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リーングラードの学び舎より  作者: いえこけい
第四章
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ギムレットには早すぎる?

 魔獣の襲撃という危険な授業こそありましたが、そのおかげか生徒たちは危機意識をもって護衛に取り掛かっていたと思います。


 小川を越えて、ヴォルフの縄張りを越え、森を抜けた時の生徒たちの解放感に満ちた顔を見ればどれだけ緊張していたかわかりますね。


 そんな生徒たちには悪いのですが、先生、一つ言い忘れたことがあります。


「えー。とりあえず目的地に到着しました。途中からの集中力は目を見張るものがありましたよ」


 ちゃんと頑張ったことを褒めておきます。

 言いたいことはコレではありませんがね。


「頑張った君たちには少し言いづらいことですが、通常、魔獣が出た周辺に原生生物は出ません」


 そう言った瞬間、三名が石化したように見えました。

 もちろんフリド君にティッド君、そしてマウリィ君ですね。


「なので魔獣を撃破した場合、もっとも恐るべきは人間の襲撃です。緊張感を持って周囲を警戒していたのはとても良いことですので、そんなに脱力して座りこまないでくださいね」


 フリド君とティッド君が背中合わせで倒れこみ、マウリィ君も苦笑いしていました。

 エリエス君とセロ君は性格的なものもあるのでしょうが、自分のこういうところに慣れているので気にしていないようです。


 ティルレッタ君はアレですね。

 そもそも理解しているかどうか定かではありません。

 魔獣が来た後もいつもどおりでしたからね。


 魔獣がいると原生生物がいなくなる理由は周辺の原生生物を食い尽くすからです。

 原生生物も天敵の存在を察知すると縄張りを捨てて逃げてしまうので、この周辺は今、ヴォルフはおろか鳥すらいません。


 そして、人間の襲撃。

 つまり野盗の類はリーングラードにいません。

 元々僻地で人が通ることもなく、地方都市周辺を根城にするには一週間分の距離は遠すぎます。


 それ以上に野盗なんて居たら学園建設時に騎士が根こそぎ排除しているでしょうし、学園が始まってから巣を作ったとしてもメルサラが楽しげに駆除するだけです。


 ついでに自分が野盗の気配に気づいた場合は言わなくてもわかるでしょう。


 リーングラードは野盗にとって最悪の環境でしょう。


 お弁当、持ってきておいてよかったですよ、本当に。

 ここで狩猟しようと思っても原生生物も鳥もいないのならどうしようもありません。

 つくづくピットラット先生に感謝です。


「さて、先生は建材に使えそうな石材を探してみます。その間、ヤグーと荷車をお願いしますね。お昼は先に食べておいてもいいですよ」


 まばらな返事をする生徒たち。

 相当、疲れたんでしょう。


 緊張は無駄に体力を消耗します。

 リラックスしながら周囲を警戒する術を身に付けないと、そのうち身が保たないと気づくでしょう。


 さて。建材、特に内装に使われる石材で有名なものは花崗岩と大理石でしょう。

 大体、良質な石材は火山付近にある火成岩がほとんどです。


 それ以外でも使えなくもないのですが、水にさらされると変色したり成分が溶けて、スカスカになったりします。

 堆積岩の建材もありますが、アレは衝撃に弱かったりしますからね。


 生徒たちが使うことを考えれば『硬く、水に強く、風化しづらい』の条件は満たして欲しいところです。

 特に鉄分を含んでいるとダメですね。


 ならどうして鉄鉱石の採れる採掘場に来たかというと、それらの条件を満たす石があり、まとまった量があるからです。


「先生は頂上まで行きますが、君たちはどうしますか?」


 条件に適した石は頂上にあります。

 いえ、あるだろうという予測だけがあります。


