第44話 一線を越える
森の中に残された足跡を、高橋は追っていた。
踏み潰された草、折れた細い枝、柔らかい土に残った靴底の跡。どれも新しく、少なくとも数時間前のものには見えない。
途中で見つけた短い矢と、焼け焦げた地面。
ここで誰かが襲われた。
そして、襲った人間もこの周辺を通った可能性が高い。
高橋は足を止め、ポケットから自分の端末を取り出した。
《参加者の首輪を5個回収してください》
《回収した5個の首輪を指定地点D-02で認証してください》
何度見ても条件は変わらない。
必要なのは5個の首輪。
白石は、自分が外した首輪をまだ持っている。
黒田、三浦、美月も1st STAGEで首輪を外していた。
死んだ美咲もそうだった。
だが、どこにいるのか分からない人間を闇雲に探していても時間を失うだけだ。
だから葵の端末が必要だった。
アップグレードされたPLAYER TERMINAL。
物資情報。
特殊物資情報。
そしてPLAYER INFORMATION。
あれがあれば、この島で他の参加者より先に情報を手に入れられる。
「……見せてもらうだけだ」
高橋は誰に聞かせるでもなく呟き、再び歩き出した。
まだ奪うつもりなどなかった。
少なくとも、その時はそう思っていた。
*
やがて木々の隙間から、小さな建物が見えた。
屋根の一部が崩れ、外壁には蔦が絡みついている。
島に点在する物資保管所の1つらしい。
高橋はすぐには近づかなかった。
入口近くの土に足跡が残っている。
1人分。
さらに建物の横を確認したところで、足が止まった。
木の幹に立て掛けられている物がある。
ボウガン。
「……これ」
さっき見つけた矢が頭をよぎった。
形状が似ている。
高橋は周囲を確認し、木の陰へ移動した。
建物の中から小さな物音が聞こえる。
壊れかけた窓から中を覗いた。
女が1人いる。
水野葵だった。
その手には端末が握られている。
画面には地図らしきものが表示され、通常の端末には存在しない情報が並んでいた。
「……見つけた」
*
葵は特殊物資情報を確認していた。
地図上に残っている表示は、以前より明らかに減っている。
誰かが物資を回収すれば表示は消える。
つまり武器や防具は、すでに参加者の手へ渡り始めている。
「思ったより早い……」
葵は画面を切り替えた。
残っている場所を頭に入れてから端末を閉じる。
その瞬間だった。
「葵」
外から男の声がした。
葵の表情が変わる。
返事はしなかった。
「高橋だ」
沈黙。
「話がしたい」
「そこで話して」
「顔くらい見せてくれてもいいだろ」
「その必要ないから」
高橋は建物の外で足を止めた。
「お前の端末を見せてほしい」
葵は数秒黙った。
「嫌」
「見るだけでいい」
「嫌」
「アップグレードされてるんだろ?」
「だったら?」
「特殊物資の位置を確認したい」
「それを聞いて、はいどうぞって渡すと思う?」
「武器を探してるわけじゃない」
「じゃあ何を探してるの?」
高橋は答えなかった。
首輪。
そのために使える何か。
そんなことを説明できるはずがない。
「高橋」
葵の声が低くなる。
「帰って」
「俺にも条件があるんだ」
「全員あるよ」
「クリアするために必要なんだ」
「それは高橋の事情でしょ」
正しい。
高橋にも分かっていた。
それでも、胸の奥で苛立ちが膨らんだ。
自分は死にたくない。
条件を達成しなければならない。
使える情報が目の前にある。
なのに葵は、それを持っているというだけで独占できる。
「……少し見るだけだ」
「帰って」
「葵」
「帰って」
高橋は建物へ向かって歩き始めた。
「来ないで」
「話を聞けって」
