首だけでも動いてみせます
王女が姿を現した瞬間、自分たちは膝をつき頭を下げました。
王は神の代理人です。
その娘でもある王女もまた特別な存在です。
下々の者が対面したときは許し無しで仰ぎ見ることすら許されません。
例え学園長が大貴族だったとしても、まずは頭を下げます。これが常識です。
世間一般では自分とバカ王の関係が異彩かつ異常で異質なんですね。
それがわかっているから周囲の目があるときは演技をします。新貴族はともかく旧貴族連中が反王派に回られると引いては貴族院の勢力拡大に繋がります。
職人としてなら王家お抱えとして。
【輝く青銅】としてなら王にすら噛みつく犬として。
そして、個人では基本、自分が怒りっぱなしです。
お互い共犯みたいなものですし、問題はありません。
ですが流石に他国の姫にまでバカ王にやるような真似はできません。
何よりも法国はリスリア王国よりも神の代理人として色合いが濃く、ある意味では王国以上の貴族社会と言えるでしょう。いえ、貴種信仰でしたっけ?
共栄共存を謳い、そうした社会制度を取りながら、一方では根強い貴種への怖れや敬いが残っているという感じでしょうか。総じてややこしい国です。
「妾が法国の神務代行ヘルメ=フィリネ・パルミドーヴァ・ユーグニスタニアの子。アルファスリン・ルーカルバーラ・ユーグニスタニアである。女神パルミアの名において不浄なる【禍地】を祓いに来てやったのじゃ。面をあげよ」
王女の許しを得て、小さく顔をあげました。
若干、不遜なことを言われたような気がしましたが真面目に聞いていると頭が痛くなります。
ゆっくりと仰ぎ見た王女は腕を組んでいました。
その時点で自分の感想は『あぁ、王族ですね』の一言でした。
せめて手はお腹の前で収めて欲しかったのですが、何も見なかったことにしましょう。
「リスリア王国がリーングラード学園試験場の裁定役にして学園長のクレオ・シュアルツ・アースバルトにございます。此度は遠路はるばるようこそ、おいでくださいました」
学園長の返答は卒のないものです。
向こうさんは発言している学園長に注目しているので、この隙に観察を続けましょう。
アルファスリン姫。
思ったとおり、やんちゃそうですね。
まず一番初めに印象的だったのは挑戦的な目つきでしょう。
髪をピンで止めているみたいに吊りあがった瞳は勝気というよりも性格のキツさを物語っていました。
そんな印象も頭の見慣れない飾りに塗りつぶされました。
前頭部から後頭部にかけて二つ。
まるで髪の毛をかきあげるように伸びる角です。
子鹿のように皮に隠された柔らかそうな角でした。
記憶にある、どのヴェーア種の角とも違います。
いえ、それ以外は毛深さもない普通のヒト種――いえ、耳が長く色白なのでエルフ種に近いですね。
はたと思い出しました。
たしか法国には【神話級】竜種の血を受けた種族が居たという話です。
竜とエルフのハイブリットですか。
まごうことなく貴種ですが正式な名前を思い出せません。
後でアレフレットに聞いてみましょう。
「うむ。よきにはからえ――」
ここでピタリとアルファスリン姫が動きを止めました。
すると王女の隣に居たエルフが腰をかがめ、小さく耳打ちします。
それをアルファスリン姫は眉を潜め、手で追い払いました。
「――細かいことは抜きじゃ。上級魔獣はどこにおる。妾の精強たる神殿騎士らが成敗してくれよう!」
ハプニングが発生しました。
どうやら王女は今回の調査隊の名目を知らされていないようです。ありえません。
「姫様……」
エルフがまた姫様に耳打ちをしました。
額に冷や汗が流れているように見えるのは気のせいでしょうか。
「何故、それを早く言わん!」
「……いえ、申し訳ありません」
少し躊躇ったところを見るとエルフは何度か報告したのでしょうね。
その全て、アルファスリン姫は聞いてなかったと見えます。
「上級魔獣を仕留めた汝らの手腕、素晴らしく思うぞ。さしずめそこの従士らと共に成したのじゃろう。皆、若くしてそれほどの強さとは……、むぅ」
違います。
それはウチの生徒たちです。
「彼らは従士ではなく、義務教育計画の参加者たちです」
「なんと! ぎむきょーいく計画?」
学園長の当たり障りのない訂正を聞いて、首を傾げるアルファスリン姫。
三度、耳打ちしようとしたエルフに鬱陶しそうな顔をしたアルファスリン姫は、きっかり三秒でエルフの腹部を殴りました。ポカっといい音がしました。
