第57話 正面からじゃなくていい
どれほど走ったのか、相馬には分からなかった。
肺が焼けるように痛み、以前に聡子から撃たれた右上腕も、走るたびに鈍い痛みを訴えている。それでも足を止めることができず、何度も木の幹へ肩をぶつけながら、ただ蓮たちから距離を取ることだけを考えて森の奥へ進み続けた。
追ってくる気配はない。
それは途中から分かっていた。
蓮も、聡子も追ってきていない。
それでも、あの轟音が耳から離れなかった。
相馬は太い木の陰まで来たところで、ようやく足を止めた。
「はっ……はぁ……」
木へ背中を預け、そのままずるずると腰を落とす。
小型の短機関銃はまだ握ったままだった。
自分には連続して弾丸を撃ち出せる武器がある。
何発も撃てる。
それなのに――蓮が持っていた巨大なリボルバーは、たった一発ですべてをひっくり返した。
「……ふざけんなよ」
脳裏に、あの光景が蘇る。
巨大な銃口。
森を揺らした轟音。
自分のすぐ横を通過した弾丸。
そして、大きく抉られた木の幹。
最後には自重を支えきれなくなり、大木そのものが倒れた。
あと少しずれていたら。
もし、自分の身体に命中していたら。
「……っ」
相馬はそこで考えるのをやめた。
短機関銃を握っている手が震えている。
怖かった。
間違いなく死ぬと思った。
だから逃げた。
それだけだ。
「俺は悪くない……」
誰に言い聞かせているのか、自分でも分からなかった。
「死にたくないんだから……逃げるだろ、普通」
蓮は追ってこなかった。
それなのに時間が経つにつれて、相馬の中では恐怖とは違う感情が膨らんでいった。
――何でお前だけ。
自分には、こんな条件が押しつけられている。
《2nd STAGE開始時点で生存していた、自分以外の参加者13名全員の死亡を確認してください》
初めてそれを見た時は、意味が分からなかった。
自分以外の全員が死ななければ、首輪を外せない。
そんなものを個別クリア条件と呼んでいいのか。
だが相馬にとって、それ以上に納得できないことがあった。
「……俺は」
握った拳が震える。
怒りが、先ほどまでの恐怖を少しずつ塗り潰していく。
「俺はクリアしただろ……」
誰もいない森の中で、相馬の声が漏れた。
1st STAGE。
まだ条件が変更される前。
自分に与えられた最初の個別クリア条件。
相馬は、それを達成した。
条件を満たした。
あとは端末に認証させ、首輪が外れるはずだった。
それで終わるはずだった。
なのに――。
《SYSTEM ERROR》
あの表示が出た。
条件を達成しているのに。
何度確認しても。
首輪は外れなかった。
「俺はクリアしただろ!」
相馬は立ち上がり、近くの木を拳で殴った。
「条件は達成した!」
もう一度。
「ちゃんとやっただろ!」
拳が痛む。
それでも止められなかった。
「エラーで外れなかっただけだろ!」
森の中に怒声が響く。
「だったら何で俺が……!」
木へ額を押しつける。
息が荒い。
「何で俺が、こんな条件やらされてんだよ……」
首輪に手を当てる。
冷たい金属の感触。
本来なら、もうそこに存在していなかったはずのもの。
「俺が失敗したんじゃないだろ」
声が震える。
「俺はちゃんとやった」
誰も答えない。
「俺は……助かってたはずなんだ」
その言葉を口にした瞬間、胸の奥に別の感情が湧き上がった。
三浦。
血を流しながら倒れていた男。
自分は謝った。
狙ったんじゃない。
死ぬな。
そう言った。
それでも三浦は死んだ。
その直後、端末に表示された。
《10 → 9》
そして少し前にも、また誰かが死んだ。
《9 → 8》
《TARGET:8》
「……あの時」
