魔王と勇者
その声はまるで地を震わせるかのように重く、先ほどの安心をかき消した。
【それ】が檻にいるというのに私の口は震えマスターの思考も停止していた。
『勇者か?貴様』
もう一度大きく重い低音が耳をつん抜く。
マスターは口を開き 俺はただの人間だ。と言う
それを聞くと【それ】は再度口を開く。
『そんな訳がなかろう。ここは亜の地、ディオマルトだ。普通の人間がやすやすと入れるような場所じゃあねぇ。』
【それ】はそう言うとその姿を私とマスターの視界に現れた。
丸太のように巨大な体に恐ろしいほどの凶悪な顔には【それ】がいかに恐怖を覚えさせるかがよく分かる。
一応解析を行うが、私の解析は即座に エラーを主張した。
私の解析でエラーを発生させる生き物はそうはいない。いるとしてもオーナーやマスター。そして唯一この世界に存在する..............魔王程度だ。
《お前......魔王だよな》
私の解析の完了より早くマスターはそう言い放つ。
『ほう儂を知っておるのか』
そう言うと魔王はマスターに向かいその巨大な目をギョロリと向ける。
それを聞くとマスターは口を開く。
《いや、知らない。けど俺でも見えるぐらい濃ゆいマナなんか出してるし、こんな檻に入ってる奴って大体そう言う感じのやつじゃね?》
.......確かに間違いではない。けれど気になるのは.......
《あと、なんで檻の中に魔王なんか入ってるんだ?》
そう。魔王が檻の中に閉じ込められていることだ。
もともと魔王というものはこの世界では倒さなければいけないもので、ここには勇者が現れていた。
つまり勇者と魔王が戦ったはずだ、が勇者は去っていき残されたのは魔王の死体ではなく檻に閉じ込めた魔王だった。勇者は魔王と戦い 打ち勝ち 世界に平和をもたらす者だ。閉じ込めたそれが何故 檻に閉じ込めただけで帰ってしまったのか分からない。
『くっくっくっ。儂がここにおるのはなぁ。 理由があるからじゃ』
《理由?》
『あぁ。 あれは勇者と戦っている最中だった。 儂はあいつにここの最上階までよく辿り着いたな。儂の部下を全て殺したのか? と言った。するとあいつは、 いやいや。俺 殺すの好きじゃねぇから全員寝かせたよ。 なんてほざきやがってな。 生命反応を確認すると確かに全員生きていて眠っていた。だから儂はそいつに聞いた。 ならば何故勇者などしているのだ。とするとあいつは___』
《全ての生き物のみんなが幸せに暮らせるような世界を作りたいから......か?》
そのマスターの言葉に魔王は目を見開く。
『くっはっはっはっはっはっ!!!! おぬし。知っておるのか?そいつ。』
それを聞き、マスターは腕を組み言う。
《よくじーちゃんが言ってたからなぁ》
そう言うとマスターは檻に近付く。
『おい? おぬし。なんのつもりじゃ?』
その言葉にマスターは口を開く。
《この邪魔な檻をぶっ壊す!!》