「後で聞く! クレオ卿、説明せよ」
「学園長にございます。アルファスリン様」
「クレオ学園長とやら! 説明を許すぞ」
もう耳打ちもしなくなりましたね。
学園長から義務教育の概要を聞き、妙に胸を張っている王女は置いておくとしましょう。
まず、苦労してそうなエルフさん。
歳は自分と同い年のようですがエルフは外見年齢がアテになりません。
立場から見ると学園長と同じか、ヘグマントより年上くらいでしょう。
一枚布を何重にも折り重ねたような、民族衣装のような格好をしています。
アルファスリン姫に良いようにあしらわれているように見えて、一番、周囲を観察しています。
冗談のような応酬を姫と繰り広げているが、殴られたときですらこちらへの観察を止めませんでした。
一瞬、目が合いましたしね。
その上で表情すら変えず他の観察対象を見定めているあたり、あのエルフは抜け目なく見えます。いえ、そういう風に振舞っているのでしょう。
立場と立ち振る舞いから察するに不慣れなアルファスリン姫の補佐、あるいは教育係なのでしょうか。
そのうえでアルファスリン姫の随伴として居るのでしたら元外交関係者か、あるいはリスリア王国に詳しい識者か、二つくらいです。
会話するともっとも危険な相手と認識しました。
「なるほど! 民に教育を奉仕するという話は聞いたことがあるぞ。モモが同じことを言っていたのじゃ。となるとリスリア王もまた同じように見識深いとも考えられるのじゃな」
次はもう片方です。
未だに一言も発せず、アルファスリン姫の斜め後方でただ黙っているだけの偉丈夫。
獅子のたてがみのような髪のヴェーア種で、おそらくヴェーアティーガーでしょう。歳までは正確にわかりませんが、少なくとも三十以上。四十間近かもしれませんね。ヘグマントと同じくらいの体格なので王女と見比べるとより大きく見えますね。
何が気に入らないのか、こちらを厳然と睨みつけてきています。いえ、本人はきっと真面目な顔をしているだけでしょう。殺意や害意は感じられません。
そして、一目見た瞬間、わかりました。
かなり強いですね。
全力、槍持ちのクライヴさんと同等、あるいは膂力だけなら上回っているように感じます。敵に回さないようにしておきましょう。この手合いには懲りてます。
例えるならベルリヒンゲン老とかと同じ面倒さですね。
さて、自分はこのヴェーアティーガーをヘグマント先生と一緒に抑える役目があります。
具体的には彼の率いる兵や周辺がオイタしないように、彼自身に『時には拳を交えて説得する』わけです。
見た目からして武人ですからね、殴り合ってもさっぱりしていると思います。
シャルティア先生とピットラット先生があのエルフ担当です。この二人なら不利な言質を取らせるような真似はしないでしょう。誰もが納得の人選でした。
そして、アルファスリン姫は学園長です。
これは純粋に立場的な理由もありますが、学園長なら孫をあやすようにアルファスリン姫を誘導してくれるでしょう。
リィティカ先生とアレフレット、そして、シェスタさんはその他大勢の処理ですね。
いわゆる歓待中の苦情や要望を仕分けし、処理する係です。とにかく数をさばかなければならないのでシェスタさんは得意そうですね。
そのシェスタさんの権限を越えたものは二人がさばいていきます。うらやましい。
生徒たちは文化祭の催しです。
調査隊は遺跡周辺の調査をするので基本、生徒たちが調査隊と触れ合う機会は文化祭だけに限定されます。
これがシャルティア先生案、学園長承認の対調査隊人事です。
「――このような経緯があり、ランスバール陛下は人材の教育法の一端として義務教育制度、その試運転としてこの地に学び舎をお建てくださったのです」
「しかし、教育を義務に課して農家や氏族は困らんのか? 法国にも貧しい氏族はいたぞ。彼らは子供の手も借りねば立ちいかぬほど困窮しておった。周囲の助けもあって辛うじてなんとかなったのじゃ。その彼らから子供を奪うような真似をして果たしてやっていけるのじゃろうか?」
「もちろん、全てを全て、一斉にやれば歪みも生まれ困る民もいましょう。そうした歪みを解決することもまた、我々に課せられた義務にございます。王に選ばれた優秀な教師たちが日々、頭を悩ませ、いくつかの問題は試験実施と共に解決する目処がついております」
初耳ですね、それ。
まだ問題だらけですし、他の実施に対しても有効な意見は出ていませんよ。
あえて大きく言っているだけでしょうか?