相馬の声が小さくなる。
「あの時、ちゃんと首輪が外れてれば……」
三浦の死に顔が浮かぶ。
「俺はこんなことしてない」
そうだ。
自分は最初から殺そうとしていたわけではない。
「三浦だって……死ななかったかもしれない」
少しずつ。
相馬の中で、出来事の意味が変わり始める。
「俺が悪いのかよ……」
自分の弾が三浦に当たった。
それは事実だ。
引き金を引いたのも自分。
その事実だけは、どうやっても消えない。
それでも。
「俺がこんな条件にされなかったら、撃ってないだろ……」
相馬は自分の端末を取り出した。
《TARGET:8》
その数字を睨みつける。
「最初から首輪が外れてたら……こんなことになってないだろ!」
端末を地面へ叩きつけそうになり、寸前で止めた。
これを壊すわけにはいかない。
自分が助かるために必要なものだからだ。
「なのに神谷は……」
今度は蓮の顔が浮かぶ。
『人の死を数字で見るようになったら――』
「うるせえよ……」
相馬の表情が歪む。
「じゃあどうしろっていうんだよ」
自分以外が死ななければ助からない。
そういう条件を突きつけられている。
それなのに、人を殺すな。
数字で見るな。
戻れなくなる。
「お前には分かんねえだろ……」
相馬は端末を強く握った。
「俺はもう一回クリアしなきゃいけないんだよ」
その言葉に、自分自身が一瞬だけ黙った。
――もう一回クリアする。
奇妙な言葉だった。
本当なら、1回目で終わっていた。
終わっていなければならなかった。
だから今やっていることは、新しい条件へ挑んでいるのではない。
奪われたクリアを取り返しているだけ。
そう考えると、胸の奥にあった罪悪感がほんの少しだけ軽くなった。
「そうだよ……」
相馬は呟く。
「俺はもう、クリアしてたんだ」
誰かが死ぬ。
数字が減る。
それを喜ぶ自分はおかしい。
少し前までは、そう思っていた。
今も完全にそう思わなくなったわけではない。
だが、その自分を正当化する理由ができてしまった。
――自分が望んだ条件じゃない。
――自分は本来、もう助かっていた。
――こうなったのは、自分のせいじゃない。
相馬は短機関銃へ目を落とした。
「……でも」
蓮には勝てない。
少なくとも、正面から撃ち合えば。
あの規格外の銃をもう一度向けられれば、次こそ死ぬかもしれない。
「これじゃ駄目だ」
相馬はゆっくり立ち上がった。
「正面からじゃ……勝てない」
そこで思考が止まる。
数秒後。
別の考えが浮かんだ。
「……正面から?」
誰が正面から戦えと言った。
撃ち合う必要などない。
蓮より強力な銃を探す必要もない。
撃たれる距離へ近づかなければいい。
気づかれない場所から。
反撃されない方法で。
「正面からじゃなくていい」
口にした瞬間、先ほどまで乱れていた呼吸が少しだけ落ち着いた。
相馬は荷物から、もう1台の端末を取り出した。
三浦が倒れた場所で拾った、アップグレード済みのPLAYER TERMINAL。
誰のものだったのかは知らない。
今の相馬にとって重要なのは、その持ち主ではなかった。
普通の端末にはない機能。
《物資情報》
《特殊物資情報》
《PLAYER INFORMATION》
相馬の指が、《特殊物資情報》の文字で止まる。
蓮が手に入れた巨大な銃。
あれも、この島に用意された特殊物資なのかもしれない。
「だったら……」
相馬は画面を開いた。
地図上に、いくつかの情報が表示される。
距離。
地形。
現在地から向かえる範囲。
その中から比較的近い場所を選ぶ。
「何でもいい」
銃でなくてもいい。
蓮に対抗できるものなら。
相馬は短機関銃を持ち直し、歩き始めた。
*
