第19話-初陣・ルーナ視点-
これは、全てが終わった後、私が4将それぞれから直接聞きだした話。あの時、戦場でどうしていたかについて、ボスである私には全てを知る責任があった。
まずは、圧倒的な戦果を叩き出した我が組織における最大火力――ルーナ隊から、ここに記録していこうと思う。
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『敵の軍勢を捉えました』
その連絡が私に入ったのは、アリス姉とクッキーを食べていた時でした。私は拠点に戻りながら隊員たちと密に連携を取り合いました。もう、同じ轍は踏まないために、訓練通りに、ジョンの立ててくれた作戦通りに、冷静に。
『この位置ですと、私達が向かうべきは――』
『ポイントDだ。9番、至急向かいます』
『12番、バディと共に向かう』
『拠点へは――』
「拠点には、私が行きます、です。皆さん、ポイントDに、急行してください、です。それと、くれぐれも、敵に発見されないように、行動してください、です」
『『『了解!』』』
私が拠点に帰ってジョンに報告する前には既に、私は隊の皆に事前に幾つか決めていた地点の内の1つ――「ポイントD」に集結するよう指示を出していました。なぜなら、警戒のため主に東方に散開している私たちの隊は、出撃の際に拠点を経由していては接敵に間に合わないからです。
私たちの隊は、辺り一面全方位を見渡せる小高い丘の上に陣取りました。ここが、ポイントDと呼んでいる地点です。
私たちの隊と行動を共にするカリン隊の皆も、続々と集結しているとのことです。
拠点で行われた会議中、アリス姉はずっと不安そうでした。きっと「光の柱事件」の時、私が失敗したせいです。だから、私はアリス姉に言いました。
「大丈夫。私『たち』は、もう、失敗しない、です」
気絶してしまったアリス姉を運び出す時に、ジェファーはこう言っていました。
「大丈夫。ボスはきっと帰ってくる」
その言葉通り、アリス姉は作戦が始まる前に戻ってきました。いつもよりカッコいい姿で。
「私のため、組織のために、与えられた任務を完璧に遂行しなさい。以上よ!」
「「「「了解! ボス!」」」」
アリス姉の命令で、私たちは作戦通りの戦闘行動を開始しました。
私の隊に課せられた任務は2つです。主だったものとして、貫通魔法をはじめとした遠距離系攻撃魔法での敵の漸減。そしてもう1つ、通信魔法を用いた各隊間における情報共有です。
主任務の方では、多大な戦果を上げることができました。
1番最初は、私自身が先頭に立って魔法を振るいました。数の暴力で押し切ろうとする敵部隊は当初、幾つかの集団で迫ってきました。私はその集団の1つを、魔力でできた大きな結界空間に閉じ込めて、殺しました。高濃度の魔力は、魔力許容量の小さな人にとって猛毒になります。きっと彼らは、真っ暗な結界空間の中で、苦しんで死んだのだと思います。ごめんなさい。でも、私は何回もこの方法で敵を殺しました。これが一番有効だったから。
しばらくすると、敵の兵士たちは互いが距離を取り合うようになりました。そうなると、あの手は使えません。なぜなら結界空間というのは、広さに伴って展開に必要な魔力量が跳ね上がってしまうからです。いくら私であっても、あの手だけで散開する敵を全滅させるには、魔力が全く足りません。敵が行った戦術は正解でした。
ここで私は、隊の皆に命令を出しました。
「皆さん、各々、射撃を、始めてください、です!」
隊の皆による遠距離系攻撃魔法の一斉射撃。これにより、私たちは1人、また1人と敵を撃ち落としていきました。それでも、数に任せて敵はどんどんと迫ってきます。敵の第1陣が私たちの陣地に迫ろうかという時、空が真っ赤に染まりました。これは――
「カリンの、延焼魔法……」
きっと、彼女が剣を振るったのでしょう。私たちに迫ってきた敵が皆、火だるまになって落ちていきます。
「射撃を、止めないで。撃ち続けて、です!」
彼女の魔法に圧倒されて、手の止まった隊員たちを私は鼓舞します。
第1陣を倒しただけで、敵はまだまだ膨大でした。
「近い敵から、丁寧に、確実に、ですよ!」
私と違って他の皆が短時間に消費できる魔力は限られていて、外してしまえば大きなロスになってしまいます。なので、私はこれまで隊員たちに射撃の腕をとにかく訓練させてきました。その甲斐あって、敵の数は想定よりも早く減っています。しかし、敵の第2陣は段々と迫ってきています。カリンのあの凄い魔法もそう乱発できるものではないと思います。
敵の弓矢の射程にもうすぐ入るかという時、空に磨りガラスの様なものが大量に生成されました。ジェファー隊の防御魔法が貼られたのです。地エレメントの防御魔法は、水エレメントの私たちが使う通常の結界魔法とは違って、物理的な侵入を阻害します。そして、彼らの展開した防御魔法には意図的に、わざと隙間が多数開けられていました。
「抜けてくる敵を、狙いましょう、です!」
私たちは、侵入を試みる敵に対して集中砲火を浴びせました。私たちだけではありません。他の隊の遠距離攻撃部隊も、敵が射程内に侵入したことで攻撃を開始しました。これにより、敵の第2陣による突撃も退けることができたのです。
しかし、本番はここからでした。第1陣、第2陣とは比べ物にならない規模の第3陣が、私たちの前に現れたのです。
遠距離攻撃では防ぎきることのできない大軍が襲ってきました。敵の弓矢による射撃を受けて、遂に負傷者が出始めます。
「恐れないで! 急所に当たらなければ、ジェファー隊の治癒使いがいます。ですから、敵を倒すことだけ考えてください、です!」
魔法攻撃と弓矢の応酬。火力では圧倒的に私たちが上ですが、敵は数で押してきます。
『カルロ様から出ていいかとの確認が』
『カリン様からも同様の確認が来ています』
「分かりました、です。カルロとカリンには、頼みますと、伝えてください、です。皆、ここからは慎重に、絶対に同志には当てないで、です!」
他の隊との情報共有も、私たちの立派な任務です。「あの日」から、私たちはジョンの指導を受けて問題点を洗い出し、情報の「伝え方」について徹底的に研究、訓練を行ってきました。
きっと、この戦いでもその経験は間違いなく生きていると思います。
私の伝言が伝わったのでしょう。私の隊の射撃が止むのと同時に、宙を舞う敵に対してカルロとカリンが先陣を切って跳躍しました。彼らの隊員たちも後に続きます。
魔法による強化というものは凄まじいです。肉体強化、俊敏、風圧によるアシスト、爆炎、様々な手段こそありますが、そのどれもが、ひとたび使用すれば近接戦闘においても、普通の人の才能、経験値、技術、種族差、その全ての天井の上を行ってしまいます。魔法を使えない人間が、1対1で魔法使いに勝つことは不可能なのです。
カルロ隊、カリン隊の活躍で、私たちは敵第3陣の猛攻も、負傷者こそ出ましたが凌ぎ切りました。敵の数は残り半分まで減ったかというところでした。そんな時に、あの連絡が入ったのです。




