呑気に草を食んでいたそうです
廊下を歩きながらエリエス君の話をもう一度、頭の中で整理すると一つだけ、腑に落ちない部分が浮かび上がりました。
「理由は誰かのためなのに、どうしてあの時、反対の言葉が帰ってきたのでしょうか」
人数をちゃんと伝えなかったせいでフリド君は定数以上の生徒に声をかけました。
これは自分の失敗です。
そして、そのことに気づいたエリエス君がかばっているのかと疑って『誰かのためですか?』と聞いてみたとき、エリエス君はこう答えました。
『いいえ、違います』と。
この微妙な矛盾はなんでしょうね。
エリエス君は自分の失敗に気づかなかったのでしょうか?
あるいは気づいていて、気遣って嘘をついたのでしょうか?
既に眠ってしまっているエリエス君からは答えを聞けそうにありません。
改めて聞くにしても微妙な話題です。
気にしなければ、いくらでも理由がつけられる手前、どうして自分を納得させたものかと迷っている内に職員室の前に着いてしまいました。
エリエス君との話で少し長引いてしまったので、これ以上、教師陣を待たせる訳にも行きません。
すぐにドアを開くと、目に飛びこんだのは中央テーブルに置かれた料理でした。
「お待たせしました」
スープの濃い匂いを嗅ぐと今まで空腹だったことを思い出しました。
結局、自分も昼から何も食べてないんですよね。
「すでに配膳は終わっているぞ。早く着け」
シャルティア先生に促されるまま、自分は空いているイスに座りました。
すぐに始まる、遅すぎる夕餉の時間。
円卓のように座る教師陣にシェスタさんもいます。というか隣です。
そういえばシェスタさんは途中から姿が見えませんでしたね。
「捜索隊も帰ってきたら少しは腹に何か入れたいだろう。そう思って【宿泊施設】の女性陣には炊き出しを頼んでおいた。シェスタはその手伝いだ」
「そうでしたか。ところで隣でスプーンを構えている女性に対して、自分はどう対応したら良いでしょうか」
目で『あーん』と訴えているシェスタさんをどうにかしてください。
「私の前でイチャつく度胸があるのならやってみろ。浮かれた頭が塩味になっても責任は負わん。今ならニンジンのおまけつきだ」
「これ以上、塩まみれになりたくはないですね」
汗もかいてますからね。
丁重にシェスタさんには諦めてもらいました。
炊き出しということもあってパンとスープだけの簡素なものなのに、妙に味わい深いのは何故でしょうね。
同僚と食卓を囲んでいるからでしょうか?
「良い味ですな、これは昆布の味わい……、乾燥昆布と貝柱の出汁をつかったもののようですな」
ピットラット先生の分析によるとスープは普通に美味しいようです。
あ、そういえば【宿泊施設】にはリューミンたちがいましたね。
六大栄養素で錬成された変人たちなら例え炊き出しであろうとも全力を注ぐことでしょう。
無駄に美味しいのはこのせいですか。
そういえばパンも指の腹で押すと元に戻ります。良い小麦粉で練られていますね。
「さて。食事しながらだが緊急会議の時間だ」
シャルティア先生が仕切っているのは一番、情報を持っていて、なおかつ全体指揮を取っていたからでしょう。
実際、こうして見ると卒がないですね。
「一番の問題は解決された。皆、一様にご苦労だったと学園長からも承っている。だが同時に複数の問題が立ち上がった。こればかりは【宿泊施設】の住人の手を借りるわけにはいかない。我々、学園教師の仕事だ」
「その前に一つ、いいですか?」
自分は手をあげました。
目線で『よし』と威圧的に了解を得てから立ち上がりました。
「まずは改めて、ありがとうございました。先生方のお力添えにより無事、生徒たちを保護できました」
頭を下げ、ちゃんと謝罪してから話を進めないといけません。
「そして、いくつか報告しないといけない事があります」
自分は遺跡近くであったことをかいつまんで説明しました。
