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第18話「カメラリーハサル」

 蜷局を巻いてそびえる世界樹、その前に高めのテーブルを三つ運ぶ。二つは回答者席、もう一つは司会者席。クイズ番組の野外セットだ。


 やっとテレビっぽいことが出来る。完全に予定外ではあるものの、僕は胸を躍らせていた。まさか、初のテレビ番組が世界樹の根元だなんて。


「準備完了しましたー」


 シェノンは本物のADさながら、与えられた仕事をこなしてくれていた。

 今も、パップロップを回答者席のテーブルに置いて、戻ってきたところ。


 パップロップは尻尾をつまむと、鳴き声をあげる。そうシェノンから教えてもらった時、回答ボタンみたいだなと思っていたので、そのまま利用した。

 パップロップ側もまんざらでないようで、シェノンにむにむにされまくった結果、机の上で棒立ち状態である。今もつままれるのを待っているようだ。


 ちなみに、彼らの耳には録音魔法〈ディング〉をかけておいた。なので、マイク代わりにもなっている。動物愛護団体が居たらクレームものだろう。


 さて、撮影に関してだが、僕は司会なのでカメラを回すことは出来ない。

 そこで、シェノンにカメラマンをお願いする事にした。彼女にはテレビ魔法を教えていないが、魔法をかければ後は動かすだけなので問題ない。


「じゃあ一回、リハーサルしてみようか」


「りはーさる? 猿?」


「あぁ……練習だよ、練習」


 少年期、異世界言語の勉強をしながら、専門用語を作っていたのがアダになる。

 これでは、通じない造語を然として喋るド変人ではないか。


 いずれは専門用語を根付かせるとして、今はカメラリハーサル(カメリハ)である。僕は司会席に移動して合図を出し、リハーサルを始めた。


「さぁ始まりました、クイズ世界樹。司会進行を務めさせて頂きますフィルムです」


 シェノンの横に置いた姿見に、自分の姿が映る。

 あー小恥ずかしい。カメリハで司会役をやらされることはあったが、どうも慣れない。まるで、子供向けの職業体験をしている気分だ。


 それより、シェノンの手際が思ったよりも良い。カメラを風魔法〈ザーフ〉に乗せ、僕の指示通り司会席を映している。

 まさかテレビ局よりも先に、ドローン撮影の技術が進むとは。魔法によるイノベーションに驚きつつも、僕はカメリハで役を演じ続けた。


「どうもお、バルクスです。世界樹目指して頑張りまーす」


「ぐへへへっ。アイリン様に逆らうものは、氷漬けにしてやる!」


 まぁ、こんな感じだろう。多少の脚色はご愛敬である。


 そんなこんなで、司会と回答の席を何度か往復した後、映像をチェックするため、手鏡を手にシェノンの元へ戻った。

 彼女はだいぶ神経を使ったようで、息も絶え絶え。真っ赤になった顔を、風魔法で扇いでいた。便利だな、その魔法。


 さて、映像の方だが。

 頑張ってくれたのは嬉しいものの、あまり良い出来とは言えなかった。


 〈ザーフ〉の使い方が上手いからか、手ブレなどは少ない。

 しかし、被写体が傾いていたり、画面端に寄っていたりと見れた物では無い。


 そういえば、バミリ──カメラ位置の目印を付けるのを忘れていた。これでは何処にカメラを移動させ、どの向きで撮ればいいのか分からない。

 僕は急いで、地面に十字を付けて回る。この真上にカメラを移動させれば、被写体を綺麗に写せるはずだ。


 さて、これでもうリハーサルは十分だろう。いよいよ、これからが本番。

 僕は世界樹の陰で待たせていた二人に声をかけ、回答者席に案内した。


「アイリンさん、バルクスさん入られまーす!」

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