魔界より愛をこめて
医務室を開けたら、そこは魔界でした。
おかしなことはありません。
目の前で女性同士が険悪ムードでにらみ合っていたら男にとって魔界とそう大差ありません。
いえ、もうおかしいことだらけなんですけどね?
「ともかく一医学者としてその手法は看過できないわ」
「でもぉ、食べられないって話を聞きましたぁ」
「起きてからでも問題ないでしょう」
「だからですよぅ。まずは回復しないと食べられるものも食べられないのですぅ」
女医さん(36)とリィティカ先生がテーブルを挟んで、角を突き合わせていました。
険悪ムードなのは百歩譲っていいとして、なんでまた問題が発生しているのですか?
そのあたりが一番の疑問ですよ。
「ちょうどぉ、いいところにヨシュアン先生が来ましたぁ。先生はどう思われますかぁ」
「好みのタイプなら別の機会にしてもらえると――いえ、それよりも何がどうしたんです?」
ちょっと怖かったので麗しのリィティカ先生の御顔が見れず、つい中央のテーブルに置かれた見ない器材を眺めてしまいました。
開かれた小さなカバン。
その中に金属筒に押し子、そして銀でできた針がバラバラで収められていました。
……まさか。
「注射器ですか」
驚きました。
注射器の製法はかなり発達した金属工学と医療思想から生まれるものです。
現在のリスリアなら基本理論くらい出来ていてもおかしくないのですが……、いえ、違いますね。
自分が驚いた箇所は、実際に作れる人間が居たということではありません。
実のところ、たった一人だけこの注射器を使った人物と過去に遭遇したことがあります。
本当はこんなことをリィティカ先生に聞くのも、態度に表すのも嫌ですが、背に腹は代えられません。
「リィティカ先生、どうして注射器を持っているのですか」
事と次第によってはリィティカ先生を捕まえなければなりません。
緊張が心を支配しているのと裏腹に、リィティカ先生は驚きの表情で口元を隠していました。
それもすぐ心を落ち着かせたのか、ゆっくり口元から手を離しました。
「どうしてぇ、ヨシュアン先生が『注射器』のことをぉ?」
ブラフのようには見えません。
というか腹芸のできるお人ではありません。
とはいえ、どちらかが話さないといけない流れなのはどうしたものでしょうか。
「とりあえずヨシュアン先生、聞いてくれる。リィティカ先生がその『注射器』という武器で、とんでもないこと考えていたのよ」
女医さん(36)が均衡を崩してくれました。
これはチャンスです。
「とんでもないこととはなんです?」
「セロの体に針を突き刺そうとしたのよ、信じられないわ。薬品を注入するための針だなんて、そんなの体に入れてどうなるかわかったものじゃないわ!」
あー……、リィティカ先生が珍しく『ムムムッ』とした顔をしてますね。
レアです、レア。
「違いますぅ。経口薬だってぇ体にぃ薬を入れるじゃないですかぁ」
「薬を口に入れるのは食べ物の延長だからよ。口から入れたものは良いものを取り込む力があるのよ」
リスリア王国は内紛のために外科治療が進歩しました。
例えるのなら、縫合器具の衛生観念の徹底や器具そのものの向上、アルコールを使わない麻酔薬等々、自分の脇腹や右肩のように刀傷や矢傷みたいな怪我に対する治療法は向上しました。火傷に対してもそうですね。
いわゆる外科学です。
もちろん、外科学に追随するように内科学も進歩しました。
ですが向上したのは薬品の種類だけです。
既存の薬――経口薬や湿布薬、塗り薬の域を超えていませんでした。
この進歩の仕方は内紛で起きる怪我や病状への治療が中心となってしまったため、外科治療が進んだとみるべきですね。
