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アグロンド王国物語-妖精が王国を築いたり魔法研究の旅をしたり大戦争までしちゃったりする話-  作者: ガーレ
アリス編・第1章-ウェスーク復国戦争-

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第27話-不死-

「アリス……お前、少しは考えてからだな」

「何よ、イーヴを迎え入れるのに何か問題でもあるの?」


 呆れた目で見てくるジョンを、私は睨みつける。しかし、彼は1歩も引かない。


「大体な、この戦争だってお前がワルハムで最初に即決したのが原因なんだぞ」

「何よ、私のせいだって言いたいの!? いや、まあ、そうなんだけど……」


 それを言われると何も言えなくなるじゃない……。


「で、それとこれとは何の関係があるって言うのよ」

「お嬢様。きっとジョン様は、私がミシア国と繋がっていることを危惧しておられるのです」


 私とジョンの口論に割って入ったのはイーヴだったわ。彼女の言葉にジョンは頷いた。私はそれに憤る。


「そんなこと、あるわけないじゃないッ!」

「と、こいつは言っているが。イヴリン、言いたいことはあるか」

「弁明させて頂きたく。私はミシア国とは何の繋がりもございません」


 それからイーヴは、ウェスーク国の城がミシア国に占領されてからのことを語ってくれた。


「ミシア国に占領されたこの城で、最後に生き残ったウェスーク国の人間が私でした。なぜなら彼らは、天使種であるこの私を殺すことができなかったのです」


 ミシア国軍は、何度も何度も彼女の殺害を試みたらしいわ。それこそ、思いつけるだけの全ての方法が用いられた。けれど、彼らに彼女を殺しきることはできなかった。


「私は毎日行われる惨い仕打ちに疲弊していました。だから、彼らに懇願したのです。何でもしますから、私を殺そうとするのを諦めてください、と。それから私は、彼らに性的な奉仕を強要されるようになりました」


……なんて酷い。

 話を聞いていた私たちは顔を顰める。女の同志は特に。


「もしや、地下室に外から鍵がかけられていたのは……?」

「ええ、私を閉じ込めるためです」


 問いに対するイーヴの答えに、ジョンは言葉を失った。


「ジョン、やっぱりイーヴがミシア国と通じてるなんて有り得ないわ!」


 ジョンの思考が停止しているこの機会に、私は彼に畳み掛けた。イーヴは絶対に私が守る。


「おい、お前」

「はい」

「真偽判定魔法はどうだった」

「反応しませんでした。彼女は嘘を言っていません」


 ジェファー隊の男は、私が知らぬ間に真偽判定魔法を使用していたらしい。……ジョンの指示ね。

 まあでも、そのおかげで彼女の潔白は証明されたわ。


「それなら問題無いわよね!」

「ジョン様。私、戦闘には心得がございます。お嬢様の護衛も可能ですよ」


 私の後押しに続き、イーヴ自身もしっかりとアピールしていく。

 そう言えば彼女、いつかの時にドレスの下にナイフが見えたことがあった気がするわ。あなた、戦えたのね。


「ほーう?」


 イーヴの提案に目を輝かせたのはカルロよ。「戦闘」と聞いてテンションが上がったようね。


「なら俺が腕試しを――」

「まて、まずは体を洗ってこい。その恰好のままいるつもりか」


 今の彼女は少し汚れていて、ボロ布1枚を羽織っただけの状態。

 なるほど、ジョンの提案はもっともね。ついでに、可愛い服も着せてあげなくちゃ!


「よーし、イーヴ。久しぶりに、一緒に水浴びしましょ!」

「はい、お嬢様!」




――――――――――


 私の屋敷には浴場がある。他の部屋みたいに荒れていることを想像してたけど、ここはあまり、当時と変わっていなかったわ。


「おお、ここも久しぶりね! ピカピカって程じゃないけど、悪くないじゃない」

「私がこっそりと掃除していたのです。お相手する前に浴場にお連れいただけることもございましたので、そういう機会に」

「……そう。嫌なこと思い出させたわね」

「いえ、お気になさらず。お嬢様は悪くありませんので」


 私には、彼女の壮絶な過去に対してなんて返せばいいか分からない。話題を変えなきゃ……そうだわ!


