第146話 生き残るための選択
第146話 生き残るための選択
古い農家の軒先には、夕方の風が吹き込んでいた。
雨宮紗良は頬に貼られたガーゼを気にしながら、鞄の中を覗き込んでいた。そこには二台の端末が重なるように収まっている。自分のものを含めれば三台になるが、どれも見た目に大きな違いはなく、持ち主を失った端末だけが特別な重さを持っているように感じられた。
あと一台。
それさえ手に入れば首輪を外せるというのに、朝倉悠斗の遺体を前にして逃げ出したことが、どうしても頭から離れなかった。あのとき大和に撃たれていなければ、今ごろ自分も蒼真と同じように首輪のない身体になっていたはずだった。
「……雨宮」
名前を呼ばれて顔を上げると、神谷蓮がこちらを見ていた。彼は自分の端末を手にしていたが、画面を操作することなく、何かを確かめるような表情を浮かべている。
「さっき、死んだ参加者の端末を二台持ってるって言ってたよな」
「……うん。それが?」
「誰の端末だ?」
紗良は少し戸惑った。条件を達成するために集めているとは説明したものの、持ち主についてはまだ詳しく話していなかった。
「……何でそんなこと聞くの?」
「誰が死んでるのか知りたいからだ。こっちはお前らと会ったばかりだし、島のどこで何が起きてたのかも分からない。それに、澪の条件にも関係する」
蓮が視線を向けると、少し離れた場所に座っていた九条澪が顔を上げた。彼女の首には、まだ金属製の首輪が残っている。
「……私のクリア条件は、生き残っている参加者が五人以下になるまで首輪をつけていることなの」
澪は言いにくそうに説明した。自分の生存が他人の死と結びついていることを、初対面の相手に話すのは気が重かった。
「五人以下って……」
紗良は思わず周囲を見回した。
ここにいるのは、蓮、千尋、澪、蒼真、そして自分の五人だった。今は全員が同じ場所で休んでいるが、島にはほかにも参加者がいる。その人たちが生きている限り、澪の条件は達成されないということになる。
「……じゃあ、誰かが死なないと駄目ってこと?」
澪は小さく頷いた。
紗良は何と返せばいいのか分からず、口を閉じた。自分も死者の端末を集めている以上、他人の条件を恐ろしいとは言えなかった。
「それで、二台は誰のものなんだ?」
蓮が改めて尋ねると、紗良は鞄から端末を取り出した。
「一台は早瀬陸。もう一台は篠原琴音って人のもの」
「早瀬陸と篠原琴音……」
蓮は二人の名前を繰り返した。どちらも直接会ったことのない参加者だったが、少なくとも紗良の話が正しければ、死亡している人数を考えるうえで重要な情報になる。
「二人とも、死んでるところを見たのか?」
「……うん」
「どういう状況だった?」
紗良は早瀬陸の端末を見つめ、少しだけ言葉を選んだ。
「早瀬って人は、私も知らない人だった。森の中で倒れてるのを見つけて……もう死んでたから、端末を取ったの」
「つまり、生きてるところは見てないんだな」
「うん。名前も端末を見て初めて知ったし、話したこともないよ」
紗良はそう答えながら、遺体のそばにしゃがみ込んだときのことを思い出した。知らない人間の持ち物を勝手に取ることへの抵抗はあった。それでも、端末を手に入れなければ自分が死ぬかもしれないという恐怖の方が大きかった。
蓮は頷き、もう一台へ視線を移した。
「篠原琴音の方は?」
紗良が答えるより先に、蒼真が口を開いた。
「……そっちは俺が知ってる」
蓮が顔を向けると、蒼真は壁に預けていた背中を起こした。
「琴音は俺たちと一緒にいたことがある。死んだ場所も分かるし、案内もできる」
「……どうして死んだ?」
蓮の問いに、蒼真はすぐには答えなかった。
紗良も彼の横顔を見たまま黙っていた。琴音を殺したのが蒼真だということを知っているだけに、何を言えばいいのか分からなかった。