ポルルン・ポッカや『遺恨児』についてはなるべく話さない方向で、しかし、上級魔獣を連れた『人物』がいたことを説明し、取り逃がしたことも合わせて説明しました。
「なんとかメルサラの【戦略級】術式により、消滅させることができ、その場も浄化し終えました」
とりあえず【戦略級】術式を使ったのはメルサラのせいにしておきました。
この発言にスープを吹き出したのはアレフレットでした。
「汚いな。吐き出すなら余所でやれ」
シャルティア先生はこんなときでも容赦がありませんね。
「なら、あの北西の太陽の柱はもしかして!」
自分が【戦略級】術式を使えることは黙っておきます。
警戒しているわけでなく、まぁ、当然の配慮でしょう。
メルサラのせいにしたと言っても使ったのは自分です。
【戦略級】術式は王か、それとも軍の許可がない限り使ってはいけません。
無断使用は罰則を与えられます。
いくら形骸化しているとはいえ、地形を消し飛ばすような術式です。
あのエンブレリオ・プリム。
もしも地上に向かって撃つようなことがあれば山一つが消えてなくなります。
その高すぎる威力ゆえに生態系すら壊しかねない以上、【戦略級】術式は使い方を個人に委ねてはいけません。
特に【タクティクス・ブロンド】は個人での運用が当たり前です。
個人に使わせてはいけないのに使えてしまう個人がいます。
そして、【タクティクス・ブロンド】は単身、敵地に乗り込み、必要とあれば撃つこともあります。
なので事後承諾でも可能なのですが、これがまた問題が山積みです。
どんな状況で、どういう風な経緯で、誰、もしくはどんな施設や軍隊相手に使ったのか、またどの土地で使い、地形的な被害や作物への影響などなど、わかる範囲で報告する義務があります。
結局、今回の場合だと書類を起こすのはメルサラではなく自分なんですよね。
メルサラは字を書けません。【戦略級】術式の使用許可書の作り方なんて、この場で書けるのは自分くらいなものです。
しばらくは手紙ばかり書く日々になりそうですね。
忙しすぎて授業に影響がでないといいんですが。
「まさか遺跡ごと吹き飛ばしたんじゃ……」
「いえ、アレは地面に撃つとリーングラードが消滅しますから」
「な――なにぃ!?」
慌てたアレフレットが立ち上がりましたが、両手で押さえる構えをしておきました。
「ここは法国のすぐ側だぞ! 遠いとは言え北東には関所がある! 国境近くで【戦略級】なんて使おうものなら国の問題に発展するぞ!」
上級魔獣が居た時点で三国協定に則り、魔獣討伐軍が結成されます。
すでに国家間の問題になっています。
もっとも自国で対処出来た場合はその限りではありません。
ですが、お隣としては不安でしょうね。
本当に上級魔獣は死んでいるのか、密かに何かに使っていないか等と疑心は渦巻きます。
「査察が入るかもしれませんね。おそらく法国と共同で。しかし、どんなに急いでも査察は第二試練以降でしょう。ランスバール王がうまく時間稼ぎをすれば、もしかしたら義務教育期間中は手を出してこないかもしれません」
「そんな甘い話か。少数で先遣調査隊を出してくるだろう。いや、もしかすると非合法な手で……」
「国の対処までは私たちの仕事ではない。落ち着け」
シャルティア先生の一喝にアレフレットは忌々しそうに座りました。
仲良くしてくださいね二人とも。
「それも含め、上からの判断待ちになるでしょう。それで遺跡ですが確認していません」
「えっとぉ、遺跡から魔獣が出てきたんですよねぇ? あれぇ? ヨシュアン先生は聞いてませんでしたっけぇ?」
「いえ、軽く話は聞いています」
リリーナ君の細切れな話で推測していました。
なので自分もすぐに遺跡内部を浄化すべきだったのですが問題がありました。
「実は遺跡の入口が瓦礫で埋まっていたんです」
眷属鬼が出てくるときに壊したのでしょう。
瓦礫をどうにかしようと思えば、いくらでも手があるのですが、一人で行うのも限界があります。
これ以上、遺跡を勝手に破壊するわけにもいきません。
遺跡を壊した、という時点で問題事は目白押しなんですから。
