頑張ります」「楽しみです」「おうよ!」「はっ!」


 返事しなかったのが2人くらいいたけど、皆やる気があっていいわね。

 さあて、新人はどんな感じかしら。私もなんだか楽しみになってきたわ!


「組織に入った理由は?」

「この国で何がしたい?」

「得意魔法は?」


 私たちは新人全員に書いてもらった技能カードを見ながら、実際に面接をしてみてどこの組織に入れるかを振り分けていく。

 農学や建築学を修めた者は優先的にウェスーク州に。法学を修めた者は法院に。魔力量の多い者は国境警備隊と遣ゲント傭兵団に。他は得意な魔法ごとに侍従と国軍各部隊に……といった具合よ。

 あと、演算魔法の使い手が新しく1人入ってきたから、その人は会計官に任命することにしたわ。やったわねアラーナ! あ、ジェファーに部下はやらないわよ。

 因みに、不採用はたったの1人も出なかったわ。さすが、全員学院を卒業してるだけあって優秀ね。


 そんなこんなで、新人の振り分け作業には4日も費やすことになってしまった。思っていたより時間がかかっちゃったわ。でも、これでこの国が大きく強化されたのだから安いもんよ。


「新人の皆に告ぐ。この国での生活は、学院みたいに甘いものじゃないわ。戦闘部隊は常に命を落とす危険がある。後方に配置された者だって、1つの失敗が仲間を危険に晒すかもしれない。そのことを常に意識し、日々業務に当たりなさい!」

「「「はッ!!」」」


 任官・入隊式の日。私は壇上に立ち、強い言葉で新人たちを激励したわ。彼らはそれに応え、力強く返事をしてくれた。

 きっと、彼らは私の国のために全力を尽くしてくれる。この時にそう確信した私は、大変満足して壇上から降りた。


 学院で存続していた「私のバルバリア魔法戦線」からは、これから毎年のようにウェスーク国に仕える官職・兵士を輩出するようになるわ。初秋の任官・入隊式は毎年の恒例行事になるのだけれど……この時の私はそれをまだ知らない。




――――――――――


「俺ァ新兵の鍛錬も兼ねてクルノール半島を征伐するのがいいと思うんだが、どうよ当主サマ」


 秋も深まってきた頃の定例会議。カルロが突然そんなことを言いだしたわ。


「うーん……まあ、いいんじゃない? 奴らはまだ魔法の存在を知らないだろうし」


 「クルノール半島」というのは、バルバリア島の最南西端に突き出た半島のことよ。バルバリア島に古くから住んでいるとされる原種の民族――「バルボ族」の領域で、統一国家が興ったこともなければ、ロマーラ帝国に支配されたこともない……言わば蛮地。とはいえ奴らの抵抗は頑強で、過去にお父様が征服しようとした際は1度失敗している。

 まあでも、今の私たちには「魔法使い」がいるわ。失敗する道理はない。


「征伐するのはいいけど、まずは対話を試みること――これは絶対よ。向こうが斬りかかってきたのなら、反撃しても構わないわ。あなたたち魔法使いなら問題なく対処できるでしょ? あとは、そうね……戦えない者を殺すことは厳に禁じる――これも絶対」

「オイオイ、それだと新兵の鍛錬にならねェだろ」


 私は彼を睨みつける。兵に追われるだけの無力な人間の苦しさ、悔しさはよく知っている。少なくとも私は、それを良しとしない。


「無抵抗な人間を殺したって鍛錬にならないでしょ。」

「わァッたよ。対話な、対話」

「本当に分かっているのかしら……」


 カルロは筋肉ダルマだからなあ……ちょっと心配ね。


「俺もこの件に噛んでいいか」


 そう提案してきたのはジョンよ。


「なんだァ? 手柄が欲しいのか」

「まあ、そんなところだ。俺の部下の法官を貸そう。翻訳魔法も使える奴だ」

「ほう」

「戦う前にしても、戦った後にしても、交渉事で役に立つはずだ。この国の法も理解しているしな」


 バルボ族を征伐した後は、彼らを統治する必要が出てくる。その最初の交渉に法官はうってつけってわけね。


「なら、この件は法院と国軍に任せるわ。死者を出すことだけは許さないからね。慎重に進めなさい」

「「おう」」


 こうして、クルノール半島征伐は始まった。

 あまり広いとは言えない土地だけど、幾つもある部族のそれぞれと交渉する必要があるせいで、平定にはかなり時間がかかったわ。具体的に言えば、1年半も費やすことになったの。

 まあでも、私の言いつけ通り、慎重にことを進めたおかげで統治は安定している――つまり、大成功ってことね!

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