しかし、微妙に話題を逸していますね。
解答が『なんとなく成果が出ているので大丈夫』ですからね。
実際、自分たちの仕事の大半は計画の成功と『計画が成功した後のノウハウ作り』ですから。
細かい調整は他の地方で学園を建てて、やってみないとわかりません。
ですが続く学園事業は初期の自分たちのように学習要綱から改善するようなことはありません。
より効率的に教育と資金繰りに集中できるでしょう。
「民が全て理解ある識者となるか――アンドレアス! 法国でもできるか」
アルファリン姫の一言にエルフさんことアンドレアスさんは目を閉じて黙考しました。
「難しいでしょう。我々の社会は大きく分け、姫様のお家であられる四教を司る貴人、そして、各氏族との合同会議でなされます。問題は各氏族の力関係がそのまま影響するかと」
「うむ。皆が一律に頭が良くなるはずの政策が逆に偏りを生むのじゃな」
「さすが姫様はお賢い」
先の態度と噂で聞くほど頭は悪くないようです。
同じ質問をして答えられる生徒はクリスティーナ君とエリエス君、キースレイト君くらいでしょう。
「だが、それをなんとかすれば皆、エルフのように賢くなり、ド・ヴェルクの子のように頑健となろう。そうすれば各氏族の不平等はなくなり、皆、仲良く暮らせるのじゃな」
あー、これにアンドレアスさんは曖昧な顔でした。
事はそう単純ではないのでしょう。
聞きかじりで推測も混じりますが現在、法国は種族差がそのまま各氏族の力関係につながっているのでしょう。
そこに一律の教育を施しても氏族の力関係は変わらず、むしろ種族の特性が特化する事態もありえます。
自主訓練の様にもよく似ています。
ようするにフリド君は体育が得意なので、必然、自主訓練も体育が多くなります。
結果、体育の成績だけが上がってしまいます。
フリド君も自分の得意分野を把握しているので将来、騎士や兵を目指すでしょう。
それって才能があるからその道を選ぶとどう違うのか、という話です。
それは種族の特性を活かすことと代わりありません
「姫様。此度の要件は【禍地】の祓いであるに、お戯れはこの辺で」
「む。それもそうか。よく気がつくなインガルズ」
ヴェーアティーガー――インガルズさんが口を開きました。
思ったとおり、この二人はアルファスリン姫のお目付け役ですね。決定です。
「うむ。だが彼らの成果たる子たちをもっと間近で見たいぞ!」
ですがここでもハプニングが発生しました。
このあと、法国の調査隊は一部が室内運動場へ、もう半分がこの庭園広場、そしてアルファスリン姫と位の高い者は【貴賓館】へと案内される予定でした。
生徒たちと調査隊の距離を取るための方策の一環です。
しかし、そんなものアルファスリン姫には関係なく、アンドレアスさんとインガルズさんが止めるのも聞かず、生徒たちの前まで歩いて行ってしまったのです。
主賓が歓待主を歓待中に放置するのはマナー違反ですが、アルファスリン姫はお構いなしですね。
仕方なくアンドレアスさんは首を小さく振り、犬頭の兵と鳥頭の兵がアルファスリン姫について行きました。
せめてアンドレアスさんとインガルズさんでこの場を保たせようとしているのでしょう。
姫を止めるべきか。
一瞬で周囲を把握、いつでも止められると判断し腰を浮かしかけた瞬間――
「――ッ!」
――止まらざるをえませんでした。
心臓をえぐられたと錯覚するようなビジョン。
ごくごく細い糸のような【支配域】は胸を刺し、自分をその場に留めました。