「まいったな。今までやってきたやり取りが無駄になったぞ」
これにはシャルティア先生も嫌そうな顔をしました。
「ん? 何か問題かね? 遺跡に入れないのなら結局、ないも同然だろう!」
「あるさ。入れないだけで遺跡はあるんだからな。邪推の好きな連中は中の物を取られたくないばかりに嘘をついていると言うぞ」
「む……、では、どうするのかね? 実際に見せるにしても招かねばならんぞ!」
これはまた面倒ですね。
貴族連中がしゃしゃり出るのもそうですが先遣隊が出ると仮定して、王国と法国、共同で事実を表明すれば貴族は静かになるでしょうがそこに至るまで矢のような手紙を送り出してくるでしょう。
正直、静かにしてろとは思いますが、向こうも利益が欲しいですからね。
くたびれ領主を矢面に立たせようと思っても役に立ちませんし。
「大まかな方向にしても我々で決めてしまうのも難しいな。学園長にお伺いを立てておくとしよう」
自分と同じでシャルティア先生も手紙を送る毎日になりそうです。
この中で一番、得をしたのは厄介事が嫌いな領主だけなんじゃないでしょうか。
何せ『知らない』『聞いていない』『学園は王都の運営に聞け』と拒否できますからね。
後は、無駄に貴族が入りこむと厄介ですしね。
お偉いさんというのは基本、軋轢を生みにやってきますから。海辺で涙を流して産卵してればいいものを。
いっそ長距離術式で学園に入る前に狙い撃って、身元不明者リストに載せてやりましょうか。
「消すなよ。余計にややこしくなる」
バレてました。
「ともあれ、以上が自分が見たものになります」
「……面倒が事欠かん計画だな、まったく」
シャルティア先生が背持たれと仲良くなっているのを見て、自分も座りました。
アレフレットは何事かを考え、ヘグマントもとりあえず渋い顔をしています。
ピットラット先生はいつも通りです。
リィティカ先生は素敵な困り顔をしているのですが、やっぱり政治は専門外なのであまり考えていらっしゃられないのでしょう。
女神は下々に愛だけを与えますからね。悩み苦しむのは信者の特権です。
「次は生徒たちから聞いたことを教えてください」
「そうだな。一言で言うなら『少女たちの大冒険』だ。主演の五名は是非、王都の劇団にやってもらいたいな。そうすれば足を滑らす心配もないだろうし、教師を騙して遺跡にも行かない」
「上級魔獣の代わりに竜が出るんでしょう? 服毒マニアの悲劇好きが脚本家ならやりそうなネタです」
シャルティア先生によって要約された冒険譚は、言葉以上にドキドキしたりはしませんでした。
むしろ胃がシクシクと痛くなりました。
遺跡に向かう生徒たち。
道中でポルルン・ポッカを一匹、拾った程度で特に目立った異変もなく順調だったようですね。
ぽっかり空いた入口に警戒しながらも無邪気に入っていき、遺跡のいちいちに驚き、楽しんだことでしょう。
子供特有の無遠慮さで壊された歴史的遺物もありそうです。
生徒たちは順調に進み、やがて石造りの祭壇らしき場所に乗せられた大きな卵を発見しました。
「それは乾燥したリンゴのように見えたそうだ」
もしも圧倒されるような奇っ怪な気配さえなければ生徒たちは気にせずに進んでいたでしょう。
逆に卵が奇っ怪で良かったかもしれませんね。
そのおかげで無意味に触ることもなかったでしょうし。
「そして、祭壇の前にはフードで顔を隠したローブの人物がいたそうだ」
何やら儀式めいたことをしていたそうです。
クリック・クラックと戦っている途中に卵の中から触手が飛び出し、生徒たちに襲いかかったと。
となると、この前後にエリエス君はクリック・クラックと会話したんでしょうね。
「その人物は何か言っていましたか?」
「『楔の木を抜く手間が省けた』だの『兄に当たる者だ』とか意味不明な供述を繰り返していたらしい」
楔の木。
新しい単語ですね。
おそらく遺跡を守る封印機構でしょうね。
となると、この機構を解除したのはジルさんたちですか?
