《絶望》の鎧/《超越》-エクシード- 2
シャル達は手頃な森に隠れ、ストルツからの襲撃に逃れる事にする。しかし、いつ襲撃があってもいい様に、また、エスペランザの惨状を見てシャルはヴァリエンデの修復能力でエスペランザの修復を始める。四肢を斬られ、胸部も翼も破壊されたエスペランザ、果たしてそれをヴァリエンデの能力で修復しきれるかという疑問はあった。しかし今それを考えている場合ではないという事もシャルは分かっていた。
その時、リーナは浮かない顔をしていた。サクヤは、エスペランザのコックピットへ転送され戻っていたメラ、メル、リュードと共に声をかけず様子を見ていた。すると、リーナが口を開く。
「・・・ごめんなさい。私のせいでこんな事に」
リーナにはきっとストルツに負けた悔しさ、ストルツに味合わされた恐怖もあっただろう。だが、リーナの表情から伝わってくるものは自身の罪悪感であった。
サクヤ達はリーナに何か声を、励ましの言葉の一つでもかけたかった。しかし、それを今リーナに行ったとしても逆効果であろう。それは、皆が分かっている事であった。
ヴァリエンデの修復能力により、まずはまだ残っていた部分がジワジワと綺麗になり始める。そして、四肢が戻り始めた頃に、ヴァリエンデの修復能力が止まってしまう。
「どうしたんだ、ヴァリエンデ」
「一気に力を使ったから燃料切れみたい。玉に戻さないと」
「ごめん、サクヤ。これ以上は難しいみたい」
「分かった、後は玉に戻して様子見してみる」
そうしてエスペランザ、マジードラッヘ、ヴァリエンデ、ソムニュームは玉へ戻り、神獣王も小さな姿へと戻るのだった。
すると、それぞれが知らない人物の存在に驚くのであった。
「あのー、サクヤさん。その子達は?」
「そっちこそ、その人は?」
サクヤ達は野営の準備をし、お互いサフラト村から分かれてここまで何があったのかを話すのであった。サクヤは子供の竜を拾い、元の世界の親友と再会、メラとメルと出会い、ストルツと戦い、そして次元龍の襲撃があった事を、そしてシャルは様々なディナルドの幹部と戦い、時には協力をし、ここまで来た事を話すのだった。
「ちょっと待って、サクヤさんってこの世界の人じゃないの!?」
「まあ、そう」
「シャル、それって、前に会ったムラサメって人と同じだよね?」
「確かにそうね」
「ムラサメに会ったのか!?」
「オイオイ、サクヤ達も会ってるのか。じゃあウェルターにも会ったか?」
「うん、会った」
「ソイツが連れてた喋る魔獣、その仲間が今エムリが連れてるコイツらだ」
「よろしくライ!」
「なるほど、通りで似てると思った」
サクヤ達の話とシャル達の話、それには共通点があった。それはウェルターとムラサメと会った事、そして次元龍と戦った事である。双方の情報を整理すると、次元龍は空裂を超え現れ、そしてディナルドは次元龍と敵対している。そしてその次元龍と空裂は、ここ以外の世界でも出現をしているという事であった。別世界で空裂に巻き込まれこの世界に辿り着いたのがサクヤやイェルク、ムラサメや神使獣達なのだ。
また、ディナルドは空裂や次元龍の存在、その存在がどういう厄災を齎すのかを恐らく知っているのだろう。しかし、誰がどこまで知っているのかは不明なままであったのだ。
ディナルドのとある倉庫。そこは街から少し距離があり、かつまるで身を潜める様に辺りから隔離された場所に存在していた。そこにはデスペラシオンが格納されており、その手前にストルツとクラウンが立っていた。
「荒く扱いすぎた様ですね。動かなくなった原因はそこでしょう」
「荒くだと?普通に使ってそれならただの欠陥品ではないか」
「失礼。確かに乗り手の技量に合わせて調整すべきでしたね」
「なんだと!?」
「とにかく、出力を絞る様にしてみます。ただ、そうなると今回ほどの力は出せませんよ?」
「別にいい、まともに動かせる様になればな」
ストルツはデスペラシオンを見上げた。エスペランザに似たその機体、最初は気にしていなかったものの、それにしても変な存在だ。エスペランザ以外にも、ディナルドの記録にあるヴァリエンデやソムニュームを組み合わせた様なフレームゴーレムは、どう考えてもクラウン一人で用意出来るものではない。王城に潜伏し、フレームゴーレムも使う以上城内にそれなりに仲間、もしくは内通者が居るのかもしれないが、それにしてもこの様なフレームゴーレムを用意出来るのは異常な事である。彼女は一体何者なのか。ストルツはふと考えるのだった。
