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アグロンド王国物語-妖精が王国を築いたり魔法研究の旅をしたり大戦争までしちゃったりする話-  作者: ガーレ
アリス編・第1章-ウェスーク復国戦争-

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第31話-遷都-

「「(我々)(僕たち)は、遷都をするべき(です)(だ)!」」


 毎週、祈りの日の前夜に開かれていた「6人会議」――これから、それに代わるものが「国務卿定例会議」よ。その記念すべき第1回目にて、オリヴァーとジェファーの声が見事にハモッたわ。

 私は正直、めんどくさ……と思いながらも彼らの方を見る。


「なんで?」

「ワルハムの町は東部から遠すぎます。首都は国土の中心にあるべきです」


――と、主張するオリヴァー。


「最近、『半魚種』海賊の動きが活発らしい。海沿いの町は襲撃される危険がある」


――と、主張するジェファー。

 理由は違えど、偶然、彼ら2人の結論が一致したようね。


「そこまで言うなら、新首都の予定地は考えているのよね」


 それはまだです、なんてこと言ったらぶっ飛ばすわよ。

 私はそう思って圧をかけてみたつもりだったんだけど……彼らは私の言葉を聞いて満面の笑みになったの。

 あ、これガッツリ考えてあるやつだわ。


「「もちろん(です)(だ)とも! 新首都の予定地は――」」

「『ウィンタカスター』です!」「『ダウニウム』だ!」


……割れたわね。


「どっちよ」

「国土の中心に位置する都市――ウィンタカスターが1番合理的です。ここ以外ありえない」

「君は何を言っている。ロマーラ帝国時代の中心都市であったダウニウムこそが僕たちには相応しい」

「ダウニウムはエス・リーア国から近すぎます。それに、今あそこは人が住んでいないただの廃墟ではないですか」

「ウィンタカスターの都市構造は計画も何もありゃしないただのカオス。それに不潔だ。美しくない。僕たちには相応しくない」

「その考えは合理的ではありません。ジェファー閣下の美的感覚からは実利が抜け落ちています。ダウニウムに1から都市基盤を構築するとして、一体どれだけの時間を浪費するつもりですか!」

「ロマーラ帝国が築いた都市こそ機能美そのものだろう。オリヴァー、逆に言わせてもらうが、今の君には実利しか見えていない。首都というのは国の顔として――」

「はい、そこまで!」


 私はヒートアップした彼らを一旦制止する。まあ、この拠点の建築だって1番熱が入っていたのは彼らだもの。気持ちは分かるのだけど……。


「そもそも、本当に遷都する必要があるのかしら」

「「大あり(です)(だ)!」」

「そこは一致するのね……」


 私は大きくため息を吐いた。


「ジョン、どう思う?」

「俺も遷都には賛成だ。こいつらの言い分は分かる」

「ふむふむ、なるほど?」

「だが、遷都先については……どちらとも言い難いな」


 これについてはジョンも迷っているみたいね。


「では、2つの案について、それぞれのメリット・デメリットを比べてみるのはいかがでしょう。私が書き記していきますから、どうぞ自由に発言してください」


 そう言ってイーヴは、すぐに板とペン、インクを用意してくれたわ。さすが、仕事が早いわね。

 こういう役回りは何だかカリンを思い出すわ……っと、いけない。目の前のことに集中しなきゃ。


 私たちはイーヴに促されるまま、2つの案それぞれに対して意見を述べたわ。その結果がこうよ。


「ウィンタカスター案」

メリット

・国土の中心に存在しているため統治効率が良い

・都市が既に存在するため、都市基盤の整備を必要としない

・物品流通の拠点となっている

・南に向かって小川が流れており、港町ワルハムとのアクセスが良い

デメリット

・既に多くの人が住んでいるため、中心部に広い土地がない

・都市計画がなく無秩序、衛生状態も悪い


「ダウニウム案」

メリット

・ロマーラ帝国時代に築かれた計画都市をそのまま流用できる

・人が住んでいないため1から作り変えることも可能

・サスーク属領に近いため睨みが効く

・巨大な河川(プリューネ川)が東に流れており、交易がし易い

デメリット

・国土の中でもかなり東に寄っており、統治効率が劣っている

・最初に都市基盤の整備が必須

・エス・リーア国の領域に近く、侵略を受ける可能性がある

・海岸ほどではないが、プリューネ川から海賊の襲撃を受ける可能性がある


 意見が出尽くした頃合いに、私は問いかける。


「これ、どっちが良いと思う?」


 最初に意見を語ったのはカルロとゾーイだったわ。


「ミシアと停戦している今、俺らにとって最大の仮想敵はエス・リーアだ。あとは、反乱の可能性があるサスークか? 俺ァその両方に近いダウニウムに軍を置きたいと思うぜ。都市の中央に広い訓練場も用意できるしなァ」

「国境警備隊を指揮する私としましては、ウィンタカスター案を推します。カルロ将軍が挙げた仮想敵国の他、西方の未支配地――クルノール半島のバルボ族から襲撃される可能性もございます。情報伝達の観点からも、当主様は国土の中央に居られるのがよろしいかと」


 部隊を率いる立場にある2人でも意見が割れるのね……。


「アラーナはどう思う?」

「私は、その、ウィンタカスターが良いと思います。あの都市は商人の拠点になっているので……物資の管理がし易いかなーって。あ、でも、国外との交易を考えるのなら間違いなくダウニウムです。でも、今この国が外と交易を行うのはまだ現実的じゃないっていうか……そう考えるとやっぱりウィンタカスターかなって――」

「アラーナ、君はオリヴァーに付くのかい!?」

「アラーナ閣下は現状がよく見えてらっしゃる」

「あんたたち、うるさい」


 将来を見据えるならダウニウムが良いけど、現状は……って感じのスタンスね。


「ジョン、もう1度聞くけど、あなたはどう思うかしら」

「俺は……ダウニウムが良いと思う」

「理由は」

「もっともな理由は既に出尽くした。俺はそういうのじゃない。俺が思う理由は……そこが、俺の『故郷』だからだ」


 そういえば、ジョンは元ロマーラ帝国貴族で……ダウニウムが故郷だったわね。学院で軽く聞いた程度だったから、忘れてしまうところだったわ。彼にも故郷に対する情があるのかしら。


「あなたは、本気で帰りたいと思う?」

「いや、俺は君に従う。俺の意見を入れたら、これで3対3だ。後は君が決めてくれ」


 私はイーヴの方をちらりと見た。彼女は首を横に振る。意見する気はないってことね。

 私はそれから目を瞑って考えた。決心がつくまで考えた。どれだけ時間が経ったかは分からない。ゆっくりと目を開くと、彼らはまだ私の決断を待ってくれていた。


「決めたわ」


 誰かは分からないけど、ゴクリと唾を飲む音が聞こえた。


「ウェスーク国の新しい首都は――『ウィンタカスター』よ!!」


 私の言葉にオリヴァーは満足そうに頷き、ジェファーは地面に崩れ落ちた。


 こうして、オリヴァーとアラーナを中心とする「遷都プロジェクトチーム」は発足したの。

 ジェファーは最初こそいじけていたけど、いつの間にかノリノリで都市計画に参加していたわね。外務卿って暇なのかしら……。

 私がウィンタカスターに移り住めるのは、9月の上旬あたりとのことよ。私は「その日」が来るのを楽しみにしながら、残り少ないワルハムでの日々を過ごすことになったわ。

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