 そう、後ろから近づいてくるエリエス君とセロ君の気配に語りかけました。


「いちばん、上なのですか?」


 セロ君がちょこちょこと近づいて、定位置のように横手を取ります。

 エリエス君の定位置は真正面ですね。


「……今から頂上に登っていたら日が暮れると思います」


 あ、エリエス君が不満気な瞳をしています。


 これは気づいていますね。

 自分一人なら頂上まで行って降りてくるまで、そんなに時間がかからないことにです。


 つまり、エリエス君がついていけないことに不満を抱いています。


「降りたら石材の説明をしますからね。だから……、あれ? セロ君?」


 どうやらセロ君もついて行きたかったようで、裾あたりをちょこんとつまんでいました。

 頭を一撫ですると満足気に目を細めて、エリエス君の隣に移動しました。


「いってらっしゃいなのです」


 気分はお父さんの帰りを待つ娘……、なんでしょうか。

 いえ、まぁ、他の子たちより甘く接していますがこんなに大きな娘をもった覚えはないですよ?


「しばらくしたらお昼にします。それまでマウリィたちと何をするか決めておきます」

「あまり離れて行動しないように。先生がいない間に問題なんて起こさないでくださいよ」


 後の大きな問題にならないうちに突き放しておくべきか、それともちゃんと線引きすべきか。

 今はまだいいんでしょうけれど、どちらにしてもちゃんと割り切れるようにしておかないと、八ヶ月後の卒業が大変そうです。

 何せ消極的なところを治すためにわがままを言わせるようにしたのは自分なんですから。


 最悪の場合、引き取るのも視野に……、いえ、それは飛躍しすぎです。


「それではいってきます」


 とりあえずこの思考は放棄です。

 時間が解決しないこともあれば、することもあります。

 今は好かれていると理解しているだけで十分です。


 まずは目の前の問題を片付けましょう。


 赤と緑、中和役の白を混ぜた【源素融合】の強化術式で一気に岩肌を蹴り上がっていきます。


 下を見ないように動いているので傍目から自分がどんな動きをしているかわかりませんが、おそらくものすごい勢いで視界から消えていることでしょう。


 このリーングラードの地形。

 すり鉢のように円周部に近づくにつれ高くなり、山裾で一気に高度が跳ね上がる形を自分は『何らかの衝撃によって作られた地形』と推測しました。


 巨大隕鉄による地形の変化。

 あるいは【神話級】術式による何か。


 【戦略級】でも地形を変えることはできます。

 しかし、リーングラードという地方一つを変える出力は【神話級】術式くらいしか思いつきません。


 ですが、推測はここでおしまいです。

 証拠がないので特定もできません。


 とにかく『火山帯でもないのに火山にしかない石の種類』、『鉄鉱石が地表まで出てきている』ことから、山の頂上ほど『地表に多くある石』で構成されているはずです。

 山が出来た過程は、羊皮紙を机に広げて両端から押しつけた時にできるシワのような形のはずです。


 もっとも外側と内側には高低差があるでしょうが表面が一番、頂上に来る、ということに間違いはありません。


 ある程度の高さまでくると自分は【獣のガントレット】で岩に手を突き入れました。


 何もここで採掘するつもりはありません。


 自分が今、どの高さにいるか確認したかっただけです。

 ちょっとオーバーハングだったので身体を固定するためですね。

 何故、こんな厳しい状況で周囲を見ようかと思ったのかは、やはり気になった以外の理由はありません。


 足元をみても、ゴツゴツとした岩肌が邪魔で生徒たちの姿は見えませんでした。

 急な斜面とはいえ、足元ほど障害物に溢れているのですから当然です。


 こうして生徒たちを残して先行していると、少し心配です。

 帰ったら問題が発生しているなんて日常的によくありますから。


 竜巻が発生していたり、クラスが険悪な空気に満ちていたり、よくよくありますから!


