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アグロンド王国物語-妖精が王国を築いたり魔法研究の旅をしたり大戦争までしちゃったりする話-  作者: ガーレ
アリス編・第1章-ウェスーク復国戦争-

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第30話-解散-

「私と、私の隊員5人を、『アリス様のバルバリア魔法戦線』から脱退させてください」


 カリンの突然の頼みに、私たちは固まった。

 どうして? そう思ったけど、私は言葉に詰まって声を出すことができなかった。


「……なぜだ」


 最初に口を開いたのはジョン。たった1言、シンプルな問いだった。


「怖く、なったんです。戦場で死ぬのが――」

「それは違うだろう」


 声を震わせながらカリンはそれに答えた。そんな彼女の言葉に被せてまで、それを強く否定したのはジェファーだったわ。


「君の部下は確かにそうかもしれない。だけど、君ほどの人間がその程度で組織を辞めるなんて言い出すはずがない」

「私を買い被り過ぎです」

「いいや、君には本当の理由があるんだろう?」

「……」


 カリンは黙ってしまった。ジェファーがこんなに圧をかけて話すのは珍しい。


「カリン、もしジェファーの言っていることが本当なら、私たちに正直に話して欲しいわ」


 きっと、ジェファーの指摘は正しい。だから私も、彼に同調した。


「……私は、恥ずかしくなったんです」


 カリンは震える声で、ゆっくりと話し始めたわ。


「ボスは、もう知っていますよね。私が嫉妬深い女であることを」

「ええ、あなたから聞いたんだもの」


 私は療養中、4将の全員から戦場で何があったかを聞いた。その際に彼らは、今まで思っていたこと、考えていたことをそれぞれ私に打ち明けてくれた。ジェファーが私に対して良く思っていなかった事。カルロが私のお父様を知っていた事。そして、カリンが天才に強く嫉妬していた事。


「私は、平凡なボスが好きだったんです。平凡な人間なのに、優秀な人間を行使し、大胆な行動に打って出る……そんなところを尊敬していたのです」


 彼女の瞳から涙が零れた。


「なのに、ボスは決して平凡な人間ではありませんでした。あの日、ボスが乙女座系魔法を発動したあの時、私には決して超えることのできない圧倒的な力の差を、目の前で、まざまざと見せつけられたのです!」


 最初は震えていた彼女の声は、次第にハッキリと、強い口調に変わっていったわ。


「私は天才が嫌いです! 私の心を掻き乱すのは、いつだって天才です! 凡人である私は、天才に嫉妬することしかできない……そんな私が、許せないんです……」


 彼女はとうとう泣き崩れてしまった。


「カリン――」

「アリス、よせ」


 咄嗟に声をかけようとした私をジョンは止めた。代わりに彼が前に進み出る。


「カリン。これからお前に、1つだけ問おう」

「何でしょうか」

「今のお前は、アリスに忠誠を誓えるか」


 ジョンに選択を突き付けられ、目線を少し下げるカリン。でも、彼女は既に決心していたんでしょうね。すぐに、はっきりとこう答えたの。


「いいえ」


 私は彼女の選択に強くショックを受けた。

 だって、今まであんなに仲が良くって、それでいて私に1番忠実だったカリンが、まさか、こんな形で組織を辞めるだなんて……こんなのってないわ……。


「なら、俺たちはお前を引き留めない。荷物を纏めてムー島に帰るんだ」

「ありがとうございます」


 彼女はそれだけ言って、静かにこの最高会議室を後にしたの。呆然と立ち尽くす私を残してね。


 1週間後。カリンをはじめとする脱退希望者6人は、ムー島に帰るためウェスーク国北部の港町へと向かっていったわ。それ以来、彼女たちがワルハムの拠点に戻ってくることは2度となかった。




――――――――――


「これより、『私のバルバリア魔法戦線』における最後の6人会議を始めるわ」


 会議室を見渡しても、私の目の前にいるのはジョン、ジェファー、カルロ、ルーナの4人だけ。つまり、「6人」会議と言いつつ、この場には5人しか出席していない。


「今回の議題は、この組織の『解散』――その是非を問うものよ」


 ウェスーク国を復活させるという目的を達成した今、この組織は既に存在意義を失っているわ。それに、4将の内の1人であるカリンが脱退したことで、そのままの形での組織運営が不可能になってしまったの。

 だからいっそのこと、私たちはこの組織を解散することにした。


「これに反対する者は、手をあげなさい」

「「「「……」」」」


 反対する者は、1人もいなかったわ。


「それじゃあ、この議題は可決ね。これで、『私のバルバリア魔法戦線』は解散よ」


 事前に話を通していたとはいえ、あっけないものね……。

 私が4年間も率いてきた復讐のための組織は、こうして終わりを迎えたの。


「よし、じゃあこの話は終わり。廊下にいる全員、この部屋に入ってきなさい!」


 私のひと声で部屋の空気は一変する。新たに入ってきたのはイヴリン、アラーナ、オリヴァー、ゾーイの4人よ。


「揃ったわね。これから、ウェスーク国における『国務卿』の任命式を執り行うわ!」


 最高会議室に設けられている私専用の舞台に立ち、私はこれを堂々と宣言した。この場にいる全員が、私に跪いたわ。なんて最高の眺めなのかしら。

 「国務卿」――それは、ウェスーク国を率いる高級官僚8人を指す言葉。私が制定したの。


「まずは、第8位――ゾーイ」

「ハッ」

「あなたには国境警備隊――その『隊長』の任を与えるわ」

「ありがとうございます」


 国境警備隊は元北方警戒旅団から名前を変えただけの組織よ。だから、その長もそのままゾーイが務めるってわけ。警備する範囲が広くなった分、人員は前より増えているわ。


「次、第7位――ルーナ」

「はい、です」

「あなたには遣ゲント傭兵団を任せるわ。頑張ってね、『団長』」

「その任、お受けします、です」


 遣ゲント傭兵団はその名の通り、ゲント国に派遣される傭兵団よ。その長には、戦闘面での実力があり、尚且つ人から気に入られやすいルーナを抜擢したわ。政治的判断に不安があるけれど、必要があればジェファーを送り付ければ問題ないわよね。