「ルーナ、あなたも一緒に入りましょうよ」

「アリスねぇね、いいの、です?」

「もちろん!」


 私は、入口で見張りをしていたルーナを呼ぶことにした。


「じゃーん、彼女は私の部下のルーナよ。こう見えても、うちで最強の魔法使いなんだから!」

「よ、よろしくお願いします、です」


 緊張しながら浴場に入ってきたルーナを、ちらりと見たイーヴは1言。


「彼『女』……?」


――取り返しのつかない失言をした。

 「カコンッ」と音を立てて、ルーナが持っていた桶が床に落ちる。


「いえ、あの、生殖器が無かったものですから。ルーナ様が『どちら』か分からず……」


 やらかしたことに気がついたのか、さも冷静な声色で言葉を続けるイーヴ。けど、その言い訳はどう考えても状況を悪くするだけよ……。


「ど、どどど、どこ、見てる、ですか!? です!!」


 ルーナの顔は一瞬にして、耳までリンゴのように真っ赤になっていたわ。

 慌てて体を隠そうとしたんでしょうね。彼女は落とした桶を拾い上げるために、その場で前屈みになったの。そうすると、後ろに立っていた私には彼女の股がハッキリと見えてしまう。


「ほんとだ」


 ついうっかり、私はそう呟いてしまったわ。その声はルーナにもしっかり聞こえてしまったようで、彼女は顔だけゆっくりと私の方へ振り向いた。その目には涙が浮かんでいて……。


「アリスねぇねまで、見ないでくださいぃい……」


 そう言ってルーナは、足を抱えて丸くなってしまったわ。


「だ、大丈夫ですよ。私も天使種ですから。『空いて』ませんから、ね?」


 そう言って下腹部を見せつけようとするイーヴ。

 いやいや、やめなさいよ。むしろ怖がられるだけよ。どうしてそんな意味不明な取り繕い方ができるのよ。


「はぁ……全く」


 見ていられなくなった私は、イーヴに水をぶっかける。


「ひゃ!」


 突然の冷水に彼女は飛び上がり、こちらを振り向いた。


「お嬢様、何を――」

「そこに座りなさい」


 有無を言わさずその場に彼女を座らせ、私は仁王立ちで見下ろす。


「ルーナは女の子よ。だって、こんなに可愛いんだもの、間違いないわ。いくらイーヴでも、さっきの発言は彼女に失礼よ」


 私は自身のことを棚に上げ、イーヴを叱責した。


「ええ、その通りでございます。失礼致しました、ルーナ様」


 イーヴの謝罪を受けて、ルーナは恐る恐る顔を上げる。


「私も、その、驚いちゃっただけで……えっと、うん。もう、大丈夫、です」


 2人のやり取りに満足した私は、うんうんと頷く。

 よし、これで仲直りね!


「アリスねぇね、ありがとう、です」


 ふふん。ルーナに褒められるなんて、鼻が高いわ。


「お嬢様、立派になられましたね」


 ふふん。イーヴまで褒めてくれるだなんて……

――ッ!


「イーヴ……あなた、どこ見てそう思ったのかしら」

「あら、私としたことが、また失礼を。お嬢様の『成長』が目の前に飛び込んできたものですから、つい……」


……。


「ルーナ、こいつ懲らしめていいわよ」

「分かりました、です」

「えっと、一体、私は何をされ――」


 イーヴの頭上に現れたのは1つの魔法陣。そこから生成されたのは、大量の流水だったわ。まるで洪水ね。圧倒的な水圧に為す術もなくイーヴの身体は押し流され、遂には排水のための溝にハマってしまう。


「お、お嬢様、お助け……」

「それで身も心も綺麗になさい」

「いい気味、です」


 その後、彼女は半刻ほどその状態で放置されたわ。不死身なのだから、これくらいの罰でも問題無いわよね。

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