表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アグロンド王国物語-妖精が王国を築いたり魔法研究の旅をしたり大戦争までしちゃったりする話-  作者: ガーレ
アリス編・第1章-ウェスーク復国戦争-

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/53

第26話-入城-

 サスーク・ミシア国軍との戦闘から2週間が経ったわ。ジェファーの治療のお陰で、私の美しい羽はすっかり元通りよ! ただ……精神的な具合はあまり良くないわね。


 私の療養中、拠点では戦死した同志の葬儀が執り行われたの。私の魔法を受けて、骨と金属類しか残っていない遺体を前に、神学を専攻した者が多いカリン隊員の多くは、かなり大きなショックを受けてしまった。

 アトゥス教において、火炙りは禁忌を犯した者に与えられる最大の罰よ。どうして彼女たちが業火に焼かれなければならなかったのか……。あれから拠点内の礼拝堂では、毎日、多くの同志が祈りを捧げていたわ。治癒室にまで聞こえてくるその声は、私の罪を責めたてているように聞こえてならなかった。


 それに私は、お父様の仇であるミシア国軍の将軍――オーファを殺した。仇討ちという、私の中で1番の目的を達成してしまった。「ウェスーク国の城」の奪還という目的が残ってはいるけれど、そこに戻ったところで私のお父様はもういない。私に残っているのは、灼熱に晒されボロボロになったお父様の形見の剣だけ。

 療養中の私は、罪の意識を背負いつつも、心の中に何かポッカリと大きな穴が開いたような、そんな気持ちで日々を過ごした。


 とはいえ、私は「私のバルバリア魔法戦線」のボス。体も魔力量も回復した以上、ここで立ち止まっているわけにはいかないの。私はジョンとカルロとルーナ、それから約30人の同志を引き連れて「ウェスーク国の城」へと向かうことになったわ。

 因みにジェファーは10人ほどの同志を連れて、サスーク国へと和平交渉をしに向かっている。カリン隊は全員、拠点でお留守番よ。


「ゾーイは、『城の周囲に敵軍はいない』と、言っていました、です」

「それなら案外、すんなりと入城できそうね」


 6年半ぶりに帰ってきたウェスーク国の城は、私が棲んでいた頃とは全く様変わりしていた。

 まず最初に気づいた事は、周囲の畑が荒れ果てているってこと。きっと、数年もの間、ろくに手入れされていないのでしょうね。

 次に門を潜り城壁の内部へと入ったのだけれど、都市にはほとんど人気がなかった。何人か見かけたのは皆、赤髪系の女性や子供たち。今まで色々な話を聞いたけれど、やっぱり銀髪系住民は皆殺しにされてしまったのね。

 最後に、私たちは特に警戒しながら城の中央――お父様と私が暮らしていた屋敷を目指す。


[アリスお嬢様あああああ、お会いじだがっだでございまずうううううううう]


 屋敷は軍の拠点として使用されていた形跡があったけど、今はもぬけの殻だったわ。地下室で発見された、たった1人の幼女を除いて……ね。


「アリス、こいつは」

「イヴリンよ。私はイーヴって呼んでる。昔、私の家庭教師をしてくれていたの」

「天使種、なのか?」

「輪っかが光ってないでしょ。彼女、堕天してるのよ」


 過去に何らかの禁忌を犯したことで天使種としての力を失い、教会からも追放されてしまったイーヴだけれど……。お父様に見つかり拾われたことで、彼女は私の使用人兼家庭教師になったらしいわ。


[まさか、生きていただなんて]

[堕天じででもぞう簡単には死にまぜんよぉ……]


 私が学院で不自由ないくらいにロマーラ語を扱えたのは、彼女が「将来、絶対に役立つから!」と、親身になって教えてくれたからよ。実際その通りになったのだから、彼女には感謝をしてもしきれないわ。

 つまりこれは感動の再開――の、はずなんだけど……彼女のあまりの泣きっぷりに私は拍子抜けしてしまっていた。


[イーヴ……あなたってそう簡単に泣くような人じゃなかったじゃないの]

[びええええええええん!]