「……俺が殺した」
しばらくして、蒼真が低い声で答えた。
千尋が顔を上げ、澪も驚いたように蒼真を見た。
「……あなたが?」
「ああ。俺のクリア条件だったんだよ」
蒼真はそれだけ言って、視線を逸らした。
蓮はしばらく彼を見つめていたが、責めることも慰めることもしなかった。条件を達成するために誰かを殺した参加者がいること自体は、今さら驚くような話ではない。だが、目の前の男がどこまで信用できるのかについては、慎重に判断する必要があった。
「……分かった。少なくとも二人の死亡は確認できてるわけだな」
「それと、朝倉悠斗もだ」
蒼真が付け加えた。
「森で死体を見つけた。桐生大和が自分で殺したって言ってたから、間違いないと思う」
「……朝倉悠斗」
蓮は三人目の名前を覚え、端末の地図を開いた。
「その死体、どこにあった?」
「役場へ来る前に通った森だ。こっちの道から入って……たぶん、この辺り」
蒼真が画面を指差すと、蓮は地形を拡大した。島の地図には道路や建物の位置が表示されているが、死体の場所まで自動的に分かるわけではない。蒼真の記憶を頼りに、目印になりそうな道の曲がり角や斜面の位置を確かめていく。
「篠原の死体は?」
「そっちは別の場所だ。ここから少し離れてるけど、道は覚えてる」
蒼真はもう一か所を指差した。
蓮は二つの地点を見比べ、しばらく考え込んだ。
朝倉悠斗の端末を回収できれば、紗良の条件は達成できる。一方、篠原琴音の遺体には、蓮にとって必要なものが残っている可能性があった。
「……片桐。篠原の首輪は、まだついてたか?」
「首輪?」
「ああ。死体から外されてなかったか?」
「……たぶん、ついてたと思うけど」
蒼真は怪訝そうに眉をひそめた。
「何でそんなこと聞くんだよ」
「俺の条件に使えるかもしれないからだ」
蓮は自分の鞄へ目を向けた。中には千尋と蒼真から譲り受けた二つの首輪が入っている。必要なのは五つで、まだ三つ足りなかった。
そのとき、蒼真はふと千尋へ視線を向けた。
「……そういや、お前も首輪外したんだな」
千尋は一瞬きょとんとしたが、蒼真が自分の首元を見ていることに気づき、小さく頷いた。
「うん。第一ステージのときにね」
「へえ……。じゃあ、俺より先に外してたのか」
「そうなるのかな」
蒼真は少し感心したように千尋を見た。ゲームが始まったばかりの頃に会った少女が、すでに首輪を外していたとは思わなかった。
「……お前も結構やるんだな」
「そ、そんなことないよ。たまたま条件を達成できただけだから」
千尋は困ったように笑ったが、蒼真はそれ以上追及しなかった。
「死んだ参加者の首輪でも数に入るなら、無理に生きてる奴から奪う必要はないだろ」
蓮が話を戻すと、蒼真は再び顔を向けた。
「……まあ、そうだけど。でも、首輪って簡単に外せるもんなのか? 死んだら勝手に外れるわけじゃないだろ」
蓮は少し考えてから、以前のゲームで見た光景について話し始めた。
「……前に参加したゲームで、死んだ奴の首輪を集めてた参加者がいたんだよ」
千尋が顔を上げた。
「首輪を集めてたって……蓮と同じ条件だったの?」
「似たような条件だったんだと思う。詳しいことまでは知らないけどな」
「それで、どうやって外してたの?」
蓮は一度言葉を止めた。
できれば話したくない記憶だった。あのときの光景は、今でも妙にはっきりと思い出せる。血の臭いも、地面に置かれていたものの形も、忘れようとして忘れられるものではなかった。
「……首輪だけ外すのが難しかったから、首ごと切り落としてた」
誰もすぐには反応しなかった。
最初に声を上げたのは紗良だった。
「……え?」
蓮が何も言わないでいると、紗良はゆっくりと首を振った。