「止まって」
「端末を見るだけだ」
「止まって!」
入口へ手を伸ばした瞬間、内側から板切れが飛んできた。
高橋は咄嗟に左腕を顔の前へ上げた。
板の角が前腕へぶつかり、骨まで響くような痛みが走る。
「っ……!」
視界が腕で塞がれた一瞬を狙い、葵が建物の反対側から飛び出した。
「待て!」
高橋が追う。
葵は建物の横へ回り込んだ。
そこにはボウガンがある。
「……お前!」
葵はボウガンを掴むと、振り向きざまに両手で構えた。
高橋の胸へ先端が向く。
「止まって」
高橋は数メートル手前で足を止めた。
「本当に撃つ気か?」
「近づいたら撃つ」
「人間を?」
「近づかなければ撃たない」
葵の人差し指が引き金にかかる。
だが、その手はほとんど震えていなかった。
高橋はそこを見ていた。
「……慣れてるな」
「何が?」
「それだよ。初めて人に向けた奴の顔じゃない」
ほんの一瞬。
葵の目が揺れた。
高橋はその隙に地面を蹴った。
「っ!」
葵が引き金を絞る。
短い発射音。
高橋は走りながら上体を横へ投げ出した。
矢が肩口を掠めるように通過し、背後の木へ深々と突き刺さる。
高橋は肩から地面へ落ちた。
落ち葉の上を転がり、その勢いのまま膝を立てる。
葵は腰の矢へ手を伸ばしていた。
ボウガンへ装填する。
その数秒が、高橋には十分だった。
「離れて!」
高橋が一気に飛び込んだ。
ボウガンの前方を左手で掴み、銃口のような先端を自分から逸らす。
「離せ!」
「端末を見せろ!」
「嫌!」
葵はボウガンを引き戻そうとする。
高橋も離さない。
互いの体重がぶつかり、2人はもつれるように地面へ倒れた。
葵が下になる直前、身体を横へ捻った。
高橋の体重をまともに受けることを避け、そのまま右拳を高橋の頬へ叩き込む。
「ぐっ!」
高橋の顔が横へ弾かれる。
葵はすぐに身体を起こそうとした。
高橋が左手で葵の手首を掴み、地面へ押さえつける。
「離して!」
葵は空いている脚を折り畳むと、膝を高橋の腹へ突き上げた。
「がっ……!」
高橋の腹に膝が食い込み、身体が浮く。
掴んでいた手が緩んだ。
葵はその隙に腕を引き抜き、高橋の肩を押して身体を抜く。
ボウガンをその場へ残したまま立ち上がり、森へ走った。
「待て!」
高橋も腹を押さえながら立ち上がった。
追う。
葵は速かった。
ただ速いだけではない。
木の根が張り出した場所を避け、斜面では重心を低くし、倒木があれば迷わず進路を変える。
走りながら後ろも確認している。
まるで、こういう場所で人間から追われることに慣れている。
「くそっ……!」
高橋は速度を上げた。
葵が突然、右へ方向を変える。
高橋も追う。
その足が、落ち葉に隠れていた枝へ引っ掛かった。
「っ!」
身体が前へ崩れる。
両手をつく。
膝が地面へぶつかった。
顔を上げた時には、逃げていたはずの葵が戻ってきていた。
葵は高橋の左側へ回り込み、走った勢いのまま右足を振り抜く。
靴底が脇腹へ食い込んだ。
「ぐあっ!」
高橋の身体が横へ転がる。
息が詰まる。
葵はすぐに距離を取った。
「追ってこないで」
肩で息をしている。
それでも視線は高橋から外さない。
「次は外さない」
「……怖いな、お前」
「だったらやめて」
葵が背を向ける。
高橋の視線が、その腰へ向かった。
ケースに入った端末。
あれさえあれば。
「葵!」
高橋は痛む脇腹を押さえながら立ち上がった。
足元に落ちていた太い枝を掴む。
葵が振り返った。
「やめて」
「端末をよこせ!」
高橋が枝を横薙ぎに振る。
葵は咄嗟に腰を落とした。
枝が頭上を通り過ぎ、木の幹へ激突する。
高橋が引き戻すより早く、葵は踏み込んだ。