「口や食道、胃を使わない薬物の摂取は危なくて認められないわ。大体、セロはまだ子供よ。殺す気なの」
そのせいか医学を学んだ女医さん(36)でも、民間療法レベルのお話を平気でするんですよね。恐ろしい話です。
「シューリン師は血管と血液がぁ、人の生きる力を運ぶものとぉ看做したんですぅ。血にぃ直接、薬を混ぜることでぇより強い効果が得られるってぇ」
話の流れはよくわかりました。
セロ君が倒れ、食欲がないとなれば、整調のために薬を使おうとしたのでしょう。
おそらく以前にもらった疲労回復薬をセロ君に使えば、体の調子も戻ると踏んだのです。
体調が良くなれば、心も少し軽くなる。
セロ君が様々な要因で心が圧迫されたために体の調子を崩したことと、逆のことをしようとしたのです。
心身一体論ですね。
間違いではありません。
えぇ、治療法としてはあってもいいのでしょう。
「よくわかりました」
自分はゆっくりと注射器の収めているカバンを閉じました。
「リィティカ先生、これは使わせません」
「注射器は悪いものじゃぁ、ないんですぅ!」
何故、そこまで注射器にこだわるのか。
そこまで必死な顔をするのか、今の自分にはわかりません。
自分はまだ、リィティカ先生のことをよく知りません。
人となりを知っていても、その歩いてきた道まではわからないのです。
「いえ、そうではなく別の理由です」
注射器による効果を知らないわけではありません。
「経口薬よりも早く効果が得られ、胃酸や腸液で薬剤が変質することもありません。優れた、新しい治療手段としては自分も認めています。ですがリィティカ先生。正直に答えてください」
どこでリィティカ先生が注射器を手に入れ、その効能を知ったのかとはまた別の問題です。
「これを使った人体実験……、という言い方は変ですが、人体に使った経験、比較実験、使用薬剤の副作用等々、それらを明確に示す何かはありますか」
「……うぅ」
問題はそう、経験です。
注射器が既存の薬物摂取とは違う、新しい使用方法というのなら、当然、実験済でしょう。
ただし、医学会の認可が降りているかどうかの問題があります。
女医さん(36)はかなり腕のいい医者です。
それなりの場数をこなし、内紛をくぐり抜けた猛者です。
かなり、大筋を省きますがその女医さん(36)が知らないということは医学会ではまだ取り上げられていない手法だと見做していいでしょう。
認知されていないのです。
なので臨床データなんてありません。
「ありませぇん……」
もしも臨床データがあるのなら、医学会に非公認で行われたことになります。
まぁ、珍しい話でもないんですけどね、公認前の実験なんて。
そもそも医学会も臨床データがないと信じないですし、非公開実験してから公開することもままある話です。
暗黙の了解、という感じですね。
今回はこれを逆手に取ります。
リィティカ先生も非公認実験の経験があるのか、と問われたら、ハッキリと言うわけにはいかないでしょう。
下手すれば犯罪者ですからね。
そのせいでかなりいやらしい言い方をしました。それは認めます。
「ですが、リィティカ先生がこうして注射器による薬剤摂取を推しているのなら、それなりの経験はあるのでしょう。対象は成人男性ですか? 子供や婦人、年齢差による薬量の使用差は? 妊婦への実験は? 人種にも影響されますよ、薬物は。リィティカ先生がどのようなお立場で投与実験されたとしても、これだけの種類の比較実験はできなかったでしょう。これだけは教えてください。セロ君くらいの年齢の女の子への対象実験はされましたか?」
「………」
しょんぼりされました。
あぁ……、違うんです、いじめてるわけではないんです。
しかし、ここは心を鬼に――どうしてでしょう?