「ちょっと待って。首って……人間の首を?」
「ああ」
「……うそでしょ」
紗良は口元を押さえた。遺体から端末を取ることにも抵抗があったのに、首輪を回収するために首そのものを切断するなど、想像するだけで気分が悪くなった。
蒼真も露骨に顔をしかめた。
「……お前、よくそんな話を普通にできるな」
「普通だと思ってるわけじゃない」
蓮は静かに答えた。
「ただ、実際にそういう奴がいたんだよ。生き残るために、そこまでする人間が」
千尋は膝の上で両手を握りしめた。蓮が以前のゲームでどんな経験をしたのか、少しずつ聞いてはいたが、今の話はその中でも特に恐ろしかった。
「……蓮も、そうするつもりなの?」
「ほかに方法がなければ、考えなきゃならないだろ」
その答えに、千尋は何も言えなくなった。
蓮だって好きでそんなことをしたいわけではない。それは分かっている。けれど、目の前の人間が本当にそこまでできるのだとしたら、自分はどう受け止めればいいのだろう。
「……ね、ねえ」
それまで黙っていた澪が、恐る恐る口を開いた。
彼女は両手で自分の首輪を押さえ、蓮を見つめていた。
「……まさか、私の首も切ろうとか考えてないよね?」
蒼真が思わず澪を見た。
千尋も慌てて顔を上げる。
蓮は呆れたように眉を寄せた。
「……何でそうなるんだよ」
「だって、私だけまだ首輪ついてるし……」
「お前が生きてるうちにそんなことするわけないだろ」
「……生きてるうちは?」
澪の声が裏返った。
「蓮! 言い方!」
千尋が慌てて口を挟むと、蓮は面倒くさそうに息を吐いた。
「だから、殺すつもりなんかないって言ってるだろ」
「……本当に?」
「本当だよ」
澪はそれでも完全には安心できない様子だったが、蓮が冗談を言っているわけではないと分かると、ようやく首輪から手を離した。
蓮は少し間を置き、今度は真剣な表情で澪を見た。
「……ただし、澪。お前の条件についても、そろそろちゃんと考えた方がいい」
澪は顔を上げた。
「……どういうこと?」
「お前の条件は、生存者が五人以下になるまで首輪をつけてることだろ。だったら、今何人残ってるのかを把握しないといけない」
「……うん」
「ここにいるだけで五人だ。俺、千尋、お前、片桐、雨宮。これ以上生き残ってる奴がいたら、まだ条件は達成できない」
蓮は一人ずつ顔を見渡した。
「今は時間があるから、ほかの参加者が死ぬのを待つこともできる。でも、残り時間がなくなって、それでも六人以上生きてたらどうする?」
澪は答えられなかった。
蓮は言葉を続けた。
「そのときは、誰かを殺さないとお前が死ぬことになるかもしれない」
「……そんな……」
澪は視線を落とした。
「私は……誰かを殺してまで助かりたいとは思わないよ」
その声は小さかったが、はっきりしていた。
蓮はしばらく澪を見つめ、それから低い声で言った。
「……甘いこと言うな」
澪の肩が震えた。
「お前が誰も殺したくないって思うのは分かる。俺だって、できることなら誰も殺したくない。でもな、そんなこと言ってる間に、お前自身が殺されるかもしれないんだぞ」
「……でも……」
「でもじゃない。生き残りたいなら、最悪の状況も考えろ。誰かが助けてくれるのを待ってるだけじゃ、どうにもならないことだってある」
蓮の言葉は厳しかった。
澪は唇を噛み、膝の上に置いた手を握りしめた。蓮が自分を責めたいわけではないことは分かっている。それでも、誰かを殺す覚悟を持てと言われているようで、胸の奥が苦しくなった。
千尋は二人の間に流れる空気を感じ取り、何か言おうとした。しかし、蓮の言葉を否定することもできなかった。
自分はすでに首輪を外している。
だからこそ、澪と同じ恐怖を完全には理解できないのかもしれなかった。