特殊物資の反応があったのは、森の中に残された古い設備跡だった。
何に使われていた建物なのかは分からない。コンクリートの壁は一部が崩れ、錆びた金属製の扉は半開きになっている。
相馬は短機関銃を持ったまま、慎重に中へ入った。
人の気配はない。
薄暗い内部を進み、端末の表示と現在位置を照らし合わせる。
奥へ進んだところで、反応がほぼ重なった。
「この辺か……」
崩れた棚を動かす。
その裏側、床に近い場所へ黒い収納ケースが固定されていた。
相馬は周囲を確認してから、それを引き出した。
蓋を開く。
「……何だ、これ」
中身を見て、相馬の目が止まった。
銃ではない。
複数の爆発物が収められていた。
相馬に専門的な知識はない。
詳しい構造も分からない。
ただしケース内の表示を見れば、それがゲーム側によって特殊物資として用意された爆発物であることだけは理解できた。
「爆弾……」
相馬は呟いた。
最初は触れなかった。
少し前なら、それを見つけた時点でケースを閉じていたかもしれない。
だが今は違った。
あの巨大なリボルバーを構える蓮の姿が浮かぶ。
木の幹が吹き飛ぶ。
大木が倒れる。
自分は逃げた。
「……これなら」
相馬の手が伸びる。
途中で、一度止まった。
何に使う。
自分でも分かっている。
これは身を守るためだけのものではない。
今、頭の中で考えている使い方は、明らかにそれを越えている。
「……」
三浦の顔が浮かんだ。
相馬は目を逸らす。
「俺が悪いんじゃない」
また同じ言葉が出る。
「俺はクリアしてたんだ」
爆発物へ手を伸ばす。
「それをエラーで止められた」
相馬は知らない。
なぜ、あの時《SYSTEM ERROR》が発生したのか。
ただの故障だったのか。
ゲーム側に何か問題が起きたのか。
原因は何も知らない。
分かっているのは、自分が条件を達成したにもかかわらず、首輪が外れなかったという事実だけだった。
「そのせいで、こんな条件になったんだろ……」
だから。
「俺は取り返してるだけだ」
爆発物を手に取る。
ずしりとした重みが掌へ伝わった。
蓮の顔が浮かぶ。
「神谷だって俺に銃を向けた」
自分の中で、都合よく事実を並べ替えていく。
蓮が先に撃ったわけではない。
相馬が短機関銃を撃ったから、蓮も撃った。
本当は分かっている。
それでも今の相馬には、その順番を正確に考える余裕がなかった。
「俺だって死にたくないんだよ」
ケースを閉じる。
相馬は爆発物を持ち上げた。
もう正面から蓮へ挑むつもりはなかった。
近づかなければいい。
撃たれる場所へ立たなければいい。
相手がこちらに気づくより先に、終わらせればいい。
「次は……」
あの時、自分は逃げた。
怖くて。
死にたくなくて。
背中を向けた。
その記憶が、相馬の中で恐怖とともに屈辱へ変わっていた。
「次は、俺がやる」
それが条件を進めるためなのか。
自分を守るためなのか。
蓮への報復なのか。
もう相馬自身にも、その境界が分からなくなり始めていた。
ただ一つ確かなのは――蓮に負けたまま終わりたくないという感情が、確実に芽を出していたことだった。
相馬は爆発物のケースを持ち、薄暗い設備跡を後にした。
*
小屋の中では、黒田が古びた棚を調べていた。
相馬との銃撃戦で負った左上腕と脇腹の傷が、身体を動かすたびに痛む。それでも、この小屋が安全だという保証がない以上、休んでいるだけにはいかなかった。
食料。
水。
使える道具。
そして武器。
何が残されているのか、確認しておく必要がある。
佳子は少し離れた場所で、美月の様子を見ていた。
美月は壁際に座り、膝を抱えている。
白石に襲われてから、ほとんど口を開いていない。