インガルズさんから放たれているソレは、自分が動けば本当に腰の大剣で胸を貫いてくるでしょう。
「待て、ヨシュアン・グラム」
さらにはアレフレットに肩を掴まれ、抑音法で制止の声をかけられました。
「ただ近くで見たいと仰っているんだ。何も起きやしない」
「……ですね。あの様子と性格だと生徒たちに何かするとは思えません」
「ふん。わかってるなら大人しくしておけ」
過剰に反応しすぎましたね。
『自分の生活範囲に敵が入ってきた』わけじゃないんですから、止めに行く必要すらありません。
短い間で見た限りですがアルファスリン姫はある程度、分別がついているようです。
少し好奇心が旺盛で人の話を聞かないくらいですが、そんなものは生徒たちも同じです。
ナーバスになりすぎていたのでしょう。
自分が腰を落としたらインガルズさんも【支配域】、いえ、【支配線】ですね。
恐ろしく濃密な殺意はなくなりました。
「姫様は少々、戦乙女殿に影響されておってな」
まるで言い訳するようにインガルズさんがポツポツと呟きました。
「以前は少々、活発が過ぎたのだが今ではあの通り、己の本分と努めを理解されてくださった」
「【法国の戦乙女】モモ・クローミですか」
「おいっ」
アレフレットが慌てて喋るのを止めさせようとしましたが、とりあえず手で押し返しました。
「大丈夫です」
何か言いたげな顔のままでしたが、あえて説明する必要もありません。
インガルズさんがベルリヒンゲン老と同じようなタイプなら、こう考えるはずです。
動こうとした自分も悪いですが、止めるために殺意をぶつけたのもまた無粋と考えたのでしょう。
なので会話をして、悪意はなかったと伝えるつもりなのです。
これに返答すれば自分は『気にしてませんよ』ということになります。
しかし、これらはリスリアのやり方です。
インガルズさんもこっちについて詳しいのでしょうか。あるいは脳筋部は皆、同じ思想を持っているのでしょうか。
「よく喋れる。胸に穴が空いても動くつもりか?」
「大事なものがあるのなら首だけでも動いてみせます」
この返答にインガルズさんに目を丸くしていました。
「良かろう。我が名はインガルズ。インガルズ・ティガバルト。名を聞こう、暗き瞳の戦士よ」
「リーングラード学園術学担当教師。ヨシュアン・グラムです」
厳つい顔に張りついた双眸が喜色を含んでいます。
気に入られてしまいました。
どうしてこの手合いは自分に目をつけるんですか。
「もう一つ、聞こう。貴公のその目は――」
しかし、それ以上は聞けませんでした。
「きゃっ!」
短い悲鳴を聞いて、自分は目を見開きました。
素早くそちらを向けば、何がどうなったのかアルファスリン姫を守るように犬頭の兵がクリスティーナ君に剣を向けていました。
「ヒト種ごときが高貴なる姫様に何事か!」
犬頭の兵は剣を振りあげ、踏みこみは確実にクリスティーナ君の首を狙う足運び――その結末を理解した瞬間、自分は飛び出しました。
リュー厶・ウォルルムで瞬時に距離を詰め、振り下ろす剣に腕を差し伸ばします。
「―――ッ!?」
誰かの呼吸音は斬撃の音と重なり、誰のものかわかりませんでした。
間に合え、と願い叫びそうになったと同時に血が飛び散り、ポタリポタリと血が流れました。
「邪魔をするなヒト種!」
叫ぶ犬頭の唾が飛び散りました。
【獣のガントレット】と【剛体】で可能な限り身体を硬質化したつもりですが、剣は右前腕の骨で止まっていました。
あぁ、そんなことはどうでもいいのです。
こいつは一体、何をしようとした?
