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アグロンド王国物語-妖精が王国を築いたり魔法研究の旅をしたり大戦争までしちゃったりする話-  作者: ガーレ
アリス編・第1章-ウェスーク復国戦争-

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第24話-発現-

「あんたがミシア国軍の指揮官ね。私は『私のバルバリア魔法戦線』のボス――アリス。あんたに一騎打ちを申し込むわ!」


 ルーナの魔法で拡散された私の叫びに、戦が止まる。


[アリスねぇねは、ミシア国軍の指揮官に、一騎打ちを、申し込んでいます、です]


 突然アグル語で喋り出した私にルーナは戸惑っていたけれど、彼女はすぐに翻訳魔法を行使してくれた。

 敵味方の誰もが手を止め、こちらを見ている。


「ふむ、いかにも。私がミシア国軍の将軍――オーファだが。お嬢さん、私のことを知っているのかね」

「私はあんたのことは知らない。でも、『それ』は知っているわ」


 私は奴の持つ剣を指した。それは、かつてお父様が使っていた剣だ。きっと、このオーファという男が、私のお父様の仇。絶対にここで殺す。


「ほーう、さてはお嬢さんはリオポルドの……ふむ。なるほどなるほど」


 私のことを知っているのね。

 奴はブツブツ言いながら何かを考え込んだ後、ふいに私へ視線を向けてきた。直感的に、何か来る、と思った私は警戒する。


「ッ!?」


 その直感は正しく、奴は突然お父様の剣を私目掛けて投げつけてきた。私は警戒していたお陰でそれを咄嗟に躱す。お父様の剣は、私の背後に生えていた木にそのままの勢いで突き刺さった。


「いいだろう。一騎打ちの申し込み、受けてやろうではないか」


 奴は死んだ兵士から剣を奪い取り、私に剣先を向けた。不敵な笑みを浮かべる奴の姿を見て、私の復讐心は激しく燃え上がる。


「お嬢さん、名をアリスと言ったね。その剣を使うと良い。まさか、一騎打ちに弓矢を使うなど、そんな無粋な真似はするまいな?」

「……望むところよッ!」


 私はお父様の剣を引き抜き、その場で構える。片手剣のはずなのに、両手で持ってもズッシリと重たい。木刀すら上手く操れない私には、せいぜい数回振り下ろすだけで精一杯。正面から戦えば、私は奴に間違いなく勝てない。でも、私にだって考えはある。


「では、死ね」


 奴は何の予備動作も無く、真っ直ぐこちらへ突っ込んでくる。けど、遅い。

 カリン、カルロとの特訓のお陰で、私は俊敏魔法、肉体強化魔法を使う人間の速度にまで目が慣れている。奴は妖精種が出せるほぼ最速の領域まで鍛えてるみたいだけど、私には奴の動きがハッキリと見えた。


「ほう、これを避けるか」


 奴は初撃を外した後、間髪入れずに返す刀で追撃を仕掛けてきた。しかし、それも私の身には届かない。


「そんな、攻撃、当たらない、わよ!」

「では、逃げてばかりではなく、そちらからも攻撃してはいかがかな」


 奴は私とお父様を殺した上、カリンすらも苦戦していた相手よ。本領がこの程度なはずがない。きっと、奴が狙っているのはカウンター。だからこそ私から攻撃するわけにはいかないの。


「随分と逃げ腰じゃないか。さっきまでの威勢はどうした」

「それはこっちのセリフよ。あんたの剣、掠りもしないじゃない」


 私は奴が剣を振るうたびに後ろに下がる。その先に待っているのはちょっとした崖。この状況は少し、あの日のジョンとの決闘にも似ている。私は奴に、袋小路の方へと誘導されて――あげていた。


「アリス、もう逃げ場は無いぞ」


 攻撃の手を全く緩めないこいつだって、きっと私を追い詰めれば何かしら隙を見せるはず。


「大人しくしていれば痛くはしない。一瞬で父の元へと送ってやろう」


 奴は私を見下ろして、既に勝った気でいる。今しかない。絶対に、勝機を見切ってやる。


「そう、ね。大人しく降参……」


 私は手に持った剣を下ろすが、奴から視線は逸らさない。

 奴は私の首を跳ねるため、剣を高く上げた。

 今よッ!