なんだかリィティカ先生のしょんぼりしている姿を見ていると罪悪感があるのは確かですが、どこかこう優越感というか未知の快楽というか。
ダメだ。変な道に踏みこむ前に精神を抑制しましょう。
こんなときにこそ術式技術の応用です。
心をフラットにするのです。
……危ないところでした。
人の精神への介入を可能にする攻性防御とか聞いたことありませんよ。
女神のしょんぼりは伊達ではないようです。
時代が時代なら涙の洪雨で河が氾濫しているところですよ。
「まだ、というのならセロ君への使用は認められません。これは自分のわがままです。いずれそうした被験者が必要なことくらい、わかっています。ですがセロ君であって欲しくないんです。他の誰かならいいという話ではないとわかってはいるんですがね」
「……そう、ですよねぇ」
「誤解しないでもらいたいのが、注射器による効能は確かだということです。いずれ素晴らしい医療技術として認められるでしょう。そして、リィティカ先生がセロ君を本気で心配してくれたからこそ、なんとかしようとして注射器を使おうとしたことも理解しています。」
「ごめんなさいぃ……」
うなだれてしまいました。
「それと女医さん(36)」
「なに?」
「女医さん(36)ともあろう方が、これらの事に気づかなかったはずがありません。なのに患者がいる部屋で感情的になって口論するのはどうかと思います」
「わかったわ。私も冷静じゃなかった。認めるわ」
「リィティカ先生もお気持ちはわかりましたから、少し冷静になりましょう」
「はぃ……、少し頭を冷やしてぇ、きます」
注射器のカバンを持って、リィティカ先生が扉の前に立ちました。
あっと、そのまま行かせるわけにもいきません。
追撃じゃないですよ? これ以上、ダメ出しするつもりはありません。
心苦しいのは自分もなんです。
「リィティカ先生」
「はい」
「後でその注射器についてお話があります。できればお時間を空けていただけると助かります」
「わかりましたぁ。私もぉ、聞きたいことがありますからぁ」
そう言って、しょんぼりした顔のまま出て行ってしまいました。
好きだからこそ言い切らなければならないこともあります。
だからと言って何も感じないわけでもないのが辛いところですね。
「私も少し、頭を冷やしてくるわ。何か欲しいものはある?」
これはセロ君への配慮でしょうか。
「食べやすいものを少し用意してもらえると助かります。野菜ジュースみたいなのがあれば最高ですね。あぁは言いましたが食べないと病気になりやすいですからね」
内紛で一番、怖かった部分はコレです。
満足に治療もできない状態で、栄養も取れない環境。
弱りきった体で病気にかかること。
一気に致死率が高くなるパターンです。
「わかったわ。じゃぁ、少しお願いね」
そう言って、女医さん(36)も出て行ってしまわれました。
残された自分はセロ君の様子を看るためにベッドを覗き込みました。
まだよく寝ているようです。
結構な時間、寝ている気がするのですが、そんなに強く術式をかけてしまったのでしょうか?
それとも普段からあまり寝てないせい?
それらはセロ君から話を聞かないとどうにもなりません。
今、自分ができることは……。
セロ君を起こさないようにベッドの隣のイスに座り、その投げ出された小さな手をゆっくり握ってやることでした。
ちょっと酸味かかった匂いがするのはあえてスルーしましょう。
「セロ君」
辛い時、一人で居たい人がいます。
自分のような弱みを見せたくない人間ならそうなのでしょう。
そんな自分でも一人が本当に辛いと思ってしまう時があります。
そんな時、必ずフィヨは隣にいてくれました。
代わりというわけでも、真似をしているわけでもありません。
ただ、そうですね。
それくらいしか、自分にはできなかったからです。
場しのぎだとわかっていても、様々な問題が何一つ解決しなくても。
頭の痛い問題ばかり堆く積み重なっていますけどね。本当に。
ただ傍にいるだけでいいというのなら、こうして寄り添いましょう。
特に理由がなくたって、隣り合う人がいることを教えましょう。
いつかセロ君にも同じような誰かが現れた時のために、寄り添い方を身をもって示しましょう。
後、そろそろいいでしょうか?