「次、第6位――カルロ」

「おう」

「あなたにはウェスーク国軍の『将軍』になってもらう……あ、でも最高指揮官は私だからね。勘違いしないように」

「それくらい分かってらァ」


 ウェスーク国軍を創設するにあたって、私たちは今までの組織を大きく再編成することにしたわ。将軍カルロは3つの部隊――白刃部隊(元カルロ隊)、射撃部隊(元ルーナ隊)、支援部隊(元ジェファー隊)に対する直接の指揮権を持ち、サスーク属領軍の監督権も持っている。まさに、軍の最高責任者ってわけ。


「次、第5位――オリヴァー」

「はい」

「あなたにはウェスーク州の『地方長官』になってもらうわ。とは言っても、私が直接支配しているのは今はウェスーク州だけだから、実質的にあなたが徴税の最高責任者ね」

「拝命しました。それにしても『今は』だなんて、野心的ですね」

「そう受け取ってもらって構わないわよ」


 国の基盤ってのは、結局は国民からの税なのよね。オリヴァーには引き続き、徴税に関わる測量や農地改革の仕事を担って貰うことになるわ。彼に与えられた部下も、元農地改革旅団からそっくりそのまま引き継いでいるの。


「次、第4位――ジェファー」

「ええ、もう僕? 呼ばれるの早くないか」

「うるさい。あんたの仕事は私の国の『外務卿』よ」

「部下は何人つけてくれるんだい」

「何言ってるのよ。1人で頑張りなさい」

「嘘だろ……」


 今はまだ、ウェスーク国と関わりがあるのはミシア、ゲントの2国のみ。だから、外交担当は1人で充分だと判断したの。彼は優秀だしね、きっと問題ないわ。まあ、大変そうならいつかは増やしてあげるわよ。いつかは。


「次、第3位――アラーナ」

「は、はい」

「あなたには『大蔵卿』をお願いするわ。とは言っても、あなたもジェファーと同じで1人だけなのだけれど……」

「も、問題ありません。精一杯、頑張らせていただきましゅ……っう!!」


 アラーナの仕事は今まで通り、組織が運用している物資の管理よ。彼女の仕事はとても重要なものだから、大蔵卿という役職を付けてあげたってわけ。国が大きくなれば、彼女に部下ができる日もくるかもしれないわね。


「次、第2位――イヴリン」

「はい、当主様」

「あなたには『侍従長』になってもらうわ。私の身の回りのこと全てを担当してもらうけど、いいわよね」

「もちろんでございます。当主様の仰せのままに」


 組織に残った元カリン隊員の多くは、私の侍従になることが決まったわ。イーヴに与えられた役職――侍従長は、そんな彼女たちの纏め役。堕天使であるイーヴに対して嫌悪感を覚える者は多いと聞くけど、まあ彼女なら難なく纏め上げるはずよ。私は彼女を信頼しているの。まあ、唐突なセクハラだけは怖いけど……。


「最後に、第1位――ジョン」

「俺が最高位か」

「当たり前よ! あなたには『大法官』を任せるわ」

「大法官……?」


 彼は聞きなれない官職名に首を傾げた。確かに、どんな仕事かパッとは分からないわよね。


「大執事と迷ったのよね……でもあなた執事って感じじゃないし」

「悪かったな、お前の面倒を見てやれなくて」

「悪いなんて言ってないじゃない」


 いちいち小言を挟むんだから……面倒くさいわね。


「大法官であるあなたには、私をこれまで通りに補佐して貰うわ。それと――」


 私は舞台を降り、彼に「あるもの」を手渡した。


「これは……?」

「シアボーンの屋敷で見つけたの。これは、お父様が使っていた――ウェスーク国の『国璽』よ」

「ッ!?」

「これを、あなたに預けるわ」


 国璽――それは、押された文書を国の公文書たらしめるもの。私はそれを彼に預けることにしたの。つまりこの瞬間、彼はこの国の公文書を承認する立場になった。それが彼の――大法官の仕事。

 彼はその意味を理解した瞬間、私に首を垂れた。


「俺は、アリス――君に一生の忠誠を誓う。君から賜った大命、俺の全てを懸けて遂行してやる」

「ふふん、期待しているわ」


 この日、「私のバルバリア魔法戦線」は解散した。それと同時に、新生「ウェスーク国」が遂に動き始めたわ! でも、この国が正式に復活するのは、もう少し先のお話よ。

 アリスは不機嫌な時にジョンを「あんた」呼びします。それ以外は「あなた」です。同じように、ジョンはアリスを気に入らないと思った時に「お前」呼び、それ以外は「君」で呼びます。多分そう。

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