「お前まさか・・・、いや、まさかな」
「どうかされましたか?」
「いや。それよりも一つ教えてくれ。お前の目的はなんだ?」
「はて?目的ですと?」
「とぼけるな。私の私情を利用し動いている以上は何かしら目的があるのだろう?」
クラウンは暫し黙り込んだ。そして暫くの沈黙の後、こう答えるのだった。
「それについてはお答えする事は出来ません。しかし、いつの日か、その目的を果たす時が来た際、ストルツ様に協力してもらうためにこうして今ストルツ様のお手伝いをしているわけです」
「なるほど。つまり私はお前の計画の駒に過ぎないわけか」
「気に障ったのなら謝罪させていただきます」
「あぁ、気に食わん。だが今ここで貴様と縁を切ったとしても私の気持ちは晴れないからな。ならば駒にされるその日まで貴様の恩着せを受けてやろうじゃないか」
「恐れ入ります。それでこそストルツ様です」
ストルツの今の目的はリーナへの復讐だ。そしてそれを一番サポートしてくれるのがクラウンな以上、例えクラウンがどういう存在とあれど、ストルツがクラウンから離れる理由はないのであった。例えそれが、彼女の捨て駒にされる事になるとしてもだ。
その夜シャル達とサクヤ達は共に夜を過ごす事となった。テントを三張用意し、一つにはシャル、ミリアム、リーナが、一つにはウォード、トロン、サクヤ、そしてもう一つにはエムリアーナとメラ、メル、神使獣達とリュードが共に過ごすのであった。
「それでリーナベル、サクヤさんとはどうなの?」
ミリアムが突然リーナへと質問を投げかける。その突拍子のない、何を聞いているのか分からない質問にリーナは首を傾げるしかなかった。
「どうって、何が?」
「もー、照れちゃって!数ヶ月も一緒に旅をしながら、しかも誕生日に贈り物をするなんてそういう事じゃん!」
「別にそういう意味じゃないと思うけど・・・」
「いやいやシャルさん、サクヤさんの首飾りを見たでしょう?宝石ですよ、宝石!」
「あれは雑貨店の店主に勧められたのを買っただけよ」
「ごめん、リーナベル。ミリアムはあんな調子だけど、嫌だったら嫌って言っていいから」
「別に、いいわ」
「で、リーナベルとはどうなんだ?」
「どう、って聞かれても」
「ウォード、失礼ですよ」
「いやでもよ、お前その首飾りはリーナベルから貰ったモンだろ?」
「そうだけど」
「前に魔声機でかけてきたんだよ、お前への誕生日に何を送ればいいのかって」
「ありましたね、そんなこと」
「そうなんですか?」
「あぁ。アイツ、あんな顔しながら実は結構悩んでたんだぜ」
「そっか・・・」
サクヤは自身の首に下げている宝石をグッと握る。
「まあどうだって良いけどよ、相手と話せる時にはちゃんと話とけよ。失ってからじゃ、何も言えないからな・・・」
ウォードの顔には少し寂しさの様な物が浮かんでいた。その顔は亡き友人、チャーモンドの事を思っての事だろう。
「ねぇ、君たちも獅子達の仲間にあったのよね?」
「うん、会ったよ」
「その時居たのは、人鳥と猫熊と象だけだったゴリ?」
「うん、そうだった。私達と遊んでくれた」
「やはり、もう二人は他の所グルか」
「ねー、ねー、その二人って誰なの?」
「いつか会えたら紹介するライ。その時をお楽しみね」
「獅子、やっぱりあの超神王と君たちって一つになるの?」
「あぁ、そうライ!」
「ならそのウェルターとやらと合流しないとな。話に聞く次元龍とかいうのとの戦いも、きっと獅子達の仲間が必要になるだろうし」
「仲間と再会出来るといいね」
メルが火星獅子の頭を撫でると、獅子は気持ちよさそうにしながら首元も見せ、さらにメルに撫でてもらうのであった。そんな顔を見せる火星獅子に獅子の威厳はなく、ただただ身体が大きいだけの小動物の様な風貌になっていたのである。
今回の話は映像作品で言えば「総集編」に当たる回と言えるでしょう。しかし、昨今では配信で過去の話を見られるため、わざわざ総集編をやる必要性があるかどうかはわかりませんね。




