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金色の箱庭  作者: たかまち ゆう


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第309話 栗橋梢-5

 良くない流れだと感じたので、俺は言った。


「それを理由に求婚されても、俺が困るんだが……」

「よくあることじゃないのぉ? 私たちと子供を作るのが、嫌なわけじゃないでしょぉ?」

「……美樹さんの義弟と結婚できたら素晴らしいことは否定しないわ。でも、黒崎さんと交際することは、玲奈さんへの裏切りになるから嫌よ。……何年か経ったら、そういう関係になっても違和感のない状況になるのかもしれないけど……」

「だったらぁ、梢ちゃんは私たちの家に戻ってきなよぉ。一緒にお風呂に入ってればぁ、自然とそういう気分になるわぁ」

「おいおい……。栗橋は、そういう男女の交流に否定的なんだろ?」

「では、梢さんには桜子さんの家に戻っていただきまして、こちらに萌さんと若葉さんをお迎えするのはいかがでしょうか? 今後の和己さんと梢さんの関係は、自然な成り行きに任せれば良いと思います」

「……」


 美樹さんの言葉を聞いて、多くのメンバーが顔を見合わせた。

 この人が、男女の身体のつながりについて、とても肯定的な考えの持ち主だということは分かっているのだが……。


 しばらく考えてから、栗橋は言った。


「……混浴することは約束できません。それでも良ければ戻ります」

「混浴する義務なんて無いから、安心しなさい。萌と若葉だって、黒崎君と一緒にお風呂に入ったことなんて、ほとんどないんだから」

「では、そのように致しましょう」


 こうして、藤田先輩と十条先輩が、栗橋と入れ替わる形になった。



 話し合いを終えて、皆が自分の家に戻った。

 そして、夜になって。


「お前……当面は、混浴しないんじゃなかったのか?」


 風呂に入るタイミングで姿を現した栗橋に、俺は言った。

 栗橋は目を逸らした。


「……約束できないと言っただけです。しないとは言っていません」

「梢ちゃんだって、美樹さんと姉妹になれたら嬉しいよねぇ?」

「あくまでも、花乃舞の仲間として混浴するだけの関係よ。黒崎さんから、今すぐに身体の関係を求められても困るわ」

「そんなもん、要求するわけがないだろ……」


 俺がそう言うと、栗橋は特徴的なジト目でこちらを見た。


「……全く信用できません」

「おい……」

「色々な女性との肉体関係を期待して、本当にそのような結果になってきたのですよね? 黒崎さんの言動が原因となって、この町から玲奈さんが出て行ったことは事実です」

「……」


 こいつ……実は、俺のことを恨んでるのか?

 そんなことが心配になってしまった。


「黒崎君。今夜は私と寝ましょう」


 唐突に、大河原先生が口を挟んできた。


「……どうしたんですか、急に?」

「黒崎君も梢も冷静じゃないわ。玲奈ちゃんがいなくなったばっかりなんだから、落ち着かせた方がいいと思ったのよ」

「……」

「そうだよ、お兄ちゃん。今夜はお姉ちゃんと一緒に寝て、心の傷を癒やしてもらうべきだと思うよ?」

「……じゃあ、先生にお願いします」


 断る理由がないので、話はすんなりとまとまった。


 栗橋からはジト目で見られてしまったが、こうなることは自然だと感じている様子だった。

 俺と先生が、既に身体の関係になっていることは、こいつも知っているからだろう。



 その夜。

 予定どおり、俺は部屋に先生を招き入れて2人きりになった。


「黒崎君。梢のことをどうするつもりなのか、教えてもらってもいいかしら?」


 あまり表情を変えずに、先生が言った。


「どうするって……あいつが、俺と今すぐに男女の関係になるはずがないでしょう?」

「今すぐでなければ、あり得ると思っているのね?」

「……先のことなんて考えられません。今日、宝積寺が出て行ったばっかりなんですよ?」

「そう。それなのに、脱衣所で脱ぐ時から、ずっと梢の身体を見ていたのね?」

「……」


 そりゃあ……混浴するのだから、女の身体は気になるだろう。

 期待するなと言われても無理だ。


 栗橋だって、見られていることには気付いていたはずだが、俺を非難したりしなかった。

 矢板は、いつものように、俺をからかってきたが……。


 シンプルな白い下着はイメージどおりで色気に乏しく、身体のラインはビキニ姿を見た時に把握していたが、それでも栗橋から受けた刺激は想像以上だった。

 何よりも、胸のボリュームと形は申し分なかった。


 だからといって、あいつと子供を作るなんて、今は考えられないことだ。


「玲奈ちゃんがいなくなったからといって、自由になったと思われたら困るわ」

「……分かってますよ」

「だったらいいんだけど。単に発散したいだけなら、桃花に相談するといいわ」

「……」


 昨夜の行為については、先生に筒抜けのようだ。

 もちろん、この姉妹は何でも話す関係なのだから、そうなることは分かっていたのだが……。


「男の身体が、そういう構造になっているのは仕方ないと思うわ。でも、それを私だけのために使ってほしいと思うのは当然でしょ?」

「……そうですね」

「だったら、今夜はそうして」

「分かりました」


 俺は先生を抱き寄せて、唇を重ねた。



「……」

「……」



 それから、数日が経った。

 表面的には、今までと変わらない日々が流れていた。


 宝積寺がいなくなっても、美樹さんが神無月晴人と交際を始めても、栗橋と同居して混浴するようになっても。

 それによって、何かが劇的に変わったわけではない。


 変化があったとすれば、矢板が俺を積極的に誘うようになったことぐらいだろう。

 以前は反対しなかった先生が、それを止めるようになったのは、ちょっとした変化とは言えないのかもしれない。


 矢板に無理強いされるリスクがあるので、一緒に寝るのは先生か、桃花と松島のセットになった。

 それについて、矢板は不満そうで、栗橋は軽蔑しているようだった。


 だが、矢板は俺のために、渡波や一ノ関と会うための機会を作ってくれた。

 どうやら、自分が役に立つことをアピールしたいらしい。


 意図はどうであれ、ありがたいことである。



 渡波と一ノ関は、宝積寺がいなくなったことについて言及しなかった。

 俺がフられたことは知っているはずなので、配慮してくれたのだろう。


 御倉沢にとっては最大の脅威だっただけでなく、俺を取り合うライバルだったので、内心では安心していたのかもしれないが……。



 学校が休みの日に、俺たちの家に雅が来た。

 そして、いつものように淡々とした口調で言った。


「お兄様と桃花と桜子さんに、一緒に来ていただきたいです」

「美樹さんが私たちを呼んでるの?」


 桃花が尋ねると、雅は首を振った。


「いいえ。呼んでいるのは吹雪様よ」

「えっ……?」


 桃花は目を丸くした。

 あまりにも意外だったので、俺も驚いた。


 生徒会長が……俺たちを呼んでいる?

 それは珍しいことではないが、普段であれば、平沢を派遣してくることが多い。


 あの人が、御倉沢の人間でもない雅を派遣してくるのはどういうことだ……?

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