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金色の箱庭  作者: たかまち ゆう


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第310話 館腰雅-5

 桃花は、首を傾げながら言った。


「吹雪様からの呼び出しがあったことは、美樹さんも知ってるの?」

「ええ。お姉様もご存知のことよ」

「どういう経緯で、お前が来ることになったんだ?」

「それは、吹雪様のお屋敷で説明いたします」

「……」


 状況が把握できないまま、大河原先生を呼んで、生徒会長の屋敷に向かうことになった。



 道中で、雅に何を質問しても、まともに答えが返ってこなかった。

 先生も桃花も、いつもの雅とは異なる雰囲気を感じ取っている様子で、心配そうな顔をしている。


「雅ちゃん、ちょっと緊張してるみたい」


 桃花が、俺にそっと耳打ちした。



 俺たちは生徒会長の屋敷に入った。


 事前に段取りは決まっているらしく、雅がそのまま俺たちを案内した。

 おそらく、初めて生徒会長に会ったのと同じ部屋に案内されて、中に入った。


 生徒会長は、いつもと同じ着物姿で言った。


「よく来ましたね。歓迎いたします」


 生徒会長の様子は、いつもと変わらなかった。

 いつもとは違ったのは、生徒会長の脇に控えている人物がいたことだ。


「百合香さん……!?」


 俺は叫んでしまった。


 百合香さんは、白一色の着物姿だった。

 髪を短く切り揃えているが、特徴的な銀色の髪と、この世のものとは思えない容姿はそのままだ。


 以前、この人の限界突破した美しさは、輝くような髪によって生み出されていると思った。

 だが、髪が短くなっても変わらず美人なのだから、本質的に美しいのだろう。


 百合香さんは、暗い顔で俯いているが、それでも綺麗に見えるのだから不思議である。

 まさか……この人って、自分の美しさや好感度を操る魔法でも使えるのだろうか……?


「……お久し振りです」

「百合香、貴方……やっぱり、ここにいたのね」


 大河原先生は、呆れたような口調で言った。

 桃花も、あまり驚いた様子はない。


 そうか……美樹さんの屋敷から逃げ出しても、百合香さんが行ける場所なんて、友人である生徒会長の屋敷しかないか……。

 百合香さんが失踪した時に、皆があまり心配していない様子だったのは、居場所を想像できたからなのかもしれない。


 俺たち3人は、生徒会長に促されて座布団に座った。

 雅も俺たちと並んで座った。


 それを待ってから、生徒会長が言った。


「本日、貴方たちを招いたのは、あの日の出来事について話すためです」

「あの日って……宝積寺と百合香さんが殺し合いをした日のことですか?」

「そうです。あの日、本当は何があったのかについて、もっと早く話したかったのですが……宝積寺玲奈がいなくなるまで待っていました」

「本当は、何があったかって……あの時に、俺たちが見て、聞いたことが全てでしょう?」

「和己、貴方は疑問に思わなかったのですか? 百合香さんは、外界から隔絶された環境で暮らしていたのですよ? 宝積寺玲奈がどの程度の脅威なのか、分かるはずがないでしょう? そのような状況で、貴方だけでなく雅にまで催眠術をかけるなど、あまりにもリスクの高い行動です。催眠術には、脳に異常を生じさせる危険性があるのですから」

「……」


 それは疑問だった。

 早見も、百合香さんの犯行には黒幕がいることを示唆していた。


「じゃあ……宝積寺が危険だって、百合香さんに伝えた黒幕がいるってことですか?」

「お待ちください、吹雪様。百合香と接触して、玲奈ちゃんを抹殺するように伝えるなんて……そのようなことが可能な人物がいたとしても、その言葉に百合香が従うとは思えないのですが……?」


 先生が口を挟んだ。

 その疑問に答えたのは雅だった。


「百合香さんに、玲奈さんを抹殺するための協力を求めたのは私です」

「何ですって……!?」

「やっぱり……」


 桃花がそう呟いたので、先生は驚愕したようだった。


「桃花、貴方……雅が首謀者だと気付いていたの!?」

「違うの、お姉ちゃん。早見先輩が、計画したのは雅ちゃんだって示唆していたから」

「アリスが……?」


 先生は、強い衝撃を受けているようだ。

 同じ花乃舞の人間である自分の方が、神無月の人間である早見よりも、雅のことを理解できていると思っていたのだろう。


「ちょっと待ってくれ、桃花。あの時、早見は、雅が黒幕だとは言わなかったよな?」

「そうだけど、雅ちゃんしかいないでしょ? 美樹さんの能力を熟知していて、百合香さんと自由に話すことができる人なんて、梅花様と美樹さんと雅ちゃんしかいないんだから。美樹さんは絶対に宝積寺先輩を殺さないし、梅花様だったら、雅ちゃんに催眠術をかけたりしないよ。雅ちゃん本人が黒幕なら、催眠術をかける必要はないでしょ?」

「……雅。お前には、催眠術がかかってなかったのか?」

「仰るとおりです」

「……」


 雅は、操られていたわけではなく、自分で宝積寺に襲いかかったのか……。

 そうであれば、計画を共有するだけで済むのだから、催眠術による副作用を心配する必要はない。


 分かってみれば、とても単純な構図だ。


「どうして、宝積寺を暗殺するなんて、絶対に美樹さんが望まないことを……?」

「それは、玲奈さんが決して存在を許容できない脅威だったからです。そして、玲奈さんがお姉様の実の妹であることは、早い時期に察しておりました。このままでは、玲奈さんがお姉様にとって最悪の汚点になると考えて、玲奈さんを暗殺することに決めたのは7年ほど前のことです」

「そんな決意を、8歳でしたのかよ……!?」

「はい。ですから、私はお姉様の意向を無条件に尊重しました。お姉様が望まないことは決してしないと思われていなければ、敵意に敏感な玲奈さんを暗殺するのは難しいと考えたからです」

「……だったら、もっと早く、機会がありそうなもんだが……?」

「暗殺は、この町の皆様から支持を得られるタイミングで実行しなければなりませんでした。特に、私が玲奈さんへの嫉妬によって暗殺したと思われる事態だけは防ぐ必要がありました。私はお姉様の義妹ですので」

「……」


 確かに、宝積寺の暗殺に成功しても、雅が宝積寺に嫉妬していたから実行したのだと疑われるリスクは高かっただろう。

 そんな疑いを抱かれないためには、暗殺の正当性を皆に認めてもらう必要があったのである。


「梅花様が春華さんの妹だと知れば、玲奈さんが暴走することは予測できたので、あの集まりで実行することを決断しました」

「……宝積寺は、お前の前では油断してただろ? さすがに、俺に催眠術をかけなくても良かったじゃねえか」

「いいえ。玲奈さんは、私に対して漠然とした恐怖心を抱いていました。完全に油断していたわけではないので、隙を作らなければ成功する確率は低かったと思います」

「……」


 そういえば、宝積寺には、雅との間にちょっとした距離があったように感じた。

 あれは、心の奥底で、雅を警戒していたからだったのだろう。

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