いきなりの荒事
息を荒らして町を走る影が3つ。
1人が頭からボロボロの布を羽織り、顔が見えないほど深くフードを被っていた。
残りの2人は茶髪に紫と橙色の服を着た男達で、そのフードの者を追いかけていた。
「待て!! 逃げるな!!!」
髭を生やした左のほうの男がそう叫ぶがフードの者は止まらない。
むしろそれを聞いてさらに速さが上がったようにも見える。
息も絶え絶えになっている2人はフードの者との差がみるみる広がっている。
そしてフードの者が曲がり角を曲がり、2人が曲がり角を曲がると.....
そこには、買い出しに出かけた者や遊びに出かけている子供などの人混みに溢れ返り、あちらこちらを見渡しても先ほどのフード姿の者はいなかった。
「くそ。...逃げられた。」
息を荒げながら髭の男は言う。
「あぁ、あの人に報告だ。お前はこいつらと探せ。」
そう言った髭の男の隣にはいつの間にいるのか、仮面をつけた人間が2人いた。
「分かった。頼むぞ。」
そう言い髭の男は元の道を戻り、もう1人は仮面の2人を連れて目の前の道を歩き始めた。
「はぁ はぁ はぁ。」
そう息絶え絶えにフードの者は建物と建物の隙間から外の様子を見渡す。
人が多いものの、自分を追いかけていた者が通り過ぎるのを確認することはできた。
フードの者は安心し、溜息を漏らす。
この場に留まればそのうちここがバレるだろう。
そう考え、立ち上がった時だった。
「すみません。」
「うひゃあ!?」
すっとんきょうな声を出し、フードの者は少し後ずさりする。
ここは建物と建物の隙間....いわゆる路地裏だ。
観光客や一般人が立ち入ることはまず無い。
それに話しかけた者は自分よりは少し小さい身長の少女で見慣れない服を着ていた。見たこともない布を使われたフード付きの服に長いズボン。
そして少女の瞳にはこの世界では見たことも聞いたこともなく、存在しないはずの蒼色の瞳だった。
この子は何かある。そう結論付け、フードの者はさらにフードを深く被り、後ずさる。
「あんた誰!! メトロドの仲間!?」
フードの者はそう言い放ち返答を待つ。
「......あれ? なんか驚かれてる以上に警戒されてるようなんだけど.....しかもメトロドって何?.....」
聞こえたのはその少女の独り言だった。
しばらく様子を見るがどうもおかしい。
(まるで誰かと会話をしているような.....)
そう錯覚させるような独り言にフードの者は混乱する。直後
「おい!!いたぞ!!」
その声に振り返ると、先ほどの男が指をさしそうおらんでいた。
そう聞こえた時に、反対から仮面をつけた人間が2人同時に走ってきた。
(挟まれた!?)
そう察し少女を見るが....少女は変わらずに独り言に夢中だった。
「へえ。つまりメトロドってのは......」
やはり誰かと会話をしているように感じる。
「おい!!隣に誰かいるぞ!!」
「きっと仲間だ!! そいつも捕まえろ!!!」
そう聞こえて初めて気付く。
(この人は無関係者!?)
直後
「スキル発動!! 【拘束】!!」
仮面をつけた人間の片方がそう言いロープを投げる。
するとそのロープが意思を持っているかのように少女へと向かってとんでいく。
(駄目!!)
フードの者はそのロープと少女の隙間に飛び込んだ。
「うっ!?」
そう声を漏らし、フードの者にはロープが絡まり体を縛った。
(外せない!? これがスキル!?)
フードの者が力を加えるがビクともしない。
「そいつも拘束しろ!!」
そう声が飛び またもやロープが少女を狙う。
「やめて!! 逃げて!!」
そう叫び少女に目を向ける。と
「ん?.....何?」
そういかにも 頭にゴミがついてるよ? と言われた時のような反応を見せた少女の手には 力を失い へなり、としおれたロープがあった。
「どうしたの?」
その言葉にその場の皆が絶句する。
スキルというものは習得するのに多くの時間と苦労が強いられる。
ましてや【拘束】など、敵を封じるスキルは更に厳しい努力の末、習得できる。
しかし、この少女は皆の前でそのスキルを無意識に止めていた。それを聞くとスキルを止められて何故皆が絶句するのかがよく分かるだろう。
「「「「え?」」」」
立ち尽くす男達と縛られたままのフードの者は同時にそう言葉を漏らした。
「あれ? なぁナビ。このロープ何?」
また独り言を始めた少女に男達は棒立ちになっていた。
しかしフードの者はその独り言の一言に着目する。
(ナビ?......この子が話している人のこと?)
自分が独り言などを観察するような者ではないがこの子の独り言には違和感が感じられない。
フードの者はそう考え、独り言を聞く。
「え?これがスキル? ただのロープじゃないの?...............え? 【拘束】なんてスキルがあんの?物騒だな。で?俺をこいつらが捕まえようとしたわけか。成る程ね。」
(やはり誰かと会話しているように見える。それにこの場の状況を読み取っている。ということはこの子はそのようなスキルを持っているの?)
この世界には物語などで出てくる魔法など存在しない。しかしこの世界には不可解なことが起こる。その全てはスキルで説明することができる。なのでフードの者はこのような状況こそスキルが使われている。と考えたのだ。
「おい!!さっきから黙ってれば!!ぐちぐちぐちぐちと! お前は少し黙ってろ!!!」
そう男が叫び、右と左から同時に仮面をつけた人間と男が襲いかかってきた。
「まずい!! あなたは逃げて!!」
フードの者はそう少女に言うが
「あれ?ナビ なんか来てるんだけど? あぁ さっきのメトロドって奴らか。」
少女は聞いていないようだった。しかし
「じゃあなにか? こいつらは少々荒くてもいいんだよな?」
そう言うと少女はフードの者の方に向く。
「おいそこのおねえさん。危ないから退いときな。」
すると少女はその手のロープをフードの者に投げつける。
「!?」
フードの者はロープを投げられたものの痛いという感覚はなく、逆に自分を縛っていたロープが切れたことに気付く。
「捕まえろ!!!!」
そう叫び少女に襲いかかる男達。だが
「なんか可愛そうだけど.......ごめんな?」
ボソッとそう言い 少女は息を深く吐く。
「力で自由を手に入れる者 俺の脚力を上げろ。【リミッターブレイク】」
するとフードの者の目には男達だけがその場で棒立ちになり、少女の姿が消えていた。
「「「え?」」」
そう漏らす男達に影がさす。
「ぐはっ!?」
仮面の一人がそう血反吐を吐き倒れる。
「何!?」
「がはっ!?」
そしてもう一人も倒れる。
「な、何が起こっている!?」
男がそう言い手に持っていたナイフを振り回すがその努力も虚しく 男は二人同様に地面に倒れた。
そしてフードの者が瞬きをすると。
「ふぅ。これでいいか。」
少女の姿がそこにはあった。
「え?......,え!?」
フードの者は目をこするがやはり先ほどまでいなかった場所に少女が立っていた。すると
「おいフードのおねえさん。 大丈夫だった?」
そのロングの水色の髪が揺れ少女がフードの者に手を差し出した。
フードの者はそれを見るなり、その手を両手でがしり と掴んだ。
「え!? 何!?」
そう戸惑う少女にフードの者はそのフードを下ろし顔を見せる。
美しい金髪のショートの髪に整った美貌。 その瞳は少女同様にこの世界には存在しないであろう水色の瞳。そんな美少女が少女を見据えて言う。
「旅の方、この地を救ってくださいませんか。」