それとも【語り部】と出会ったことで何かが変わったのでしょうか?
モフモフに聞くことが増えましたね。
この時に卵が割れ、出てきた触手は真っ先に生徒たちを狙い始めたときに異変が起きたそうです。
「ポルルン・ポッカが増殖したらしい。何を言っているのかわからんが生徒たちは皆、同じことを言っていたぞ。何かわかるか我が学園の理不尽担当」
「ポルルン・ポッカに関してはわからないことの方が多いですよ。専門家に聞いても同じです。強いていうなら遺跡の守護者だったんじゃないでしょうか。このような所見しか浮かびません学園のお財布担当」
ときどき遺跡には守護者と呼ばれる守護機構があります。
それは魔獣であったり、原生生物であったり、なんらかの人工物だったりします。
いわゆる宝を守る竜のような何かです。
「侵入者が六名も入ってきているじゃないか。働け守護者」
同感です。
それともポルルン・ポッカも入れない理由があったんでしょうか?
人がいないと入れないような特殊な条件があれば話は別ですが、真実はわかりません。
ポルルン・ポッカによって阻まれた触手。
しかし、逸れた触手が天上を壊し、瓦礫の一部がクリスティーナ君に落ちてきました。
そこを身を呈してかばったのがマッフル君だったわけです。
クリスティーナ君は無事でしたが、マッフル君は頭を打ち、足を瓦礫に挟まれたようです。
それで頭と足の怪我ですか。
そして、自分が間一髪で間に合った時にクリスティーナ君がマッフル君を運ぼうとした理由もわかります。
あの二人は本当に……、お互い、罵り合って喧嘩ばかりしている癖に大事にしすぎです。
後はエリエス君に聞いた時の内容とほぼ同じです。
明らかに勝てそうにない存在と謎すぎる『遺恨児』クリック・クラック。
怪我をしたマッフル君という要素を加えれば、例え向こう見ずなクリスティーナ君でも撤退するしかありません。
エリエス君を先頭に、リリーナ君がセロ君を抱え、クリスティーナ君が断続的に強化術式を使いマッフル君を運び、遺跡の外に出た瞬間、眷属鬼は地面と遺跡を砕いて這い出てきたのでしょう。
ここでエリエス君は考えました。
この状況でもっとも生存率が高い、より多くを救う方法を。
囮という手段です。
リリーナ君なら単身で森を踏破し学園に辿りつけると考え、作戦を言葉短に仲間に伝えました。
憤慨するクリスティーナ君も目の前で踊る触手の群れを見て、どうしようもなくなったようです。
結局、エリエス君の作戦を承諾し、三方に別れました。
「外で構えていたポルルン・ポッカが殿を務めたのだという。この話は信じられない部分が多すぎて処理に困るな」
原生生物が生徒たちを助ける、という状況なんて普通はありませんからね。
モフモフの説得もあったのでしょうが、それにしては準備が早い謎生物ですね。
『まるで、そうなると予見して配置されていた』ような感覚すらあります。
「とりあえず起こったことは起こったこととして認めましょう。実際に自分もポルルン・ポッカの死骸を見ています」
萎んでいる姿からは間違いなく、生気を感じられませんでした。
シャルティア先生のため息で、ひとまず全員、食事に戻りました。
ただ思いついたようにシャルティア先生はつぶやきました。
「不審者はまだ森にいると思うか?」
誰に向けてかわからない言葉。
「でしょうね。それは少し自分が調べてみます」
心当たりがあるわけではありません。
ただ、不思議なことにモフモフが答えを知っているような気がします。
ほとんど勘というには確信めいた勘です。
「来週に冒険者たちが遺跡を調べるという話はどうするのかね?」
「一度、ジルさんたちと一緒に遺跡を見に行こうと思います。授業があるので一緒には行きませんが彼らが遺跡に着いた頃に飛んでいきます」
「怪我しているんですからぁ、無理しないでくださいねぇ」