黒田が棚の奥へ手を入れた。
「……あった」
布に包まれたものを取り出す。
中にはナイフが1本。
さらに棚の裏側を確認すると、小型の拳銃も残されていた。
黒田はそれぞれの状態を確認してから、佳子を呼ぶ。
「夢篠」
「何?」
「これを持ってろ」
まずナイフを差し出した。
佳子は戸惑いながら受け取る。
「私が?」
「ああ」
続いて拳銃を見せられ、佳子の表情がさらに強張った。
「……こっちも?」
「俺は長い方がある」
黒田は壁へ立て掛けていた長銃へ目を向ける。
「今の状況じゃ、全員が何か持っていた方がいい」
佳子は拳銃を見つめた。
「私、使ったことないよ」
「だろうな」
「怖いんだけど」
「怖くなくなる必要はない」
黒田は淡々と答えた。
「むしろ、そのくらいでいい。雑に扱う方が危ない」
佳子は迷った末、拳銃を受け取った。
黒田は不用意に扱わないための最低限の注意と、基本的な持ち方や構え方を教えていく。
「必要もないのに人へ向けるな」
「うん」
「持ってるだけで安心した気になるな。銃があるからって、自分が強くなったわけじゃない」
「……うん」
黒田にとって、銃は人間を強くする魔法の道具ではなかった。
一度扱いを誤れば、敵だけではなく自分や仲間まで傷つける。
だからこそ、佳子へ教える内容も必要最低限に留めた。
「構えてみろ」
佳子は緊張しながら、教えられたように拳銃を両手で支える。
「……こう?」
「力みすぎだ」
「だって怖いもん」
「それでいい。ただ、慌てて振り回すな」
黒田は姿勢を目で確認した。
実際に使わずに済むなら、それが一番いい。
「できるだけ使うな」
「そればっかりだね、黒田さん」
「使った後で後悔しても戻せないからな」
佳子は手の中の拳銃を見る。
その言葉が、妙に重く感じられた。
「……分かった」
「ナイフも同じだ。簡単に出すな」
「うん」
佳子が2つの武器を自分の荷物へ収めたところで、黒田は美月へ視線を向けた。
先ほどから、ほとんど姿勢が変わっていない。
「橘」
呼びかける。
美月が僅かに顔を上げた。
「……はい」
「具合はどうだ」
「大丈夫……です」
どう見ても、大丈夫ではない。
顔色も悪い。
身体の傷だけの問題ではないことは、黒田にも分かっていた。
真由が死んだ時、美月はその場にいた。
自分が持っていたナイフへ、真由が飛び込むようにして刺さった。
その後には相馬の銃撃。
美月は恐怖の中で逃げた。
そして、この小屋へ辿り着いてから白石に襲われている。
短い時間の中で、あまりにも多くのことが起こりすぎていた。
黒田は立ち上がる。
「少し状態を見せろ」
「……」
「怪我してるところがあるなら――」
そう言いながら、美月の方へ歩き始めた。
一歩。
まだ距離はある。
黒田は手を伸ばしてすらいない。
だが、美月の身体が反応した。
「……っ」
肩が大きく強張った。
抱えていた膝をさらに身体へ引き寄せ、壁へ背中を押しつける。
黒田の足が止まった。
美月の目が大きく開いている。
怯えていた。
触れられたからではない。
黒田が自分へ向かって近づいてきた。
ただそれだけで。
「橘?」
「……ごめんなさい」
美月が小さく言った。
「違うんです……黒田さんが嫌とかじゃ……」
声が震えている。
「分かってるんです。黒田さんは助けてくれたし……悪い人じゃないって……」
頭では理解している。
黒田が自分を守ってくれたことも。
白石を追い払ってくれたことも。
危害を加えるために近づいているわけではないことも。
全部分かっている。
それでも。
男性が自分へ向かって距離を縮めてくる。
その状況だけで、身体が先に恐怖を思い出してしまう。
白石が近づいてきた時の記憶が、理屈より早く蘇る。