 ないと思いたいです。心の底から。


 逆転、良かったと思える部分もあります。

 魔獣が出たからこそ生徒たちは原生生物に襲われるようなことはない、と。

 今、エリエス君たちがいるあの山裾の平原は原生生物がいないはずです。


「そう考えると問題が人間だけというのも気が楽――になりませんね」


 むしろこの世の問題のほとんどが人間が作ったものじゃないですか。


 下を見れば限りがあるが、上を見ても限りがある。

 中腹のオーバーハングで全体俯瞰もままならない『この立場』は、なるほど自分の位置によく似ていると思います。


 さて、あまり自身を振り返り、考え事をしている暇もありません。

 降りが一番、大変なんですから急がないといけません。


 木々の少ない、それこそ苔のように小さな草原がこびりついているような山を自分は登っていきます。


 やがて頂上――これが天辺という尖ったものは何一つなく。

 寝転べば気持ちよさそうな狭い面積の、草のカーペットだけがありました。


 ようやく、ここに来て四ヶ月。五ヶ月目の今になって。

 自分は初めてリーングラードの全景を見られたのでしょう。


「いえ、こうして余裕を持って何かを見下ろしたのは――こちらに来て七年ぶり、ですね」


 鬱蒼と茂る森にポツンと拓けた場所。

 遠く、小さな学び舎にゴチャゴチャとした付属品が組みついた、箱庭のような光景。


 生徒の姿はここからではわかりません。

 遠視の術式を使えば影くらいは見つけられるかもしれませんが、意味はありません。


 空が近い。

 まだ低い空がこんなにも近くにあり、そして『地上から見ても変わらない高さにある天上大陸』がうっすらと、それでいて優雅に漂っています。


「――っと」


 突然の横風、足を踏ん張り耐えながらも風の行先を眺めれば、巨大な緑の帯が泳いでいました。


 【空魚】。

 自然が生んだ無作為で無意味な、強烈な緑属性の塊。

 一匹が往くともう一匹、もう一匹と絡みながらも追いかけてゆき、ある一点でうずまき続けています。


 どうやらあそこがお目当ての場所のようです。


 軽い足取りで【空魚】の溜まり場に近づくに連れて、足元の石場がキラキラと結晶が混じり始めていきます。

 鮮やかな緑色の結晶が混じった、この石。


 ただの変成岩です。

 強烈な熱や加圧を受けて組成変化が起きた、どこにでもある普通の石です。


 普通と違うのはここが【空魚】に一番、近づく場所だということ。

 空に一番、近いというだけの理由です。


「あぁ、やっぱり『成って』いましたか」


 それは緑と灰色が混じった岩石の塊でした。

 ここに生徒が居たのなら、あるいはエリエス君に問われていたのならこう答えていたでしょう。


 これは源素結晶の成りかけです、と。


 源素結晶。

 自分が腰のポーチに入れている純度の高い、それこそ投げたら割れるくらい脆い源素の塊のことです。


 術式師は周辺の源素を使って術式を編みます。

 自分はよく周辺に源素がない場合や足りない時に源素結晶で補いますが、この使い捨ての源素結晶、本来は高価なものです。

 リーングラードのような僻地の、あるいは見知らぬ洞窟の奥などの未開拓地域、人の手の入らない場所で単一の源素の濃い場所でしか手に入りません。


 まさにこの場所は条件にピッタリです。


 青の源素と緑の源素が主成分の木々もなく、緑属性の塊のような【空魚】が近しいこの場所は源素結晶ができる条件としては十分でした。


 もっとも十分であっても問題はあったようですがね。


 源素にも流れがあります。

 空気に流れがあるように、季節が変わるように、生徒が成長するように。

 うつろい、流れていくのです。


 実際に緑属性の濃い場所なのですが、ここは期間限定だったようです。

 冬にならずとも秋になれば、【空魚】は消えてなくなります。

 そうなればここはどこにでもある、普通の僻地で山頂です。


 長い時間が、うつろいのローテーションが少しずつ石の中に結晶を生み、成りかけを作り上げたのです。


「まぁでも、行き当たりばったりで予測こそあれ本当に結晶石が出てくるとなると、驚きますね」