右足で高橋の手首を蹴り上げる。
「っ!」
指が開き、枝が地面へ落ちた。
葵はそのまま離れようとした。
高橋は前へ飛び出し、両腕を葵の胴へ回した。
「離せ!」
「逃がすか!」
高橋は勢いのまま葵を押し倒す。
足場は斜面だった。
2人の身体が落ち葉の上を転がり始める。
葵が高橋の腕を引き剥がそうと肘を何度も打ち込む。
高橋は離さない。
途中で身体が入れ替わり、高橋の背中が木の幹へ激突した。
「ぐっ……!」
腕の力が抜ける。
葵も勢いのまま数メートル下へ転がった。
その衝撃で、腰のケースから端末が飛び出す。
黒い端末が落ち葉の上を滑った。
2人が同時に気づいた。
高橋が先に動いた。
四つん這いのまま端末へ手を伸ばす。
「触るな!」
葵も地面を蹴った。
高橋の指が端末を掴む。
ほぼ同時に葵が追いつき、高橋の右足首へ両腕でしがみついた。
「返して!」
高橋が足を振る。
「離せ!」
「それは私の!」
葵は離さない。
高橋が前へ進もうとしても、葵の体重に引かれて足が動かない。
「俺にだって必要なんだよ!」
「だからって――!」
高橋は端末を左手で胸元へ抱え込んだ。
右足を何度振っても葵の腕は外れない。
苛立ちが爆発した。
高橋は振り返ると、腰を落とした。
空いている右手を葵の頭へ伸ばす。
指が髪の根元を掴んだ。
「っ……!」
高橋はそのまま髪を強く引いた。
葵の顔が無理やり上を向く。
「離せ!」
「そっちが離せ!」
「返して!」
葵は痛みに顔を歪めながらも、足首から手を離さなかった。
高橋は髪を掴んだまま、葵の頭を地面へ押し下げた。
それでも指が外れない。
「離せって言ってるだろ!」
高橋は左足を持ち上げた。
一瞬だけ迷った。
その足を、葵の頭へ振り下ろす。
靴底が側頭部を押さえつけ、葵の頬が地面へ押し付けられた。
「……っ!」
葵の身体が強張る。
高橋はそのまま体重をかけた。
葵の腕から力が抜ける。
足首を掴んでいた指が、1本ずつ離れていく。
高橋は右足を強引に引き抜いた。
数歩後ろへ下がる。
そこで初めて、自分が何をしたのか理解した。
「…………」
葵は地面に倒れている。
意識はある。
腕も動いている。
殺してはいない。
高橋はそう確認した。
だが、助け起こそうとはしなかった。
胸元へ抱えた端末を見る。
次に浮かんだのは、逃げなければ、という考えだった。
「……悪い」
小さく言う。
そして走り出した。
「待て……!」
背後から葵の声が聞こえた。
高橋は振り返らなかった。
*
黒田はポケットから《G》の刻印が入った黒いプレートを取り出した。
目の前には、半分地面へ埋もれたコンクリート施設。
壁の認証パネルには、
《AUTHENTICATION》
と表示されている。
「本当に使うの?」
美月が尋ねた。
「ああ」
「さっきはやめたんじゃなかった?」
「状況が変わった」
黒田は周囲へ目を向けた。
真由がまだ近くにいる可能性がある。
すでに2度、刃物を投げられている。
次も外れる保証はない。
「何が起きるか分からないぞ」
三浦が言った。
「分かってる」
黒田は短く答え、認証パネルへ向き直った。
「2人とも離れろ」
三浦と美月が後退する。
黒田は《G》を差し込み口へ近づけた。
一度だけ手を止める。
何のための部品なのか。
なぜ《G》なのか。
まだ何も分からない。
それでも今は、使えるものを使わなければ生き残れない。
黒田はプレートを差し込んだ。
カチッ。
内部で何かが噛み合った。
数秒間、何も起こらない。
「……駄目?」
美月が呟く。
直後。
電子音が鳴った。
《AUTHENTICATION……》
表示が切り替わる。