「そろそろ寝たフリをやめないとキスしますよ?」
「ふぇ……っ」
握った手を引っこ抜いて、セロ君が布団の中に入りこんでしまいました。
布団虫、再びです。
「もちろん、手の甲にですがね」
「……せんせぃは大人でずるぃのです」
布団虫がくぐもった声で返事をしました。
さすがにあれだけ騒がれているとセロ君でも起きると思うんですよね。
で、手を握ったついでに脈を測ってみたら、思った以上に脈が速かったので疑問に思いました。
セロ君も突然、手を握られるとは思わなかったようで心拍数が上がったようです。
「体の調子はどうですか?」
「もぅ大丈夫なのです」
と、言ってますが信じてあげません。
布団虫が脱皮しようとしているのを上から押しつけてやりました。
「大丈夫ならもうちょっと寝ておきましょうねー」
「ぁぅ……」
もぞもぞと抵抗し、ようやく顔を出したセロ君の額に手を置きました。
体温はちょっと高い感じですが子供特有の温かさですね。
「授業、ダメにしてごめんなさぃなのです……」
「気にする必要はありませんよ。誰だって体調のよくない日くらいあります。問題は――」
「ぁう……」
「――問題は、頑張りすぎなことです」
マッフル君は頑張り屋ですが、アレで自分の限界というものを知って無茶をします。
どこまでやればいいか、ということを理解しているのでしょうね。
一方、同じ頑張り屋でもセロ君はがむしゃらです。
一生懸命すぎて自分の体を省みない。
結果、頑張りすぎて体を壊してしまうのです。
今回も例に漏れず、色々心配事があるくせに周囲に迷惑をかけないようにと頑張った結果、周囲に迷惑をかけてしまったという良くないパターンです。
頑張りすぎて怒らねばならないなんて、なんて贅沢なんでしょうね。
「頑張るのはいいことです。でも、それと同じくらい休むことも大事なことです。頑張らなくたって誰も、いえ、先生はセロ君を嫌いになったりしません」
ポンポンと頭と叩いておきました。
「なので、今日は休むこと」
どうやら観念したようで、もぞもぞするのも諦めたようです。
代わりに布団からちょこっと顔を出して、こちらをじぃ~と眺めてきてます。
「どうしました?」
「ぁぅ……、ぁの、せんせぃ。もういっかい、手をおでこに……」
消え入りそうな声で珍しいわがままを言ってきました。
いいですよ、いいですよ? そんなわがままなら、たんと言いなさい。
そっと手を置いてあげました。
「……先生の手はつめたくてきもちいぃです」
もしかして血の量が足りてないから手が冷たくなってる……と考えて思い出しました。
そういえば体温調整用の術式具をつけてましたね。
セロ君の体温が高いから、相対的に冷たく感じるのでしょう。
ちょっと恥ずかしそうな顔をしていたのに、すぐに曇ってしまいました。
「先生はだぃじょうぶなのに……、どうしてティッドくんには」
その答えを言うのは簡単です。
教えることが役目の教師ですが、教えないことで教えることもあるのです。
その情動はゆっくり育てていきなさい。
いつか、それが異性への友情に変わるのか、恋心に変わるのかはわかりませんが。
自分自身で気づくべき大事な心です。
「ティッドくん、ないてたのです」
「そうですね」
「こまってたのです」
「そうですね」
「セロはどうしたらいいのですか?」
それはとても簡単な問いかけでした。
「悪いことをした、と思っているんですね」
「はぃ……」
「ティッド君は気にしていませんよ?」
「でも……」
「でも、モヤモヤしている」
「……はぃ」
少なくともセロ君の心の情動よりも、簡単に解けてしまう答え。
言葉にして問いにし、答えを導きましょう。
「ティッド君に『ごめんなさい』したいのです」
「正解です。花丸シールは今、手持ちもないことですしティッド君にちゃんと言えたらあげましょう」
少し嬉しそうなセロ君の顔。
考えてみれば、セロ君はちゃんとティッド君に謝っていません。
自分が勝手に手落ちにしてしまったせいでもあったのでしょう。
いや、でも、あぁしないとウチの子たちが面倒をかけますしね。
ティッド君に被害があったら、余計に面倒なことになります。
なので結果オーライ、ということにしてください。
これで少しは罪悪感もなくなるでしょう。
とはいえ、問題はまだ複数あります。
まず、この暑夏で体調管理がおろそかになっている生徒たちに対して一つ。
健康診断の実施を早急に仕上げてしまわなくてはなりません。
本来はやるつもりもなかった長期の休講も考えています。
夏休みですね。もっとも試練が終わった後になりますが、一度、会議にかけてみたいと思っています。
もう一つ。
生徒たちに自信をつけるための授業。
これは試練までに地道にやっていきましょう。
その第一段階として【適性判断】を考えています。
これは健康診断とセットでしてもいいですね。
仕事の話はこれくらいでいいでしょう。
今は生徒とのスキンシップを楽しみましょう。
「先生は結婚しないのですか?」
「世間一般ではもう子供がいてもおかしくないんですけどね……、ハハッ!」
泣いてなんかいませんよ?