「――する訳ないでしょ、バーカ!!」


 私は奴の手元に向かって、お父様の剣を思いっ切り投げつけた。


「気でも狂ったか」


 奴はそれを振り上げていた剣で咄嗟に弾くけど、そのせいで体が少し傾く。私はその隙にすぐ背中から弓を構え、奴の羽を狙って矢を放つ。羽は妖精種にとって第3の弱点。奴は絶対にそれを避ける。

 決まったッ! 奴の体勢は完全に崩れたわ!

 私は間髪入れず、続けて奴の足に向かって矢を放つ。妖精種は空を飛べる代わりに足の怪我には無頓着。奴はきっと、体勢を立て直すことを優先して、その矢を避けないはず。でも、私の矢には猛毒が塗ってある。これは、私の勝ち――


「策に溺れたな、アリス」


 気づけば、私は奴に羽を斬りつけられていた。


「かはッ!」


 奴は体勢を崩したままの状態で無理矢理宙返りを行い、私の矢を避けたどころか、背後へと回り込んでいた。普通ではありえない挙動。だけど、あいつはそれをやってのけたわ。


「ぎッ、あぁああああ!」


 私は、羽を傷つけられたことで地面に堕ちた。全身が強く打ち付けられる。


「終わりだね」


 首元に奴から剣を突きつけられた。


「剣の腕に劣る者を相手にして、奇策を警戒しないと思うか」


 何も言い返せない。私には奴を睨みつけることしかできなかった。


「さて、いい事を教えてやろうじゃないか」


 考えなさい私。この状況の打開策を。ジョンに「死ぬな」って言われてるの。何か、何か!


「リオポルド。あいつの最後の言葉だ」


 私の最後の抵抗が全て霧散した。私にとって、それだけのインパクトがあった。

 お父様の、最後の言葉……?


「『娘にだけは手を出すな』、だったよ。とても良い父親だ」


 私の中で、何かの錠が外れた気がした。パキンッ、という音が脳内を駆け巡った。


「私に歯向かってくることがなければ、それくらいは守るつもりでいたんだがな」


 時間がゆっくりに感じる。奴の声が遠くなっていく。

 私の脳内に、知らない「何か」が怒涛の勢いで流れ込んできた。まるで、難解なパズルを解かされている気分。私は散らばったピースを1つ1つ当て嵌めていく。


「アリス、残念だよ」


 奴が吐き捨てた言葉も、私の耳には届いていない。

 パチッ。最後のピースが嵌った。その瞬間、私の身体は光に包まれる。


「ッ!? なんだ!」


 オーファは突然のことに驚き、剣を落としてしまった。

 私はこの時、冷たい地面に倒れていて、その場から動けない状態だった。それでも私は、体内から溢れ出る膨大な「魔力」を全身で感じていたの。羽を動かして空を飛ぶときに使うアレよ、間違いないわ。

 そして、私からとめどなく溢れ出すその全てが、地面に出現した巨大過ぎる魔法陣に吸い取られていく。きっと、何かしらの「魔法」が発動しているのね。いや、さっきので私が発動したのかも。


「こっちに、集まってください、です!」


 ルーナが焦っているのがちらりと見える。彼女があんな顔をするのも珍しい。私の発動した魔法って、そんなにヤバイものなのかしら。

 人生で初めて魔法能力が「発現」した私は、どこか他人事のように現状を見ていた。

 魔力が吸い取られていくうちに、段々と意識が遠のいていく。


「あ、これ、まずいかも……」


 発動した魔法がどのような影響を及ぼしたのか、私がそれを知るのは後のことになる。なぜなら、それを確認する前に私の意識は途切れてしまったから。

 同じアグル語であっても、銀髪系や赤髪系などにそれぞれ方言が存在する設定ではあります。しかし、面倒なので反映しません。赤髪系には東北方言を充てることも考えたんですが、如何せん生まれも育ちも沖縄の作者はそこら変ちっとも詳しくないので……。

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