リィティカ先生が困ったような顔で窘めてくれました。
「内部よりも外部を鎮めるべきか。それとも逆か。次の人員誘致にもう少し守衛を増やせるかどうか打診し、それまで教師で見回りをする……、それでいいか?」
結局、状況を一気に覆すような案は出ず、地道な作業が続くようです。
ですが、まだ決めなければならないことがあります。
食事が終わり、一息ついた頃に自分から提案しました。
「生徒たちへの処罰はどうします?」
他の誰かでは言い出しづらいでしょう。
何より、これは自分が言わなければならない言葉です。
「生徒会の悪用、それによる被害。そして、多くを心配させた分か」
「校庭百周か! それとも逆さ吊りにして塩漬けか!」
その罰は普通に拷問です。
「あのぉ、もっと身体を傷つけるものじゃなくぇ……」
「つまり精神を傷つけるのだな!」
「違いますぅ! あの子たちも反省してるんですよぅ……、本当にやってはいけないことじゃなかったからぁ」
「人を騙すのは立派な罪だがな」
「だけどぉ……」
リィティカ先生の優しさはやはり万人に通用しますね。
ですが、だからといってお咎めなしというわけにも行きません。
いつもはオシオキで済ませていますが、それだと意味がありません。
反省している以上、もう二度とやらないのでしょうが、彼女たちは多くの人に迷惑をかけています。
こういう時、償う方法はなんでしょうか。
憎しみを晴らす方法だなんて、そんな大それた話ではありません。
もっと単純に、誰もが納得する形です。
体罰や精神的な罰、罰金なんてものは当人が納得するだけです。
まさか村八分にするわけにもいきません。
「人が罰を受けるのは罪が晴れるからじゃないぞ」
アレフレットがボソリと呟きました。
「罪を認識して、罰を重んじ、当人も外様も正常に戻るための儀式だ」
その目は誰でもなく、遠くを見ていました。
きっと、あの祭りの夜のことを思い出しているんでしょう。
「傷つけ、傷つけられた者たちは皆、正常ではなくなる。正当化するんじゃない。批判するんじゃない。どちらも失われた尊厳を回復させるためにあるんだ」
「高尚な意見だな。スラムにでも言って説いてみろ。一夜で身ぐるみを剥がれるぞ」
「教義を語っただけだ。僕だって全てに適しているとは思わない。だが――」
アレフレットは思ったのでしょう。
「――気づかせるための罰も確かにあるんだ」
もしも、あの祭りの場で声を大にして『おかしい』と言えたら父は死ななかったのではなかっただろうか、と考えたのでしょう。
忌避して、父を慮って、何も言えなかった、何も起こせなかった。
もしも今になって、彼らに気づかせる方法があるのなら。
間違いを認めさせられるのなら。
それが彼らへの罰であり、父の言う糾弾せずに正せる道なのでしょう。
「生徒たちへの罰は自分が決めていいですか?」
「何をさせるんだ?」
「そうですね――」
自分は答えを口にし、ほとんどの教師は難しい顔でだまりました。
それは人から見れば軽い罰かもしれません。
生徒たちにとっては面倒かもしれません。
自分たちからすれば、当然に為されることです。
でも、どうせ罰ならば誰かの為に頑張ってもらいましょう。
今回かけた心配の分だけ。
「罰はそれで良いとして、少し気になった点を言ってもよろしいですかな?」
ピットラット先生がティーカップに香茶を流しながら言いました。
「ふと考えてみて、誰も気にしておられなかったようなので僭越ながら」
そうして配る手つきはまさしくプロです。
しかし、その手つきの良さよりもピットラット先生の言葉の続きを教師陣は待ちました。
「騎竜はどこに行ったのですかな」
……あ、忘れてました。
後日、野生に戻りかけた騎竜たち五匹が狩人さんに連れられて帰ってきました。
この間、自分たち教師……、主に自分が森の中で騎竜を探していたことは言うまでもありません。




