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アグロンド王国物語-妖精が王国を築いたり魔法研究の旅をしたり大戦争までしちゃったりする話-  作者: ガーレ
アリス編・第1章-ウェスーク復国戦争-

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第22話-初陣・カリン視点-

 先日(2026/3/16)、この作品を読んでくださる皆様のおかげで、「注目度ランキング(連載中)」にて28位にランクインすることができました。誠にありがとうございます。

 これからも、せめて第1章が完結するまでは毎日投稿を頑張って継続しようと思いますので、変わらぬ応援の程、よろしくお願いいたします。

 私の生まれは、ダウニウム属州に存在した小さな村の普通の農家です。父がどの様な人物であったかは、私もよく覚えていません。あらぬ罪を着せられ、処刑されたのだと、そう母から聞いたことだけを覚えています。ダウニウム属州崩壊の際、母は亡き父が残した子を身籠っていました。まだ幼い私を連れての逃避行が、妊婦である母にとって如何に過酷だったかというのは、想像に難くありません。残念ながら、母はお腹の子が生まれてくる前に息を引き取りました。

 幼くして頼れる存在を失った私は、行き倒れの危機に直面します。そこに通りがかったのが、アトゥス教系の孤児院でした。彼らに保護されたことは、まさに奇跡としか言いようがありません。

 その後、私はムー島の教会で他の孤児たちと一緒に育てられることになります。


 私にはどうやら剣と勉学の才能があったようで、お世話になっていた教会の天使様から学院への入学を薦められました。

 しかし当初、私はそれに乗り気ではありませんでした。命を助けてくれた教会に、私は生涯を尽くすことで恩を返そうと思っていたからです。

 そんな私に、天使様はこう諭されました。「世界は広い。学院で6年間、色んなものを見て学び、本当にやりたいことを探しなさい。もしも、それでもここに戻りたいと思うのなら、自信を持って戻ってきなさい」、と。

 天使様の後押しがあって、私は学院への入学を決意したのです。


 猛勉強の甲斐あって、私は学院に首席で合格を果たします。このことは、まだ幼い私にとって大きすぎる成功体験であり、尊大な自負心を抱える原因になりました。

 入学後、初の進級考査である1年目の前期試験にて、私は成績順位表を見て愕然とします。ほぼ満点近い成績を収めたにも関わらず、私は首位を明け渡していました。

 点数の列を見てみると、私の枠より上に記されていたのは文句のつけようがない満点。それが2つも並んでいました。それを叩き出した者の名は、ルーナとアラーナ。彼女たちは共に、獲得が難しい特別枠で入学した学生でした。更に彼女たちは、年齢制限が存在しない学院の中でも飛び抜けて若い、ときます。才能の差は歴然としていました。

 私は彼女たちに激しく嫉妬しました。アトゥス教において嫉妬は恥ずべき感情であるため、私は自己嫌悪に陥りました。


 私は、己を心身ともに強く鍛え上げるため、ひたすら剣に打ち込みました。確か、この頃だと思います。私に火エレメント魔法の能力が発現したのは。それから私は、高潔さ、美しさの象徴である「教会騎士」を志すようになりました。

 騎士にとって、馬を扱うというのは必須の能力です。そのために入った乗馬サークルで、私は運命の出会いを果たしました。


 「バルバリア魔法戦線」のボス――アリス様。私と似た境遇にありながら、目的のため、がむしゃらに行動する彼女の姿に、私は早くから心を奪われていました。突出した才能を持たないながら、それでも足掻き続ける彼女は、私の憧れになっていったのです。




――――――――――


「私のため、組織のために、与えられた任務を完璧に遂行しなさい。以上よ!」

「「「「了解! ボス!」」」」


 この日、ボスの命令を受けて、組織にとって初めての大規模な戦闘が始まりました。


 最初に攻撃を開始したのは勿論ルーナです。理不尽なまでの魔力量を持つ彼女は、今まで私が見たことのない、おそらく彼女の魔力量でしか成し得ないであろう魔法を連発して、敵集団を次々と殲滅していきました。

 私はそれを見て、心に残る古傷が疼くのを感じました。だからでしょうか、私は1日に3度しか使えないような大魔法を早々に使ってしまいました。


 獅子座系の魔力を凝縮し、剣先にゆっくりと込めていきます。魔力圧が閾値を超えたのを肌で感じた私は、その剣を思い切り空に向かって振りかざしました。圧縮されたエネルギーは空気中の魔力、燃素と反応して燃え上がり、それらは次々に連鎖反応を引き起こします。私の剣から放たれた炎は、空一面を焼き尽くしました。


「カリン様、凄い」

「美しい」

「延焼魔法、初めて見た」


 これを見た私の隊員たちは口々に賞賛してくれます。でも、この炎は美しいものなんかではありません。なぜならこれは、私の心から生まれた嫉妬の炎なのですから。

 私の魔力量は精々、上位2割に入れるか否かというもので、平凡の域を出ません。このような大魔法は本来であれば、切り札として取っておくべきものだと理解しています。しかし、私はそれに反した行動を取ってしまいました。


「はは、私はまだ、この程度なのですね……」


 私は自身の自制心の弱さに酷く幻滅しました。普段なら決して口にしない、そのような言葉を漏らしてしまう程には。


 第1陣は私が1人残らず燃やし尽くしました。しかし、第2陣以降はそう簡単にはいきません。


「第1列、火矢、構え」

「「「はいッ!」」」

「撃てッ!」


 私は声を張り上げ、隊員たちに向けて号令をかけます。彼女たちは訓練通り、私の指示に的確に従ってくれました。矢の命中率も上々で、私たちは素晴らしい戦果をあげたと言えるでしょう。


 続けてやってきた第3陣では、遂に敵は接近戦が有効な距離まで侵入してきます。


「総員、剣、構え!」


 私は隊員たちに接近戦の準備を命じ、ルーナからの連絡を待ちます。


「ルーナ様より、『頼みます』とのこと」


 ルーナ隊の射撃が止んだのと同時でした。

 通信魔法使いの言葉を聞いた私は、先陣を切って剣を片手に跳躍しました。私の隊員たちも、その後に続いて空中へと飛び上がります。


 私をはじめとする隊員たち、そのほとんどが近接戦闘で使用する牡羊座系――俊敏魔法を始めとする時間制御系の魔法は、獅子座系魔法で炎を制御するのに比べて格段に魔力を消費します。そのため、戦闘中は適宜、それら魔法のオンオフが求められます。

 難易度が高い反面、上手く使い熟せば消費魔力を最小限に、妖精種相手にだって機動で優位に立ち回ることが可能です。


「常に2人1組! 周囲をよく見なさい! 背中を取らせてはいけません!」


 私の隊では規律を最も重視し、日々訓練に励んできました。負傷者が数人に抑えられたのは、ひとえにこれまでの努力の賜物です。

 初めての実戦にも関わらず、隊員たちが日頃の訓練通りの行動を取れていたこと。その結果として、1人の戦死者も出さなかったことを、私は心から誇りに思いました。


「カルロ隊の方は……なんだか楽しそうですね」


 圧倒的だった第3陣の敵兵も残り僅かを残すのみとなり、戦場全体を見る余裕も出てきました。そんな頃合いだったと思います。通信魔法使いから「連絡事項アリ」の合図を受けたのは。


「カリン様。ボスからの命令でございます。『至急、カリン隊は指揮所へと帰還するように』、と」


 このタイミングでの私の隊への帰還命令。これは即ち、あれが発動することを示唆していました。


「プランB……覚悟はしておりました」

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