「……なあ」
重くなった空気を破ったのは、蒼真だった。
「今から誰を殺すか考えるより、先に死んだ奴の数を調べた方がいいんじゃねえの?」
蓮が顔を向ける。
「……どういう意味だ?」
「だって、澪の条件って、生き残ってる奴が五人以下になればいいんだろ? だったら、今何人死んでるのか分からないと話にならないじゃん」
蒼真はそう言いながら、指を折って数え始めた。
「俺たちが知ってるだけでも、早瀬陸、篠原琴音、朝倉悠斗。ほかにも死んでる奴はいるはずだろ」
「……確かにな」
蓮は頷いた。
自分たちが知らない場所で死亡した参加者もいる。殺害を条件とする危険な参加者が動いている以上、今この瞬間にも誰かが命を落としている可能性はあった。
「……そういえば、もう一人いたな」
蓮が何かを思い出したように呟くと、蒼真が顔を上げた。
「誰だ?」
「前に俺をしつこく追いかけ回してきた男だよ。やたら喧嘩っ早くて、こっちが何を言っても突っかかってくるような奴だった」
「……何だよ、それ。随分面倒くさそうな奴だな」
「実際、面倒だったんだよ」
蓮は苦々しく答え、役場の地下で見た監視映像を思い返した。
「あいつが銃で撃たれるところを見たんだ。女に撃たれて倒れたんだけど、そのあとどうなったかまでは分からない」
「……死んだのか?」
「可能性は高いと思う。ただ、確認したわけじゃないからな」
蓮は端末の地図へ視線を落とした。あの映像では、撃たれた男が倒れるところまでは見えていた。けれど、その後の様子までは追っていない以上、死亡したと断定することはできなかった。
「……そういや、最初の頃に見かけた、あのヒョロっとした奴も、それっきり見てないな」
「ヒョロっとした奴?」
「ああ。細くて、いかにも頼りなさそうな男だった。名前も知らないし、今どこにいるのかも分からない」
蓮は小さく息を吐いた。
「……こうして考えると、生きてるのか死んでるのか分からない奴が多すぎるな」
澪は黙ってその話を聞いていた。
死亡を確認できた参加者が三人。撃たれて死亡した可能性のある男が一人。そして、行方すら分からない参加者たち。
自分の首輪が外れるかどうかは、その人たちの生死にかかっている。
そう考えると、澪は胸の奥が重くなるのを感じた。
「……それに、俺の首輪もあるしな」
蓮は鞄を軽く叩いた。
「死んだ参加者の首輪を回収できれば、俺の条件にも使えるかもしれない。雨宮も、端末があと一台必要なんだろ?」
紗良は頷いた。
「……うん」
「だったら、死体を探すときは一緒に動いた方がいい。首輪を回収するついでに、まだ端末が残ってるなら拾えばいいしな」
紗良は少し考え、鞄の中にしまった二台の端末を見つめた。
知らない人間の遺体を探して歩くことには、今でも抵抗がある。けれど、一人で探し回るよりは、蓮たちと一緒に行動した方が安全なのは確かだった。
「……分かった。私も一緒に行く」
「俺も別に構わないけど」
蒼真が答えると、蓮は頷いた。
「ただ、首輪は今すぐ回収しなくてもいい。まずは死体の場所と、死亡した参加者の数を把握する方が先だ」
その言葉に、澪が顔を上げた。
「……それって、どうやって調べるの?」
蓮は端末の地図を見つめた。
島は広い。
森の中に倒れている者もいれば、建物の中で死んでいる者もいるかもしれない。すべての場所を歩いて探していたら、どれだけ時間があっても足りないだろう。
「……そうだ。お前らにも、一つ言っておかなきゃならないことがある」
蓮が顔を上げると、蒼真は不思議そうに眉を寄せた。
「何だよ?」
「桐生大和以外にも、危険な奴がいる。さっき話した、あの男を撃った女だ」
「……ああ、監視カメラに映ってたっていう?」
「そうだ。俺たちも実際に遭遇したんだけど、いきなり銃を乱射してきやがった」