《G》
《RECOGNIZED》
「認識した……」
三浦が声を漏らす。
重い機械音が響いた。
コンクリート壁の一部がゆっくり横へ動く。
その奥に、暗い空間が現れた。
黒田はすぐには入らない。
内部を覗く。
細長い部屋。
奥には大きな金属製ケースが置かれている。
「何だ、あれ」
三浦が一歩近づく。
「待て」
黒田が制した。
その瞬間だった。
空気を裂く音。
「伏せろ!」
黒田が叫ぶ。
3人が身を低くする。
飛んできた刃物がコンクリート壁へ激突し、乾いた金属音を響かせた。
「また……!」
美月の顔が強張る。
黒田は刃物が飛んできた方向を見る。
木々の間。
人影が走った。
「桐谷!」
今度ははっきり見えた。
真由だ。
「三浦、美月! 中へ入れ!」
「黒田は!?」
「早く!」
2人が施設へ走る。
再び刃物が飛んだ。
黒田は上体を右へずらす。
刃物が左肩のすぐ横を抜け、入口脇の壁へぶつかった。
その直後、真由が木の陰から飛び出した。
右手には別の刃物が握られている。
逃げるつもりがない。
「……やっぱりお前だったか」
黒田が低く言う。
真由は荒い呼吸を繰り返している。
「来ないで」
「何が条件だ」
「来ないで」
「俺たち3人が関係してるんだろ」
「黙って!」
真由が踏み込んだ。
右腕を伸ばし、刃先を黒田の胸へ突き出す。
黒田は半歩横へずれ、真由の右手首を外側から掴んだ。
刃先が胸の横を通過する。
「離して!」
真由が腕を引く。
黒田は離さない。
手首を捻り、刃先を地面へ向けようとする。
「落ち着け!」
「離して!」
真由は左手を振り上げた。
拳が黒田の頬へ入る。
先ほど傷つけられた場所だった。
「っ!」
痛みに黒田の顔が歪む。
握っていた指が一瞬緩んだ。
真由は右腕を強引に引き抜き、その勢いのまま刃を横へ振った。
黒田が後ろへ身体を引く。
切っ先が胸元の服を裂き、その下の皮膚を浅く走った。
黒田は2歩後退した。
胸元に細い血の線が浮かぶ。
「本気か……」
真由も一瞬、自分の手元を見た。
血。
今度は確実に傷つけた。
その顔に恐怖が浮かんだ。
だが、逃げなかった。
「あなたたちが……」
声が震える。
「あなたたちが生きてたら、私は……」
途中で言葉を止める。
黒田の目が鋭くなる。
「条件だな」
「違う!」
「だったら何だ」
「来ないで!」
真由は両手で刃物を握り直した。
黒田も腰を落とす。
その背後。
施設の中から美月の声が響いた。
「黒田!」
「何だ!」
「中に……武器がある!」
真由の目が一瞬だけ施設へ向いた。
黒田も反応する。
その隙に真由が走った。
距離を一気に詰める。
刃が黒田の腹へ向かう。
黒田は身体を捻った。
完全には避けきれない。
左腕を間へ入れる。
刃先が前腕を裂いた。
「ぐっ……!」
血が飛ぶ。
だが黒田は退かなかった。
真由が刃を引き戻す前に、右手でその手首を掴む。
左腕の痛みを無視して身体を踏み込み、真由の腕を外側へ捻った。
「っ……!」
真由の体勢が崩れる。
黒田はそのまま肩を押し込み、脚を払った。
真由の身体が横向きに倒れる。
背中が地面へ叩きつけられ、右手から刃物が落ちた。
黒田はすぐに刃物を蹴り飛ばした。
「やめろ!」
低い怒声が森に響いた。
真由は地面に倒れたまま、荒い呼吸を繰り返している。
黒田の左腕から血が滴る。
「次にやったら、こっちも手加減できない」
真由は黒田を見上げた。
怖がっている。
自分がやったことにも怯えている。
それでも、その目から黒田たちを狙う意思までは消えていなかった。
黒田は直感した。
また来る。
次は、もっと迷わなくなる。
その時。
遠くで銃声が響いた。
