《絶望》の鎧/《超越》-エクシード- 4
「エスペランザ!」
リーナの掛け声と共にエスペランザは現れ、リーナとサクヤを取り込むと同時にデスペラシオンへと突撃し、共にその場から離れていく。
「私達も行こう」
「メラ達は私と一緒に」
シャルはヴァリエンデを、ウォードはソムニュームを、エムリアーナは神獣王を出すとエスペランザを追いかけるのであった。
四肢は戻っているもののまだ全身に無数の傷跡が目立つエスペランザ。その姿で挑むのはあまりにも無謀であると言える。そんなエスペランザをストルツは押し退けると、すぐに飛行し、そして転がっていくエスペランザへ奇襲するのであった。リーナはエスペランザの体勢を瞬時に立て直しながら蛇腹剣を出すと、デスペラシオンの攻撃を寸で避け、その流れでデスペラシオンの脚に蛇腹剣を巻き付けるのであった。蛇腹剣を大きく振り、デスペラシオンに巻き付けたまま前に投げると体勢を崩したデスペラシオンは大きく転がっていく。すかさず、ビームファイラムを出しそれを斧状態に持ち替えながら転がるデスペラシオンに迫り、胸部を目掛け振りかぶる。すると斧が当たる鈍い感触が伝わってくる。しかし、当たったのは胸部ではなかった。ストルツはデスペラシオンの腕を盾とし、その攻撃を受け止めていたのだ。そして、それと同時に背部の砲台から光弾を放ち、エスペランザへと直撃させる。攻撃を受けたエスペランザは破損こそしなかったものの、その衝撃で後ろへと大きく吹き飛ばされてしまう。
「抵抗するか?出来るならやってみな!」
ストルツはデスペラシオンの背部の二本の剣を抜くと、エスペランザへ瞬時に近づき一気に振り下ろす。それに対しリーナはエスペランザの右腕を胸の前に出しなんとか防ぐのであった。しかし、ただでさえボロボロなエスペランザがいつまでソレに耐えられるのかは分からないものである。
「シャル、助けに行った方がいいんじゃ」
シャル達はエスペランザとデスペラシオンの攻防を離れた位置から見守っていた。実力は互角。しかし、機体の性能差でエスペランザの方が不利な事は目に見えていた。それに対しシャルは悩んだ。それは、この戦いにおいて極力手を出さない事を約束していたからである。しかし悩んでいる暇は無い。今まさに、リーナの乗るエスペランザが追い詰められているからだ。
「・・・分かった。やろう。でも、あのフレームゴーレムを退かす以上の事はしない、いいね」
「知ってるか?リーナベル。私は受けた痛みを倍で返す男だ」
「知らないわよ、アンタの事なんて!」
「ならば知ってもらおう、二度の敗北という現実でな!」
ストルツがデスペラシオンの剣に力を込め、押し切ろうとする。このままでは先日と同じ結果となってしまう。
その時、デスペラシオンの顔の際を何かが霞める。その一瞬、ストルツはその攻撃に気を取られてしまう。すると、その瞬間、両肩に衝撃が走る。エムリアーナが神獣王の剣を弓型に変えわざと顔の傍を掠め、そしてソムニュームの砲撃がデスペラシオンに直撃したのだ。デスペラシオンがよろめき、エスペランザから離れた時、更なる追撃として高速で接近したヴァリエンデが勢い任せに蹴りを入れる。その攻撃によりデスペラシオンは仰向けに倒れるのであった。
「リーナベル、負けるんじゃないよ」
ヴァリエンデのヒット&アウェイ。その去り際にシャルは呟く。
「アンタ達・・・」
仰向けに倒れたデスペラシオン。それが立ち上がり始める。
「エスペランザ、アンタはどうか分からないけど、私はあんな奴に負けるわけにはいかないの。だから起って・・・、起ちあがって私を勝たせなさいよ!」
リーナのその言葉にエスペランザはゆっくりと立ち上がると、両腕を額の前で交差させ、そして左右に開く。すると、エスペランザの装甲が徐々に、まるで爬虫類の脱皮の様に割れ始める。そしてエスペランザの装甲が全て割れ、剥がれ落ちた時、エスペランザは新たな姿へと変化、いや、進化をし始める。
進化したエスペランザ。そのシルエットに大きな変化は無いものの、それまでの黒い姿とは打って変わり、全身が赤色をベースに銀の鎧を纏った様な姿となり、そして銀の鎧にな金の縁取りが施されている。