何が起きて、何が罪で、そんなものはどうでもいいのです。
今、斬ろうとしたな?
『俺』の生徒を殺そうとしたな?
ありとあらゆる常識が剥離する音がします。
真っ赤に染まる視界が飛び散った血のせいかどうかすら、どうでも良くなってきます。
この犬、殺そう。
無残に、残酷に、一切の慈悲なく憂いもなく、屈辱と激痛のさなかで生きてきたことを後悔させながら少しずつ肉の塊にしてやりましょう。
なら、この肉に食いこむ剣は邪魔です。
無理矢理、腕を振るって剣を吹き飛ばしました。
剣が地面に落ちて、カラカラとなる音が非情に不愉快です。
血がアルファスリン姫の顔にも飛んだようですが、些細なことです。
犬はまだ何かしら叫んでいるようですが問題ありません。すぐに悲鳴しかあげられなくなります。
コレを殺すために一歩、踏みこんだ瞬間、背後から複数の感触がありました。
「先生! 相手、他国の人だからオシオキはダメだって!」
「クリクリは大丈夫だから平気でありますよ?」
マッフル君が腰に、リリーナ君が怪我した腕とは逆の腕にしがみついていました。
そうと理解した瞬間、頭に上がった血が降りていく気持ちでした。
自分が身体を弛緩したと分かるとマッフル君とリリーナ君もまた、肩の力を抜いたような気がします。
「――大丈夫ですよ。ちょっとこの犬、失礼。犬のそっくりさんに厳重注意しようと思っていただけです」
「先生の厳重注意ってただのオシオキじゃん。前みたいになってたからビックリしたし」
前みたい、というのはキャラバン放火事件で商人の胸ぐらを掴んだときですか?
「貴様、俺が犬だとぉー!? この誇り高きヴェーアシャカールを!!」
「喋るな」
インガルスさんほどではありませんが【支配域】を広げると、犬頭は動かなくなりました。
自らが断頭台に立っていると理解したのでしょう。
毛筋を逆立てたまま、グルグルと喉から音を出しているだけです。
犬頭の処遇はどうでもいいんですよ。
それよりもクリスティーナ君です。
振り向こうとすると生徒たちも引きずられて、動きます。
「離してもらえますか? 動きづらいですね」
「美少女二人に抱きしめられて先生は恥ずかしいでありますな」
「ははっ」
「短く笑われたであります!」
微妙にガッチリ掴んでいますね。
それもようやく大丈夫だと判断したのか、すぐに離してくれました。
いつもそんな感じで物分りがいいと助かるのですが。
ともかくクリスティーナ君に目を向けると、クリスティーナ君は尻餅をついていました。その背中をセロ君とエリエス君が支えています。
「大丈夫ですかクリスティーナ君」
手を差し伸べるとクリスティーナ君が憮然と言った顔をして、手を取りました。
「一体、なんですの、あのヴェーア種は!」
「詳しく話を聞きたいのですが、どうでしょうエリエス君」
「はい。アルファスリン姫様がクリスティーナに話しかけ、言葉を返した途端、そこのヴェーア種が勝手に激昂しました。理解できません」
大丈夫です。先生も理解できません。
「クリスティーナ君?」
「何もやましいことは言ってませんわ! この髪型は何かと聞かれたので答えただけですわ!」
その答えは是非、先生も聞いてみたいですね。
主に君がどう思っているかですが。
「姫様。相違ありませんか?」
頭を下げようかと思いましたが、止めました。
アルファスリン姫は突然の出来事に固まっています。
多少の無礼はなんとかなるでしょう、非常時ですし。
「貴様! ガルージン! 姫様の前で何をしとるか!」
裂帛の掛け声と共にインガルズさんが歩いてきました。
アンドレアスさんもですが、教師陣も集まってきました。
あぁ、大事になりましたね。
というか誰の責任問題で決着がつくんでしょうか。
こればかりは天を仰ぎたくとも仰げません。