1発。
少し間を置いて、さらに2発。
黒田と真由が同時に森の奥を見る。
また別の場所で、何かが始まっていた。
*
高橋は大きな岩の陰まで走り、ようやく足を止めた。
「はぁ……はぁ……」
葵が追ってくる気配はない。
手を見る。
奪ったPLAYER TERMINAL。
「…………」
高橋はしばらく端末を見つめていた。
「貸してくれなかったからだ」
誰も聞いていない。
「何度も頼んだ」
言い訳だと、自分でも分かっていた。
それでも口にせずにはいられなかった。
端末を起動する。
アップグレードによって追加されたメニューが表示された。
《物資情報》
《特殊物資情報》
《PLAYER INFORMATION》
「これがあれば……」
高橋は《特殊物資情報》を開いた。
地図上に複数の表示が現れる。
すでに消えた場所。
まだ残っている場所。
その中に、現在地からそれほど離れていない表示があった。
「近いな」
何が置かれているかは分からない。
それでも行く価値はある。
高橋は次に《PLAYER INFORMATION》へ目を向けた。
説明を読む。
選べるのは1人。
一度選択すれば変更できない。
「誰を見る……」
蓮。
藤堂。
相馬。
佳子。
真由。
他にもいる。
誰の条件を知れば、自分が最も有利になるのか。
高橋は指を伸ばした。
だが、まだ押さなかった。
代わりに自分の端末を取り出す。
《参加者の首輪を5個回収してください》
《回収した5個の首輪を指定地点D-02で認証してください》
高橋はじっと画面を見つめた。
「殺さなくてもいい」
白石の首輪。
黒田。
三浦。
美月。
美咲。
すでに外れている首輪は存在する。
だから人を殺す必要はない。
今まではそう考えていた。
だが今日、葵に端末を頼んだ。
断られた。
だから奪った。
必要なものを相手が渡さないなら――。
その先の考えを、高橋は途中で止めた。
「……違う」
まだそこまでする必要はない。
高橋は自分にそう言い聞かせ、特殊物資の地図を開いた。
近くに残る表示へ向かって歩き始める。
その手から、奪った端末を離すことはなかった。
*
葵はしばらく地面に横たわっていた。
側頭部に鈍い痛みが残っている。
頬には土と枯れ葉が張りつき、髪も乱れていた。
それでも意識ははっきりしている。
ゆっくり上体を起こした。
「……やられた」
高橋に端末を奪われた。
あの端末には、通常の参加者が持っていない情報が入っている。
放置できるものではない。
葵は小屋まで戻り、置き去りになっていたボウガンを拾った。
残っている矢を確認する。
少ない。
だが、ないよりはいい。
葵は弦と発射部分を手早く確認した。
その動きには試行錯誤がない。
「……やっぱり、こうなるんだ」
呟く。
最初は違うと思った。
今回こそ。
協力して生き残れる可能性があるのかもしれないと。
だが結局、人間は奪う。
追い詰められれば、他人より自分を選ぶ。
葵はボウガンを持ち上げた。
遠くから銃声が聞こえる。
1発。
続けて2発。
葵は驚かなかった。
ただ、その方向へ顔を向ける。
距離。
方角。
地形。
それらを頭の中で組み合わせていく。
そして迷うことなく歩き始めた。
端末はない。
地図も見られない。
特殊物資の位置も確認できない。
それでも葵の足は止まらなかった。
この島で武器を持った人間と遭遇した時、何をすればいいのか。
どう隠れればいいのか。
どう逃げればいいのか。
そして――。
先に攻撃するべきなのは、どんな時なのか。
葵は、それを知っている。
まるで以前にも一度。
同じような場所で、生き残るために戦ったことがあるかのように。