「エスペランザ、エクシード・・・」
サクヤがモニターに表示された新たなエスペランザの名前、そして要点をまとめた性能の説明を読んでいく。
「何かあったの?」
「とにかく、エスペランザが強くなったみたいだ。それよりも、来るぞ!」
「また姿が変わったか。だが、そんなことで怯む私ではない!」
ストルツはそばに落ちていたデスペラシオンの剣を右手で取ると、距離を詰めながら振り下ろす。それをリーナはエスペランザの右手でデスペラシオンの右手首を掴むだけでデスペラシオンの攻撃を止めてしまう。すると、リーナはそのままエスペランザの右足でデスペラシオンの腹部に蹴りを入れ、デスペラシオンを吹き飛ばしてしまう。大きく後方に吹き飛ぶデスペラシオン。それに対してエスペランザはデスペラシオンが地面へ着く前に高速で後ろに回り込み、さらに背中へともう一度蹴りを入れる。
「勝手に動いた!?」
「パイロット、操縦者の動きや思考に合わせて、それを損なわない様にエスペランザも動ける様になった、らしい」
「へぇ、面白いじゃない。それなら!」
リーナは蛇腹剣を出すとデスペラシオンに接近し、デスペラシオンの傍を円を描くように動き始める。すると次第にエスペランザの数が2体、4体、8体と増えていく。エスペランザと分身体はデスペラシオンに対し四方から各々攻撃を仕掛けていく。分身体との攻撃はストルツを苦しめた。しかしストルツもただその攻撃を食らうだけの男ではない。その攻撃の中にある法則性を的確に見抜き、攻撃を受け止めたのだ。
「分身しようと、動きを読めば!」
攻撃を受け止めたデスペラシオンはエスペランザの腕を掴み、投げ飛ばしてしまう。それだけでなく、背中の二門の砲撃で追撃をし、確実に仕留めようとする。
「やったか!?」
砲撃の影響で発生した砂塵が収まると、そこに居たのは無傷のエスペランザの姿があり、しかも体勢を立て直し、デスペラシオンの方を真っ直ぐに捉えている。
「チィ!」
ストルツは剣を持ち、二つの剣を合体させながらエスペランザへと接近する。そしてエスペランザへと剣を振り下ろそうとしたその時、エスペランザの出した右手がデスペラシオンの腹部へと突き刺さる。
「クッ。だが!」
だがストルツはそこで止まらず、デスペラシオンの持つ剣をエスペランザの胸部へと振り下ろそうとする。すると、デスペラシオンに刺さったエスペランザの右手が回転を始め、そのまま背部のジェネレーターまで一気に貫通するのであった。
ジェネレーターが壊された瞬間、生物で例えるならば死ぬ間際の痙攣の様な動作を引き起こした後、デスペラシオンは完全に機能を止める。そして、リーナがエスペランザの右腕を引き抜くと、デスペラシオンは静かにその場で倒れ込む。それはまるで、糸の切れた操り人形の様に。
「相手は?」
「操縦席は避けたと思うから死んでないはずよ。あんな奴殺したら、夢にまで出てきそうで怖いじゃない」
「終わった、のよね?」
「うん、多分」
リーナの戦いを見守っていたシャル達は、デスペラシオンが戦闘不能になったのを確認した。そして、リーナと合流し始める。
「ストルツ、聞いてるかしら?アンタが何で私を襲いに来たのか分からないけど、私はアンタなんかに構ってる暇は無いの。私達は前に進むわ。またアンタが邪魔しに来ようと、仲間と一緒にね」
リーナは倒れ込んだデスペラシオンに向けそう言い残すと、合流したシャル達と共にその場を去っていくのであった。デスペラシオンの全機能が停止した今、その暗いコックピットの中では自分を倒したエスペランザの去っていく姿を見ることも、追いかけることも出来ない。ただその場で敗北という屈辱を味わうしかない。
「クソーッ!!!」
ストルツのその悲痛な叫びは、誰の耳にも届かない。アレだけ執着をしたシャルの耳にも。
更新遅くなってすみません。
今回の話は所謂強化イベントなわけですが、他と合流する話もしているのでどうやってエスペランザだけの戦いにしながら強化イベントらしいモノにするのかで苦労しました...。