 彼女は私を抱きしめながらひとしきり泣いた後、冷静さを取り戻したのか、スッと私の元を離れる。そして、彼女は急に改まって私の方に向き直った。


「あの、お嬢様。2つほど聞きたいことがあるのですが、よろしいですか」


 まさかさっきまで号泣していたとは思えない、澄ました表情で彼女は私に問うてきたわ。しかも、突然のロマーラ語で。

 昔から思っていたけど、この切り替えの早さは何なのかしら。


「もちろんいいわよ」

「ありがとうございます。ではまず、お嬢様はどうして原種の方々を従えているのですか」


 まあ、それは気になるわよね……。


「話すと長くなるけど、いいかしら?」

「勿論でございます」


 私は、学院時代にバルバリア魔法戦線を結成することになった経緯――それを、搔い摘んで説明してあげた。

 彼女はその話を興味深そうに聞いている。


「なるほど、私の手紙を読んだのがきっかけだったのですね。あの時は非常事態の真っただ中でしたから……無事にお嬢様へと届いていて良かった」

「あの時はこいつ、『国に帰る!』って聞かなくてな。引き留めるのが大変だったぞ」

「ジョン!?」

「あなたが学院でお嬢様を支えてくださったのですね。感謝申し上げます」


 何よ、もうッ。あの時は、その、仕方ないじゃない。


「……それで、もう1つの聞きたいことってのは何なのよ」

「この城を占拠していたミシア国軍の方々は、どちらへ行かれたのでしょうか」

「ッ!」


 イーヴの問いに、私は言葉が詰まってしまった。私の発動した終焉魔法に仲間を巻き込んだこと。敢えて考えないようにしてきたそのことを、意識してしまった。


「俺たちが全員殺した」


 私の代わりに、ジョンがその問いに答えてくれた。それを聞いたイーヴは目をぱちくりさせる。


「はて、彼らは数千人はいたはずでは……」

「イヴリン、俺たちは全員『魔法使い』だ。その程度の規模になら勝てる」


 彼は、私がミシア国軍を全滅させたことをイーヴに話さなかったわ。きっと、何か理由があるのね。


「そ、そうよ。私たちはミシア国軍との決戦に勝って、このウェスーク国の城に戻ってきたのよ」

「であれば、アリスお嬢様の目的は……」

「ええ、私はウェスーク国を復活させるわ!」


 私の宣言を聞いたイーヴは、とても嬉しそうに目を輝かせた。


「アリスお嬢様、立派です。素敵です! まさか、あんなにやんちゃだった子がこんな風に育つだなんて!」


 1言余計じゃないかしら……という言葉は飲み込んだ。

 まあでも、褒めてくれるのは素直に嬉しいわね。6年半も経てば、私だって変わるのよ。ふふん!


「アリスねぇね、やんちゃだった、です?」

「そんなこと、ないわよ。ええ」

「ぴぇ」

「ルーナ、余計なことは聞かない方がいいぞ。アリスも虐めてやるな」


 私たちのやり取りを微笑みながら聞いているイーヴ。懐かしいわね、この感じ。


「――それにしても、ミシア国側の高位の人間が1人もいないのは想定外だ」

「だなァ。いっそ、奴らの中枢まで攻め込んじまうか?」

「カルロ、今の俺らにはそんな能力も戦力もない。まあ、向こうからやってくるのを待つしかないだろうな」

「あの……」


 話を聞いていたイーヴが、ここでスッと手を上げたわ。

 彼女の表情は、さっきの微笑みとは打って変わって、真面目なものへと変わっていた。……まあ、真面目とはいっても彼女も天使種だから、10歳いかないくらいの女の子の表情なのだけれど。


「しばらくこの城に滞在するのであれば、私めを使用人として雇っては頂けないでしょうか」

「イヴリン、それはちょっと検討させ――」

「大歓迎よ!!」


 私は二つ返事で彼女を迎え入れたわ。

……ジョン、その表情は何なのよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