第15話 萌えるのは畝傍の山の緑だけど燃え上がるのは文藝研究部
校歌の一節が捩られて第15話のタイトルになっている奈良県立橿原高校。
そんな橿原高校の文藝研究部の部室。
文化祭の翌日。
「君らちょっとええか?」
顧問の仲田先生が部室を覗いて言った。
「はい、どうしたんですか?」
普段滅多に部室に顔を出さない顧問の仲田先生が顔を出すなんて珍しいこともあるもんだと思いながら、部員たちは先生の方を見た。
「君ら、知らんのか?
昨日の展示、むちゃくちゃ炎上してて、学校にまで電話かかってきてるんやけど」
「えっ?」
そんな話、部員たちにも寝耳に水だった。
「これ、君たちが投稿したんとちゃうの?」
そう言って、仲田先生がスマホの画面を見せてくれた。
>これ、面白すぎん?
そう書かれた投稿には昨日の文化祭で展示したポスターと販売したトレカの写真が添えられていた。
>なにこれウケる〜
>日本書紀って面白いんや
>アイデア最高!
好意的なコメントが多くついていた。
「これ、結構ウケてますよ?」
「その先や」
そう言って、先生はスクロールして続きを見せた。
>神武天皇が武装海賊移民って、皇室を侮辱するのか?
>そもそも定説と全然違う
>いい加減なこと書くな
>こんな教育許せない
>でも、言うほどのことか?
>ブサヨは黙ってろ!
ネトウヨと思しき人や歴史ガチ勢の批判コメントが多数ついている。
擁護のコメントもあるが、寄ってたかって叩かれている。
「えぇ〜!?」
ヒロミが声を上げる。
「なんでこうなんの?
ラノベっぽいエンタメやと思ってたのに」
マサルが理解不能という顔で言った。
さらに。
>学校に凸電したったw
>部員誰や?特定班はよ!
>こいつら、進学できんようにしたる
>高校生が調子に乗りやがってお仕置きしたる
「ちょっとこれヤバない?」
ヒロミが不安な顔をする。
「職員会議でも問題になっててな。
対応策を考えてるところやけど、
とにかくこういうことやから、君らも気をつけてな」
それだけ言って先生は部室を後にした。
「なぁ、どうする?」
マサルが途方に暮れたように言った。
「どうって言われても、こんなんどうしようもないよな」
タカシもノーアイデアだ。
「言い訳しても、余計に炎上しそうですよね」
シノブが泣きそうな顔をする。
「それもやけど、このままやったら特定されて晒されて社会的に消されるで」
「えぇ〜、そんなんいやや」
重苦しい沈黙が続いた後。
「なぁ、これ読んでて思ったんやけど、だいたい問題点は二つしかないよな」
「二つ?」
「うん。
歴史ガチ勢からのトンデモ仮説という批判と、
もう一つはネトウヨからの天皇を侮辱してるという批判」
「あぁ、確かに」
「じゃあ、それは誤解やって説明をポストする?」
「いや、それはあまり得策やないやろ。
当事者が来たって火に油注ぐだけやと思う」
「そしたらどうするん?」
「私らのやってたことをラノベにして公表したらどうなると思う?」
ヒロミはそう言ってイタズラっぽく笑った。