 心にもないことを口にして、自分は結晶石に近づきました。


 純度の高い源素結晶は壊れやすい。

 なら純度の低い源素結晶はどんな特性を持つかというと、これが石材の条件にピタリと当てはまります。


 結晶が石同士を強く結びつけるのか硬度があり、結びつきの強い物体は自然、水に強いものです。

 正確には格子のように石を飲みこんでしまうので水が入る隙間がありません。


 さらに緑属性の持つ力によって水の乾きが早い。

 まさに夢の天然建材です。


 この結晶石をどうやって持って帰るかですが、答えはもう考えています。


「ディザ・リューム・フラムセン」


 地面が風の圧縮空気に切り裂かれ、四方の線を作り上げました。

 一辺はリスリア男性一人分が寝そべったくらいでしょうか。

 正確に測る時間がなかったので少し多目に採っていきましょう。


 これだけの質量を持って帰るとなると【獣の鎧】くらいでないと動かすことも難しいでしょう。

 ですが【獣の鎧】は短期決戦用の術式なので長時間使い続けると死にます。


「レギィに教本をもらっておいて正解でしたね」


 軽重干渉で軽くした石材を強化術式を使って降りていきます。

 単純ではありますが、もっとも簡単で問題の少ない方法でした。


 結晶石を持ち上げていくまでは良かったんですよね。


 ちょうど中腹。

 全景が気になって立ち止まったあたりになって気づきました。


 下りられる場所がどこにもないことに。


 オーバーハングになっているのですから、当然、段差なんてありません。

 登るときは岩に手や足を突き入れて登っていたので気づきませんでした。

 

 学び舎なんかよりもはるかに高さがあります。

 石材さえなければ下りられる高さですが、持ったままだと着地と同時に石材に潰される可能性があります。圧死だけは勘弁ですよ。


 飛び下りていくだけなので楽だと思っていたのですが。


 石材を落とすという方法も考えましたが、意図的に落石を起こすというのも考え物です。

 何より石材が壊れてしまうかもしれません。


「なら、こうしてみますか」


 崖側から遠ざかり、石材を置いて、強化術式も解き、地面に手を添えます。

 黄の属性の術陣が岩肌に広がり、満ちていきます。


「ザルム」


 起動の術韻だけを唱え、術式を発動させました。


 突き出した崖が階段状に変化したのを眺め……、後で怒られないでしょうか?

 まぁ、山の一部が階段になったくらい誰も見咎めないはずです。


 これは土工術式。施工術式とも言います。

 土や岩の形を変える術式です。

 使い方次第ではなんでもできるように見えて、色々と面倒な条件があります。


 まずは変化させる形状は変化する前の体積を超えないこと。


 これはそのままの意味です。

 岩の体積を二倍、三倍にできず、二分の一や三分の一にもできません。

 あくまで形状を変えるだけです。


 美術品のような複雑な形状はできないこと。


 この術式は陣の数に対応して、その形状を変えます。

 プリムなら玉状、フラムセンなら直線、そうした陣の形状に従って変化するので複雑になればなるほど陣を積み込みますし、三十個つなげた時点でそれはもう【戦術級】を超えます。

 逆に言えば【戦術級】にも使えるわけですが、誰もやりません。

 つまり、それくらい拡張性だけは無駄にあるんですよね。


 最後に拡張した際に他の物質を巻きこまないこと、ですね。


 少しでも何かを取りこむと術式のほうが壊れます。

 このときの術式の破壊で生じる波動で酔う人も居ます。


 この三点さえ守れば、山に階段くらい作れます。


 石材を持ち上げ、再び山を降りました。

 これ以降は特に面倒なこともなく普通でしたよ、えぇ。


 石材を運んで下りてきたら生徒も驚くでしょうね、なんか思っていましたよ。


「先生、言ったじゃないですか……」


 山を登って下りてきたよりもドギツイ疲労が肩にのしかかってきました。


 帰ってきたら何か起きてるっていうパターン、やめてくださいって言いましたよ?