ちょっと女運が悪いだけです、えぇ。
「セロはパパのこと知らないのです。でも、院長様がぃてくれたのでさみしくなかったのです。でも、ちょっとだけ皆からパパの話を聞いて」
「セロ君はどんなお父さんだったら良いと思いますか?」
「ぇーっと……、やさしくて、たまに怒ってくれて、大事にしてくれるようなパパがいいのです」
意外とそういう父親は少ないのが現実です。
父親は子供に舐められないように威厳を保つのに必死ですからね。
それにしっかりしてないと子供を育てられません。
自分も父親については、まぁ、アレですね。
奔放で自由主義な父でしたが子供心にその父の姿を見て育った身です。
一応、感謝していますよ?
自分たちも自由でしたが、その分、不安も多かったのではないかと今になって気づきます。
生徒たちが何をしでかすか心配でたまらない自分にとって、自由にさせるということの恐怖に耐えられそうにありません。
父は何を思っていたのでしょうか。
教師の頭蓋骨を陥没させるような罠を仕掛ける自分のような悪ガキ相手に。
突然、火薬を取り出して道にバラまいて着火するような妹相手に。
我ながらロクな兄妹ではなかったと思います。
それでも生きて、また出会うことがあったのなら聞いてみたいですね。
「せんせぃは、パパみたいなのですっ」
「きゃぅ~」と言いたそうな顔で布団の中にまた隠れてしまいました。
恥ずかしいんでしょうね、えぇ。
聞いたこっちも結構、恥ずかしかったです。
「何か欲しいものはありますか? 今日の先生は慈愛の女神よりも優しい自信がありますよ? どんな要望にも応えてみせましょう」
「ぇーっと……、じゃぁ……、絵本をよんでほしぃのです」
「絵本ですか。医務室には置いてないようですね」
「ぁぅ……」
「なので、そうですね。故郷の物語で良ければいくつか話して聞かせましょう」
「先生の、ふるさと、なのですか?」
「えぇ。ここから遠く、とおく歩いていけない距離に隣り合う、そこにしかない物語です」
いくつかの物語を語り、いつしかセロ君はまた眠ってしまいました。
自分の手を握って眠る少女の姿を見ると、一人くらい子供がいてもいいな、と考えてしまいますね。
まだ相手はいませんけどね! 本当、リィティカ先生、結婚してください。
さて、後日談です。
無事、調子を取り戻したセロ君が、何時、ティッド君に謝ったのか定かではありませんが、朗らかな笑顔を浮かべるところを見るとちゃんと謝れたようです。
きっと二人して顔を真っ赤にしていたのではないかと思っています。
そういえば座学の授業中に面白いことがありました。
「ではセロ君。次の質問に答えてみましょう」
「はぃなのです、パパ――はぅっ」
先生とパパを言い間違えて、両手で顔を隠してしまったセロ君です。
あまりの恥ずかしさに用具を入れる木箱の中に入って出てこなくなった事件もありました。
最初は笑っていた生徒たちでしたが、本当に出てこないせいで最後は本気で焦っていました。
自分はというと内心、どうしたものかと頬を掻いたものです。
最終的にどうしたかというと、木箱を解体してセロ君を捕獲。
珍しい授業妨害にオシオキしておしまい、おしまい……と思いきや、解体された木箱が残されていました。
もちろん、自分が直しましたよ。
なんというか、元気になって良かったと思う反面、元気になりすぎても困りますね。