蓮は自分の腕に巻かれた包帯へ視線を落とした。
「あいつとは役場の地下でも会った。そこで分かったんだけど、どうやら普通の参加者じゃないらしい」
「……どういうこと?」
紗良が尋ねた。
「ゲームマスターだって言ってた。運営側の人間が、参加者に紛れ込んでるんだよ」
「……は?」
蒼真は思わず聞き返した。
「ちょっと待てよ。運営側の奴が、俺たちと一緒にゲームに参加してるってことか?」
「ああ。しかも、そいつにもクリア条件がある」
蓮は千尋へ視線を向けた。
「第一ステージで首輪を外した参加者を、全員殺すこと。それがあの女の条件だ」
「……じゃあ、千尋も狙われてるってことか?」
「そういうことだ」
蒼真は驚いたように千尋を見た。千尋は肩の傷にそっと触れ、少しだけ表情を曇らせた。
「……私も撃たれたから。あの人、本当に殺すつもりだったと思う」
澪も小さく頷いた。
「私も……千尋を庇ったときに撃たれたの」
紗良は二人の怪我を見つめ、言葉を失った。
蒼真も苦々しい表情を浮かべる。
「……何だよ、それ。桐生大和だけでも厄介なのに、そんな奴までいるのかよ」
「だから、見つけても絶対に近づくな。話し合いが通じる相手じゃない」
蓮がそう言うと、蒼真は深く息を吐いた。
「……とんでもねえ島だな」
「今さらだろ」
蓮は苦々しく笑い、再び端末の地図へ目を落とした。
死亡した参加者の数を調べる。
紗良の端末を集める。
自分の首輪を集める。
そして、澪の条件を達成するために、残りの生存者が何人いるのかを把握する。
やるべきことは多いが、島を歩き回って一つずつ探していては、時間が足りなくなる可能性が高かった。
蓮はしばらく考えたあと、端末を閉じた。
「……役場に戻ろう」
千尋が驚いたように顔を上げた。
「えっ? またあそこに?」
「ああ。地下の監視室だ」
「……ちょっと待て」
蒼真が思わず口を挟んだ。
「監視室? そんな場所まであるのか、この島に?」
「ある。さっき俺たちが出てきた役場の地下だ」
蓮が答えると、蒼真は信じられないという顔で眉を寄せた。
「……マジかよ。じゃあ、島の中を監視してるってことか?」
「そういうことだ。島中にカメラが設置されてる。ただ、全部の場所が映るわけじゃないし、音声も聞こえない」
「……何だよ、それ。俺たちが必死に逃げ回ってるところも、ずっと見られてたってことか?」
蒼真は不快そうに顔をしかめた。
誰もいないと思っていた森の中も、建物の陰も、どこかから見られていたのかもしれない。そう考えると、今まで歩いてきた道さえ気味悪く感じられた。
「……胸くそ悪いな」
「同感だよ」
蓮は短く答えた。
「でも、今はその設備を利用するしかない。島中を歩いて死体を探してたら、時間がいくらあっても足りないからな」
澪は少し考え、蓮を見つめた。
「……監視カメラで、死んだ人が分かるの?」
「映像に死体が映ってればな。それに、参加者の動きもある程度は確認できるはずだ」
蓮は一度言葉を切り、静かに続けた。
「……俺たちが生き残るためには、まず今の状況を知らなきゃならない」
蒼真はしばらく蓮を見つめていたが、やがて小さく頷いた。
「……分かった。俺も行く」
「私も……」
紗良も不安そうな顔のまま頷いた。
千尋は蓮の隣へ立ち、澪もゆっくりと身体を起こした。
誰もが傷を負い、疲れ切っていた。
それでも、ここで休んでいるだけでは何も変わらないことは分かっていた。
蓮は鞄を肩にかけ、農家の敷地から外へ出た。
目指すのは、つい先ほど命からがら逃げ出したばかりの旧役場だった。
その地下には、島の様子を映し出す監視室がある。
蓮は一度だけ背後の四人を振り返り、全員がついてきていることを確かめると、再び歩き始めた。