 前フリなんかじゃないんですよ。

 心の底からお願いしたんですよ。


 そしたら、なんか緑の丸い物体に囲まれた生徒たちがいましたよ。


 一同を見て、自分はため息をつきました。


「留守中に問題を起こさない、と。先生との約束でしたよねエリエス君」


 石材はとりあえず置いておきました。

 もう、何が起きているのかわからないので何が起きてもいいように、です。


「違います。その約束は先生だと叶えられません」


 生徒が悟ったようなことを言い始めました。

 うっかり納得しそうになった自分は隣に置いておきましょう。

 

 緑の丸い、それも手足のついた奇っ怪な生物によって生徒たちは取り囲まれています。

 何匹かはティルレッタ君の膝の上に居て、愉快そうに談笑しています。


 ティッド君も緑の丸い物体をセロ君に近づけまいと必死で守っているようです。

 でも緑の丸い生命体にツンツンとつつかれたりしていて、遊ばれていますね。

 ときおり威嚇されて涙目になっています。


 頑張っていますね男の子。でもその後ろでセロ君は緑の物体をつついていますよ?

 謎の三すくみが展開されているようです。


 フリド君は必死で応戦したのでしょうが数の暴力にさらされたようで、地面との深い関係を見せつけるように倒れています。

 その倒れた上にやはり何匹かの緑の物体が乗っていますね。


 悔しげな拳がフルフルと震えています。


 エリエス君の周囲にももちろん緑の物体がいます。

 周囲をグルグルと回り、エリエス君を守っているようにも見えますが真相は謎です。

 エリエス君も気にしていないのか、何事もありません。


 危機感すらないのかもしれませんね。


「先生! 助けてください!」


 と、緑の丸い物体を押しのけてマウリィ君が右腕をがっちりと組んできました。


「先生、この奇妙な光景に命の危険性があるかどうか非常に疑問なんですが」

「だって原生生物です!」

「ヤグーも原生生物ですよ」


 元がつきますが。

 今では立派な家畜です。


 マウリィ君が動いても何の反応もしなかったところを見ると害意はないようですが、きっつい光景です。

 緑の丸い物体がゴロゴロとしていて、その中で生徒がいるのを見ると正気というものがなんなのか深く考えたくなりますね。


「ともあれ攻撃の意思はないようなので安心してください」

「はやくやっつけてくださぁい。あの緑色の、触った感触が桃みたいなんですもの」

「桃、嫌いなんですか?」


 おいしいじゃないですか、桃。

 甘いし、柔らかいし。皮を剥くのも楽で。


「味より感触が……、手もベタベタしますし」

「今度、ジュースにしてあげましょうか?」

「本当ですか!」


 マウリィ君に笑顔が蘇ったようですが、事態は未だ何一つ解明されていません。


「どうしてこうなったか説明してもらえますか」

「えーっと、お弁当を食べようとしたらティルレッタが一匹、捕まえてきて……、そしたらいつの間にか湧き始めたんです」

「湧きはじ――はい?」

「地面から、にょきって感じです」


 つい目頭を押さえてしまいました。

 理解ってなんなんでしょうね。


 ともあれ突然、やってきた緑の丸い何かによってこの有様だと。

 何一つ、情報量が増えていない稀有な事件でした。



『来たな――』



 どこからともなく、頭に響く不思議な渋い声。


 見れば荷台の奥から一匹の緑の丸い生物がゆっくりと、威厳を出しながら歩いてきます。

 何故かこいつだけ顔が渋いですね。



『【旅人】よ――』



 そいつはゆっくりと自分の前に立つと渋い顔で見上げてきました。

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