「ごめんなさい……」
美月がもう一度謝った。
黒田はその場から動かなかった。
美月の表情を見る。
そして何も聞かず、静かに一歩後ろへ下がった。
「謝るな」
美月が顔を上げる。
「お前が謝ることじゃない」
黒田はさらに距離を取った。
「もう近づかない」
「でも……」
「無理する必要はない」
それだけ言うと、黒田は佳子を見る。
佳子はすでに状況を理解していた。
「私が見るよ」
「頼めるか」
「うん」
佳子は美月の方へ向かった。
黒田の時とは違い、美月の身体は強張らない。
それでも佳子は、いきなりすぐ隣まで近づかなかった。
少し離れたところにしゃがむ。
「美月」
「……うん」
「お水、飲めそう?」
美月が小さく頷く。
「じゃあ持ってくるね」
佳子は水を用意した。
それを渡し、美月がゆっくり飲むのを待つ。
飲み終わっても、急かさない。
「どこか痛いところある?」
「……腕と、肩」
「見てもいい?」
「うん」
美月が許してから、佳子は初めて距離を縮めた。
傷の状態を確認する。
美月の呼吸が少しずつ落ち着いていった。
「佳子さん……」
「何?」
「私……変ですよね」
「変じゃないよ」
佳子はすぐに答えた。
「でも黒田さん、助けてくれたのに……」
「分かってるのと、怖いのは別だと思う」
美月が佳子を見る。
「黒田さんが悪い人じゃないって分かってるんでしょ?」
「……うん」
「だったら今は、それだけでいいよ」
佳子は手当てを続けながら言った。
「無理して平気なふりしなくていい」
美月は何も言わなかった。
しばらくして、ほんの少しだけ頷いた。
佳子も、それ以上は聞かなかった。
白石に何をされたのか。
どこまでされたのか。
何を思い出しているのか。
今の美月に説明させる必要はない。
話したくなった時に話せばいい。
今はただ、自分がそばにいればいい。
黒田は離れた場所から2人を見ていた。
自分がそばにいない方が、美月は落ち着ける。
少なくとも今は。
それなら、自分には別にやることがある。
黒田は壁へ立て掛けていた長銃を手に取った。
左腕に痛みが走る。
「っ……」
佳子が振り返った。
「黒田さん?」
「少し外を見てくる」
「その怪我で?」
「ここに誰か近づいてきてから気づいたんじゃ遅い」
黒田は脇腹を庇いながら立ち上がった。
「周辺だけ確認する。遠くまでは行かない」
佳子は心配そうに黒田を見る。
「無茶しないでよ」
「お前に言われるとは思わなかったな」
「何それ」
黒田の口元が僅かに緩んだ。
「2人でここにいろ。何か聞こえても、すぐ外へ出るな」
「分かった」
佳子は一度頷いてから言った。
「黒田さんもちゃんと戻ってきて」
「ああ」
黒田は扉へ向かった。
開ける前に一度だけ振り返る。
美月は佳子のそばにいる。
先ほどより呼吸は落ち着いているようだった。
それを確認してから、黒田は扉を開けた。
外へ出る。
森は静かだった。
静かすぎるほどに。
黒田は長銃を持ったまま、小屋の周囲へ視線を走らせる。
誰かが近づいた痕跡はないか。
新しい足跡。
折れた枝。
落とされた物。
遠くの煙や、不自然な物音。
他の参加者が、この近くを通っていないか。
左腕と脇腹は痛む。
それでも足を止めるわけにはいかなかった。
小屋の中には、今まともに戦える人間がほとんどいない。
だからこそ、危険が扉の前まで来る前に見つけなければならない。
黒田は足元を確認しながら、ゆっくりと小屋の周囲を調べ始めた。
一方、小屋の中では、佳子が美月のそばに座っていた。
会話はない。
無理に話す必要もない。
ただ誰かがそばにいる。
今の美月には、それだけでも十分だった。




